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アニメキャラ・バトルロワイヤル 作品投下スレ5

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/10(水) 23:12:46 ID:qEBFMAqv
ここは
「アニメ作品のキャラクターがバトルロワイアルをしたら?」
というテーマで作られたリレー形式の二次創作スレです。

参加資格は全員。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

「作品に対する物言い」
「感想」
「予約」
「投下宣言」

以上の書き込みは雑談スレで行ってください。
sage進行でお願いします。


現行雑談スレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1168355381/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/10(水) 23:14:25 ID:qEBFMAqv
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」

 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。


【バトルロワイアルの舞台】
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/34/617dc63bfb1f26533522b2f318b0219f.jpg

まとめサイト(wiki)
http://www23.atwiki.jp/animerowa/


3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/10(水) 23:15:30 ID:qEBFMAqv
【キャラクターの状態表テンプレ】

【地名・○○日目 時間(深夜・早朝・昼間など)】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(武器・あるいは防具として扱えるものはここ)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なものはここ)
[思考・状況](ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。複数可、書くときは優先順位の高い順に)

◆例
【B-6森 2日目 早朝】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労(左腕・右足に切り傷)
[装備]:刀、盾
[道具]:ドアノブ、漫画
[思考]
第一行動方針:のび太を殺害する
第二行動方針:アーカードの捜索
基本行動方針:最後まで生き残る

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24


4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/10(水) 23:16:18 ID:qEBFMAqv
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【放送】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
スピーカーからの音声で伝達を行う。

【禁止エリア】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。


5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/10(水) 23:17:36 ID:qEBFMAqv
【能力制限】

◆禁止
・ハルヒの世界改変能力
・ローゼンキャラの異空間系能力(間接的に人を殺せる)
・音無小夜の血液の効果

◆威力制限
・BLOOD+のシュヴァリエの肉体再生能力
・Fateキャラの固有結界、投影魔術
・長門有希と朝倉涼子の能力
・レイアース勢、なのは勢、ゼロ勢、遠坂凛の魔法
・サーヴァントの肉体的な打たれ強さ(普通に刺されるくらいじゃ死なない)
・サーヴァントの宝具(小次郎も一応)
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・タチコマは重火器の弾薬没収、装甲の弱体化
・アーカードの吸血鬼としての能力

◆やや威力制限
・うたわれキャラの肉体的戦闘力
・ジャイアンの歌

◆問題なし
・ローゼンのドールの戦闘における能力
・ルパンキャラ、軍人キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力


*制限事項のさらなる詳細については、まとめWikiをご参照ください。


6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/10(水) 23:18:21 ID:qEBFMAqv
【参加者一覧表】

6/6【涼宮ハルヒの憂鬱】
   ○キョン/○涼宮ハルヒ/○長門有希/○朝比奈みくる/○朝倉涼子/○鶴屋さん
5/5【ドラえもん】
   ○ドラえもん/○野比のび太/○剛田武/○骨川スネ夫/○先生
5/5【スクライド】
   ○カズマ/○劉鳳/○由詫かなみ/○君島邦彦/○ストレイト・クーガー
5/5【ひぐらしのなく頃に】
   ○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条沙都子/○古手梨花
5/5【ローゼンメイデンシリーズ】
   ○桜田ジュン/○真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
5/5【クレヨンしんちゃん】
   ○野原しんのすけ/○野原みさえ/○野原ひろし/○ぶりぶりざえもん/○井尻又兵衛由俊
5/5【ルパン三世】
   ○ルパン三世/○次元大介/○峰不二子/○石川五ェ門/○銭形警部
5/5【魔法少女リリカルなのはシリーズ】
   ○高町なのは/○フェイト・テスタロッサ(フェイト・T・ハラオウン)/○八神はやて/○シグナム/○ヴィータ
5/5【Fate/stay night】
   ○衛宮士郎/○セイバー/○遠坂凛/○アーチャー/○佐々木小次郎
5/5【BLACK LAGOON】
   ○ロック(岡島緑郎)/○レヴィ/○ロベルタ/○ヘンゼル/○グレーテル
5/5【うたわれるもの】
   ○ハクオロ/○エルルゥ/○アルルゥ/○カルラ/○トウカ
4/4【HELLSING】
   ○アーカード/○セラス・ヴィクトリア/○ウォルター・C(クム)・ドルネーズ/○アレクサンド・アンデルセン
4/4【攻殻機動隊S.A.C】
   ○草薙素子/○バトー/○トグサ/○タチコマ
3/3【ゼロの使い魔】
   ○平賀才人/○ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/○タバサ
3/3【魔法騎士レイアース】
   ○獅堂光/○龍咲海/○鳳凰寺風
3/3【ベルセルク】
   ○ガッツ/○キャスカ/○グリフィス
2/2【デジモンアドベンチャー】
   ○八神太一/○石田ヤマト
2/2【OVERMAN キングゲイナー】
   ○ゲイナー・サンガ/○ゲイン・ビジョウ
2/2【BLOOD+】
   ○音無小夜/○ソロモン・ゴールドスミス
1/1【MASTERキートン】
   ○平賀=キートン・太一
80/80

7 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:19:29 ID:qEBFMAqv
――ピピピピピ

電子音が鳴ると、はやてはヴィータの脇から体温計を取り出し、そこに表示された検温結果を読む。
「38度……。これで言い逃れできないなぁ。これは紛う事なき風邪やで」
「う〜〜」
ベッドに寝込んでいたヴィータは、顔を紅潮させて唸る。
「だから言ったやろ。寝る時はちゃんと布団を被らなアカンって」
「だって、寝苦しかったから……」
「そうやって布団蹴っ飛ばしてお腹出したまま寝ていた結果がこれなんやろ。ちゃんと気をつけな」
その柔らかい声で、だがその中に厳しさをこめて、はやては寝込むことになった原因について咎める。
「……ごめん。はやて」
するとヴィータは布団の中に顔をうずめて申し訳なさそうに謝る。
「ま、次からは気をつけような。それにそんなに大事に至らなくて良かったわぁ」
頭を優しく撫でながらはやてはヴィータににっこりと笑う。
ヴィータは、そんな主の姿を見て、不必要な迷惑をかけてしまったという罪悪感と同時に自分はこんなにも優しい主に仕えているのだという幸福感を感じていた。
「あ、そうそう。何か欲しいものはあったら言ってな。食べたいものとか飲みたいものとか」
「何でも……いいのか?」
「私が用意できる範囲のものやったら、構わへんよ」
「それじゃ……アイス! イチゴのアイスが食べたい!」
そんなヴィータの言葉を聞いて、はやては思わず笑ってしまう。
「あはは。相変わらずヴィータはアイス好き好きさんやなぁ。えぇよ。今、持って来るわ」
「持って……って、もうあるのか?」
「うん。ヴィータならきっと欲しがると思ってな。さっきシャマルに買ってきてもらったんよ。本当ならお腹を冷やす可能性もあるけど……ヴィータには特別や」
ヴィータの紅潮した顔がぱぁっと明るくなる。
「あ、ありがとう! はやて!」
「礼なんていらへんって。……さ、今持ってくるからちょっと待っててな」
「うん!」
再度頭に手が置かれ、はやての微笑む顔が目の前に………………


「お、目、覚めた?」
目の前にいたはずの見知った主の顔は、突如として見知らぬゴーグルをつけた活発そうな少年のものに変わっていた。
いや、正しくは全く見知らぬ顔ではなく、ついさっき瓦礫の山で見かけた少年の顔そのものだったのだが。
「お前は……ってか、どうして私……」
ヴィータが起き上がると、そこは何処かの建物の一室のようだった。
自分はどうやらソファーの上に寝かせられているらしい。
ご丁寧にカーテン生地のような布を毛布代わりに掛けられて、更には水で塗らしたタオルのようなものが頭に乗せられている。
「そっか。あたし、熱を――」
「おい、まだ起きるなって。お前、すごい熱だったんだから」
起き上がり状況を把握し始めたヴィータは、目の前にいた少年によって再び強引に寝かせられてしまう。
そして、そんな少年の姿を見て彼女はこんな疑問を抱かざるを得なかった。
「何で……あたしの面倒なんか見てるんだ」
「……え?」
「お前とあたしは赤の他人だろ? どうしてそんなあたしの看病なんかしてるんだよ。そんなことよりも先にすることがあるんじゃないのか?」
自分が意識を失う直前、少年は瓦礫の中に埋まってるという何者かを助けようとしていたはずだ。
それを放り出してまで何でこんなことしてくれるのか? 彼女には分からなかった。
すると、それを問われて彼は表情を少し暗くしながらも、しっかりとした口調で答える。
「俺、これ以上誰かが苦しんだり傷ついたりするのを見たくないんだ。……こんなことが言えた義理じゃないのは分かってるんだけどさ」
「ん? それって、どういう――」
「――のび太君〜〜〜〜〜!!!」
ヴィータが再度問おうとしたちょうどその時だった。
横になっていた青いタヌキのような物体が、いきなりそんな声を出して起き上がったのは。

8 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:20:35 ID:qEBFMAqv



ドラえもんは目を輝かせていた。
理由は簡単。自分の目の前に、山のように盛られた好物のドラ焼きがあったのだ。
「僕達のプレゼントだよ。ドラえもん」
顔を上げ、横を向くとそこにはのび太やジャイアン、スネ夫、そしてしずかがいた。
「ドラちゃんにはいつもお世話になってるから。これはそのお礼よ」
「ま、ドラえもんの道具には何度も助けられてるしな!」
「ドラ焼き代の半分はボクが出してるんだから感謝してよ」
「……ま、そういうわけだから。遠慮なく食べてよ」
そう言って笑顔を向ける一同を見て、ドラえもんは歓喜の涙を浮かべる。
「ありがとう! あいがとう、皆! 僕、こんなに嬉しいことはないよ!」
そして、早速山の頂上部分にあるドラ焼きを両手に取ると、それを口にする。
「……うん、美味しい! 美味しいよ!」
ドラえもんのそんな言葉を聞いて、のび太達も笑顔になる。
――それからは、何か色々とどんちゃんさわぎをした。
スネ夫が手品をしたらタネがバレたり、しずかちゃんのバイオリン演奏では皆が必死に堪え、続けて調子づいたジャイアンがリサイタルを開こうとするとのび太とスネ夫が必死にそれを食い止めようとして……。
ドラえもんはそんな日常のありふれた光景を見て満足していた。

……だが、そんな楽しいひと時も直に終焉を迎えることとなる。
突如として周囲が真っ暗になったと思うと、まずしずかちゃんが唐突に消えた。
そして、続けてスネ夫、ジャイアンと消え、残ったのび太も……
「のび太君!!」
「ドラえもん! 助けてよ、ドラえもん!」
何故かのび太だけは一瞬ではなく、足から上へゆっくりと消えていっていた。
既にもう胸の辺りまで消えている。
「のび太君! しっかりするんだ、今僕が……!!」
ドラえもんはポケットに手を伸ばそうとするが、そこにあるべきポケットは無かった。
「な、何で……」
「ドラえもん! ドラえも――」
そして、ポケットが無いことに驚いている間に無情にものび太は完全に消えていってしまった。
「の、のび太君〜〜〜〜!!!!!」


ドラえもんは、そんな事を叫んで起き上がった。
そして、起き上がると同時にドラえもんは周囲が先ほどの暗い場所ではない、建物の中であることに気づく、
「……あれ? ここは……」
そこまで言ったところで彼は、自分がバトルロワイアルに参加させられていることを思い出した。
それと同時に、自分がこうやって寝てしまう前に起きていた出来事のこと、更には一緒にいたはずの少年のことも。
「そ、そうだ、太一く――」
「ドラえもん! ようやく目を覚ましたのか!」
自分が気づくよりも先に、探していた少年の声が聞こえた。
声のするほうを向いてみると、そこには確かにゴーグルの少年太一がいて、そしてその傍にはソファに寝ている赤い髪の少女が……。
「太一君! よかった無事で……」
「ドラえもんこそ、調子はどうだ? どこも怪我は無いか?」
「僕は頑丈だから大丈夫だよ。だけど……」
ドラえもんは知らなかった。
自分が寝ている間に何があったのか。
具体的には、あの自分たちを尋問していた女性やその連れの少年達はどうしたのか、そしてあの赤い髪の少女は誰なのか。
「話を……聞かせてくれるかい?」
ドラえもんが太一にそう尋ねると、彼は黙って頷いた。
その顔は自分が寝る前に見た時よりも強い決意をした者の顔になっていた。

9 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:21:37 ID:qEBFMAqv



太一は話した。
自分の投げた手榴弾が一人の少年の命を奪ってしまったことを。
更に、その後に見知らぬ男に襲われ、その最中に死んだ少年と一緒にいた少女がビルごと自分達を生き埋めにしたことを。
そして何より、自分がこの世界をゲームの世界の類だと思っていたことを。
「俺、これがゲームかなんかだと思ってたんだ。だから死んでもリセットすればどうにかなるって……」
太一の独白をドラえもんとヴィータは静かに聞いていた。
「だけど、これはゲームなんかじゃなかった。血が出れば痛いし、人が死んだらもう二度と戻ってこない。現実だったんだ……」
悲痛な太一の声はここで途切れ、嗚咽に変わる。
そこで、今まで黙っていたドラえもんはそんな太一に一歩近づき、口を開く。
「君は実に馬鹿だなぁ」
それは身も蓋も無い言葉。
太一は肩を落とし、顔を下へと向ける。
「そうだよな。俺は……」
「だけどそれに気づいた事ってことは、とても凄いことなんだ」
「……え?」
「間違いってのは、気づいてからが大事なんだ。間違いを知って、それからどうすべきなのか。……太一君はもう決めているのかい?」
ドラえもんが太一を見据えながら問うと、彼は先ほどと同じような強い調子で頷く。
「俺は……これ以上犠牲を増やさない為に何かしたい。それが……あの人達への償いになると思うから」
「それが君の選んだ道なんだね?」
「ああ。俺はもう誰にも傷ついて欲しくないんだ」
それを聞いて、今度はドラえもんは頷いた。
「それを聞いて安心したよ。僕も、もうしずかちゃんみたいな犠牲者は出したくない。だから太一君、その為に一緒にがんばろう!」
「ドラえもん……!」
涙目になりながら、二人(一人と一体?)は互いに抱き合った。
互いの決意を確かめ合うように。
……そして、そんな光景をずっと黙って見ていた少女が、遂に堪りかねて口を開く。
「おい……あたしを無視すんじゃねーよ」
その声に、抱き合っていた二人は驚き、慌てて離れる。
「ご、ごめん。えっと、君の名前は……」
「ヴィータだ。ヴィ・イ・タ!」
「……お前、怒ってる?」
「怒ってねーです!」
そうは言いつつも、その目がどう見ても怒っているようにしか見えなかったのは言うまでもないだろう。

10 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:22:47 ID:qEBFMAqv
話を聞くところによると、ヴィータは家族のような存在である八神はやてという少女を筆頭に、仲間であるシグナムという女性、更には高町なのは、フェイト・テスタロッサという少女を探しているらしい。
ヴィータは各人の容姿の特徴を説明しながら名前を挙げたうちの誰か一人でも知っているか二人に問うが、彼らは首を横に振る。
「俺達、ここに来てからほとんどずっと一緒にいたけど、そんな人達見なかったよ。なぁ、ドラえもん」
「うん。少なくとも僕が気を失う前にはそんな人は……」
「そうか。……それじゃ、ここにいる必要はもうないな」
ヴィータは横になっていたソファから下りると、自分の荷物を掴んで部屋を出ようとする。
その足取りは倒れる前よりもしっかりとしているが、前述の通りまだ顔は赤いままだ。
太一はそんな彼女を見て、堪らず腕を掴んで制止する。
「おい、そんな体なのに動く気かよ!!」
「うるせー! あたしは早くはやてを探さなくちゃいけないんだよ!」
「だけど、一人で行ったら危ないよ。子供一人で出来ることなんてたかが――」
「あたしを子ども扱いするんじゃねー!!」
その刹那、彼女はデイパックからハルバートを取り出すとそれを片手で振り回し、太一たちを牽制した。
「そんじゃそこらのガキと一緒にすんな。あたしはヴォルケンリッター、鉄槌の騎士ヴィータだ! あたしは騎士として……家族としてはやてを探さなきゃいけないから、お前らの看病に付き合ってる暇はねえんだよ」
怯む二人を尻目に彼女は背を向け、部屋の外へと向かう。
……だが、そのドアを開けた時、彼女は一回立ち止まると――
「……看病してくれたことは感謝する。お前らの仲間ってのを見つけたら、お前達が無事だって事を伝えておくよ。それじゃあな」
礼のような言葉を背を向けたまま言うと、部屋を立ち去っていく。
そんな彼女を二人はただ見ることしか出来ない――と思われていたその時。
ドラえもんが立ち上がり、廊下に出た彼女に声を掛けた。太一もそれに続く。
「待って、ヴィータちゃん!!」
いきなり聞こえたそんな声に、ヴィータも思わず立ち止まる。
「……何だよ」
「君はさっき人を探さなくちゃならないって言ってたよね? だったら、僕が役に立つかもしれない!」
「……それはホントなのか?」
今度は振り返り、ドラえもんのほうへと近づいてゆく。
「本当にはやてを見つけられるのか!?」
「絶対っていう確証は無いけど、可能性はあるんだ」
少し難しそうな顔をしながらドラえもんは続ける。
「いいかい、僕達に支給された道具があるだろう? あれの中には僕と同じ22世紀に作られた未来の秘密道具も混じっているみたいなんだ」
「秘密道具ってあのみせかけミサイルみたいなやつか?」
「そう。更に言えば、ヴィータちゃんがさっき話してくれた、大男が持っていたっていうドカンドカン言って使う大砲ってのもきっと“空気砲”っていう道具のはずだよ」
「あれが……未来の秘密道具……」
ヴィータは、あの己が身をもって体感した圧搾空気による一撃を思い出して身震いする。
「それで、ここからが大事なんだけど、その未来の道具の中には人を探すのに使える道具なんかもあるんだ」
「な……! そ、そうなのか!? 本当にあるのか、そんな道具が!」
更に詰め寄ってくるヴィータ相手に、ドラえもんは顔をやや曇らせる。
「確実にある……とは言い切れない。だけど、80人も参加者がいてその人達が僕達みたいに道具を支給されているんだったら、そういう道具が紛れてる可能性だってあるはずだ。そして。僕にはその道具を使いこなせる自信がある」
「でも、誰かが持ってるんじゃ意味ねーだろ。そいつから奪うって言うのか? ついさっき傷つけたくないって言ってたのによ」
「――誰かから奪うじゃないよ。出会った人達と信頼関係を作って、そこで道具を少し貸してもらうんだ」
「信頼関係……」
「そうだよ、信頼だよ! 俺達がちゃんと信じあって、こんな殺し合いに乗らなきゃ犠牲も生まれないし、お前の仲間ってのもすぐに見つかるはずだよ! だから――」
そんな少年の言葉をヴィータは甘いと思っていた。
所詮、赤の他人同士。そう簡単に信じ合えない――彼女の長い騎士としての人生の中でそれは痛いほど分かっているつもりだった。
だが、人探しの出来る道具があるかもしれないという話は彼女の心を動かした。
彼女自身は機械の扱いは苦手で、もしその道具の操作が難しいとしたら、まさに宝の持ち腐れになってしまう。
そして、目の前にいる青狸は、その操作ができるという。
ならば、ここで下すべき決断は……。

11 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:24:51 ID:qEBFMAqv
ビルを出て、照りつける太陽の元に出たのは3人の少年少女とロボット。
「……それじゃ、とりあえずあの瓦礫の中を探してみるって事でいいのか、ドラえもん」
ゴーグルをつけた少年――太一が尋ねる。
「うん。デイパックが見つかったって事は、もしかしたらまだ中に何か道具が埋まってるかもしれないし、それにあの女の人もまだ無事かもしれないしね……」
それに答えるのは青いダルマのような体型をした物体――ドラえもん。
そして……。
「いいか? あたしは別にお前らと一緒に仲良しごっこやりたいわけじゃないんだぞ。はやてが見つかったり、居場所が分かったりしたらそれまでなんだからな」
小さい体に似つかわしくないセーラー服を身に纏った赤い髪の少女――ヴィータが食って掛かる。
ドラえもんは、そんな彼女の姿を見て安堵する。
彼女が一人で出て行くことを思いとどまってくれて良かった、と。
こんな場所で、こんな子供が一人で行動するのはどう考えても無謀だ。
既に一人、しずかを失ったドラえもんにとって、これ以上誰か犠牲者、特に彼女のような子供の犠牲者を出すわけには行かなかった。
だからこそ、道具を使うには自分がいた方が得だ――などという詭弁を多少使ってでも、思い留まらせる必要があったのだ。
「よし、そうと決まったら、さっさと行くとするか!」
走ろうとする太一をドラえもんは制止する。
「あ、待ってよ太一君! 急に走らないでってば! ヴィータちゃんはまだ体が――」
「あ、そっか。まだ熱が……」
「平気だよ。熱もさっきより下がったし、これくらいは……」
ヴィータはそう言うが、太一はそれを聞いて、走ろうとしていた足を止めた。
「いや、ここで症状が余計にひどくなったら困るし、やっぱり歩いていこう。走ろうとしてゴメンな」
「あ、いや、別に私は……」
色々あったようだが、それを通じて太一は明らかに成長していた。
ドラえもんは、そんな彼の姿に安堵し、そして嬉しく思っていた。
こうして皆が今の太一のような考えでいてくれたら、きっとこんな状況でも何とかなるはず。
そうきっと……。


彼女は結局、一時的にドラえもん達と行動を共にすることにした。
それは、当然ながら人探しに使う道具があるかもしれないという話に惹かれたからであるが、理由はそれだけではないようだ。
一人でもはやてを探すことは出来る――だが、そのはやてを、彼女と一緒にいたあの八神家の日常を思い出す度にヴィータの心の中ではどこかに寂しさが生まれていた。
ドラえもんと太一は、彼女のそんな寂しさをどこかで埋めてくれていたのかもしれない。
「なぁ、ヴィータ。大丈夫か? 何なら俺がおぶっていっても――」
「だ、だから、平気だって言ってるだろっ!」
勿論、彼女にそのような事を尋ねたところで、それを認めるはずはないだろうが。


3人が3人とも決意新たに歩き出す。
――だが、彼らはまだ知らなかった。
友人の少年が、トラックを運転し、あまつさえ事故を起こして人一人を轢き殺してしまった事を。
探している仲間が、少女の探す仲間によって殺された事を。
そして、主と慕う少女が既に死亡し、自分がなお存在していると言う事実に。

12 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:26:23 ID:qEBFMAqv
【F-1/駅周辺・瓦礫の山付近/1日目・昼】

【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右手に銃創 ※少しずつ治り始めています
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:瓦礫の山を再度捜索。道具や素子を見つけたい。
  (素子は恐らくもう生きてはいない、と悟りつつある)
2:昼以降のことはドラえもんと相談して決める
3:ヤマトたちと合流
4:荷物を持って姿を消したルイズのことも気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※放送は聞いていません。
※ドラえもんをデジモンとは違うものと理解しました。


【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
1 :12時ごろ(放送開始)まで瓦礫の中を捜索して、道具を回収したい。
2 :ヤマト、はやてを含む仲間との合流(特にのび太)。
基本:ひみつ道具を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
[備考]
※放送は聞いていません。


【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:発熱中、先ほどまでよりはやや快方に向かってる
[装備]:ハルバート 北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:支給品一式、スタングレネード×5
[思考・状況]
1:太一、ドラえもんに同行し、人探しの道具を見つける
2:「八神はやて」の生死を確かめる。
3:信頼できる人間を探し、PKK(殺人者の討伐)を行う。
基本:よく知っている人間を探す。
   (最優先:八神はやて、次点:シグナム、他よりマシがなのはとフェイト)
[備考]
※太一達に放送の内容は話していません。また、はやての死を疑っています。

13 :一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE :2007/01/10(水) 23:27:20 ID:qEBFMAqv



峰不二子が住宅を出てから1時間ほど。
ほとぼりも醒めた頃だと判断し、再度駅周辺に戻ってきた彼女が見たのは、ビルから出てくる3人の少年少女の姿だった。
「あれは……」
名簿に載っている彼女の知り合いの中に今目に映るような小さい子供はいない。
だが、彼女はそんな3人組の中の一人に注目していた。
「あれは確か、あの時の……」
彼女が注目したのは、あの青い雪だるまのような狸のような生物。
それが最初にいた場所にてギガゾンビの名前を叫んでいたのを、職業柄記憶力を使う彼女はよく覚えていた。
あの時、青狸は確かにギガゾンビについてタイムパトロールやら時空やらの専門用語らしきものをつかって僅かながら会話していた。
つまり、主催者と何かしらの形で面識、そして因縁があるということだ。
このゲームから脱出することも考えている不二子にとって、主催者の情報を持つあの青狸は何かしらの形で役立つだろう。
できれば接触して、情報を収集はしてみたい。
……だが、ここで焦ってはいけない。
接触は慎重に慎重を期して、図るべきだ。
行動が予測不能な子供が同行しているならなおの事。
不二子はひとまず彼らを見失わないようにこっそりと尾行、彼らがビルの残骸であろう瓦礫の山の近くで止まると路地裏に隠れ、様子を伺うことにした。
「はぁ。せっかく久々に人に会えたっていうのに、何だか複雑ね……」
こんな状況だからこそ、誰かと出会うことに慎重にならなくてはならないのは分かっている。
だが、それでも、しばらく誰とも顔を合わせていなかった彼女の胸のどこかにはとある感情が生まれつつあった。

――孤独という感情が。

そして彼女は……



【F-1/駅周辺の路地/1日目・昼】

【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康、慎重
[装備]:コルトSAA(装弾数:6発・予備弾12発)
[道具]:デイバック/支給品一式(パン×1、水1/10消費)/ダイヤの指輪/銭形警部変装セット@ルパン三世
[思考]:
1:ドラえもん達に接触するか、それとも……
2:ルパンのことが少し心配。
3:頼りになりそうな人を探す。
4:ゲームから脱出

14 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:11:36 ID:0OY9ukRN
前スレ>>261>>268の部分を破棄し、以下に差し替えます。



「セラス・ヴィクトリア、復活ッ」


 ――キャスカの眼前には、腕組みした状態で堂々君臨する、『健在』のセラス・ヴィクトリアがいた。
 驚いたのはキャスカだけではない。数分前にセラスがバッサリ斬られる様を目撃したゲインもまた、彼女の生還に仰天していた。

(みくるちゃん…………)

 確かに死んだ――確かに殺したはず――まさか、ゾッドのような不死の存在であるとでも言うのか。
 未だ混乱の中にいたキャスカは、ズカズカと接近してくるセラスを前にしても、剣を構えることが出来なかった。
 恐ろしかったのだ。斬った相手がものの数分で傷を癒し、また向かってくるその現実が。
 受け入れたくはない。そういう存在がいるということも知っている。だが、自分がその存在と今、対峙しているというのであれば。

(――退けない。私は、グリフィスの剣だから。グリフィスのために……ッ!)

(みくるちゃんの血は、私と共にある………………うしっ! 覚悟終了!!)

 キャスカが剣を振ると同時に、セラスが拳を突き出し走り出した。

「征きます!」

 黄金一閃――神速の太刀筋が、真っ直ぐな軌道でセラスを斬る。
 鉄拳制裁――セラスの右拳が、横合いから剣の腹をぶったたく。

 吹き飛んだのは、キャスカの方だった。

「――――ぐがぁぁぁッ!?」

 それを巻き起こしたのは、力。
 暴力とは呼ぶには穏やかで、怪力と呼ぶには意味合いが弱く。
 称すなら、馬鹿力。
 人間を超越した吸血鬼の身体能力をフルに活用した、強引に捻じ伏せる戦法――単純すぎるが故に小細工では防ぐことのできない、絶対的な力の表れだった。

 床を横転し、キャスカは体勢を整える。
 とんでもない豪力で剣が払われたということは理解できた。が、どうしても受け入れがたい。
 高速で打ち出した剣の中腹部を的確に捉え、尚且つ持ち手ごと吹き飛ばすなど、ガッツとて無理な芸当だ。
 それを、あんなおとぼけオーラを蔓延させる女性が――

(……違う!)

 距離ができたことで改めてセラスを凝視したキャスカは、自分がとんでもない思い違いをしていたことに気づく。
 金髪の髪に、軍隊を思わせるような婦警服とミニスカート。大まかな容姿は、ロビー襲撃時に見た姿と相違ない。しかし。


15 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:13:15 ID:0OY9ukRN
 あの剥き出しになった牙はなんだ――あんなものはなかった。
 あの射殺されるようなギラついた目はなんだ――あんなものはなかった。
 あの膨大に増徴したドス黒く禍々しい波動はなんだ――あれでは、まるで。

 キャスカは素直に認めた。セラス・ヴィクトリアだと思い込んでいた者の、その姿に恐怖している現実を。
 己の右手を見る――剣はまだ握られ、ジーンとした感触は残っているが握力は失っていない。
 エクスカリバーの刀身も、ヒビ一つ入っていない。武器も肉体も、まだ満足に戦える状態を維持している。
 唯一足りなかったものがあるとしたら――それは戦意。
 吸血鬼という、初めて相対するタイプの人外と対峙して、キャスカは『勝てる気』がしなくなったのだ。

(……クッッ!)

 歯がゆい。ここまできて、負けを認めるのが。
 退きたくはない。傭兵としても、騎士としても、敵前逃亡は恥ずべき行為だ。
 それでも、キャスカは死ぬわけにはいかない。ここでキャスカが倒れれば、グリフィスの生還が、鷹の団の再興が、遥か彼方へ遠のく。

「……お前、名前は?」
「セラス・ヴィクトリア」

 名を尋ねたのは、精一杯の負け惜しみのつもりだった。
 勝てないと悟って退却するわけではない。勝負は一時預け、次の機会に必ず決着を着ける。
 言葉にしない真意はセラスに伝わったのかどうか謎だが、キャスカは次の瞬間、即座に戦闘放棄を表明した。
 窓をぶち破り、外へと落下する。セラスはその後姿を目で追うが、当人は既に着地を済ませ、ホテルから離れていった。
 深追いするつもりはない。セラスに与えられた任務は、あくまでもホテルの防衛にあるのだから。
 それに、背後で死に掛けている男と、それに縋り悲しむ少女を放っておくわけにもいかないだろう。
 セラスは振り返り、敵ではないと断定した二人組へと歩み寄る。
 

 ◇ ◇ ◇


 ホテルを出て、キャスカは周辺街の脇道で一息つく。
 本日の戦果――殺害一、重傷一、無傷一、何故か無傷一。
 四人相手にこの成績なら、十分褒められたものだった。
 しかし、キャスカは納得しない。
 チャンスは十二分にあった。もっとうまく立ち回れば、あの場にいた全員皆殺しにすることもできたはずだ。
 特に――セラス・ヴィクトリア。彼女の助けがなければ、あと二人確実に死んでいた。
 もし本当に彼女が不死者であるというのであれば……自分では勝てないかもしれない。
 もちろん、ガッツやグリフィスでも無理だ。ゾッドの時のような悲劇は、思い出したくない。

16 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:14:32 ID:0OY9ukRN
 (エクスカリバー……セラスの攻撃を受けても、この剣自体はビクともしなかった。落ち度があったのは、使い手の私の方だ)

 思う。自分はまだ、エクスカリバーを完璧に使いこなせていないのだろうか。
 そもそも、この剣の真の持ち主はいったい誰なのか。この剣の使い手は、どれほどの使い手だったのか。
 自分はまだ、この剣の新たな所有者となるだけの実力を持っていないのか。
 考える。ならばどうすればいい。どうすれば、この剣に認められる。
 簡単だ。もっと強くなればいい。良い剣は良い所有者の下へ行き着くのが自然の摂理。
 エクスカリバーがまだ手元にあるというならば――自分はまだ、この剣を振るう資格を持っているということだ。

「私は、強くなる」

 ゲイン・ビジョウの傷は致命傷だ。よほどのことがない限り、回復はありえない。
 赤い髪の少女――ヒカルと呼ばれていたか――は中々に見所がある。彼女との決着も、機会があれば望むところだ。
 そして何よりセラス・ヴィクトリア――彼女はいずれ、必ずグリフィスの障害となる。
 その前にキャスカはエクスカリバーを使いこなし、再戦し倒す。

「私は、もっと強くなる」

 晴天の覗く空を仰ぎ、黄金の剣が煌いた。
 キャスカの決意は、また一歩、目標を大きく近づける。


 ◇ ◇ ◇


 本日の被害報告――重傷一名。しかし。

「ゲイン! ゲイン!」
「……揺するなヒカル。傷が痛む」

 ――状況、かなり悪し。
 ホテル三階のスタンダードな一室に置かれた、二つのベッド。その片方に、満身創痍のゲイン・ビジョウは横たわっていた。
 みくるが所持していた医療キットで最低限の応急処置はしたものの、本来なら即死でもおかしくはない傷だ。
 それでも持ちこたえたのは、ひとえにゲインの生命力の賜物である。さすがは黒いサザンクロスといったところか。

「セラス、だったか? さっきはすまなかったな。俺のせいで、相当迷惑をかけちまったみたいだ。しかし君のその身体はいったい……」
「あ、いや、全ッ然、気にしてないんでどうかお気遣いなく。今は無理に喋らないで、私の素性云々に関しては後ほど説明しますから」
「…………フッ、それもそうだな。今は、ヒカルの膝の上でゆっくり休みたい気分だ……」
「バカ! そんなことしたって傷が良くなるわけないだろ!」

 やれやれ、口説き文句も分からないお子ちゃまめ……――口に出すこともかなわず、ゲインは静かに眠りに落ちた。
 散々張り続けていた気が、やっと途切れたのだろう。今は、じっくり安静にしておくのが一番だ。
 とはいえ、腹部の裂傷は無視できなる度合いではない。出血は一時的に止まったが、またいつ噴き出してもおかしくない。
 ゲインの生命力とて、夜まで持つかどうか……病院に連れていくという方法も考えたが、今無理に動かすことはあまりにも愚かだ。
 現状では成す術なし。そう結論付けてから、光はある手段を決行するために立ち上がった。

17 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:16:47 ID:0OY9ukRN
「セラス、ゲインをお願い」
「へ? そりゃいいけど……ヒカルちゃん、どっか行くの?」
「風ちゃんなら……風ちゃんと合流できれば、きっとゲインの傷も治る!」

 もう一人の魔法騎士、鳳凰寺風は癒しの魔法の使い手だ。
 彼女の力なら、きっとゲインの致命傷もどうにかできる。
 そう確信した光は、単身で風の捜索に躍り出ようとしたのだ。

「それと……もう一つお願い。そのエスクード、実は友達のなんだ。よかったら、私に譲ってくれないかな?」
「エスク……ああ、この篭手のことね。いいよ(変な悪夢の思い出もあるしねー)」

 セラスから風のエスクードを譲り受けた光は、改めて親友の捜索に向かう。
 やるといったら即座に決行。一瞬の迷いも見せず――もう二度と後悔しないために――外へ飛び出した。

「嵐のような女の子だったなー……」

 なかなかどうして、気持ちのいい少女だった。願わくば、何事もなく再会したいものだと思う。

「問題なのは……」

 セラスは思い出す。ゲインに負けず劣らずの重傷人が――あちらは何の心配もいらないだろうが――もう一人いることに。
 腹部を押さえながら、セラスは目的の場所へと向かう。
 あの時――みくるの血を吸ったことによる再生能力の向上が、セラスを死の際から生還させたのである。
 完全無欠純正交じりっ気なしの処女の血だ。本来ならば全快でもおかしくないほどの治癒が進行するはずだった。
 しかしどういうわけか、セラスの身にはまだ確かなダメージが残っている。
 傷は塞がれ出血は止まったが、腹部はまだズキズキと痛む。人間でいえば手術直後のような状態だろうか。
 この不完全な再生能力自体が、ギガゾンビの制限管理下に置かれていることを、セラスは知らない。

 階段を上り、再び八階の廊下へと戻る。
 戦場跡となったそこには、セラスやゲインがぶち撒けた血とそして――物言わなくなった朝比奈みくるの華奢な身体が置かれている。
 雪のように白かった肌はどことなく紫の気を帯び、病人のような血色を見せていた。
 こんな状態になって、血色が悪いも何もないか、とセラスは自嘲気味に笑う。
 彼女はよく戦った。数時間前に仲間が死んだという現実から逃げず、襲い来る恐怖に懸命に立ち向かった。
 実際、みくるがいなかったら今頃どうなっていたことか。
 おそらくホテルは死地と化し、生存者はあの女騎士しか残らなかっただろう。
 今、セラスが彼女に微笑みかけているのも、ゲインが死に掛けながらも生存しているのも、光が仲間捜しを再開できているのも、
 全ては、このドジなメイドもどきの功績なのである。
 不思議と、みくるが微笑み返してきたような気がしたが、たぶん気のせいだろう。
 ありがとうみくる。マスターに会ったら、『セラスは立派な人間に出会えました』って言っておきます。
 本当に、ありがとう。

18 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:17:53 ID:0OY9ukRN





 …………なーんて。

「本当に大変なのは、これからなんだよみくるちゃん……」

 みくるの表情は『もう思い残すことはありません。みなさんさようなら』と言わんばかりの充実した顔だったが、その表情も哀れに思えてしまう。
 セラスは分かっていた。そして、みくるは分かっていなかった。
 吸血鬼に血を吸われるということが、どういうことか。
 血とは魂の通貨。命の取引の媒介物に過ぎない。血を吸うということは、命の全存在を我が物にするということ。
 かつてアーカードが死の淵にあった婦警を生き永らえさせたように、朝比奈みくるもまた。

 セラス・ヴィクトリアに血を吸われたことにより、吸血鬼となったのだ。








 そう、思っていた。



「あれ?」

 セラスが異変に気づいたのは、すぐ。
 横たわるみくるの周囲にできた血溜まりは、キャスカに斬られた際彼女自身が体外へ放出したものだ。
 この出血が、致命傷となった。だからこそ、セラスは決心することができたのだ。今まで苦悩し続けてきた悩みを、一掃することができたのだ。

 ――人の血を吸いたくない。

19 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:19:53 ID:0OY9ukRN
 それは、吸血鬼として致命的ともいえる愚かな欠点だった。
 人間を止めドラキュリーナとなったセラスは、本来吸血鬼が取るべき当然の行為を頑なに拒否し、解消されない喉の飢えにもがき続けてきた。
 アーカードが彼女のことを婦警と呼称していたのも、全てはセラスが血の味を知らない不完全な吸血鬼だったからである。
 いつだったか、インテグラやウォルターがセラスに問うた。何故血を吸わないのかと。
 セラスは、その問いに答えることができなかった。答えとして成立するほどの明確な理由を持ち得ていなかったのだ。
 今一度考えてみよう――何故、セラス・ヴィクトリアは吸血を拒む。
 アーカードのような完璧な吸血鬼になりたくなかったから?
 血を吸うことで他の誰かを吸血鬼にさせたくなかったから?
 違う。どれもこれも違う。
 答えは、もっと簡単で単純だった。

 ――恐ろしかったのだ。

 吸血鬼になったという半信半疑な自覚の中で、セラスの本能は気づいていたのだ。
 血を吸えば、何かが変わってしまうことに。
 その何かの正体は分からない。分からないからこそ、恐ろしい。
 自分が自分でなくなる、セラスがセラスでなくなるような、そんな得体の知れぬ不安が葛藤を呼び、今の今までセラスは新米であり続けてきた。
 プライドじみた、ちっぽけな我侭だった。ちっぽけだったがために、殻を破ることも容易かったのかもしれない。
 セラスがみくるの血を吸ったのは、自分が助かるためでも、吸血鬼としての欲求に負けたからでもない。
 単純に、彼女を助けたかったのだ。
 今にも死に絶えようとしていた目の前の少女を、救う手があった。だからセラスは、それを行使した。
 それがたとえ、みくるの今後に取り返しのつかなくなるような影響を与えようとも。
 死ぬよりはマシだった――何よりも、今のセラスがそう思っていたから。
 だから、彼女の血を吸うことを受け入れたのに。

 なのに、彼女は吸血鬼にはならなかった。

「おかしいよ……こんなの……」

 セラスは、すっかり冷たくなったみくるの腹部に手を触れる。
 黄金の剣による爪痕は、まだ残っていた。パックリ割れた傷跡に手を差し込むと、中の肉が掴めそうなくらい大きく。
 血はすっかり外に出し切っていた。だからこんな血色の悪い肌をしているのか。
 元警察官の目から判別しても、これは誤魔化しようがない。
 朝比奈みくるは、確かに死亡していた。
 人間のままで。

「…………」

20 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:21:28 ID:0OY9ukRN
 愕然として、何も言えなくなる。
 みくるの負った傷は、吸血鬼であれば即座に再生できるレベルだった。
 首筋を見やる。そこには、セラスの歯型がくっきりと残っている。
 間違いなく、血を吸った。みくるも、間違いなく吸血鬼に血を吸われた。
 やはりおかしい。納得がいかない。何故、みくるの傷は塞がらなかった。何故、みくるは吸血鬼にならなかった。

『吸血鬼に血を吸われた人間は、それらが処女・童貞であれば「繁殖」し、それ以外は喰屍鬼(グール)になってしまう』

 インテグラ他数々の吸血鬼関係者の皆様から教わった知識だ。まさか嘘を教えられたとは思えない。
 何故――セラス自身がまだ半人前だったから?――そんな情報は教えられていない。
 理由なんて、考えたところで分からない。分かったとしても、たぶんセラスはそれを否定してしまうだろう。
 吸血鬼にならなかったから、みくるは死んだ。――この事実からは、逃れることができない。
 ならば、あの吸血はなんだったのだ。あれだけ拒み続けたのに、たった一人の少女が救えると思って、決心したのに。
 吸血を経験しても、セラスは依然、半人前な『婦警』のままだった。
 吸血など、アーカードが意味深に勧めるほどたいそうなものではなかった。
 変化など何もない。あるのはただ、後悔と悔しさのみだ。
 こんなことになるなら、血なんて吸うんじゃなかった。そんなことさえ思った。

 ――実際のところ、みくるが吸血鬼化しなかった理由はやはり単純。
 ――既に死んでいたのだ。セラスがその首に牙を突きつけた時には、もう。

 よくよく考えれば、みくるとの最後の会話さえ幻聴だったのではないかと思えてくる。
 自分に都合のいい幻聴を仕立て上げ、本当はただ吸血鬼の本能に従っていただけのではないかと。
 自分の身をこんなにも呪ったことはなかった。
 お日様の下を歩くなくなったことも、ベッドが棺桶になったことも、そんなに悪いことではなかった。
 でも、今回ばかりは。
 吸血鬼である自分に、嫌気が差す。
 いまさら、嘆いても仕方がないことなのに。

「あ……」

 項垂れて、セラスはそれに気づいた。
 正真正銘死亡してしまったみくるの指先に……血で書かれたメッセージが残されていたのである。

「……S…………O…………S…………ハハ……助け呼ぶのが遅いよ、みくるちゃん……」

 みくるが真に何を伝えたかったのか、セラスがそれを知る術はない。


 ◇ ◇ ◇



21 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:22:13 ID:0OY9ukRN

   〜ミ・ミ・ミラクル☆ ミクルンルン☆
   ミ・ミ・ミラクル☆ ミクルンルン☆〜
 
「な、なんですか……ここどこですか……? なんで映画作った時のテーマソングが流れてるんですか……?」
 目覚めると、私はどことも分からぬ異次元空間の狭間にいました。
 なんか……どこかで見たようなキャラクターが宙をうようよしているのは、気のせいなのかな……?

「落ち着きなさいミクル……落ち着いてワタシの話を聞くのです……」
 そこには、眼鏡をかけた天使……の格好のオジサン(小太り)が浮いていて、私に話しかけてきます。
 
   〜素直に「好き」と言えないキミも 勇気を出して(Hey Attack!)
    恋のまじないミクルビーム かけてあげるわ〜

「あの……あなたは誰デスカ? どうして私こんなところにいるんですか?」
「ワタシはあなたの持っている銃、カラシニコフの精。……ちなみにハルコンネンの精やウィンダムや平○耕太とは何の関係もないのであしからず」
「は、はぁ……」

   〜未来から やってきたおしゃまなキューピッド
    いつもみんなの 夢を運ぶの〜

「って、んなことよりミクルちゃん、あんたヤバイって。もう今回セラスなんて目じゃないくらいの巻き込まれ方しちゃったんだから」
「は、はいぃぃ? な、なんのことですかそれ……」
 小太りのオジサンはハァハァ言いながら私に言い寄り……ひぃ!
 何か、何か警告を発しようとしていることは分かるんですけど……ち、近い! 顔が近いですぅ〜!

   〜夜はひとり 星たちに願いをかける
    明日もあの人に 会えますように〜

「と、むさ苦しい演出はここまでにしてトウ! SOS団団長にバトンタッチ!」
「ふ、ふぇぇ!?」
 急遽キャスト変更が起こり、オジサンの姿が何故か涼宮さんに! も、もう何がなんだか分かりませぇーん!

   〜カモンレッツダンス♪ カモンレッツダンスベイビー
    涙を拭いて 走り出したら〜

「いつまで寝てるのよみくるちゃん! あなたは今後、魅惑の吸血鬼メイドとして活躍するという崇高な使命があるのよ!」
「わ、わたし吸血鬼なんてできないですぅ〜」

   〜カモンレッツダンス♪ カモンレッツダンスベイビー
    宙の彼方へぇ〜 スペシャルジぇネレぃーショ〜ン〜

「つべこべ言うな! もう撮影スケジュールは組み立てちゃったんだから、ビシバシいくわよ!」
「は、はいぃ〜!?」

   〜(セリフ)いつになったら、大人になれるのかなぁ?〜


 ◇ ◇ ◇



22 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:23:14 ID:0OY9ukRN
 こうして、朝比奈みくるは永遠に覚めることのない夢の中で吸血鬼デビューを果たした。
 その変貌っぷりに団長様はいたくご満悦なようで、ただそれだけが喜ばしい。


 ――バトーさんへ。やっぱり私、銃はうまく扱えませんでした。

 ――セラスさんへ。叶うなら、あなたと一緒にお茶を飲みたかったです。

 ――鶴屋さんへ。ごめんなさい、大事なお友達を変なことに巻き込んじゃって。

 ――古泉くんへ。これからは、お茶は自分で淹れてくださいね。

 ――長門さんへ。お菓子の本、貸してくれてありがとうございました。あれ、とっても参考になったんですよ?

 ――キョンくんへ。涼宮さんのこと、よろしくお願いします。ここだけのお話、時間平面状ではお二人は……あ、これは禁則事項です。

 ――涼宮さんへ。とっても……とってもとってもとってもとってもとぉ〜っても楽しかったです! 本当に、本当に楽しかったです!


 去り際に伝えたかったメッセージは、彼女らしいどこか的外れで平和ボケしたものばかりだった。
 それでも、最後にこれだけの機会を与えられたことが素直に嬉しい。

 ――SOS団のみんなや、鶴屋さんや、バトーさんやセラスさんと一緒にいられて。

 ――朝比奈みくるは、最後の最後までしあわせでした。





【D-5/ホテル周辺/1日目/昼】

【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:中度の疲労
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night
[道具]:支給品一式(一食分消費)、カルラの剣@うたわれるもの(持ち運べないので鞄に収納)
[思考・状況]
1:エクスカリバーを一刻も早く使いこなす。
2:飛び道具を手に入れる。それまではリスクの高い攻撃行動は控える。
3:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
4:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。

【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:全身打撲(歩くことは可能)中度の疲労 ※雨で濡れています
[装備]:龍咲海の剣@魔法騎士レイアース
[道具]:支給品一式×2、ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
   :デンコーセッカ@ドラえもん(残り1本)、エスクード(風)@魔法騎士レイアース、 鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース
[思考・状況]
第一行動方針:風と合流し、早急にゲインを治療。
第二行動方針:風と合流できなくても、何かしらの治療手段を手に入れる。
基本行動方針:ギガゾンビ打倒。

23 :恋のミクル伝説【修正版】 ◆LXe12sNRSs :2007/01/11(木) 00:24:14 ID:0OY9ukRN
【D-5/ホテル3階の一室/1日目/昼】

【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:腹部に重度の裂傷、左腕左脚に軽度の裂傷、瀕死の重体
[装備]:パチンコ(弾として小石を数個所持)、トンカチ
[道具]:支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど)
[思考・状況]
第一行動方針:絶対安静。
第二行動方針:市街地で信頼できる仲間を捜す。
第三行動方針:ゲイナーとの合流。
基本行動方針:ここからのエクソダス(脱出)



【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:中度の疲労、腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ残っています)、日中は不調、みくるの死にショック
[装備]:ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁(全て回収済み)
[道具]:支給品一式 (バヨネットを包むのにメモ半分消費)、バヨネット@ヘルシング
   :バトーのデイバッグ:支給品一式(一食分消費)、AK-47用マガジン(30発×3)、チョコビ13箱、煙草一箱(毒)、
   :爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類、オモチャのオペラグラス
   :茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている)(茶葉を一袋消費)、AK-47カラシニコフ(29/30) 、石ころ帽子@ドラえもん
   :ロベルタのデイバッグ:支給品一式(×7) マッチ一箱、ロウソク2本、糸無し糸電話1ペア@ドラえもん、テキオー灯@ドラえもん、
   :9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線 、医療キット(×1)、病院の食材
[思考・状況]
1:トグサが戻るまでホテルを死守。
2:キャスカ及び、新たな襲撃者が来ればそれらを排除。
3:光が戻るまでゲインの看護。
4:電話番。
5:アーカード(及び生きていたらウォルター)と合流。
6:ドラえもんと接触し、ギガゾンビの情報を得る。
7:もう二度と血なんて吸うもんか。
[備考]:※ドラえもんを『青いジャック・オー・フロスト』と認識しています。
    ※セラスの吸血について。
     大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。
     原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。


【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱 死亡】
[残り55人]


※ホテル脇の駐車場に、ロベルタとバトーの死体、空気砲(×2)@ドラえもん/グロック26(4/10)(共に使用不可能)が放置されています。
※ホテルロビーにあった電話を、三階のセラスたちがいる部屋に移しました。

24 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 22:57:06 ID:4Tgev+1v
本当に気楽でいいな、圭一君は……
私はあの2人(?)が怪しげな事をしていないかどうか警戒しているのに、圭一君はお構いなしにどんどん歩いて行く。
今までこういったことをしなかった分、余計に疲れを感じた。
しかし、ここでめげるわけにはいかない。圭一君の命もかかっている。

レナはすっと心臓に左手をあてる。
大丈夫、落ち着いてる。呼吸も正常、精神も安定してる。
クールに、クールになれレナ。彼らは一体何者なんだ……?
彼らが人間じゃないってのは確かであった(故に必要以上に警戒しているのだが)
確かに私は茨城県と雛見沢にしか住んでいないから、世界は広いという一言で済まされるのかもしれない。
だけど、本当にそうなのか? 私の知らないところでこんな漫画じみた事が起こりうるのか?
答えはノー、いくらなんでもそれは出来ている。そう、出来すぎた話。
つまり彼らは少なくとも私達の世界には存在していない、という事になる。
と、私の頭の中にある単語が浮かび上がってきた。

―宇宙人―

確かに……それが事実だったらおおよそ理解できる上、まだ納得できる話であった。
あのギガゾンビというのも、ここにいる2人も、宇宙人であってもなんら不思議ではない。
むしろそれが正しいと思える。
私はチラッ、と次元さんの方を見る。次元さんも同じことを考えているのではないか?
次元さんは私たちの世界の住人、だからといって完全には信頼していない。
むしろ圭一君は何で初対面の人を完全に信頼できるのだろう?
私がいなかったらきっと騙されて*んでたに違いない。
だからしっかりしろ竜宮レナ、私だけが頼りなんだ。考えろ、宇宙人がこんなことをする理由……
そんなの決まってるじゃないか、地球侵略以外に何があるんだ。


25 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 22:57:56 ID:4Tgev+1v
つまり……
地球侵略に先立てて、他に地球を狙ってる宇宙人+邪魔な地球人を殺そう、という思惑なのだ。
それなら納得できる。最後の1人が生き残るのも全て向こうの思惑、きっと仲間に引き込もうという話だ。
となると、彼らも地球を狙っているんだ。そして私達にしてもおかしくない事、むしろするべき事……
と、ソロモンが前を歩く圭一と隣り合わせになった。
話したいことがあるのだろう、口が動いていた。
読唇術を会得していない私にとっては、その内容がひどく気になった。
表情を読み取ろうにも、特に変化はなかった。
ゆえに私はさらに警戒を強くした。
そして見てしまう。私が先ほど浮かんでた『するべき事』を……

―私達を洗脳すること―

普通に後ろを歩いてただけだったら見えなかった。
細心の注意をはらっての行動だからこそ見えた。
ソロモンの足元にいる蒼星石が……注射みたいなのを取り出したのを……
なぜここで注射を出す? 決まっているじゃないか、圭一君を洗脳する気なんだ!

「圭一君!!!」

私は叫びながら、鉈を素早く構え、ソロモンの方へと突っ込んだ。
叫ぶ事で気付かれる。それでも圭一君への脅威が取り払われば、それに越した事はない。
2人は振り向き、圭一君は目を大きく見開いて驚き、ソロモンは眉が少しだけ動いただけ、動揺してる様子がない。
この様子がさらに私の考えを決定的にさせる。私に攻撃されるのは想定の範囲内って事に違いない。
私は圭一君に当たらないように上からの振り下ろし攻撃を選択する。
もちろんこの攻撃が当たるとは思わない。とにかく……圭一君から離れろ!!
鉈は重力に引きつかれるかのように加速しながら、ソロモンの頭目掛けて振り下ろされる。
しかし、場の重たい空気を切り裂く音だけがして、ソロモンは蒼星石を抱えて圭一とは逆の方に飛んだ。
レナはその隙を逃さず、圭一とソロモンの間に入りこみ対峙する。
一方のソロモンを焦らずにレイピアを構える。蒼星石と次元と圭一はただ呆然と見てる事しか出来なかった。
そして、一番最初に声を出したの圭一だった。

「レナ……? 一体どうしたんだ?」


26 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:01:42 ID:4Tgev+1v
当然の質問を出す。別に狂っているわけではない(ソロモンと対峙しているから)
では、なぜいきなり襲う必要があるのか?
その問いに答えるかのように、レナはソロモン――いや隣にいる蒼星石の方を睨んだ。

「この子がね、圭一君に何かの注射を刺そうとしたんだよ!!」

語尾が強調され、鉈を持ってる逆の手で蒼星石の方を指した。
他の4人も一斉に視線をそちらに向ける。

「僕……? 待って待って、もしかしてこれの事?」

蒼星石は慌てて誤解を解くように手を振り、何かを取り出す。
それは――何の変哲もないただの双眼鏡だった。
蒼星石の体にとってはちょっと大きめのサイズであったが、そんなことはどうでもよかった。
一同はただただ沈黙……しかし、レナだけは違う。
まるで証拠品を手に入れた刑事のように、

「それよ! 否定しながら出すのも凄いけど、これで確定ね!!」

笑顔がこもっていた。しかし、他の人達は笑えなかった。
誰1人レナの言っている意味がわからなかった。
双眼鏡を注射に見間違える……しかも本気でそう思っている。普通に考えてそれはありえない事であった。
しかし、圭一の脳裏にはとある光景が蘇った。

おはぎの中に入っていた針
注射だと思っていたソレは単なるマジックペン
そして目の前に死んでいる2人――レナと魅音、そして手には血まみれの金属バット

これらの光景は今までの圭一が体験した内容ではない。
しかし、これ程明確、さらにはっきしと覚えている光景が幻想なわけがない。
圭一は感じた。これは自分がやった事であると……
さらに光景が浮かび上がって来る。

隠し事をしてただけで仲間じゃないと思って魅音に怒鳴りつけた
『仲間じゃない』と全否定してしまった事
あの時俺は疑心暗鬼だった。誰かを信じたくても信じられない状況……
しかし、仲間は一生懸命励まそうとした。
俺の事を案じて、見舞いに来たり、おはぎを作ってくれり、監督を呼んでくれたり、色々してくれた!!
だけど俺は怖くて極度の幻聴幻覚に襲われて……仲間を殺した。
そんな俺が――存在した。ここではない『どこか』で……

圭一の目から何かが頬を伝って、そのまま滴となり、地面に落ちた。
一粒では終わらない、何粒も流れていった。
俺は……なんてことをしてしまったんだ……
ここに来る前から俺は人を殺してたんだ! しかも大事な大事な仲間を……


27 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:02:32 ID:4Tgev+1v
「け、圭一君……? 大丈夫かな、かな?」

レナが心配して顔を覗いてくる。ソロモン達も圭一のいきなりの涙に戸惑いを感じる。
何の前触れもなく涙を流すなどそうそうない。
傍に行きたいが、レナが彼らを寄せ付けようとはしなかった。
その目はまるで狂気そのものと思われた。

同じじゃないのか前原圭一!?
レナも知らない人達を疑いすぎて疑心暗鬼なったんじゃないのか!?
そして俺と同じようになったんじゃないのか!?
だから双眼鏡と注射を見間違えるんじゃないのか!?
じゃあなんで俺の事を心配してるんだよ!
馬鹿野郎! 決まってるんじゃないか!!
レナはまだ俺の事を信じてるんだ。ただ助けようとしてるんじゃないのか!!
命をかけて助けたように今回も!!
俺を心配してくれた結果これだろ!? じゃあ俺のせいじゃねえかよおおおおお!!

「言いましたよね? 圭一君に手を出したら承知しないと」

レナの口調が重くなる。いつソロモンと蒼星石を襲ってもおかしくない状態
次元も腰に手を当て、蒼星石もナイフを構える。

何泣いてんだよ前原圭一! お前はこのままでいいのかよ!!
このままレナ達が戦うのを黙って見てるのか?
今気付いた罪にずっと許しを請うのか!?
違うだろ!!
ここはそんな余裕なんてねえだろ!!
俺にしか出来ない、俺のすべき事があるだろうがあああああ!!
圭一は流れる涙をシャツで拭き取り、何かを決心したかのような目付きでゆっくりとレナ
を通り過ぎて……


28 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:03:24 ID:4Tgev+1v
―俺のすべき事―

ソロモンと蒼星石の手前で止まり、

―決まってるだろ?―

レナの方へと向く

―命をかけて救い出す!!―

「ソロモンさん、次元さん、蒼星石さん……ここは俺に任せて下さい」

誰もが耳を疑った。
既にレナの精神がおかしいのは見ての通り、脱出派としてはここで被害を最小限に抑えるのが最善策
それなのに1人に任せるなど言語道断、蒼星石はそれを口に出す。

「圭一さんだけに任せるわけにはいきません。ここで止めるのが道――」
「じゃあ聞くが蒼星石さんの友達が狂ってたとしてもだ。目の前で殺されるのは許される事なんですか?」

蒼星石は圭一の反論に対抗できず、黙った。
確かに自分の姉、翠星石が仮にこのゲームに乗ってたとしても目の前で殺されるのは見てられない。
それは他の2人にいえた事でもあった。

「それに……」

圭一が続ける。

「レナを救いますから、そんで、それは俺にしか出来ない事です……その間にレナも信頼してくれる仲間、見つけて下さい」

笑っていた。こんな状況下で、仲間の1人がおかしくなったのに……
もちろん圭一は信じている、レナが元に戻ってくれるのを、だから笑える。
信じる事が奇跡の始まりなのだから
いつの間にか次元もソロモン達の所に行き着いていた。
ソロモンは圭一を見る、圭一もまたソロモンを見る。
言葉は発せられない、目で訴えているからであった。

「わかりました。ここは任せましたよ圭一君」

ソロモンは圭一の決意の強さに折れたのか、クルッと回転してやや小走りでこの場を去っていった。
蒼星石も反論せず黙ってソロモンに従った。
次元は考え事をしながらも圭一の事を時々見ながら、ソロモンの後についていった。

29 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:06:59 ID:4Tgev+1v
レナがこの間何のアクションも起こさなかったのには理由があった。
一番の理由は蒼星石の注射を見たのにも関わらず、誰も味方についてくれなかった事であった。
さらに言うならば一番信頼していた圭一君でさえもレナの前に立ち塞がった……
それらの行動がさらにレナを苛立たせ、窮地に追いやったのであった。
しかし、それでも冷静でいられたのはレナ本人の能力なのか、それとも雛見沢症候群による副作用であるのかは不明であるが……
そのおかげでレナはまだ生きている。
もし、このまま攻めていたら命尽きたとしてもせいぜい1人殺せるかどうか、下手したら犬死になる。
だから、圭一以外の人がこの場から去るのも止めようとはしなかった。

まさかもう次元さんも圭一君も洗脳されてたなんて……迂闊だったわ
でも圭一君だけが残ってくれた。これはなぜ?
私が洗脳出来ないと判断したから? 仲間は殺さないだろうって判断したから?
どのみち私はついている、宇宙人と戦って勝ち目なんてほとんどない。
彼らを殺すのは奇襲攻撃にかけよう――やめよう、今は圭一君だけに集中しよう。

「宇宙人に洗脳されたかわいそうな圭一君……せめて私の手で殺してあげる」
「宇宙人? 洗脳? そんなわけのわかんない話してるレナこそ洗脳されてんじゃねーのか?」

あざ笑う圭一君、私は純粋にむかついた。今まで圭一君を信じてきた分だけ、余計に感じた。
私は余裕ぶってる圭一君との間合いを詰めながら鉈を振り上げる。
頂点からの重力加速度を含めた振り下ろし、一撃死させようとしたが、ギリギリの所で躱された。

「うおっと」

空気を切り裂きながら、地面に突き刺さる。追撃を考えようと思ったがやめた。
クールになれレナ、こんな安い挑発にかかってはダメだ。自分を取り戻せ
…………自分…………?

「ちょい落ち着こうぜレナ、このまま俺の楽勝勝ちってのはやっぱりつまんないだろ?」


30 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:08:28 ID:4Tgev+1v
ギガゾンビ……てめーには悪いがこの前原圭一様を動かすには悪魔の脚本程度じゃ無理だって事だな!!
閻魔の大王様の脚本なら動くかもしれねえなぁ! もちろんこのイカれたゲームから脱出する役をなぁ!!
レナは俺とは違ってとても強い。その証拠に俺の事は信じてくれた。
きっと……今だって心のどこかで俺の事を信じてるに違いないと思った。
後で謝るからな……もちろん魅音にもな……
だから俺は死なねえ! レナも魅音も沙都子も梨花ちゃんも皆死なせねえ!!
俺は絶対に諦めねえ!! こんな迷路壁ごとぶっ壊してやるぜ!!

「宇宙人に洗脳された可哀相な圭一君……せめて私の手で殺してあげる」

確かにあの時俺は本当に宇宙人に洗脳されてたのかもな……と思うと出したくもない笑みが出てくる。
レナ……お前は悪い夢を見てるんだよ。目を醒ましてやるぜ!!
どうやれば醒めるかはわからない。だから俺は信じる。信じて信じて信じて!
いつも通りいってやろうじゃないか圭一!!
殺し合う運命なんてぶち壊してやる!!

「宇宙人? 洗脳? そんなわけのわかんない話してるレナこそ洗脳されてんじゃねーのか?」

あざ笑ってやった。そりゃあもう自分でもむかつくぐらいに、な
レナが腹立ていると目に見えてわかる……といきなり俺の方へと突っ込んできた。
いきなりの出来事に体が一瞬、硬直してしまった。
本来ここでの硬直は致命的な結果に結びつく事が多い。
しかし、レナとの間合いの長さのおかげで圭一は、鉈が振り下ろされる直前に後ろにギリギリ飛び跳ねた。

「うおっと」

胸が斬られたような感触を得た。俺は必然的にナイフを強く握り、レナの動向を伺った。
しかし、追撃はなかった。それはまだ話し合いが出来る合図、俺は話を続けた。

「ちょい落ち着こうぜレナ、このまま俺の楽勝勝ちってのはやっぱりつまんないだろ?」
「何を言っているのかわからないかな、かな。圭一君は私に勝てると思ってるの?」

あぁ、でもこのおかげで俺は大事な事を思い出したんだからな……それだけは感謝するぜ!!


31 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:11:17 ID:4Tgev+1v
「あぁ! 勝つ気満々負ける気無し、だな!! どうだ、ここはいっちょ部活らしくやっていこうじゃねえか!?」
「アハハハハハ、いいかな、かなぁ!!それって勝った方が」

言葉を止め、足に力をいれている――跳躍する気だな!?
俺の予想通り先ほどと同じ攻め方できた。今度は上からではなく左であったが……
しかし俺は逃げない。そっちの方がスリルがあるだろ!!

「正義って事だね!!」

甲高い金属音と共に発生した火花に俺は、少し興奮した。
ヘヘッ、やっぱりこうでなくちゃ面白くないねぇ!
レナの鉈と比べたらナイフはリーチもパワーも劣る……でもな! こっちがフルに力を出
し切ればそれなりのパワーが出るんだよ!!
俺は力任せにナイフを振りきりレナを後退さした。もちろんここから攻めに転じる。

「レナが勝ったら認めてやろうじゃねえか! レナの手となり足となり……なんだったら盾にでもなってやろうじゃねえか!!」
「へー、じゃあ今動かない盾になってくれるかな! かなぁ!?」

レナの鉈を動かすスピードが早くなった。俺はたまらず間合いを取り、サイドステップやら動きを取り入れた。
ナイフは小型武器であるがゆえに小回りが効く……あぁだから動かない盾なのね
しかし、そんな小細工などレナには通用しない。むしろ俺もそこまで望んでいない。
俺とレナは同時に踏み込み、打ち合い始めた。

「圭一君防戦一方だよ? もっと頑張って欲しいな!!」
「バーカ、ハンデを与えてるんだよ!
すぐ勝ってもつまらないじゃねえかよ!!
てか俺が勝った時の褒美を言い忘れてたなぁ……そうだな、俺の義理の妹になって毎日『お兄ちゃん』って愛情込めて言ってもらおうか!?
服は日替わり定食、制服、メイド、コスプレその他諸々ぉ! もちろんネコ耳、眼鏡などのトッピングもつけさしてもらうぜええええ!!」


32 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:12:03 ID:4Tgev+1v
「なぁ?」

次元はソロモンに問いかけて、立ち止まった。
ソロモンは次元の方を見ずに止まった。
蒼星石だけが間でソロモンの背中と次元を交互に見比べていた。

「なんですか?」
「……悪い、俺はあそこに戻らしてもらうわ」

蒼星石が「え?」と口からこぼれてしまった。それだけ驚きな事であった。
一方のソロモンは察していたのか、それといった動揺は見られなかった。
次元は帽子をさらに深く被り、もう一度「悪い」とだけ言った。

「あなたが行ってどうするのですか?」
「あいつらは……特に圭一はこんな所で死んではいけない奴だと思うんでな。なぁに危なくなったら助けてやる程度さ」

目はわからなかったが、口調は少し笑みを含んでいた。こんなことは日常茶飯事、みたいな感じで
ソロモンはわずかに顔を次元の方に向けた。
その目は決して笑っていなかった。しかし、怒ってはいない様子であった。

「次の放送までにC-5で会いましょう」

それが合図だった。次元はそれを聞くと「サンキュ」とだけ言い、さっき来た道を再び戻っていった。
取り残されるソロモンと蒼星石
ため息を吐く蒼星石をソロモンは肩に乗せて、再び歩き始めた。

33 :Birth&death ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/11(木) 23:13:01 ID:4Tgev+1v
【B-2B-3の境界線辺り・一日目 午前(昼寄り)】



【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:若干興奮
[装備]:コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:レナを救い出す。今はそれしか考えていない。



【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:祟りへの恐怖、雛見沢症候群発症、若干興奮
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:今は圭一との戦いにだけ集中している。



【次元大介@ルパン三世】
[状態]:健康、圭一達がいる場所に急行中
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@ヘルシング ズボンとシャツの間に挟んであります
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)
[思考・状況]
1:早く圭一達がいるところに辿り着く
2:圭一が殺されそうになったとき、助ける。
3:ルパンを探す
4:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す
5:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する
基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない。




【ソロモン・ゴールドスミス@BLOOD+】
[状態]:健康、少し心配
[装備]:レイピア
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、白衣、ハリセン、望遠鏡、ボロボロの拡声器(運用に問題なし)
[思考・状況]
1:音無小夜と合流し、護る
2:他4人の知り合いを探す
3:圭一とレナと次元が心配
基本:次の放送でC-5に行くようにする。



【蒼星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:健康、少し心配
[装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、リボン、ナイフを背負う紐、双眼鏡(蒼星石用)
[思考・状況]
1:翠星石と合流し、護る
2:他4人の知り合いを探す
3:圭一とレナと次元が心配
基本:次の放送でC-5に行くようにする。


34 :正義の味方U 1/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:21:11 ID:RrO1itvb
蹲る長門有希の目の前に突如として浮かび上がった四枚の花弁を持つ桃色の花。
それは吸血鬼の一撃を受け止めると、粒子となって舞い散り再び空気の中に姿を消した。
そして再び開けた彼女の眼前には、吸血鬼と対峙する真紅の外套を纏った男の姿があった。

彼女を襲った吸血鬼。そして今彼女の窮地を救った男。
どちらも彼女からすれば未知の存在だった。
単純な現象の結果として現れる生物ではなく、概念として現れる彼女達とはまた別種の存在。

長門有希は事の推移を自身の回復を進めながら見守った。

35 :正義の味方U 2/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:22:02 ID:RrO1itvb
以外な再開に吸血鬼は驚いた。一度は逃した男。何故再び現れたのか?

「……また会ったな掃除屋」

皮肉めいた笑みを顔に浮かべる。以前と変わらないのなら、少女諸共この場で殺してしまうつもりだ。
相対する男――アーチャーが吸血鬼の台詞を訂正する。

「今はただの弓兵――アーチャーだ」

ほう?と、吸血鬼が目を細める。実に楽しそうに。新たな玩具を手に入れた子供のように。

「どうやら走狗(いぬ)から人間に戻ったらしい。
 いいだろう――ならば弓兵。私の名はアーカード。貴様の弓でこの私の心の臓腑を
 撃ち貫いてみせろ。この化物を見事狩りとってみせろ」

対峙する弓兵は己が獲物の正体に戦慄した。
――アーカード。どの世界どの時代に措いてもその名が持つ意味は一つ――『真祖の吸血鬼』
成る程、只の吸血鬼ではないのだと弓兵は納得する。
陽光の下に立っていることから格の高さは窺えたが、遥かに予想を上回る存在。
少なく見ても三倍……それ以上だと彼我の戦力差を見積もる。

「どうした?かかって来ないのか?お前の獲物は此処にいるぞ?」

ぞわりぞわりと吸血鬼の身体がざわめき、長門有希から受けた傷が元の状態へと還っていく。
弓兵はその様子をじっくりと解析する。
身に着けていた着衣まで元に還す能力。それは再生や回復といった生易しいものではない。
どれだけの傷を負おうと易々と死ぬことを許されない彼らに課せられた呪詛の力。
真核から溢れる魔力による破損した部分を過去へと還す能力――復元能力。
彼らは人の形(かたち)をしてはいるがそうではなく、人の容(かたち)をした化物なのだ。
いくら刃を、矢を、銃弾を、魔法を叩き込もうともそれは水面に石を放り込む行為に等しい。
波紋起こし形を変えることはできても、それだけでは彼らの命には届かない。

「ここだ。此処を狙え。私を討ち滅ぼすにはここを――心の臓腑を抉るしかない」

吸血鬼が心臓の上をトンと指で突く。
そう。吸血鬼の根本的な弱点は過去現在未来一切変わらない。
呪詛と命の媒介――血液。それらを汲み出し送り出す心臓。そこを破壊すること。
あくまでそこが真の吸血鬼の本体なのだ。目に見える人の形はそれの映し出す影にすぎない。
ならばこの生存競争の参加の証明であり枷でもある首輪が頭と身体の間にないのも当然だ。

36 :正義の味方 3/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:22:53 ID:RrO1itvb
弓兵は夢想する。この吸血鬼を倒し得る剣を。
自身の中にある無限の剣の中から目の前の吸血鬼を討ち取る剣を探す。
重要なのは強さではなく属性。神格の高い英雄同士の戦いが常にそうであるように。
そして一本の剣を選び出す。
心の内に広がる風景の中からその一本を抜き出すと現実の手の中に投影を開始した。

その様を吸血鬼は興味深げに見守る。それが自身の願望を満たしてくれると切望して。

「……それが貴様の切り札か。成る程、らしい武器だ」

――赤原猟犬(フルンディング)。
漆黒の螺旋剣。それと同じ闇色の弓が弓兵の手の中にあった。
弓兵は無言でその剣を弓へと番い、魔力を込めて弦を引く。
魂を命の糧とする怪異――魔の属性を持つ者との間では言葉を交わすことさえも消耗となる。

「さぁッ!! その刃を見事私の心臓に突き立ててみせろッ!! 人間……ッ!!」

瞬間。赤い閃光が二人を繋ぐ。

――ギイィィィ……ンッ!!
鈍い金属音を立てて赤い閃光――赤原猟犬(フルンディング)があらぬ方向へと反れる。
吸血鬼の前には煙を吐く対化物戦闘用13mm.拳銃ジャッカル。

これでこの勝負は決着したのだろうか?――いやそうではない。
弾かれた矢が空に真紅の軌跡を残し弧を描いて舞い戻り再び吸血鬼を襲う。
これが、赤原猟犬(フルンディング)――必中の矢。
射手が立っている限りその矢は決して地に落ちない。

――ギイィィィ……ンッ!!
再び金属音……、再び……、再び……、再び…………
必中の矢は繰り返し吸血鬼を――その心臓に突き立たらんと赤い軌跡を描く。

弓兵はその全身全霊を矢へと送り込む。
あの剣こそが吸血鬼狩りに彼が出した回答。選択。二の矢は無い。
この特殊な空間内において魔力の集中は激しい消耗を伴う。
残された時間は多くは無い。後何度、あの剣に吸血鬼を襲わせることができるのか。

37 :正義の味方 4/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:23:43 ID:RrO1itvb
矢を弾く金属音が鳴り止み、その音が肉を抉り、骨を砕き、血を吐く音へと変わる。
吸血鬼がその銃の中の弾丸を使い果たしたからだ。

――倒れろっ!! 吸血鬼(アーカード)!!
弓兵は自身の中の魔力が稀薄になっていくのを感じる。
最早猶予は少ない。だがしかし、魔剣が吸血鬼の心臓を捕らえるのもまた時間の問題。


――吸血鬼の手首が飛びその巨大な拳銃が地面に落ちる。

――腹を貫かれた吸血鬼が身体を折る。

――吸血鬼の撃ち抜かれた肩から鮮血が迸る。

――下肢を失った吸血鬼が膝を地に付く。

――吸血鬼の頭蓋が吹っ飛び下顎が顕になる。

――破けた吸血鬼の腹から内臓が零れでる。

――吸血鬼の肺が破れ顕になった喉穴から血の泡が吹き出る。

――腋下を撃たれた吸血鬼が独楽のように廻る。


血を、肉片を、骨の欠片を、脳漿を撒き散らし吸血鬼が踊る――踊る――踊る。
己が血で引いたラインの上で身の毛もよだつ死者のタップを踏む。
血を吹雪かせ赤い閃光と共に真紅の舞台を演出する。

そして、それは不意にピタリと止んだ。

弓兵の放った矢は吸血鬼の心臓の上でただ一つ残った腕に捕らえられていた。

38 :正義の味方 5/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:24:31 ID:RrO1itvb
「”捕まえた”」

頭の無い吸血鬼が喋る。
弓兵の放った乾坤一擲の一撃はあと僅かの所で絶命に届かなかった。
投影された剣は吸血鬼の手の中で存在を失い空気に還る。
再びぞわりぞわりと吸血鬼が姿形を取り戻す。対する弓兵は疲労困憊。絶望的な状態である。
が――、

「いいぞ。人間。その目だ。その目だけがこの化物を追い詰める。
 ――狂信か?猛進か?勇気か?蛮勇か?なんでもいい。一欠けらでも力が残っているのなら、
 諦めていないのなら、私の前に来い」

弓兵は諦めない。いや、諦められない。
伝説の吸血鬼。それを倒すのはいつも力弱き人間だ。何故か?
吸血鬼。それを討ち倒すのに必要なのは力でなく物語。人が物語を起こし、物語が奇跡を起こす。
諦めが人を殺す。ならば引くことはできない。例え勝利の可能性が無に等しくても。

最後を目の前に弓兵は自分に課した役割を果たすべく背後の少女に話しかける。

「もう動けるようになっただろう?今のうちに君は逃げるんだ。今、君に機は無い」

返事はなかった。だが少しの逡巡の後、彼女が場を去るのが気配で解った。
後は目の前の怪物に討ちかかることだけ。
デイバッグより”最後の剣”を取り出す。何時かの自分が作った無銘の剣。

――なんの因果か。弓兵は想う。
全ての場所。全ての時代。一瞬でありまた無限でもある守護者としての戦い。
その那由多の果ての今この瞬間、自分は守護者でなく、自分でありながら此処に在る。
化物を、吸血鬼を、脅威を、危機を前に、逃げる少女を、迷う少年を、幾多の弱者を背に……
そして手には”俺の剣”。あの時の剣が今この手の中にある。
あの時の俺が切望して止まなかったモノ。そしてあの時より絶望して已(や)まなかったモノ。

――正義の味方。

時を越え、運命を越え、物語を越えて今此処に在る。

39 :正義の味方 6/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:25:22 ID:RrO1itvb
弓兵は無銘の剣を片手に吸血鬼に討ちかかる。
吸血鬼相手の近接戦闘。それはもう無謀とすら呼べる代物ではない。
剣戟を二度合わせた所で左腕が落とされた。数えて二度目になる。
だが諦めない。何よりも自身が望んだ奇跡が此処にあるのだ。
果てればまた苦い記憶として残るだけ、またはただ朽ちるだけかもしれない。
だからせめてこの刹那を魂に刻み込まんと剣を振るう。

――素晴らしい。相対する吸血鬼は想う。
これが、これが人間の持つ可能性だと。それこそが化物を倒し得る唯一無二の白木の杭だと。
素敵だ。人間は本当に素晴らしい。


――そして決着はついた。


吸血鬼は命の抜け殻を抱え想う。
彼もまた無限の地獄を生きる化物であった。
だが、最後の瞬間まで人間を諦めてはいなかった。
その彼が振るう刃は吸血鬼を討ち取る寸前の域にまで達していた。

ならば何故自分が――化物がまだ立っているのか。

それは彼がその自らの望む者であることに拘泥したためだ。
そのため彼の物語は悲劇に終わった。
化物の悲願は果たされなかった。

化物に物語りは無い。
できるのは化物を破滅させる物語を紡ぐ者を待つことだけ。

また永い時を闇の中で待つか?――いや、「お楽しみはこれからだ」

此処にはまだまだ化物を倒す物語を紡ぎえる存在が幾人も存在するはず。
例えば、夕闇の中で不義を見守るもの。
例えば、不完全を克服せんと抗う人形の少女。
例えば、己を知らぬ観測者。
時を措かずしてそれらと、または未知の何者かとあいまみえることだろう。

吸血鬼は哄笑する。
破滅の予感に。自らを打ち倒さんとする者の足音に。

「クハハハハハハハハハハハハハハ…… 来いッ!! 人間どもよッ!! 私は此処にいるぞ!!」

吸血鬼は一頻り笑うと。
次の物語を待つために一度舞台袖へと姿を消した。

40 :正義の味方 7/7  ◆S8pgx99zVs :2007/01/12(金) 17:26:12 ID:RrO1itvb
 【E-3 市街地/1日目/昼】


 【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
 [状態]:疲労/微熱/左腕骨折/背中に軽い打撲/思考にノイズ/SOS団正規団員
 [装備]:S&W M19(残弾2/6)
 [道具]:デイバッグ/支給品一式/タヌ機
 [思考]:
  1.ハルヒ達の元へと戻る。
  2.怪我人達を治療するために病院へと向かう。
  3.残りのSOS団メンバー及び仲間の知人を探し合流する。
  ※アーカードを危険な存在と認定。いつか排除する。



 【アーカード@HELLSING】
 [状態]:九割程『力』を消耗
 [装備]:なし
 [道具]:対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾無し)
 [思考]:
  1.12時の放送を待つ。
  2.陽の当たらない寝床を探して、日が暮れるまで眠る。
  3.日が落ちれば活動開始。
  4.自分を倒せるもの絶賛募集中!!

 [アーカードに掛かる制限]
  1.攻撃によるダメージは衣服も含めて完全に復元できるが、相応の『力』を消費する。
  2.『力』を消費するとその分、能力も落ちる。
  3.『力』は陽の光の下では回復しない。ただ消耗するのみ。
  4.日中は『力』の消耗が激しく、日陰に居たとしても『力』の回復が少ない。
  5.他の部分に弱点はないが、心臓を貫かれると即死。



 【アーチャー@Fate/stay night  死亡】

 [E-3 市街地にアーチャーの遺留品が落ちています]
 [道具]:デイバッグ(×2)/支給品一式(×2)/チャンバラ刀専用のり

41 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:03:53 ID:2zHoJJSt
考えてみれば遊園地から出たのは初めてだ。
見飽きた遊具や鬱陶しい音楽などからようやく解放されて、劉鳳は少しだけ心中で喝采をあげた。
ギガゾンビや殺し合いにのった人間、またこの状況それ自体といった
自分の苛立ちを募らせる要因は未だあるものの、少なくともこれでその内の一因が消えたことは喜ばしい。
西門ゲートの先には、舗装された道路が北と東に伸びていた。
どっちに進むべきか迷ったが、最初にあの真紅と名乗る、その名の通り真っ赤な服を着た動く人形に
初めて出会った場所から考えると彼女は東側の市街地に逃げた可能性が高い。
なので劉鳳もまた、東の道路を進行方向に選んだ。足を一歩、そちら側に向かって踏みしめる。
「頼む……無事でいろ」
そう呟く。
自分の過ちのせいで……いやそうでなくても、ただの民間人が殺されることだけは何としてでも避けたかった。
悪は断罪し弱き者を助けるという一貫した目的……というより信念がある割りには、
どうも自分はここに来てからというものあまりそれが果たせていないような気がする。
残念なことではあるが劉鳳はそう思わざるを得なかった。
悪の戯言に耳を貸す必要はない。
だが守るべき人から警戒されてしまったという現実が彼の胸に重くのしかかってくる。
やはりあの観覧車とメリーゴーランド破壊がまずかった。
あの時の過ちに対する反省ならもう何度したかもわからないが、
とにかくあれのせいで真紅に不信感を抱かせてしまった。
悪を断罪することはともかくとして、
弱き者を助けるためにはまず信頼関係を築くことが先決であるということはこの身に染みてよくわかった。
彼女とは、それが築けなかった。
放送を聞く限りまだ今のところ無事なようだが、一刻も早く見つけて誤解を解き、そして保護しなければ
あの非力そうな小さな人形のことだ。誰かしらの愚か者によって手遅れとされる可能性が高い。
「……嘘も方便と言うが、まさにその通りといったところだな」
真紅のことは別にしても、とにかくこれから出会うであろう保護対象者には
あの自戒すべき短絡的破壊行動のことを伏せておくべきだと劉鳳は決意した。
同じ過ちはもう二度と繰り返せない。

42 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:04:52 ID:2zHoJJSt
「む?」
ふと人の気配がしたので後ろを振り向くと、
二百メートルほど向こうから少年が一人、こちらに向かって歩いてきているのがわかった。
どうも向こうは自分の存在に気づいていない様子で、下を向きながらトボトボと足を進めている。
遠くからではよくわからないが、見たところだいぶ疲弊しているようだ。
一見してすぐに彼は保護すべき人物であると思ったが、長門有希の例もある。
慎重を期してまず間違いはないだろう。
「絶影」
呟くように声に出すと、周りの木やアスファルトなどが一瞬で霧散し、
それと入れ替わるように相棒がこの世に現出する。
相手が何か妙な真似をすればこの絶影が容赦しない。
とはいえもしも本当に保護対象者ならば絶影のその姿を相手に見せるのは警戒心を呼ぶだろうと
劉鳳は判断し、近くの木の上に待機させることにした。
瞬足の絶影においてこの程度の距離はさしたる障害には成りえないのだから。
相棒は一瞬で空高く舞い上がると、地上からは注意して見ないとわからないくらいの位置に姿を隠す。
これでいい。これで準備は整った。
「少年」
ロストグラウンドのHOLY本部でよく使っていたような、役所言葉の口調でそう話しかける。
こちらの方がいらぬ感情を表に出さずにすむ。
彼はようやくこちらに気づいたようでびくっと体を震わせ、身構えたりはしたものの
特には何も攻撃らしき行動も、逃げようとする素振りも見せなかった。
ゲームに乗った愚か者ではなさそうだ、と劉鳳は思う。
多少精神的にナーバスになってはいるようだが、それはこの異常な空間に放り込まれた以上ある程度は仕方ない。
「私は対アルター特殊部隊HOLY所属、劉鳳といいます。
最初に断っておきますが、決してこの殺し合いにはのっていません。
ですから落ち着いて、私の話を聞いてください」
口ではそう言いつつ、木の上では絶影がいつでも出撃できるようにしている。
あとは彼の出方を待つだけだが……
「…………野は……あ。いや、ええと…桜田ジュン、です」
その少年は警戒を解いてはくれないものの、とりあえずはそう答えてきた。

43 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:05:55 ID:2zHoJJSt


やっぱり普段の運動不足が祟ってか、全力疾走も途切れて
ジュンは現在普通に歩くよりもよっぽど遅い速さでゆっくりとホテルに向かって進んでいた。
いっそそこら辺で少し休んだ方が全体的に効率がいい気もするが、心が休むことを拒否してくる。
「急がないと…真紅や他のみんなが、あの長門や赤い男みたいな奴に襲われる…」
ホテルに向かうことは当然あの留守電の主の言うことが本当かどうかを確かめるのが目的だが、
その他にも、こんな殺し合いという状況でもなんとなく
人が大勢いそうなイメージのある市街地に行けばみんなと合流できるかもしれないというのがあった。
第一放送の時点で十九人も亡くなっているのに、
自分の知り合いがまだ全員無事だということは奇跡に近いのかもしれない。
ならばその奇跡がまだ途絶えない内に早く合流しなければ。早く、早く、早く!
だがそんなはやる気持ちとは裏腹に、体が言うことを聞いてくれない。
ていうか、人間が何百メートルも全力疾走なんてできるわけないのだ。
そんな常識的なことはこの焦って半ば混乱しかけている頭でもわかってはいたが、
そんな常識なんてどうでもいい、とにかく急げという激情の方が強かった。
そのおかげで今やこのざまだ。
とにかく一歩ずつでも進んでいるんだという実感が欲しくて、
いつしかジュンは前ではなく一歩一歩道路を踏みしめていく足元を向いて歩き続けていた。
それにこうする方が、長い距離を感じなくてすむ。
もう自分に支給された道具は食料や水も含めて一つもない。全てあの瓦礫の下だ。
今長門、そしてあの赤い男みたいな奴に出会ったらそれこそ全速力で逃げるしか生き延びる術はない。
こうなると、あんなモデルガンや物干し竿でも頼りがいがありそうに思えてきてしまうので困る。
(ええい、しっかりしなきゃ…。弱い考えは弱い行動しか生み出さないんだから)
「少年」
(ってうおわ!?)
今までずっと下を向きながら歩いてきただけに、いきなり前方から誰かの声がしてきたのには
ジュンは体が飛び上がりそうになるほどに驚いた。
見ると、緑色の髪をした青年が十メートルかそこらの間隔をあけて立っているのがわかった。
武器がないことは重々承知していたくせに反射的にジュンはそれを取り出そうと
背中のデイパックを探ろうとして、そしてそれの感触が手に行き渡らないことに気づいて絶望した。
ならばやはり先ほど決意したとおりに逃げ出すしかないのだ、が……
その男は自分に一度話しかけたきり、何も攻撃などはしてこない。
長門有希の例があるから決して油断はできないが、もしかしたら信頼できる人間なのかもしれない。
何よりここで逃げ出したら、ホテルとは逆方向で遠回りになってしまい、真紅たちに会えなくなる可能性がある。
市街地にあの人形たちがいるかもしれないという願望は、いつの間にか確信めいたものに変わっていた。
なので一応身構えたりはしつつも、ジュンは逃げようとはせずに目の前の男の様子を窺うことにした。
もし長門みたいにわけのわからないことを話しつつ攻撃する隙を作ろうとしてきたなら、
こちらの体力が残っていなかろうが関係ない。実に口惜しいが即断即決で逃走だ。
男は男で油断なく、かつこちらの警戒心を刺激しないように、
なるべくやんわりとした物腰を『装いつつ』話しかけてきた。

44 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:06:51 ID:2zHoJJSt

「私は対アルター特殊部隊HOLY所属、劉鳳といいます」
アルター?ホーリー?りゅうほう……劉邦?
いきなりジュンの世界ではあまり身近でない言葉のオンパレードだ。
やっぱりこいつも、長門と同じ類の人種なのか?
そう思い、ジュンはやはり逃げ出そうかと考え、その脳からの命令を四肢に伝えようとした。
「最初に断っておきますが、決してこの殺し合いにはのっていません。
ですから落ち着いて、私の話を聞いてください」
が、思いとどまる。
「…………」
殺し合いにのっていない。
この言葉を信用すべきか否か。
何度も確認するが自分は武器なしだ。
今逃げようとしたところで、この特に障害物になってくれそうなものがない道端。
相手はそれなりに体格もよくて体力に満ち溢れてそうな青年。
対してこちらは元引きこもりな上に体力消耗中のメガネ。
追いつかれるのは目に見えている。
それに相手が銃を持っていると仮定すると、
今はまだ温和だが下手にこちらが逃げ出してやむなく発砲!とかになったらもう目も当てられない。
なんだ、それなら最初から逃げるという選択肢は存在していなかったんじゃないか。
そう結論付ける。
逃げる選択肢がないのなら進むのみ。
だが、長門の時と違って手持ちが何もないこの状態では戦ったところで勝てそうにない。
そういうわけでジュンは、決して信頼はしないがそれでも相手の言葉を信用してみようと思い
こちらも名乗ることにした。
「野は……」
そこで思い至る。
そういえば第一放送の段階で、偽名に使わせてもらった『野原ひろし』さんの名前が告げられてなかったっけ?
いや、たしかに告げられていた。
あの時はみんなが無事だったことに思わず安心したことで失念していたのだ。
もうこの名前は使えない……死人が歩き回るわけにはいかない。
「あ。いや、ええと」
咄嗟にまた偽名を使おうと必死に名簿の名前を思い出そうとするが、今となってはそれすらも自分の手にはない。(思い出せ、何かなかったか。使えそうな名前。ロックとか…ああもうどこのゲームの主人公だよ。
ええと、他に、他に、他に……っ!)
「…桜田ジュン、です」
結局何も思い浮かばず、ジュンは仕方なしに本名を名乗らざるを得なかったのだった。

45 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:08:03 ID:2zHoJJSt


桜田ジュンという名前にはなんとなく聞き覚えがあったが、果たしてどこで聞いたのか劉鳳は思い出せなかった。
二人は今、誰かに狙われないように注意はしながらも
道路のわき道に座り込んでお互いの持ちうる情報を交換しようとしていた。
絶影はまだ木の上に残していた。この少年に対しての保険と、周りから襲われた時のために。
第一形態までなら長時間の発動もさほど苦ではない。
「さて、質問はフェアに順番で一問一答ということにしましょう」
その提案に異論はないようで、少年……桜田ジュンは頷いてきた。
(よし、現時点では今までのように最初から完全に敵とはみなされていないようだ)
ジュンの警戒心を招くような真似はしないように細心の注意を払いつつ、劉鳳は彼を観察した。
年は十三、四といったところか。全身に軽く火傷をしているが、行動には支障ないようだ。
特に何か特徴があるわけでもない、先の対峙から察するにアルターすら持っていないただの少年だ。
どうやら武器も食料も、デイパックすら所持していないらしい。
何があったかはこれからの質問で聞くつもりだが、よくこれまで生き延びてこられたものだ。
とりあえず、こちらに支給された食料の一部を分け与えておいた。
「では、あなたからどうぞ」
こういう一問一答というものは、
精神的に余裕のあるほうが相手に先手を譲ることで緊張感を幾分か緩和させることができる。
だからこの場合、ジュンに先に質問することを譲ることで信用を得るための布石となることを狙った。
実際の効果の程は知らないが、一応ジュンは受け入れてくれたようでその口を開いてきた。
「あなたは一体、何なんですか?アルターとかホーリーとか……正直よくわかりません」
「…………」
なるほど、やはり彼はロストグラウンド出身ではないらしい。
もしそうなら、これらの用語を知らないはずがない。恐らく本土とも違う…別の次元から来たのだろう。
あの真紅や長門を見た後だとそれも納得できる。長門のあれは、アルターにしては何か違った。
このジュンの問いからこちらが聞きたかった情報の一つを得つつ、劉鳳はそれに答えた。
「先ほども述べましたが、私は対アルター特殊部隊HOLYに所属しています。
アルターというのは、周りの物質を分解、再構成することでこの世に具現化される能力のことです」
「え、ちょ……え?」
これでもまだ理解できなかったらしい。微かな苛立ちを覚えるが、それは決して表には出さない。
自分たちの世界とまったく無縁な世界で生きてきたのだ、これくらいは許容すべきだ。
だがそうなると、どう説明したらいいものか…
「簡単に言うと、超能力のようなものです。もっとも、あんなまがい物ではなく本物ですが」
「…はあ」

46 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:09:02 ID:2zHoJJSt
「そしてそんな力を持つのは我々正しい人間とは限らず、残念ながら社会不適合者も持つことがあります。
 私の所属しているHOLYとは、そんな無法者の集団を断罪するために存在する
警察機関の実行部隊といったらいいでしょう」
仕方無しに、まるで赤子に諭させている気分でできるだけ簡単に砕いて説明した。そのつもりだ。
その努力の成果もあってかジュンはどうにか理解してくれたようで、
少なくとも先ほどのように困惑しているようには見えなかった。そのことに劉鳳は安堵する。
ただ、理解はしても信用はしてくれなかったらしい。
「……じゃあ、それ見せてくださいよ」
「え?」
「アルターっていうの。嘘じゃないんだってんなら、今それを見せてください」
「…………」
もしもの時のための保険の姿を晒すということへのリスクを考えるが、
こうなった以上は仕方あるまい。これも彼の信頼を得るためだ。
恐らくだが、きっとこの少年は殺し合いにはのっていない。
そう判断し、劉鳳は木の上に待機させていた絶影を呼び戻す。
バキバキッといくつか木の枝が折れる音がして、絶影は上空から今二人がいる場に舞い降りた。
「うわっ」
その初めて見るであろう異形の姿に彼は驚いたようだが、予想したよりは幾分落ち着いていた。
最初はおっかなびっくりという様子だったが
ゆっくりと絶影に近づいてまじまじと眺めている……なんだか新鮮な感覚だ。
「どうです、信じてくれましたか?」
少ししてから、劉鳳はジュンにそう聞いてみた。
「……はい、わかりました」
その返事を合図として、絶影を消す。その体が光り、粒子に変換されてこの世界の一部と化した。
その光景をジュンは興味深そうに見ていた。
よし、少しトラブルはあったものの、基本的にはここまでは順調だ。
さあ、次はこちらが質問する番だ。
「では、私の番です……長門有希という少女を、知りませんか?」

47 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:09:58 ID:2zHoJJSt


「長門!?」
ジュンは劉鳳のその問いに驚きを隠さずにはいられなかった。
何故、この人が長門のことを知っているのか。さらには探してもいるらしい。一体その理由は何なのか。
「知っているのか!?」
突如これまでの話しやすそうな雰囲気(というほどでもなかったが)から豹変して、
劉鳳は一気にこちらに詰め寄ってきた。この尋常でない食いつき。確実に何かがあったに違いない。
「え、ええと。りゅ、劉鳳さん!?」
それにしても、ちょっと落ち着いてもらわないとろくに話もできない。ていうか顔近い、顔!
「あ。ああ、いえ失礼。つい興奮してしまったもので」
どうやら感情も収まったようで、また元のお役所言葉に戻ってくれた。
なるほど、この人はやっぱり本当は結構気が短い性分なのをこうすることで隠しているんだな。
これでジュンは劉鳳について気になっていた事実を一つ、質問することなく知ることができた。
「桜田さん。長門有希を、ご存知なのですね?」
ただ、劉鳳のこの問いにどう答えたものか。
彼と長門の関係が一体何なのかがまずわからない。自分と同じく彼女に襲われた?
長門有希は、自分が防波堤において物干し竿で殴り飛ばしたはずだ。
しばらく目覚める気配はなかったが、
第一放送で彼女の名前が呼ばれなかったことからも死んではいなかったらしい。
それについては内心ほっとしていたが、
ならこの劉鳳が襲われたとしたらあれの前か後かということになる。
前ならともかく、後なら今でも絶好調で人に襲い掛かっているのだろうか。
でもそれなら別にまだいいのだが、
もし最悪この劉鳳と長門が仲間同士だったとしたら、彼女から逃げてきたこの自分という存在を
今ここで消すということをもこの人なら選択しかねない。
先ほどアルターだのHOLYだのについて説明していたが、それはまあ確かに事実なのだろう。
あんな設定が全て作り話だっていうのなら、この人は相当の妄想癖だ。
しかもさっきのよくわからないがロボットみたいなやつ。
あれは……言ってみるならローゼンメイデンの巨大版かと最初は思ったが、
さすがにそれはないとジュンは判断した。ローゼンメイデンにしてはあまりにも可愛げがなさすぎる。
先ほどじっくりと拝ませてもらったが、しゃべりもしなければ主の命令一つなければ動きもしない。
自分の世界とは別のものだ、と。そう思った。
あんなものを見せられては彼の話を信じざるを得ない。だが彼自身を信用できるかといったら話は別だ。
仮に彼はシロだとしても、長門に騙されて操られている可能性もある。
あの女はなんとなく、こういう単純そうな人を騙す力に長けていそうだ。

48 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:10:50 ID:2zHoJJSt
「桜田さん?」
「あっ」
思考している間に随分と黙り込んでいたらしい。劉鳳がじっとこちらの目を覗き込んできている。
どうする、正直に話すべきか?
少なくとも自分が彼女について何かしら知っているということはさっきの反応のせいで
既に誰から見ても明らかだ。
ならば今から作り話を用意しなければならないが、それにしたって時間がかかりすぎる。
そんなに長い間黙りこくってたら、正直に話したところで疑われるに決まっている。
かといって即興で嘘をつくとしたらボロが出かねない。ああもう、とにかく何もかもが遅すぎる。
「……襲われたんです。防波堤で」
「防波堤?」
一瞬、怪訝そうな顔をされた。その理由はわからないが
とにかくもう言い出してしまった以上は全てを包み隠さず話すしかない。
「その時はどうにか手持ちの武器で撃退できたんですけど……
それもまたその後で色々あって全部なくしてしま」
「ちょっと待ってください。『防波堤』で、『長門有希』に襲われたんですか?」
またもや劉鳳は身を乗り出してくる。その顔は何か……鬼気迫るものが宿っていた。思わず怯む。
やはり、長門有希の仲間だったのだろうか。いやそれにしてはどうも様子がおかしい。
劉鳳はしばしの間何事か考えていたが、やがて
「確認します。あなたの名前は、『桜田ジュン』さんですね?」
「は……はい」
「私は長門有希と少しの間だけですが同行したことがあります」
「えっ」
「心配しないでください。あの女はすぐに本性を現して、私の前から逃げ去りました。
 そのため私は彼女を追っているのですが、
とにかくその本性を隠している間に私は奴からある情報を得ました」
この劉鳳の言葉を信用するのなら、彼は長門とは無関係ということになる。
いや、それよりもこの流れはまずい。
ジュンにも、ここにきてようやく思い当たる節が見つかってきた。
「防波堤で彼女と交戦した相手は、野原ひろしという名だと。
 そして彼は第一放送の時点で既に亡くなっているはず。ならば『貴様』はなんだ?」
もはや敵意を隠そうという気も起きないらしい。
途中から口調が変わり、明らかにこちらに対してそれを剥き出しにしている。
やはりだ。やはり自分は彼に誤解されている。
自分が撒いた種ではあるが、まさかこんなところで返ってくるとは思わなかった。
下手なことを言ったら殺されるという恐怖感と威圧感がジュンにのしかかってくる。
あの怖い軍人みたいな女の人の時といい、
自分はこうなる運命の星の下に生まれてきたのだろうかと半ば本気で思う。
それでもジュンは劉鳳の凶悪な顔に物怖じするなと心中で自分に叱咤し、なんとか弁明しようとした。

49 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:11:52 ID:2zHoJJSt
「そ、それはですね。簡単なことです。
その時は相手が信用ならないと思って咄嗟に偽名を使ったんです」
「偽名?」
劉鳳の勢いが止まった。今だ。ここだ。行け!話を続けろ!
「だ、だ、だ、だってそうでしょ?なんかあいつ、最初からおかしかったし」
「…………。……そう、だな」
「ね?ですから適当に名簿の中から使えそうな名前を選んで……
あ、桜田ジュンという名前は本名ですよ?もう名簿なんてあまり覚えてないし。
だから僕は、今この場においては別にあんたを騙そうとかそういう思惑は全然ないんです。
本当です。信じてください!」
必死の釈明だった。これで信用してくれなかったらもうおしまいだ。
ジュンは劉鳳に、自分のこの想いが伝わってくれるようにただただ祈り続けた。
もう釈明の他には祈るしかすることがない。頼む、頼む、頼む……
やがて。
「わかりました。あなたは『悪』ではないと、そう認識します」
ドッと一気に疲れが噴出して、ジュンはその場にへたり込んだ。
よかった、とりあえずこれで一安心だ。おっかない口調もまた元に戻ってくれた。
彼も一応は長門の仲間ではないらしい。
ひょっとしたら信頼できる人間なのかもしれない。まだわからないが。
「では、次はあなたの番です。どうぞ」
さっきの一連の出来事は一問一答という範疇を超えていたように思うのだが、
それでも彼はあくまでこの形式にこだわるつもりらしい。まあ別に構わないが。
それより気になることがある。
「あ、あの……すみません」
「? どうしました」
「あの、素で話していいですよ。疲れるでしょうし」
「…………」

50 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:13:18 ID:2zHoJJSt


劉鳳は、ひとまず彼は断罪すべき悪ではないと判断した。
これで長門有希という存在を知らなかったならばとても信用などできないところだが、
既に知ってしまった現状としてはなるほど彼は賢いと思う。
あの女相手ではどんな用心をしてもし足りないということはない。
彼が用心深かったということ……少なくとも自分よりは。
偽名を使ったのはただそれだけのことだ。
感情が昂ぶってしまったのは反省すべき点ではあるが、
ジュンの方もまた、とりあえずこちらを信用してくれたらしい。
先の口調への指摘は、どこか親しげな雰囲気があった。
自分が対人関係やその他諸々において不器用なことくらいは自覚しているが、
幸いにもどうやら今度は本当にうまくいきそうらしい。
さて、彼の質問の番だ。
「じゃあ、質問いきます……劉鳳さんは、ここから脱出できると思いますか?」
「なに?」
劉鳳は予想していなかった質問に片眉を上げた。
てっきり自分のように誰それを知らないか、などといった質問が来ると思っていたのだが。
「どういう意味だ?」
もう役所言葉で話す意味もなく、先ほど指摘されたように素の口調で聞き返す。
ジュンの眼鏡がずれ落ちた。
「い、意味って。だからこの殺し合いという場からどうにかして脱出して、
また元いた自分たちの世界に帰れると思いますか?ってことです」
「…………」
正直、考えたこともなかった。
ただいつものように悪を処断するだけ。そう思っていた。
当然その中にはギガゾンビも数に入っている。
だが具体的にどうすれば奴と相対できるかとなると、よく考えてみればこれがまた難しい。
たしかに殺し合いに乗った者をこの手で裁くだけならば容易なことだ。
中にはあのカズマや長門といった一筋縄ではいかない連中もいるが、それでも不可能ではない。
では、ギガゾンビ相手ではどうか。
奴と対峙するために現在提示されている方法とは、その他の参加者を皆殺しにすることだけだ。
これは考えるまでもなく論外である。それこそ奴の思惑通りに動いているにすぎない。
それ以前に自分の中の正義がそれを許そうはずもない。
しかしこのまま悪を全て滅し、保護すべき弱者のみが残って、それからどうすればいい?
残った者同士で殺しあえというのか?
否。それは断じて否だ。
「劉鳳さん」
見ると、ジュンは真剣な面持ちでこちらを見ている。その顔を眺めながら思う。
彼のような、何の罪もない民間人が殺しあう姿などは見たくない。
「正直、俺はこれまでにそんなこと考えたこともなかった」
「ええ?」
困惑しているようだ。だが事実だ。
自分はここに来てからずっと悪に対する激しい憎しみだけで動いてきた。
そのため、脱出などといったプランは考慮の外にあった。ただ悪を滅するだけ。
それだけが自分の使命だと、そう思っていた。そのためなら死すら厭わない。それだけの覚悟を持っていた。
「だが、今はこう思う。ここから脱出するしか皆が助かる道がないのなら、必ず脱出『させて』みせる。
方法がないなら見つけ出す。なくても、作り出す」
「劉鳳さん……」
「それが俺の答えだ。これでいいか?」

51 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:15:11 ID:2zHoJJSt


劉鳳のその言葉に嘘はないように思えた。
本当ならこの質問ですぐにでも真紅たちを知らないか聞きたかったが、
彼が本当に信頼すべき人物なのかどうかを確かめるためにまずこれを聞いた。
脱出を目的としているのなら大丈夫。
彼が自分を騙して利用しようとしていて、
最終的に殺して一人生き残ることを目的としているのなら駄目だ。
そりゃおおっぴらに後者を他人に言えはしないだろうが、
それでもその人が嘘をついているかどうか見極める自信はあった。
これまでに出会ってきた人たちはほとんどろくなものじゃなかった。
単純に、自分は疑心暗鬼に陥っていたのだ。
だが、そんなことは最初から必要なかったのかもしれない。
今の今までまったく脱出するなんてことを考えたことがないというのは
驚きを通りこして呆れたが、それはある意味で彼らしいと言えた。
彼は賢そうな風貌ではあるが、実際は相当単純というか、純粋な人間なのだ。
それだけ他人に騙されやすいということもあるが…とにかく彼はこの殺し合いには乗っていない。
悪人相手では戦うのかもしれないが、ただの一般人に対しては何があっても守り通す。きっとそんな人だ。
この劉鳳という男は、信頼できる人なんだ。
「はい、わかりました」
なので、ジュンはしっかりとした口調でそう答えた。
「そうか、それはよかった」
その時、劉鳳は微かだが笑った。注意してよく見ないとわからない程度の、微かな笑み。
「実は僕、ホテルに向かっていたんです」
「ホテル?」
ジュンは自分の目的地を彼に話すことにした。
きっと、彼に話しても問題はない。むしろ力になってくれるはずだ。そう信じて。
長門有希から逃げて、それからのことを全て。
どこぞの軍人のような女性に尋問されていたところを赤い男に襲われたこと。
脱出の鍵となり得るかもしれない電話の内容。
そのためにあのホテルへと向かっていること。
……正直、それを心の底から信用してはいないこと。
「でも、罠かもしれないけど、それでも何もしないよりはマシだと思ったんです」
ジュンは強い意志を持って、そう言った。

52 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:16:30 ID:2zHoJJSt


劉鳳はようやく、まともに信頼関係を結べた民間人と出会えたことに誰にでもなく感謝した。
これからは悪と戦って彼らを危地から救うだけでなく、脱出させることも考えなければ。
「そうか、よく話してくれた」
そのためにも、ジュンのこの話は彼にとって非常にありがたかった。
自分のやるべきことがかっちりと定まったからだ。
なるほどホテルの主が罠を仕掛けた可能性も否定できない。その時はその時だ。
自分の手でその愚か者を処断し、また新たな脱出への道を模索するだけだ。
だがもし本当に脱出できるかもしれないならば……
「俺たちのひとまずの目的地は決まった。ホテルだ」
そこに皆を集めることで、自分の使命は完遂される。
「ではこちらから質問させてもらうぞ、桜田」
「はい」
だがその他にも自分がすべきことはある。
「遊園地において、老人が腹部に鉄棒が突き刺さった状態で死亡していた。
 この犯人について、何か心当たりはないか?」
真紅についても聞きたかったが、これはもっとも知りたいことなので後にとっておくことにした。
ジュンはそのことについては何も知らないようだったが、一つ思い当たったようでこう話してきた。
「具体的な犯人はわからないけど、僕が遊園地から出た時に観覧車が破壊されてました。
 多分あれを行った人間と同一人物なんじゃないかな……」
「そ、そうか」
やはり、ジュンにはあれを行った人間というのが自分だということを伏せておいたほうがよさそうだ。
このことを告げたら、せっかく築いた信頼関係を失いかねない。
「わかった、礼を言う。ではそちらの番だ」

53 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:17:14 ID:2zHoJJSt


「僕が聞きたいのはひとまずこれが最後なんですけど……動く人形を知りませんか?」
その人形とは言わずもがな、真紅と翠星石、蒼星石にあと別の意味で行方の気になる水銀燈の四人のドールたち。
何も知らない人にいきなり動く人形がいて、しかもそれが自分の知り合いだなんて言ったら
ふざけてるか頭がおかしいんじゃないかと思われるかもしれないという懸念があったが、
それでも聞かないわけにはいかない。
「人形だと?」
「なんていうか、フランス人形みたいな奴らです。
といっても、動いたりしゃべったりするからそのまま人間のミニチュア版って感じで…」
劉鳳は頭からこの話を否定せずに真面目にのってきてくれた。
これは彼が理解のある人間なのか、または既にあいつらの内の誰かに出会ったということだが……。
「?」
ゴソゴソと、劉鳳は自分のデイパックの中身を探っていた。
何をしているのだろうと疑問に思っていると、彼はその中から一体の人形……
一瞬自分の知り合いの誰かかと期待したが、ローゼンメイデンではなく純粋なただの人形を取り出してきた。
どことなくそれは、真紅に似ている気がした。
「いや違うよ劉鳳さん。これはたしかに人形だけど、僕の探しているのはこういうのじゃなくて…」
「その人形の名は真紅と言わないか」

――――――!

「し、知ってるんですか?真紅を!」
ジュンは自分が疲労していることも忘れて劉鳳に詰め寄った。
だが自分がそうなるのは当然だ。この劉鳳は、少なくとも真紅に出会っている。
一体どこでどういう状況でそうなったのかはわからないが、とにかく出会っている。
「そうか…君の名をどこかで聞いたことがあると思っていたが、あの時か」
何か思い至ったような顔をしている。きっと真紅から自分の名前を聞いたのだろう。
「知ってるんですね?劉鳳さん」
「ああ。実は俺はあの人形も探している」
真紅を探している。何故?
「どうしてですか?」
これもまた当然の展開だった。
だからこれも、今まで通りちゃんと答えてきてくれると。ジュンはそう思っていた。
「それは、言えない」
「……え?」
その瞬間、時間が止まった。
そんな気がした。
彼の放った言葉が脳に届いて理解に至るまでに、数秒の時間を要することになる。
……『言えない』?
「な、なんで」
「すまない。それだけは言うわけにはいかないんだ」
「…………」
思考が、取り留めのない思考が自分の頭を支配していくのがわかった。
なんで?言えない。どうして?それだけは。なんで?真紅の行方。どうして?隠している。
なんで?僕には。どうして?秘密。なんで?どうして?なんで?どうして?なんで?
「お、教えてくださいよ。これは一問一答でしょ?
それなら答えてくれたっていいじゃないか。不公平だよ!」
だが劉鳳は重々しくかぶりを振る。
「すまないが、このことを君に伝えるのは信頼関係を崩しかねないのでな」

54 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:18:36 ID:2zHoJJSt


整理してみる。
劉鳳。彼は純粋な人間だ。純粋すぎる人間だ。
理想主義者で、自分に絶対の自信を持っている。確固たる信念も持ち合わせている。
その信念に殉ずるがあまり、自分の邪魔をする人間には恐らく容赦しない。
劉鳳が今まで探し求めていた人物。それら全てには共通点が存在していた。
すなわち、彼が『悪』だとみなした人物であること。
長門にしろ、お爺さんを殺したらしい犯人にしろ……真紅にしろ?
僕にその理由を教えないのは、僕が真紅の知り合いだから?
彼は僕にそれを教えると、信頼関係が崩れていきかねないと言った。
「だが、そうか。君はあの人形の知り合いか。好都合だ。
奴について知っていることがあるなら、詳しく教えてくれ」
真紅を、壊そうとしているから?
「あ、あああああ、あの!」
「む?どうした桜田」
劉鳳は心底不思議そうな顔でこちらを見ている。ああもう、なんであんたはそんな顔ができるんだ。
「あの、真紅(あいつ)はそりゃわがままで高飛車でそのくせ犬のくんくんには目がないですけど
 なんだかんだでとてもいい奴で、そんな別に劉鳳さんがわざわざ探すほどの奴じゃ……」
「桜田、そんな情報はいい」
ジュンの一気にまくし立てる言葉をぴしゃりと遮る。
「もう少し、たとえば奴の行方や所有している能力、または武器などについての情報はないか?」
劉鳳のその言葉は、実に淀みがなかったという。

55 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:20:03 ID:2zHoJJSt


何故、彼はここまで動揺しているのだろう。劉鳳にはそれが不思議でならなかった。
あの人形は自分と出会った時、薔薇の花弁を出してそれを目くらましにして逃げ去った。
次にまた奴と相対したとしてもまたあれで逃げられてはどうしようもない。
あれは真紅自身の能力なのか、それとも持っている武器の特性によるものかはわからなかった。
そこを踏まえて奴の知り合いであるらしいジュンに聞いてみたのだが……何かまずかっただろうか。
やはり、正直に理由を話すべきだったか?
だが真紅について話すとなると、どうしても流れ上あの観覧車破壊について触れざるを得ない。
やっと築けた信頼を、そのような形で再び失うのは避けたかった。



かくして。

本人はまだ気づいていないが、
劉鳳はその不器用さ故にまたもコミュニケーションに失敗したのだった。




56 :彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:20:59 ID:2zHoJJSt
 【F-3/遊園地-西ゲートを出たところ/昼】

 【劉鳳@スクライド】
 [状態]:昂ぶった感情はひとまず沈静。
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ/支給品一式/斬鉄剣
      真紅似のビスクドール(目撃証言調達のため、遊園地内のファンシーショップで入手)
 [思考・状況]
  1:ゲームに乗っていない人たちを保護し、この殺し合いから脱出させる
  2:そのためになるべく彼らと信頼を築く
3:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する
4:ジュンと共にホテルに向かう
5:長門有希(朝倉涼子)を見つけ出し、断罪する
  6:老人(ウォルター)を殺した犯人を見つけ出し、断罪する
  7:真紅を捜し、誤解を解く
  8:カズマと決着をつける
  9:必ず自分の正義を貫く

 [備考]
  ※朝倉涼子のことを『長門有希』と認識しています。
  ※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。
  ※食料と水の一部をジュンに与えました。

【桜田ジュン@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:全力疾走による相当な疲労、それに伴う筋肉痛、全身に軽い火傷
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:ホテルへ向かい、留守電の主と会う(完全に信用してはいない)。
2:一応劉鳳と同行するつもりだが、彼が真紅と出会う前になんとかしなきゃと思っている。
3:どこかで武器になるようなものを調達。
3:信頼できる人間を捜す。劉鳳は微妙。
4:他人の殺害は出来れば避けたい。
基本:ゲームに乗らず、ドールズ(真紅、翠星石、蒼星石)と合流する。

57 : ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:27:00 ID:2zHoJJSt
修正希望

>>44の○を消して一行空け

>咄嗟にまた偽名を使おうと必死に名簿の名前を思い出そうとするが、今となってはそれすらも自分の手にはない。(思い出せ、何かなかったか。使えそうな名前。ロックとか…ああもうどこのゲームの主人公だよ。

咄嗟にまた偽名を使おうと必死に名簿の名前を思い出そうとするが、今となってはそれすらも自分の手にはない。
(思い出せ、何かなかったか。使えそうな名前。ロックとか…ああもうどこのゲームの主人公だよ。

58 : ◆4CEimo5sKs :2007/01/13(土) 11:33:55 ID:2zHoJJSt
あと>>56
  1:ゲームに乗っていない人たちを保護し、この殺し合いから脱出させる
  2:そのためになるべく彼らと信頼を築く
3:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する
4:ジュンと共にホテルに向かう
5:長門有希(朝倉涼子)を見つけ出し、断罪する
  6:老人(ウォルター)を殺した犯人を見つけ出し、断罪する

  1:ゲームに乗っていない人たちを保護し、この殺し合いから脱出させる
  2:そのためになるべく彼らと信頼を築く
  3:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する
  4:ジュンと共にホテルに向かう
  5:長門有希(朝倉涼子)を見つけ出し、断罪する
  6:老人(ウォルター)を殺した犯人を見つけ出し、断罪する

1:ホテルへ向かい、留守電の主と会う(完全に信用してはいない)。
2:一応劉鳳と同行するつもりだが、彼が真紅と出会う前になんとかしなきゃと思っている。
3:どこかで武器になるようなものを調達。
3:信頼できる人間を捜す。劉鳳は微妙。
4:他人の殺害は出来れば避けたい。

1:ホテルへ向かい、留守電の主と会う(完全に信用してはいない)。
2:一応劉鳳と同行するつもりだが、彼が真紅と出会う前になんとかしなきゃと思っている。
3:どこかで武器になるようなものを調達。
4:信頼できる人間を捜す。劉鳳は微妙。
5:他人の殺害は出来れば避けたい。

59 :KOOL EDITION ◆FbVNUaeKtI :2007/01/13(土) 14:33:58 ID:9Kc5wlyR
私は無力だ。
多少の語弊はあるかもしれない。けど今、この場において私は無力だった。
確かに私は、通常の有機生命体には使用不可能な能力を行使できる。
だけど、この世界では。情報統合思念体へのアクセスも出来ず、能力も制限されている現状では。
私の力を上回る有機生命体も少なからず存在していて。
私は無力だ。だからこそ、『怖い』
データの破壊が。自身の消滅が。
初めて実感する、暗く濃密な死の存在が。

「死にたくない」

ただ、その呟きだけを繰り返しながら、私は部屋の隅で膝を抱えていた。
動けない。動きたくない。だからこのまま、すべてが終わるまで隠れていよう。
誰にも見つからないように。誰にも出会わないように。誰にも殺されないように。

「死にたくない」

鞄から取り出しておいた鎌を、じっと見つめながら繰り返す。繰り返す。
右手にしっかりと握られたそれは、私の持つ唯一の保険。
時間をかけて切れ味を増した刃は、侵入してくる者にに死を振りまくための物。
そうだ、分銅も強化しよう。追尾機能をつければ、確実に相手を殺せる。
確実に私は死なない。確実に私は生き残れる。
・・・ほんとに? ほんとに、この方法で生き残ることが出来るの?


唐突に疑問が浮かぶ。
たとえ、武器を強化したとしても、より強い敵―例えば先ほどの青年、劉鳳などが現れたらどうする?
ここは遊園地から、そう離れた場所というわけではない。
他に建築物が多数存在するとはいったって、彼がここを見つけ出す可能性は無いとは言い切れない。
それ以外にも危険な生命体に存在を感づかれたら? そもそも、この場所が禁止エリアに指定されたら?
ここに篭っていれば確実に生き延びれるわけではないのだ。
じゃあ、どうする? どうすれば、生き残れるの?

「冷静に。冷静に考えなさい・・・」

自分を叱咤しながら、思考する。私がこの先、生きのこるためにはどうすればいい?
こちらが不利な状況で強い相手とも戦える、そんな方法はあるの?
例えば、何の能力も有していないはずのキョン君が、未だにここで生存している。その理由は何?

60 :KOOL EDITION ◆FbVNUaeKtI :2007/01/13(土) 14:35:18 ID:9Kc5wlyR


「・・・仲間」

そう、その方法はおそらく、徒党を組む事。
自分よりも強い存在に防衛してもらう事で、自らの生存確率を高める。
おそらくはキョン君やその他の無力な有機生命体はみな、この方法を取っているんだろう。
さらに数量が増せば増すほど、対外的な力も増していく。生存確率は更に高まる。
つまり、私が生き残るためには無力な有機生命体を装って、集団に入り込むのが最善。
要は涼宮ハルヒを観測していた時と同じ事だ。

「とすると、問題はひとつね」

この方法を取るにあたっての最大の障害。
それはもちろん、私の今までの行為を知っている人間だ。
劉鳳に野原ひろしという名の少年、桃色の髪の少女。それから場合によっては、キョン君と長門さんも。
この中で、すでに死亡している野原ひろしを除くと残りは4名。
キョン君や長門さんは、協力関係を結べる可能性もあるから除外。
夜に出会った名前も知らない少女。彼女はすでに死亡している可能性もあるが、用心に越したことは無い。

「そういえば、彼女とは約束をしてたっけ」

自分の駒となって他の参加者を殺すこと。その命令を、恐怖と一緒に心に刻み込んだんだった。
もし、あの約束を律儀に守っているようなら、彼女と組むのもいいかもしれない。
だから、あの少女は保留。よって、今、もっとも危険なのは劉鳳。
彼の口によって私の情報が広まる事は避けられないだろう。なら、どうすればいい?
私が朝倉涼子という存在だとわからないよう、容姿をつぶしてしまえばいい。
顔でも潰したら、それでもう、誰にも判別はつかなくなるだろう。
右手にしっかりと握られた鎌を見つめると、私はおもむろにその刃を自らに向けた。



一時間後。意を決した私は、戸口の影から顔をだす。
周囲に人影は無い。それを確認した私は、そっと屋内に戻った。
と、不意に木の葉の擦れる音が響き、それと一緒に穏やかな風が玄関に吹きこむ。
あらわになった首筋に直接、空気の流れを感じた。
・・・多少、迷った挙句。容姿の問題に対して、私は髪を切断する程度にとどめていた。
人相を潰すのは確かに効果的だけど、同時に短絡的でもあるだろう。
顔が切り刻まれていたら、相手に余計な警戒を抱かれかねない。
短くなった髪を触りながら、私は黒色のコートを羽織る。
それは、この家で唯一発見した、まともな衣服。
少し暑苦しいが、それはしょうがない。死ぬよりはましなのだから。
ともあれ、これ以外の衣服を手に入れる必要もある。
こんな、上から身につけるものなどではなく、制服の換えになる衣服が必要なのだ。
強化し、編みこんだ髪を懐に忍ばせて・・・私は行動を再開した。

61 :KOOL EDITION ◆FbVNUaeKtI :2007/01/13(土) 14:36:40 ID:9Kc5wlyR
【F-4民家付近/1日目/日中】

【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:側頭部に傷(少し回復)、首までの短髪、死に対する恐怖
[装備]:鎖鎌(ある程度の強化済み)、黒いコート、布状に編みこんだ髪(ある程度の強化済み)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料無し)、ターザンロープの切れ端@ドラえもん
    輸血用血液(×3p)@HELLSING、SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
 1:遊園地から離れつつ換えの衣服を探す
 2:集団に潜り込み生存確率を高める
 3:劉鳳に対して最大の警戒をはらう
 4:桃色髪の少女が約束を守っているようなら組んでもいい
 基本:絶対に死にたくない

※鎖鎌の切れ味が強化されています。
※布状に編みこんだ髪は硬度を強化されていますが、ナイフが通りにくい程度です。

62 : ◆FbVNUaeKtI :2007/01/13(土) 14:49:46 ID:9Kc5wlyR
>>61
時間帯を昼に修正します。ご迷惑をおかけしました。

63 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:20:34 ID:8QsmaDIp

 意外にも、瓦礫の山の捜索には大した時間がかからなかった。
 本気を出せば129.3馬力という余りにも意外な力を持つドラえもんが手伝い、
安静にしておいた方がいい、と言われつつもさり気なく手伝ったヴィータも手伝ったこともあるだろうが、さて──

(……運が良かった……とは言えないね。むしろ……)
 現状を見据え、ドラえもんは力無くため息をついた。

 捜索の影響で崩れた瓦礫のせいか、それとも何らかの衝撃で崩れたかどうかは分からないが、
太一が命を賭して守ろうとし、結果として逆に太一を助け圧死した彼女の遺体は──原型をとどめていなかった。

 さっきまで、優しい表情を垣間見せていた太一の顔は固く、ヴィータは表情が見えにくいものの顔が俯いているのが分かる。
 素子の遺体を最初に発見したのは太一だった。更に、まさかと思ったドラえもんが駆け寄るより先にヴィータも覗きこんでしまう。
 
 悔しさから、哀しさから、怒りから、涙がこぼれる。止まらない。
 その姿を、ドラえもんは黙って見守ることしか出来なかった。……手を出していいとは思えなかった。
背後で少しの間様子を伺っていたヴィータも、やがて無言で戻ってくる。拳を必要以上に、固く握り締めて。




 
 素子のデイパックは落下の衝撃からかズタボロで、ほとんどが吐き出され使えない状態になっていた。
 三人でそれらを素子の遺体と一緒に埋葬し、全員が落ちついたところでドラえもんが口を開く。
「……ねえ、ヴィータちゃん。前回の放送を聞いてないかい?」
 今、欲しいものはまずドラえもん自身が使っていた秘密道具。次に、その他の──生憎にも素子の分は瓦礫に
押しつぶされていたが──護身になる道具。そして、手に入る限りの情報だ。
「聞いたと言えば聞いたけどよ……全部は覚えてねーぞ」
 仮面の男の下卑た声が主の名を読みあげる声が今も耳に残る。好きな名前のはずなのに、今すぐにでも忘れたい声。

「今からぼくが言う名前に聞き覚えがあったらでいいんだ」
 それからドラえもんが、彼と太一の知る名前を挙げていく。
「……どうかな」
 不安そうな瞳がヴィータを見つめた。
「多分…………スネ夫、って奴と……先生ってのが……呼ばれたと思う」
 一瞬真実を話すことに躊躇したヴィータだったが、あえて黙ったり嘘を言ってやる必要もないと判断した。
(……放送前に、倒れてた方が良かったかも……な)
 「そう」とか細く呟いたあと、俯きながら身体を震わせるロボットをぼんやりと見つめながら、ヴィータは
そんなことを考えていた。


64 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:21:31 ID:8QsmaDIp





 彼は、確かにズルい人間だったかもしれない。
 金持ちの息子であることを鼻にかけ、いつも自慢話でのび太をからかったり。
 ジャイアンの威を借りて、一緒になってのび太をいじめたり。

 でも、根底まで悪いような少年じゃなかった。
 何度も、ジャイアンと共に怯え腰ながら大冒険に参加してきた。
 きっと彼もまた、のび太とは違う意味で気が弱かったのだと思う。

 彼は、良き教師だった。厳しさの中に生徒を想う気持ちが見てとれた。
 厳しかったことの記憶の方がのび太には多いだろうけれど、決して恨んだりなんかしてないはずだ。
 自分の知る子供達は、一体どれだけのことを彼に学んだのだろう。

 死ぬ瞬間もやはり、彼は怯えていたのだろうか。
 最期まで、彼は生徒のことを想っていたのだろうか。
 それを確かめる術はもうない。

 彼らはもう、死んでしまったのだから。





 それから、気を取り直した一行は橋へと向かっていた。
 当初はドラえもんがヴィータを気遣い病院行きを提案していた。
 しかしヴィータは病院とは逆方向のビルに行こうと提案した。
 ビルの方が人が集まっているだろう。それに、近くのホテルがあるから何かあっても休めるはずだ、
というのが彼女の意見だった。
 そして最終的に太一が間をとってD-3の橋を目指そうと提案したのだ。この辺りまで来て、ヴィータの体調に
差し支えがないようであればビルの方に、何かあれば病院の方に行けば良い、というわけである。
 ヴィータも渋々納得したところで彼らはその場を後にしたのだった。

 旅路が順調だったせいだろうか。橋を一つ渡るころには全員が元気を取り戻しているように見えた。
 このまま何事も起こらなければ──自称猫型ロボットはそれだけを祈る。そして、確かにそう祈った瞬間に
皮肉にも『何事か』が起こったのだった。
 

65 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:22:39 ID:8QsmaDIp




 運が良かったのだろうか、それとも──

 長い時間が立ったように思える。が、誰の一人もシグナムの前には現れなかった。
 参加者を減らすことができないことを良いとは言いにくいものの、ヘタに仕留め損ね
実力ある者に追いつかれようのものなら一溜まりもなかっただろう。
 ほどほどに疲労も回復してきた。素人相手であれば戦えぬ状況ではない。
 ──時は満ちた。
 
 シグナムが立ち上がる。万全とは言えないが、悪い調子ではない。
あの男のように、手の内を全て使いきらねば勝てぬ程の相手でなければ
十分戦える、と思う。
 立ち止まっていた騎士は再び動き出す。


──その時だった。
(……爆発……戦闘か)
 そう遠くない距離だろう。近づかずともまともな状況でないことは推してはかれる。
 さて、この状況で自分も割って入るのは良いといえるだろうか……答えは否。

 戦闘中の人物が戦いに夢中で外部からの攻撃に油断している可能性もある。
 そうであれば仕留めるのは簡単だ。だが、リスクも高い。
 それなら、戦いが止んだ頃に残った手負いの人物を仕留めた方が危険性は少ない。
 暫くして、もう一回の爆発音が聞こえた。やはり、よろしくない状況のようだ。

 もう、この期に及んで正々堂々などと言える状況ではなくなったのだ。無論、自分という存在も。
 
 ひょっとしたら、やはりシグナムの調子はまだ芳しくないのかもしれない。
 そうだとしても彼女は動いただろう。それは焦りか使命感か──
 

 こうして、二人のベルカの騎士は近づいていく──





「ッがぁぁぁ!!」
 太一の腕のあたりを、何かが貫いたのは彼らが引き返そうとした直後であたt。
「た、太一くん!」
「おいっ!」
 腕を抑えて蹲る太一を見て、咄嗟にヴィータはこの場にいるはずのもう一人のベルカの騎士を
連想した。
 『彼女』は、確か弓を扱うことにも長けていた──

(そんなはず、)
 ないと自分に言いきかせようとするが、再び太一に目を戻した直後に現れた人物は
まさにヴィータの想像通りであった。

「……やはり、ヴィータか」
「シグナムっ……今の……お前か!?」


66 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:23:45 ID:8QsmaDIp


 気付かれぬ程度に戦闘区域を観察し、状況の把握しようとしてたシグナムは、急に目を鋭くさせた。
 クラールヴィントが反応を示していた。前回と同じく、三人分。
(さて、今度ばかりは激しい戦闘は避けたいものだな)
 今回使うのは、弓の方だ。
 当たれば、もしくは仮に当たらずとも相手の反応である程度力量が測れる。そこで、武器を斧に持ちかえ
とどめに行くか退くかを判断できるというわけだ。
 第一剣がなくなった今では、待ち伏せしても確実に仕留められるというわけでもないだろう。

 こんな時にヴィータがいれば。 
 レーダー通りに進めばやがて三人分の人影が見えてきた。
 まだ見ぬ仲間を想い、シグナムは弓を構える。そして、標的は中央にいる少年と思わしき影。

 
 矢が放たれ、少年のうめき声があがる。
 それに駆け寄る二人の影。
 近寄るうちに片方の姿が見覚えのあるものとなり、それが聞き覚えのある声を出したのはほぼ同時のことだった。





「……なんでやった」
 明らかに非難の向けたヴィータの視線が飛ぶ。
「お前以外の、全ての参加者を殺す」
 それでもシグナムな冷淡に告げる。
「そして、私がお前かのどちらかが死に──」
 自分で言っていて改めて、実に利己的だと実感する。
「残った方が願いを叶える。……全ては主はやてのため、だ」
 先ほど射た少年の傍に、青いタヌキがいた。
 できればこのタヌキは仮面の男の情報を引き出してから殺したいものだ。
「ふざ……けんな」
 打ち震えるような声。見れば、手に持つハルバートも小刻みに震えている。
 
 シグナムにはなんとなく分かっていたことだ。
 はやてのために夜天の書の蒐集を始めた時の、ヴィータの声がよみがえってくる。

 それに、彼女の性格──

「なのはも……フェイトも殺すっていうのか」
「……当然だ」
 あるいは、彼女にその気があれば、最後の一人になってもらってもよい。
当然、あの二人は拒むだろうが。

67 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:24:33 ID:8QsmaDIp
「言ったよな、はやての未来を血で汚したくないって」
「……ああ」
 既にはやての生死の懸念は忘れているようだ。
「そんなことまでして……生き返らせて…………
はやてが良いっていうわけ……ねぇだろ!!」
 怒気を含んだ声。既にハルバートを構えている──
(やはり……相容れないか)


「ふざけんな……オバサン」
 怒りを内に秘めていたのはヴィータだけではなかった。
「だめだ太一くん!」
「はやてって子が……あんたの……何なのかは知らないけどよ…………」
 止まらぬ痛みを力ずくで振り切り、弱々しく立ち上がろうとする。
「……誰かの……犠牲があって……成る幸せなんて…………人を生き返らせる……なんて……
 …………あって良いわけ、ある……かよ……!」


 それは、もういない主の意向。
 誰かに迷惑をかけてまで、闇の書で願いを叶えない。
 主の、その考えこそあってこそ。
 ベルカの騎士は『平穏な生活』を。
 『家族』を、手に入れた。


「そういうことだ」
 太一の台詞に気を取られていたヴィータだったが、改めてハルバートを構える。
「シグナムが、それでも殺しをするっていうなら
──全力で止めてやる」


(主の言葉を忘れるなど──)
 シグナムは内心で自分に毒づいた。
 それでも、自分はもう戻ることは出来ない。
「お前とは出来れば戦いたくはなかったが」
 こちらも斧を構える。得物で言えば、こちらの方が不利。しかし、もう止まれない。
「それも止む無しだ」 


 二人のベルカの騎士が地を蹴ると同時に、まるでゴングの役目を果たすかのように
空に仮面の男の顔が浮かぶ。
 
 もう、お互い以外は見えていなかったのだけれど。 

68 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:25:55 ID:8QsmaDIp
【E-2/橋の近く/昼】


【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右腕に矢(刺さったまま)、右手に銃創 ※少しずつ治り始めています
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:傷が痛むが、あのオバサン(シグナム)を止めたい。
2:はやての生死についてのヴィータのシグナムの話の矛盾のことには
 薄々気付きつつあるが今はそんなことを考える余裕がない。
3:ヤマトたちと合流
4:荷物を持って姿を消したルイズのことも気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません
※ドラえもんをデジモンとは違うものと理解しました。

【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ、かなり焦り
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
1:二人の戦いを止めたいけど、太一は放っておけない。  そもそもぼくが止められるか……
2:放送で現れたギガゾンビに微妙に動揺。こっちもちょっと気になる
3:ヤマト、はやてを含む仲間との合流(特にのび太)。
基本:ひみつ道具を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
[備考]
※禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません

69 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:26:41 ID:8QsmaDIp
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:戦闘だけに集中 発熱中、結構快方に向かってる
[装備]:ハルバート 北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:支給品一式、スタングレネード×5
1:シグナムを全力で止める。出来れば殺さずにおきたい。熱? 知るかよ!!
2:「八神はやて」の生死を確かめる。(シグナムの動向から死んでいると悟りつつある)
3:信頼できる人間を探し、PKK(殺人者の討伐)を行う。
基本:よく知っている人間を探す。
  (最優先:八神はやて、次点:シグナム、他よりマシがなのはとフェイト)
  (戦闘次第によってはシグナム除外か?)


【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:戦闘だけに集中 戦闘による負傷(処置済)/騎士甲冑装備
[装備]:ルルゥの斧@BLOOD+
     クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's
     鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢21本)
     コルトガバメント(残弾7/7)
[道具]:支給品一式、ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15)
[思考・状況]
基本:自分を最後の一人として生き残らせ、願いを叶える
1:ヴィータを倒す。出来れば殺したくはないが……
2:その後は無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す
[備考]
シグナムは列車が走るとは考えていません。
放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。
ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。

[共通備考]
二回目の放送が始まりましたが、シグナムとヴィータは気付いていません。


70 :Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs :2007/01/14(日) 22:30:33 ID:8QsmaDIp
補足:ヴィータがビル行きを提案したのはいわゆるツンd……げふん、強がりです。

71 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:03:43 ID:BotjT7dL
本当に気楽でいいな、圭一君は……
私は、あの2人(?)が怪しげな事をしていないかどうか警戒しているのに、圭一君はお構いなしにどんどん歩いて行く。
今までこういったことをしなかった分、余計に疲れを感じた。
しかし、ここでめげるわけにはいかない。圭一君の命もかかっている。

レナは、すっと心臓に左手をあてる。
大丈夫、落ち着いてる。呼吸も正常、精神も安定してる。
クールに、クールになれレナ。本当の敵は一体どこにいるんだ?
彼らが人間じゃないってのは確かであった(故に必要以上に警戒しているのだが)
さらにいうならば、その実力に関してはどちらとも実力は不明である。
しかし、ソロモンにおいては確実に強力な力を持っているはず……
それこそ私達が四人がかりで襲っても勝てるかどうか、というレベル
しかし彼だけなのだろうか?
否、他に強力な力を持っている奴はいるはずだ。
頭がよさそうなソロモンの事だ、きっと同じ事を考えてるに違いない。
じゃあそういった敵に出会った時、ソロモンならどうする?
私達と一緒に戦う? 多分そうだろう……小夜って人の危険が追い払われるのだから……
しかし考えろレナ、私や圭一君(次元さんはわからないが)のようなただの一般人は、むし
ろ足を引っ張ってしまう。
もし自分が生き残る可能性を1%でも増やそうとしたらどうする?
仮に騙して殺すより、生かして自分の盾にする方がよいのでは?

……痒い、なんでこんなに痒いのだろう
蚊にでも刺されたのか? いやそれでもこの痒みはおかしい……首周り全体が痒い……
耐えろレナ、落ち着けレナ、どうやったら自分の盾に出来る? 私だったらどうする?

「大丈夫ですか?」

私はいきなりの言葉に驚き、体が止まった。
気付くと目の前にはソロモンが立っていて、後ろの方では圭一君も心配そうに見ている。
どうやら次元さんが、私の様子を見てソロモンに言ったのだろう。
実際首周りが痒いのだが、平気な振りを装った。


72 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:04:39 ID:BotjT7dL
「え? あ、はい大丈夫ですよ」

―洗脳―
その間にも私の頭の中に浮かんできた言葉
そうだ、私達を操り人形にすればいいのではないか?
それならば弾除けぐらいにはなるだろう、という考えか? そして確かに実行しそうである。
と、私の目は大きく見開いた。
ソロモンが、胸ポケットから何かを取り出そうとした。
私は反射的に、これまでにない早さで後ろに下がる。

「大丈夫ですよ、僕はこう見えても医者なんですよ」

私の警戒心を解くつもりなのか少しだけ笑みを含めた。
正直その笑みの裏側に悪どい事を考えてそうだが…………待て、今なんて言った? 医者?
私は一瞬監督の顔を思い出したが、振り払った。
医者――という事はもちろん薬とかに詳しいはず
薬――を注入する為にはもちろん注射器が必要になる。

「症状を聞くだけですよ、心配しないでください」

そして胸ポケットから取り出した物が見えた。
それは――紛れもない注射器であった。

「来るなぁ!!」

私は声を荒げてソロモンに制止をかけ、鉈を強く握った。
その様子に、少なからず全員が驚いている。
落ち着け、相手も手荒な真似は出来ないはず……
やはり敵は私の目の前にいた。
しかし、尻尾をつかんだというのに、相手に逃げ道を作ってしまった。
医者だから――注射器を仮に持っていたとしてもなんら怪しまれない、というわけか
ならば医者という発言が嘘なのか……? ならばこの痒みもソロモンの仕業?
いや過ぎた事を考えても何も変わらない。
問題はこの後、だ。
様子見なのか、相手はこちらとの間合いを詰めてくる様子はない。
それはつまり実力行使に移る気はあまりない、と捉えてもよいだろう。
下手に手を出したら、圭一君や次元さんが黙っていないはず。
私はとりあえずある事を聞きたかった。


73 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:05:26 ID:BotjT7dL
「その注射器で何をする気なのですか?」
「注射……ですか?」

ソロモンが答えるのに少し時間がかかった。まるで何を言っているんだ?という感じで……
私はソロモンの右手の方を指した。そりゃあ「あなたを洗脳するためです」とか言うはずがない。
しかし、圭一君や次元さん、蒼星石にはソロモンの背中しか見えないはず
ここで注射器の存在を知らせるのは、悪い方向ではないと思った。
すると予想通り、圭一君がソロモンさんの隣に並んだ。蒼星石も一緒だった。
何やら小声で話している。2人とも注射器の方を見ているので、きっと内容はソレだ。
何を話しているのかはわからない。しかし、ここで襲ってしまって何より圭一君を裏切ってしまう。

圭一君……圭一君は私の味方だよね?

「圭一君……」

私は圭一君に助けを求めた。
可能ならば圭一君とこの場から去りたかった。
説明は後ですればよい。圭一君だけは私の方に来て欲しかった。
何となく壁が出来ている感じ、とにかく私は、圭一君にこっち側に来てほしかった。
しかし、

「レナ……少し休まないか? 寝たらきっと治るからさ」

私は一瞬頭の中が真っ白になる。
え? え? 何を言ってるのかな圭一君?
何で休まなければならないの? 寝ちゃったら最期、ソロモンの言いなりになっちゃうよ?
治るって何? この痒み? ソロモンは何を圭一君に言ったの?

「圭一君……? 私の事を信じてくれないの?」

嘘だよね? 圭一君はずっと仲間なんだよね? 裏切ったりなんかしないよね?
いつの間にか次元さんも近くにいた。
レナの頭の中に最悪な状況が入り込んでくる。

「いや……そういうわけじゃないんだけど……とりあえずソロモンさんの言うこと聞こうぜ……?」

言葉が出なかった。私は圭一君がとても憎い存在に感じた。
何でソロモンの肩を持つんだ……新しい仲間の方が大事って事かな、かな?
違う! 圭一君はそんな人じゃない! じゃあ何で!?
レナにとっての最悪な状況、それは……

―圭一君や次元さんがもう洗脳されている―

何かが切れた感じがした。
私は洗脳されない、洗脳されるならここで死んだ方がマシだ!!
間合いを詰めながら鉈を振り上げる。
それに感付いたソロモンは圭一君を、次元さんは蒼星石を抱えて距離をとった。



74 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:07:02 ID:BotjT7dL
「レナさんは幻覚症状にかかってると思われます」

ソロモンは、レナに聞こえないぐらいの声で言った。
圭一と、それについてきた蒼星石は驚く他なかった。
ソロモンは続ける。

「このシャーペンを注射器と間違えています」

と、言いながらソロモンは手に持っているシャーペンに視線を向けた。
2人も視線をそっちに向ける。

「原因は不明ですが、おそらく極度の疑心暗鬼やストレスからだと思われます。しかし、
なぜこれだけを注射器と見間違えるのはわかりません……」
「その……治る方法はあるのですか?」
「治療薬がない今はとりあえず体を休めるのが第一条件です。しかし、私の言う事は聞い
てくれない様子なので、圭一君から伝えてくれませんか?」

ソロモンの提案に黙って頷く圭一
しかし、彼の頭の中ではなにか引っ掛かる点があった。
それは彼自身がこのような状況に陥った……気がするのであった。

「圭一君……」

と、いきなりレナが優しい声をかけきた。
確かに、今までずっと仲間だった圭一になら耳を傾けてくれるかもしれない。
そういう思惑があった。
圭一も同じように出来る限り優しい声を出した。

「レナ……少し休まないか? 寝たらきっと治るからさ」

レナは圭一の言葉を聞いた瞬間、キョトンとした目になった。
まるで自分にとって予想外の出来事にあったかのように……

「圭一君……? 私の言うことが信じられないの?」

圭一自身『幻覚』という言葉は使わなかった。
使ったら余計な誤解を招く物だと思っていた。
ここで圭一やソロモンらの勘違いが一つだけあった。
レナの幻覚症状のきっかけはソロモンや蒼星石と出会った時、『力』を持った存在との行動
そして、その症状は他ならぬ極度の疑心暗鬼から起こったのであった。

「いや……そういうわけじゃないんだけど……とりあえずソロモンさんの言うこと聞こう
ぜ……?」

ここでソロモンの名ではなく、圭一自身の名前を取ればまた話は違ったかもしれない。
その言葉を聞いた途端、レナの目が変わった。
今まで見たことがない鋭い目つき、一言で表すならばそれは狂気
レナは一気に間合いを詰めてきて、鉈を振り上げた。
それに反応するかのようにソロモン達は後ろに下がり、鉈は地面に食い込んだ。
追撃は――こなかった。
思いとどまったのか、ソロモンがレイピアを構えたからなのかはわからなかった。
とりあえずこの緊迫した状況下でも圭一はソロモンに事情を聞こうとする。


75 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:08:16 ID:BotjT7dL
「ソロモンさん!」
「まずいな……」

見てわかる。レナは狂ってしまったのかもしれなかった。

「おいおい、どうするんだ?」

次元は腰の銃に手を当てる。
蒼星石もナイフを構えだす。

「彼女の目でわかりますが、非常に危ないです。ここで被害を止める為死んでもらうしか……」

対するレナはいつソロモン達を襲ってもおかしくない状況であった。
しかし、圭一だけが、圭一だけがなんとなくわかっていた。
疑心暗鬼からの幻覚症状、もちろん圭一自身レナみたいな状況になった事は一度もない。
しかし、なぜか記憶にある自分……それは今のレナと変わりがなかった。
圭一にとってレナは大切な、むしろ一番大切といってもいいほどの仲間である。
そんな人を殺せるのか?
圭一は周りを見る。みな臨戦態勢であり、自分だけが呆然と立ち尽くしていた。
違う違う違う違う!!
このいかれたゲームで最初に出会えた仲間じゃないか!
それだけでも奇跡なのに皆まだ生きてる――奇跡は起こり続けているんだ!!
それなのにその奇跡を潰していいのか!? レナはちょっとした病気にかかっただけだろう!?
圭一は自分に何度も言い聞かせる。
ここでレナを殺してしまったら、俺は一生後悔するに違いない、と
圭一は決心するかのように、目をつぶりながら大きく深呼吸をとった。

「ソロモンさん、次元さん、蒼星石さん……ここは俺に任せて下さい」

レナには聞こえないが、3人にははっきりと聞こえた。が、誰もが耳を疑った。
既にレナの精神がおかしいのは見ての通り、脱出派としてはここで被害を最小限に抑えるのが最善策
それなのに1人に任せるなど言語道断、蒼星石はそれを口に出す。

「圭一さんだけに任せるわけにはいきません。ここで止めるのが道――」
「じゃあ聞くが蒼星石さんの友達が狂ってたとしてもだ。目の前で殺されるのは許される事なんですか?」

蒼星石は圭一の反論に対抗できず、黙った。
確かに自分の姉、翠星石が仮にこのゲームに乗ってたとしても目の前で殺されるのは見てられない。
それは他の2人にいえた事でもあった。

「それに……」

圭一が続ける。

「レナを救ってやりますから。そんで、きっとそれは俺にしか出来ない事です……その間にレナも信頼してくれる仲間、見つけて下さい」

笑っていた。こんな状況下で、仲間の1人がおかしくなったのに……
もちろん圭一は信じている、レナが元に戻ってくれるのを、だから笑える。
信じる事が奇跡の連鎖を続けるのだから……
ソロモンは圭一を見る、圭一もまたソロモンを見る。
言葉は発せられない、目で訴えているからであった。

「わかりました。ここは任せましたよ圭一君」

ソロモンは圭一の決意の強さに折れたのか、クルッと回転してやや小走りでこの場を去っていった。
蒼星石も反論せず、黙ってソロモンに従った。
次元は考え事をしながらも、圭一の事を時々見ながらソロモンの後についていった。



76 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:09:24 ID:BotjT7dL
レナがこの間何のアクションも起こさなかったのには理由があった。
それはレナが異様なまでに冷静であったからだ。
レナはここで死ぬ気であった。
しかし、普通に戦って4対1――しかも1人は銃を持っている。
とてもじゃないが1発で終わるかもしれない状況であった。
ゆえに自分の不甲斐なさに憤りを感じた。
ずっと信頼してた圭一君に裏切られた。
それだけ……だがそれがレナにとって最も重要な事であり、熱くなってしまった理由……
だから圭一だけが残って他の人が去っていったのは正直嬉しいと感じた。
微かにだがレナはソロモン達が喋った事が聞こえた。

「……りま……。……任せ……」

ソロモン達は圭一に任せた、と捉えていいのだろう。
理由は考えなかった。むしろレナにとっては、今ここで圭一との戦いに集中したかった。
ここで圭一を殺せば、レナの命はまだ延びる。彼らを殺すチャンスが手に入るという事であった。

「ソロモンさんに洗脳されたかわいそうな圭一君……せめて私の手で殺してあげる」
「洗脳? 何言ってるんだお前、馬鹿じゃねーのか?」

あざ笑う圭一、レナは目を細めて何も喋らなかったが、内心相当怒っていると目に見えてわかった。
レナはもう躊躇わなかった。この圭一君は今までの圭一君ではない。洗脳されてしまった、と言い聞かせて
鉈の射程範囲内にまで距離を縮めて右からの薙ぎ払い
圭一は防ぐかのように、ナイフを壁代わりにつかった。
甲高い金属音と共に発生された火花、レナはこの時少しだけ……興奮した。

「ちょい落ち着こうぜレナ、このまま俺の楽勝勝ちってのはやっぱりつまんないだろ?」


77 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:10:55 ID:BotjT7dL
ギガゾンビ……てめーには悪いが、この前原圭一様を動かすには悪魔の脚本程度じゃ無理だって事だな!!
閻魔の大王様の脚本なら動くかもしれねえなぁ! もちろん、このイカれたゲームから脱出する役をなぁ!!
レナは俺とは違ってとても強い。その証拠に最後まで俺に話しかけたじゃねえか!!
きっと……今だって心のどこかで……俺の事を信じてる部分があるはずだろ!?
だから俺は死なねえ! レナも魅音も沙都子も梨花ちゃんも皆死なせねえ!!
俺は絶対に諦めねえ!! こんな迷路壁ごとぶっ壊してやるぜ!!

「ソロモンさんに洗脳されたかわいそうな圭一君……せめて私の手で殺してあげる」

レナ……お前は悪い病気にかかってるだけなんだよな。
どうやれば治るかはわからない。だけど俺は信じる。信じて信じて信じて!
いつも通りいってやろうじゃないか圭一!!
殺し合う運命なんてぶち壊してやる!!

「洗脳? 何言ってるんだお前、馬鹿じゃねーのか?」

あざ笑ってやった。そりゃあもう自分でもむかつくぐらいに、な
レナが腹立ていると目に見えてわかる……といきなり俺の方へと突っ込んできた。
ヘヘッ、そうこなくっちゃな!!
俺は避けるという概念を今だけ捨てた。
ここは開戦の合図、それを受け入れなきゃいけないだろ!?
ナイフを迫りくる鉈と自分の間に入れ込む。
否応なしに響く甲高い金属音、僅かに発生した火花に俺は、少し興奮した。
だけどこのまま興奮したまんまじゃだめだ。
命をかけた戦いでも俺達は楽しんでいこうじゃねえか!!

「ちょい落ち着こうぜレナ、このまま俺の楽勝勝ちってのはやっぱりつまんないだろ?」

落ち着けの部分は、自分にも言い聞かせた。
その間も金属と金属が擦れ合う、力はほとんど互角、どちらも引く気配がなかった。

「何を言っているのかわからないかな、かな。圭一君は私に勝てると思ってるの?」
「あぁ! 勝つ気満々負ける気無し、だな!! どうだ、ここはいっちょ部活らしくやっていこうじゃねえか!?」
「アハハハハハ、いいかな、かなぁ!!それって勝った方が」

言葉を止め、鉈への力をさらに強くしてきた。
いきなりの出来事であったので俺はたまらず、後ろに下がった。

「正義って事だね!!」

おいおい、女に力負けしてどーする前原圭一!
俺は負けじとレナの方へと突っ込み攻撃に移り変わる。

「レナが勝ったら認めてやろうじゃねえか!
むしろお前の言いなりになってレナの手となり足となり……なんだったら盾にでもなってやろうじゃねえか!!」
「へー、じゃあ今動かない盾になってくれるかな! かなぁ!?」

レナの鉈を動かすスピードが早くなった。
しかし、力に関しては鉈の方が上であるが、小回りに関してナイフの方が上である。
むしろレナのスピードが速まる事で、1発1発の力は軽減され丁度よかった。
上! 右! 左! 斜め! いろんな方向から鉈が俺の体めがけて襲い掛かってくるが、全部ナイフで上手く受け止めた。

「圭一君防戦一方だよ? もっと頑張って欲しいな!!」
「バーカ、ハンデを与えてるんだよ! すぐ勝ってもつまらないじゃねえかよ!!
てか俺が勝った時の褒美を言い忘れてたなぁ……そうだな、俺の義理の妹になって毎日『お兄ちゃん』って愛情込めて言ってもらおうか!? 
服は日替わり定食、制服、メイド、コスプレその他諸々ぉ! もちろんネコ耳、眼鏡などのトッピングもつけさしてもらうぜええええ!!」


78 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:12:03 ID:BotjT7dL
「なぁ?」
「いいかな?」
「ちょっといいですか?」

3人がほとんど同時に喋り、立ち止まった。
少し気まずい雰囲気が出たが、ソロモンが次元の話を進めようとした。

「なんですか?」
「……悪いが、俺はあそこに戻らしてもらうわ」

蒼星石が「え?」と口からこぼれてしまった。それだけ驚きな事であった。
一方のソロモンは察していたのか、それといった動揺は見られなかった。
次元は帽子をさらに深く被り、もう一度「悪い」とだけ言った。

「あなたが行ってどうするのですか?」
「あいつらは……特に圭一はこんな所で死んではいけない奴だと思うんでな。なぁに、危なくなったら助けてやる程度さ」

目はわからなかったが、口調は少し笑みを含んでいた。「これぐらいいつもの事だよ」、みたいな意味が含まれていたかもしれない。
ソロモンは次元や蒼星石に聞こえない声で「任せます……」と言った。
怒る気配は全くなく、むしろそれを受け入れる準備があったかのように、

「6時の放送にC-5で落ち合いましょう。禁止区域になってしまったらB-5、B-6、C-6と最初の方が優先ですので忘れないでください」

と、言った。
それが合図だった。次元はそれを聞くと「サンキュ」とだけ言い、さっき来た道を再び戻っていった。
取り残されるソロモンと蒼星石、蒼星石は次元が見えなくなった途端、ため息を吐いた。

「あなたはどうしたのですか?」
「ん……僕もちょっと心配になってね」
「僕もですよ」

少しだけ上を向いて、少しだけ笑った。
皆同じ思いであったのだ。なんだかんだいって圭一とレナが心配なのであった。
蒼星石は黙ってソロモンを見る。

「だから、次元さんに任せたんですよ。思えば僕達があんな事をしなかったら、もしかしたらここを笑って通っていたのかもしません」

蒼星石は初めてレナと圭一に会った時の事を思い出す。
確かにあの時ソロモンと蒼星石の行為で少なからずレナに疑心暗鬼を抱かせたに違いない。
それが直接の原因かもしれないし、追い討ちをかけたのかもしれない。

「ならば僕達は行かない方がいいでしょう……少なからず僕の事は相当嫌ってますからね……」

やれやれといった感じの苦笑いをとった。蒼星石も「そうかもね……」と呟いた。

「なぁに、彼らならきっとうまくいくでしょう。信じてやりましょう。
僕達は僕達でレナさんでも信頼できるような仲間を探しましょう。彼らと再会したとき文句を言われない為にも」

蒼星石はちょっとだけ吹いてしまった。「レナさんでも」というのがちょっと面白かったからだ。
蒼星石は姉、翠星石の事を思う。
ソロモンもまた、音無小夜の事を思う。
あのレナの姿を見た今、彼らは一刻も早く見つけなければ、と思うのであった。


79 :Birth&death(修正) ◆Ua.aJsXq1I :2007/01/14(日) 23:13:13 ID:BotjT7dL
【B-2B-3の境界線辺り・一日目 昼】



【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:若干興奮、半覚醒(レナと似たような状況に圭一は陥った自分があるのでは? と思っている)
[装備]:コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:レナを救い出す。今はそれしか考えていない。


【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:祟りへの恐怖、雛見沢症候群発症、若干興奮
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:今は圭一との戦いにだけ集中している。


【次元大介@ルパン三世】
[状態]:健康、圭一達がいる場所に急行中
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@ヘルシング ズボンとシャツの間に挟んであります
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)
[思考・状況]
1:早く圭一達がいるところに辿り着く
2:圭一が殺されそうになったとき、助ける。
3:ルパンを探す
4:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す
5:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する
基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない。


【ソロモン・ゴールドスミス@BLOOD+】
[状態]:健康、僅かながらの焦り
[装備]:レイピア
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、白衣、ハリセン、望遠鏡、ボロボロの拡声器(運用に問題なし)
[思考・状況]
1:音無小夜と合流し、護る
2:他4人の知り合いを探す
3:圭一達が生き残ってくれると信じる
基本:次の次(夕方)の放送でC-5(禁止になったら次に該当する場所)に行くようにする。それまでは探索



【蒼星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:健康、少しだけ焦りと心配
[装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、リボン、ナイフを背負う紐、双眼鏡(蒼星石用)
[思考・状況]
1:翠星石と合流し、護る
2:他4人の知り合いを探す
3:圭一達が生き残ってくれると信じる
基本:次の次(夕方)の放送でC-5(禁止になったら次に該当する場所)に行くようにする。それまでは探索


80 :エリア境界線での出会い ◆yj09VBjoeA :2007/01/15(月) 00:12:57 ID:k/sr+dfn
「かなみを殺したやつは何処だっ!ちくしょうっかなみ!かなみ!」

カズマは走る、当ても無く。
目は、太陽に反射して、少しだけ光っている。
それは涙なのか、それとも男の汗か。
ただ、かなみを殺したものへの怒りと、強い悲しさが心を支配した。



「結局、何も無かったか」

グリフィスは遊園地を出て、道路を歩く。
放送まで残り一時間を切っていた。
無駄に時間を浪費したくない。
これ以上遊園地で探索しても、意味が無いだろう。
それより、キャスカを探し出さなくては。
グリフィスはマイクロUZIを右手に携えて、ゆっくり歩き出す。

81 :エリア境界線の出会い ◆yj09VBjoeA :2007/01/15(月) 00:14:12 ID:k/sr+dfn
「なんだっ、あいつは!?」

カズマは、道路の先から歩く男を発見する。
手には銃を持っている。

「ナイフじゃない…いや、ナイフを隠し持っている可能性があるじゃねえかっ!」

カズマはアルターを展開し、グリフィスに向かっていった。



グリフィスは気づいていた。
目の前の男の存在に。
あえて、様子見をした。
どう来るのか。
すると、真正面から突っ込んでくるではないか。

「御老人の次は少年…か」
グリフィスは静かに、マイクロUZIを構える。

82 :エリア境界線での出会い ◆yj09VBjoeA :2007/01/15(月) 00:15:46 ID:k/sr+dfn
【E−5とF−5の境界線の道路・1日目・昼】
【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:健康
[装備]:マイクロUZI(残弾数18/50)・耐刃防護服
[道具]:予備カートリッジ(50発×1)・ターザンロープ@ドラえもん・支給品一式(食料のみ二つ分)
[思考・状況]
1.目の前の少年を殺す。
2.どんな手を使ってでも優勝する。
3.剣を手に入れる。
4.キャスカを見つけ次第、協力させる。


【カズマ@スクライド】
[状態]:激しい怒りと苛立ち、アルター展開中
[装備]:無し
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式
   鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、ボディブレード
[思考・状況]
1.目の前の男をぶっ飛ばす。ナイフが出ればぶっ殺す。
2.目の前の男が、刃物未携帯でも、邪魔すればぶっ殺す。
3.ナイフを持ってるやつは、問答無用で殺す。
4.ギガゾンビをぶっ飛ばす。
5.君島と合流
6.わずかに、なのはが心配

83 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:07:56 ID:jU7nAQH2
蹲る長門有希の目の前に突如として浮かび上がった四枚の花弁を持つ桃色の花。
それは吸血鬼の一撃を受け止めると、粒子となって舞い散り再び空気の中に姿を消した。
そして再び開けた彼女の眼前には、吸血鬼と対峙する真紅の外套を纏った男の姿があった。

彼女を襲った吸血鬼。そして今彼女の窮地を救った男。
どちらも彼女からすれば未知の存在だった。
単純な現象の結果として現れる生物ではなく、概念として現れる彼女達とはまた別種の存在。

長門有希は急激に展開する事の推移を、自身の回復を進めながら見守った。


84 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:08:52 ID:jU7nAQH2
以外な再開に吸血鬼は驚く。一度は逃した男。何故再び現れたのか?

「……また会ったな掃除屋」

皮肉めいた笑みを顔に浮かべる。以前と変わらないのなら、少女諸共この場で殺してしまえばいい。
だが、相対する男――アーチャーが吸血鬼の台詞を訂正する。

「今はただの弓兵――アーチャーだ」

ほう?と、吸血鬼が目を細める。実に楽しそうに。新たな玩具を手に入れた子供のように。

「どうやら走狗(いぬ)から人間に戻ったようだな。ならば私の前に立つに相応しい。
 いいだろう――ならば弓兵よ。私は吸血鬼。名はアーカード。
 貴様の弓でこの私の心の臓腑を撃ち貫いてみせろ。
 兵の職務を果たしこの化物を見事狩りとってみせろ――ッ!!」

対峙する弓兵は己が獲物の正体に戦慄した。
――アーカード。どの世界どの時代に措いてもその名が持つ意味は一つ――『真祖の吸血鬼』
成る程、只の吸血鬼ではないのだと弓兵は納得する。
陽光の下に立っていることから格の高さは窺えたが、遥かに予想を上回る存在。
少なく見ても三倍……それ以上だと彼我の戦力差を見積もる。

「どうした?かかって来ないのか?お前の獲物は此処にいるぞ?」

ぞわりぞわりと吸血鬼の身体がざわめき、長門有希から受けた傷が元の状態へと還っていく。
弓兵はその様子をじっくりと解析する。
身に着けていた着衣まで元に還す能力。それは再生や回復といった生易しいものではない。
どれだけの傷を負おうと易々と死ぬことを許されない彼らに課せられた呪詛の力。
真核から溢れる魔力による破損した部分を過去へと還す能力――復元能力。
彼らは人の形(かたち)をしてはいるがそうではなく、人の容(かたち)をした化物なのだ。
いくら刃を、矢を、銃弾を、魔法を叩き込もうともそれは水面に石を放り込む行為に等しい。
波紋起こし形を変えることはできても、それだけでは彼らの命には届かない。

「ここだ。此処を狙え弓兵。私を討ち滅ぼすにはここを――心の臓腑を抉るしかない」

吸血鬼が心臓の上をトンと指で突く。
そう。吸血鬼の根本的な弱点は過去現在未来一切変わらない。
呪詛と命の媒介――血液。それらを汲み出し送り出す心臓。そこを破壊すること。
あくまでそこが真の吸血鬼の本体なのだ。目に見える人の形はそれの映し出す影にすぎない。
ならばこの生存競争の参加の証明であり枷でもある首輪が頭と身体の間にないのも当然だ。


85 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:09:42 ID:jU7nAQH2
相手は強大無比な真祖の吸血鬼。ならば最大の奥義――無限の剣製で挑むか?
答えは否。固有結界を展開、維持するにはこの空間の魔力消費では大きすぎる。
吸血鬼を討ち取る前にこちらの魔力が底をつくだろう。ならば――

弓兵は夢想する。この吸血鬼を倒し得る剣を。
自身の中にある無限の剣の中から目の前の吸血鬼を討ち取れる剣を探す。
重要なのは強さではなく属性。神格の高い英雄同士の戦いが常にそうであるように。
そして一本の剣を選び出す。
心の内に広がる風景の中からその一本を抜き出すと現実の手の中に投影を開始した。

その様を吸血鬼は興味深げに見守る。それが自身の願望を満たしてくれると切望して。

「……それが貴様の切り札か。成る程、らしい武器だ」

――赤原猟犬(フルンディング)。
漆黒の螺旋剣。それと同じ闇色の弓が弓兵の手の中にあった。
弓兵は無言でその剣を弓へと番い、魔力を込めて弦を引く。
魂を命の糧とする怪異――魔の属性を持つ者との間では言葉を交わすことさえも消耗となる。
ただ剣によって応えるのみ。

「さぁッ!! その刃を見事私の心臓に突き立ててみせろッ!! 人間――ッ!!」

瞬間。赤い閃光が二人を繋ぐ。

――ギイィィィ……ンッ!!
鈍い金属音を立てて赤い閃光――赤原猟犬(フルンディング)があらぬ方向へと反れる。
吸血鬼の前には煙を吐く対化物戦闘用13mm.拳銃ジャッカル。

これでこの勝負は決着したのだろうか?――いやそうではない。
弾かれた矢が空に真紅の軌跡を残し弧を描いて舞い戻り再び吸血鬼を襲う。
これが、赤原猟犬(フルンディング)――必中の矢。
射手が立っている限りその矢は決して地に落ちない。

――ギイィィィ……ンッ!!
再び金属音……、再び……、再び……、再び…………
必中の矢は繰り返し吸血鬼を――その心臓に突き立たらんと赤い軌跡を描く。

弓兵はその全身全霊を矢へと送り込む。
あの剣こそが吸血鬼狩りに彼が出した回答。選択。二の矢は無い。
この特殊な空間内において魔力の集中は激しい消耗を伴う。
残された時間は多くは無い。後何度、あの剣に吸血鬼を襲わせることができるのか。

86 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:10:50 ID:jU7nAQH2
長門有希は目の前の、情報としても現象しても理解の及ばない戦いをただ静かに視ていた。

赤い閃光――追尾属性を持たされた矢があの化物を襲っている。だが、それは肉薄する度に
化物の持つ銃によって撃退されており、いまだ傷一つつけられないでいる。
目の前で矢を操る化物と同じ赤い男。彼と自分は化物を倒すという目的で利害が一致している。
ならば、この機に乗じて自分もまた攻撃を再開すべきではないか?

だがしかし、自分の取り得る手段はもう残り少ない。
機関銃は失い。右手に残った拳銃の残弾も残り二発のみ。攻制情報情報も消費してしまっている。
何より身体の回復がまだ完全ではない。このコンディションは満足な戦闘行動を取るには不十分。

――思いつく。戦闘に関連する情報としては下位に置かれていた一つの道具。
タヌ機と名前の付いたあの精神誘導装置。あれなら、あれならば動かずとも使える。
あれであの怪物の動きを止めることが出来たなら、止めは目の前の男が指してくれるはずだ。

長門有希は僅かに震える右手を不自由に使い、デイバッグから眼鏡と尻尾を取り出した。

87 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:12:41 ID:jU7nAQH2
――!?

吸血鬼アーカードは闘争の最中、突如として夕闇の荒野へと放り出された。

――此処は。この場所は……
そう、この場所は吸血鬼にとって忘れられない場所。100年前――吸血鬼の最後の場面。

『――お前の負けだ』
銀の銃弾が吸血鬼の胸を撃ち抜く。鮮血が迸った。
そこにはマスケット銃を構えた一人の男がいた。

――アーサー・ホルムウッド!?

『もう、お前の下僕は全て倒してしまったぞ』
再び銀の弾丸が吸血鬼を襲い、新しい傷からまた血が迸る。
吸血鬼を追い詰めるのは一人だけではなかった。

――キンシー・モリス!?

『後はお前だけだぞ吸血鬼』
三度、吸血鬼が銀の弾丸に討ちぬかれ地面に赤い花を咲かせる。
さらにもう一人新しい男が現れる。

――ジャック・セワード!?

『彼女はお前のものになんかならない』
四人目。最後の男がその手に白木の杭を持ち吸血鬼の目の前に現れる。

――エイブラハム・ヴァン・ヘルシング!!

四人の狩人が吸血鬼に詰め寄る。
『もう終わりだ』『醒めない悪夢などない』『お前には何もないぞ』『哀れな不死の王』

――私の負けか?

『そうだ。お前の負けだ』
最後の男が白木の杭を手に吸血鬼に詰め寄る。
その手を振りかぶり吸血鬼の心臓へ振り下ろした――が。

クックックッ……ハハ……HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA……!!

吸血鬼が哂う。声を上げて哂う。愉快そうに。そして不愉快そうに。
その手に受け止められた白木の杭は握りつぶされ幻と消えた。

――この私相手に幻術とはやってくれる。だが!

吸血鬼に幻覚を見せることはできても、玄覚に魅せること能わず。
第三の眼によりバリバリと音を立てて幻が破られる。夕闇の広野も。四人の狩人も。破られ消え去る。
吸血鬼は悪夢より現世に帰還する。

88 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:14:18 ID:jU7nAQH2
弓兵は――狩人はただ吸血鬼を撃ち続ける。
矢を弾く金属音が鳴り止み、その音は肉を抉り、骨を砕き、血を吐く音へと変わった。
理由は解らない。だが、吸血鬼の迎撃は止まった。

――好機! 倒れろ吸血鬼(アーカード)!!
赤い閃光を暴れ狂わせる。赤い螺旋が吸血鬼を解体していく。
消え去る前の一瞬の激しい燃焼。最早猶予は少ない。
だがしかし、魔剣が吸血鬼の心臓を捕らえるのもまた時間の問題。


――吸血鬼の手首が飛びその巨大な拳銃が地面に落ちる。

――腹を貫かれた吸血鬼が身体を折る。

――吸血鬼の撃ち抜かれた肩から鮮血が迸る。

――下肢を失った吸血鬼が膝を地に付く。

――吸血鬼の頭蓋が吹っ飛び下顎が顕になる。

――破けた吸血鬼の腹から内臓が零れでる。

――吸血鬼の肺が破れ顕になった喉穴から血の泡が吹き出る。

――腋下を撃たれた吸血鬼が独楽のように廻る。


血を、肉片を、骨の欠片を、脳漿を撒き散らし吸血鬼が踊る――踊る――踊る。
己が血で引いたラインの上で身の毛もよだつ死者のタップを踏む。
血を吹雪かせ赤い閃光と共に真紅の舞台を演出する。

それは不意にピタリと止んだ。そして哄笑。

「クックックッ……ハハ……HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA……!!」

弓兵の放った矢は吸血鬼の心臓の上でその腕に捕らえら砕けて消えた。

89 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:15:11 ID:jU7nAQH2
「”惜しかったな”」

頭の無い吸血鬼が喋る。
弓兵の放った乾坤一擲の一撃はあと僅かの所で絶命に届かなかった。
再びぞわりぞわりと吸血鬼が姿形を取り戻す。対する弓兵は疲労困憊。絶望的な状態である。
が――、

「いいぞ。人間。その目だ。その目だけがこの化物を追い詰める。
 ――狂信か?猛進か?勇気か?蛮勇か?なんでもいい。一欠けらでも力が残っているのなら、
 諦めていないのなら、私の前に来い」

弓兵は諦めない。いや、諦められない。
伝説の吸血鬼。それを倒すのはいつも力弱き人間だ。何故か?
吸血鬼。それを討ち倒すのに必要なのは力でなく物語。人が物語を起こし、物語が奇跡を起こす。
諦めが人を殺す。ならば引くことはできない。例え勝利の可能性が無に等しくても。

最後を目の前に弓兵は自分に課した役割を果たすべく背後の少女に話しかける。

「もう動けるようになっただろう?今のうちに君は逃げるんだ。今、君に機は無い」


――機は無い。長門有希は考える。
事の成り行きを見守りながら両者の情報解析を進めていたが、結果は「UNKNOWN」
彼女には未知の文法で組み立てられており、解析を進めるには情報統合思念体による
コンバートが必要と判断。だが此処ではそれは期待できない。
あの男――底知れぬ力を振り回す真紅の化物。
今もあの化物を見ているだけでチリチリとしたノイズが走り、傷ついた涼宮ハルヒの顔が
フラッシュバックする。ノイズが生み出す衝動で拳銃を持つ手に力がこもる。
だが、この拳銃の中にはもう二発しか弾丸は残されていない。
機関銃は失った。攻性情報も消費している。左腕の骨折の回復にも時間が掛かるだろう。
そして、タヌ機――これも決定打とはならなかった。

長門有希の中の大部分は未知の敵からの撤退を推奨している。勝機は無い。
しかし、情報の奥底から沸々と湧き上がり思考を乱すノイズがその選択を許そうとしない。

――次はない。
それが葛藤する長門有希の今の結論だった。
それは人間で言う所の負け惜しみでしかなかったかもしれないが、彼女自身は涼宮ハルヒの
生命の維持を最優先とする冷静な判断だと自分自身を納得させた。

長門有希は静かに立ち上がると、今一度真紅の化物を目に焼付けその場を去った。

90 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:15:57 ID:jU7nAQH2
弓兵は安堵する。
返事はなかった。だが少しの逡巡の後、彼女が場を去るのが気配で解った。
後は目の前の怪物に討ちかかることだけ。
デイバッグより”最後の剣”を取り出す。何時かの自分が作った無銘の剣。

――なんの因果か。弓兵は想う。
全ての場所。全ての時代。一瞬でありまた無限でもある守護者としての戦い。
その那由多の果ての今この瞬間、自分は守護者でなく、自分でありながら此処に在る。
化物を、吸血鬼を、脅威を、死を前に。逃げる少女を、迷う少年を、幾多の弱者を背に……
そして手には”俺の剣”。あの時の剣が今この手の中にある。
あの時の俺が切望して止まなかったモノ。そしてあの時より絶望して已(や)まなかったモノ。

――正義の味方。

時を越え、運命を越え、物語を越えて今此処に在る。


弓兵は無銘の剣を片手に吸血鬼に討ちかかる。
吸血鬼相手の近接戦闘。それはもう無謀とすら呼べる代物ではない。
剣戟を二度合わせた所で左腕が落とされた。数えて二度目になる。
だが諦めない。何よりも自身が望んだ奇跡が此処にあるのだ。
果てればまた苦い記憶として残るだけ、またはただ朽ちるだけかもしれない。
だからせめてこの刹那を魂に刻み込まんと剣を振るう。

――素晴らしい。相対する吸血鬼は想う。
これが、これが人間の持つ可能性だと。これこそが化物を倒し得る唯一無二の白木の杭だと。
素敵だ。人間は本当に素晴らしい。


――そして決着はついた。

91 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:17:26 ID:jU7nAQH2
吸血鬼は命の抜け殻を抱え想う。
彼の血。命の銀板。魂の記憶。
彼もまた無限の地獄を生きる化物であった。
だが、最後の瞬間まで人間を諦めてはいなかった。
その彼が振るう刃は吸血鬼を討ち取る寸前の域にまで達していた。

ならば何故自分が――化物がまだ立っているのか。

それは彼がその自らの望む者であることに拘泥したためだ。
そのため彼の物語は悲劇に終わった。
化物の悲願は果たされなかった。

化物に物語りは無い。
できるのは化物を破滅させる物語を紡ぐ者を待つことだけ。

また永い時を闇の中で待つか?――いや、「お楽しみはこれからだ」

此処にはまだまだ化物を倒す物語を紡ぎえる存在が幾人も存在するはず。
例えば、夕闇の中で不義を見守るもの。
例えば、不完全を克服せんと抗う人形の少女。
例えば、己を知らぬ観測者。
時を措かずしてそれらと、または未知の何者かとあいまみえることだろう。

吸血鬼は哄笑する。
破滅の予感に。自らを打ち倒さんとする者の足音に。

「クハハハハハハハハハハハハハハ…… 来いッ!! 人間どもよッ!! 私は此処にいるぞ!!」

吸血鬼は一頻り笑うと。
次の物語を待つために一度舞台袖へと姿を消した。

92 :正義の味方U(代理投下):2007/01/15(月) 01:18:32 ID:jU7nAQH2
 【E-3 市街地/1日目/昼】


 【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
 [状態]:疲労/微熱/左腕骨折/背中に軽い打撲/思考にノイズ/SOS団正規団員
 [装備]:S&W M19(残弾2/6)
 [道具]:デイバッグ/支給品一式/タヌ機(使用済み)
 [思考]:
  1.ハルヒ達の元へと戻る。
  2.怪我人達を治療するために病院へと向かう。
  3.残りのSOS団メンバー及び仲間の知人を探し合流する。
  4.アーカードへの対抗策を模索。武器となる物や手段を探す。



 【アーカード@HELLSING】
 [状態]:全身に裂傷(回復中)
 [装備]:なし
 [道具]:対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾無し)
 [思考]:
  1.不愉快な陽光を避け日が落ちるまでは積極的には動かない。
  2.だが、獲物の気配がすれば闘争に赴く。



 【アーチャー@Fate/stay night  死亡】

 [E-3 市街地にアーチャーの遺留品が落ちています]
 [道具]:デイバッグ(×2)/支給品一式(×2)/チャンバラ刀専用のり

93 :約束された勝利/その結果 1/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:36:56 ID:fvJW9azW
『朝比奈みくるは無事です。ここには戻りません』

音無小夜はそう書かれた書き置きを、そっとテーブルの上に戻す。
朝比奈みくる――――鶴屋さんはSOS団のメンバーの一人だと言っていた。
彼女の親友であるとも。

「そっか……。無事なんだ……」

この殺し合いの場で、普通の女子高生であるらしい朝比奈みくるが、少なくともこれを書いた時点では、五体満足で居たことは歓迎すべき事だ。
思わずこぼれた安堵の微笑を小夜は引き締める。
彼女には会って謝らねばならない。
鶴屋さんを殺してしまった事を。
その為にも彼女の足取りを追う必要がある。

『彼女はここには戻らないと書いてある……。つまり明確な目的地があったと言うこと?』

彼女も聞いたのだろうか?イーロク駅に残されていた留守電メッセージを。
先ほど訪れた駅で自分が聞いたのと同じ物を。
D-5エリアのホテルに脱出を目指す参加者を集めていると言うことを。

『彼女がこのゲームに乗っていないなら、そこへ向かった可能性は高い。いや、例えそこに居なかったとしても、私はそこに行きたい!電話の声の主を信じたい!』

元々駅の周りを一通り見て回ったら、まっすぐホテルに向かうつもりだった。
SOS団員の所在の可能性がそこと重なった今、躊躇する理由は何処にもない。

「無事でいて……」

まだ見ぬ朝比奈みくる他SOS団のメンバーの無事を祈りつつ小夜は喫茶店の扉を開いた。
人間ですらない自分でも、願うだけなら許されるはずだから、などと考えながら。


◇ ◇ ◇

94 :約束された勝利/その結果 2/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:38:47 ID:fvJW9azW
「あれが……」

小夜が見上げた先には、周りと比べて一際高いビルディングがそびえ立っていた。
左手に見えるレジャービルの方が少し高いものの、目立つことには変わりない。
小夜は目的地のホテルの数百メートル手前まで来ていた。

「?」

建物に微妙な違和感を覚える。
目を凝らして見ても、外装が剥がれていたり、窓ガラスが割れていたりはしないのだが……。

『何か……危うげで……今にも崩れてしまいそうな』

罠の可能性が頭をかすめたその時、小夜の優れた聴覚が何者かの足音を捕らえた。
とっさに物陰に身を潜める。
そっと音がした方を見ると時代錯誤な甲冑を纏った褐色の肌の女が、駆け足でホテルとは逆の方向へ向かっていた。

『真逆ホテルで何かが……!』

声を掛けなければ。
女からホテルでの状況を聞かなければ。
だが、先程鶴屋に騙され、不意を付かれて腹を刺された苦い思い出が、僅かに小夜を躊躇させた。
結果的に、その躊躇が小夜に女を観察する時間を与える。
その短い時間の中で小夜は気付いてしまった。
女の持つ剣が、刃こぼれ一つしていないものの、何かの血と油でてかてかと光っていることを。
そして嗅ぎ慣れた匂いが小夜の鼻まで到達する。
瞬間、小夜は物陰から飛び出していた。
まるで弾丸のようなスピードで、一気に女に肉薄する。

「――ッ!」

小夜の接近に気付いた女がとっさに剣を構えるが、連戦による疲労の為一瞬遅れる。
その一瞬の間に、小夜の右拳が女の持つ剣を弾き飛ばしていた。
そのままの勢いで足を引っかけ、一気に女を仰向けに押し倒す。
即座に女が起き上がろうとするが、すでにその首筋にナイフが突き付けられていた。

「く……!」
「答えなさい……貴女はあのホテルで一体何をしていたの」

95 :約束された勝利/その結果 3/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:40:16 ID:fvJW9azW
その女、キャスカは後悔していた。
いましがたまでの戦闘の高揚を引きずったまま、周囲への警戒を忘れていた。
傭兵にとって本陣に戻るまでは決して油断などできないのは常識であるのに。
強くあろうと心に誓ったその直後にもうこんな失態をしてしまった。
つくずく自分を呪い殺したくなる。

「…………」
「答えろ――――ッ!」

目の前の少女は激昂している。
キャスカが少しでも余計な動きを見せたら即座にナイフを突き立て兼ねない。
駄目だ。
こんなところで諦めてたまるものか。
そんなことではグリフィスに……ガッツに追い付くことなどできはしない。
キャスカは口を開くと、そのまま少女の持つナイフに囓り付いた。

「!」

単純な力の差を比べるならば、キャスカは翼主の女王たる小夜には全く及ばないだろう。
しかし、小夜は躊躇した。
ここで口蓋に刃を押し込めば、間違いなく相手は絶命する。
それに剣が血に塗れているからと言って、目の前の女は正当防衛で斬らざるを得なかったのかも知れないし、たまたま剣を拾った可能性だってある。
その一方、キャスカは自分の命など惜しまなかった。
死ぬことを恐れれば、その恐怖が自分の足を引っ張り、臆病が太刀筋を歪める。
その覚悟の差が、キャスカを窮地から救った。
キャスカはナイフを咥えたまま立ち上がり、即座に飛び退くと黄金の剣を拾い上げた。
一方的な展開が一転、勝負は振り出しに戻る。

「答えなさい、貴女はあそこで何をしたの」

小夜が再び問う。

「知れた事……数人この剣の錆にしてやったまでさ。お前と同じようにッ!」

キャスカが一息で間合いに踏み込み、一閃。素早く、そして確実だ。
とっさにバックステップで避けつつ、小夜はキャスカの技量に驚嘆した。
今まで自分よりも力やスピードで勝る相手と何度も相対してきた。
人数や装備の面で自分達が劣っていた事もしょっちゅうだった。
しかし、これ程までに技能の面で優れた相手と戦う事態はそうはなかった。
ならば自分はパワーと素早さで攻めるしかない。
この時点で、小夜から迷いは消えていた。
この人物を捨て置けば、争う意志のない人まで次々と手に掛けて行くだろう。

『私が……やらなきゃ!』

96 :約束された勝利/その結果 4/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:41:00 ID:xJ742HQB
今度は小夜が先制。
地面を蹴り一気に加速すると、残像を残しながら一瞬でキャスカの背後につく。
キャスカは敵を見失っても狼狽することもなく、今まで戦場で培ってきた勘に従い前方に倒れ込む。
甲冑をナイフの先端がかすめて火花が散った。
後一瞬遅れていたらキャスカの頚椎が真っ二つになっていただろう。
本来、ナイフは刺して攻撃するもの。斬るのには向いていない。
それでもこの斬撃は容易く甲冑を破り、人体を両断し得るだろう(同時にナイフも御釈迦だろうが)。
それほどの勢いだった。ガッツとタメを張れるかもしれない。

『『強い!』』

相対する両者は双方の実力を理解した。
なればこそ、双方とも引く訳には行かない。

一方はこれ以上罪無き犠牲者を増やさない為。
もう一方は崇敬する者に一歩でも近付く為。

それぞれの願いを胸に、両者は同時に踏み出した。

視界から小夜が掻き消える。
キャスカは走りながら必死で敵の気配を手繰った。
相手が自分の間合いに入る、その瞬間を狙って。

『……左!』

そこから袈裟掛けを仕掛けるつもりか。
呆れる程単純で、かつ荒事していることを匂わせる選択。
先程はその人間離れしたスピードに驚いて遅れをとったが、一度手の内を見た後はそうは行かない。
キャスカは小夜の方を振り向かず、エクスカリバーを必勝のタイミングで左方へ振り切り――

剣は、空を切った。

「な……に……」

左脚にナイフが刺さっている。
左側を向くと、エクスカリバーのリーチのギリギリ手前で、小夜がナイフを投げつけた格好のまま後ろに倒れ込んでいた。
信じ難いことに、ナイフは大腿骨を砕き、大腿動脈を掠めている。
正に人間離れした所業だった。
キャスカは左脚の支えを失って倒れ込んだ。
だくだくと血が流れ出していく。

『負けた……のか……』

ゆらり、と幽鬼の様に小夜が立ち上がる。
止めを刺すべきか、捨て置くべきか、助けるべきか、小夜は葛藤しながらショットガンを取り出すために離れた所に置いてある自分のデイバッグに向かった。

97 :約束された勝利/その結果 5/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:41:55 ID:fvJW9azW
『死ぬ……のか?』

死ぬ訳には行かない。自分はまだ、たった一人しか屠っていない。
こんな中途半端な相手に殺されてしまう様では、グリフィスの剣になれはしない。
この程度の傷で諦めていては、ガッツを殺すことなど出来る訳が無い。
まだだ。
まだこの剣がある。剣は、地べたに這いつくばる惨めな自分を見放してはいない。
ならば。

『ならば……必勝の名を冠す黄金の剣よ!私に今一度力を!』

キャスカは激痛と足が砕ける恐怖に耐え、立ち上がった。
こちらを注意していた小夜は、特に慌てるでもなくショットガンを向ける。
キャスカにはどんな武器かは判らなかったが、それが離れた位置から自分に致命傷を与え得るものであることは理解できた。
小夜との距離は4、5歩程。間合いを詰めるまでにキャスカは攻撃されるだろう。
それでも

『構わない!ここで終わる前に、一太刀でも与えられるなら!』

その瞬間。
閃光が弾けた。
キャスカはその手にある剣の真の名を理解した。
そしてその剣の持つ力の断片が自分と継った事を感じ取った。

『これは――?』

戸惑いは一瞬。
自分が為すべき事も、その結果も手に取るように判った。
それを実行するだけだ。

      エクス
「――――約束された」

キャスカの掲げ持つ剣が眩い光を発し始める。
小夜はその脅威を肌で感じ取り、先手を打つべく引き金を引く。
それと同時にキャスカは剣の真名を開放した。

  カリバー
「勝利の剣――――!!!」

そして――――
空間が断裂し、全てが閃光に飲み込まれた。


◇ ◇ ◇

98 :約束された勝利/その結果 6/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:42:50 ID:fvJW9azW
市街地の一角。
一直線に3軒程の民家が倒壊していた。
その惨状はまるで局地的に怪獣が行進し炎をまき散らした跡の様だ。
支柱はことごとく焼け落ち、壁面はあらかた崩壊し、原型を留めている物は殆どない。
その惨状の始点、怪獣が空から舞い降りた場所から、キャスカは這いずりながら移動していた。
その足は完全に折れ曲がり、今なお傷口から血が滴り流れ出ている。
それでも、キャスカは笑っていた。

『やった!私は……力を手に入れた!この剣があれば……グリフィスは私を見てくれる!グリフィスの剣になれる!ガッツの…………』

どこかの民家の影に身を潜めると、そのままキャスカの意識はぷっつりと途絶えた。


◇ ◇ ◇


D-6エリアの中程。
ガッツはやっと山道から開放され市街地に入った。

「やれやれ、怪我を押しての強行軍には慣れっことは言え、キツイのは変わりないぜ」

一人ぼやきながら街中に入り、辺りを見回す。
奇妙な街だった。
木造の壁に瓦を張った屋根の家もあるが、大半の建造物は何か石のような材質で出来ていて、継目が全く無い。
地面もそれと似た材質の何かで舗装されている。
所々に立っている細長い石柱には黒い縄が渡されている。罪人を吊るし上げるのにでも使うのだろうか?

「真逆、ここは幽界(かくりよ)のどっかだって言うつもりじゃねえだろうな」

しかし、先程まで同行していたみさえと沙都子の話を聞く限り、彼女らが居た元の国、ニホンでは自分の知らない様々な設備、文化が根付いているらしい。
今まで出会った自分を含めて三人の内、ニホン出身が二人。
つまりこの場では、自分の方が異邦人と言う訳か。
これがニホン独特の都市景観と言うならば納得できる。
兎に角、先程聞こえた爆発音、木々のせいで反響して厳密な方向は掴めなかったが、まずはそこに向かうことにしよう。

99 :約束された勝利/その結果 7/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:43:56 ID:fvJW9azW
「ん?」

よろよろと、黒髪をショートカットにした少女が西の方からこっちに向かって来た。
怪我人を装った罠かと思い、油断なくバットを構え、周囲を警戒する。
と、ガッツまで10メートル程の所で、少女はばたりと崩れ落ちた。
その衝撃で傷口が開いたせいか、血溜りが広がり始める。
抱え起こすと左半身に酷い火傷と裂傷を負っていた。
再生を始めているようだが追い付いていない。
どう見ても致命傷だった。

「おい、生きているのか?誰にやられた?」
「……女、褐色の肌で……鎧を着てて、剣を……」

褐色の肌……キャスカの姿が脳裏に浮かんだがすぐに打ち消した。
あいつは今、そんなことが出来る状態じゃない。

「足を怪我してる……私の他に何人も……彼女を……止めて」
「傭兵にタダで物を頼む気か?」
「私の……支給品を……」

死人の持ち物などあの世に持って行ける訳でもない。
交渉材料としてはお笑い種にしかならないが、そんなことを指摘しても面倒になるだけだ。

「判った。で、そいつは今どこに居る」
「…………」
「おい」

その少女、小夜にはもうガッツの声が聞こえていなかった。
彼女の耳にはチェロの音色が聞こえていた。
優しい、ゆるやかな、チェロの独奏が。
小夜は、ゆっくりと瞼を閉じた。

「…………」

ガッツは少女の心拍が止まった事を確認すると、そっとその身を抱え上げた。
野晒しにするのは忍びないので、埋葬するか、ベッドに横たえるかさせてやろう。
名前も知らない、会ったばかりの少女にそこまでする義理なんて無いのにな、と静かに自嘲する。
まあ良い、支給品を貰うついでだ。サービスしてやろう。

「脚を怪我してるんだったな。そいつが遠くに行かねえ内に済ませちまうか」

ふと見上げると、あの仮面の男の姿が再び浮かび上がってきた。
二回目の放送が始まるようだ。
おそらくこの少女の名前も呼ばれるのだろうな、と何とはなしにガッツは思った。

100 :約束された勝利/その結果 8/8 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/15(月) 12:44:51 ID:fvJW9azW
【D-6中央部/1日目/昼(放送直前)】

【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:全身打撲(治療、時間経過などにより残存ダメージはやや軽減)
[装備]:バルディッシュ@リリカルなのは、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、ボロボロになった黒い鎧
[道具]:スペツナズナイフ×3、銃火器の予備弾セット(各160発ずつ)
   首輪、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5)
   ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、支給品一式、デイパック2人分
[思考]
1:小夜の死体を手早く処理
2:キャスカを保護する
3:褐色の肌で鎧と剣を装備して脚に怪我をしている女を殺す
4:自分の剣、もしくはそれに近いもの? を持っている奴を探す
5:オレの邪魔する奴はぶっ殺す、ひぐらしメンバーに警戒心
6:首輪の強度を検証する
7:みさえや沙都子の事がやや気にかかる 、しんのすけを見つけたら(余裕があれば)保護し、みさえの事を教える
基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集
最終行動方針:グリフィスを探し出して殺す

【D-6南西部】

【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:気絶、左脚複雑骨折+裂傷、魔力(=体力?)消費甚大
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、ハンティングナイフ(脚に刺さったまま)
[道具]:支給品一式(一食分消費)、カルラの剣@うたわれるもの(持ち運べないので鞄に収納)
[思考・状況]
1:エクスカリバーを使いこなせた歓喜。
2:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
3:グリフィスと合流する。
4:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。

【音無小夜@BLOOD+ 死亡】

101 :暴走、そして再会なの! ◆lbhhgwAtQE :2007/01/15(月) 18:44:55 ID:+TRLBQ0r
それは彼女が経験したものを遥かに凌駕した速さだった。
「どうだい? このスピード感爽快感優越感! 気持ちいいでしょ〜〜なのかちゃん!!」
「な・の・は! 高町なのはです〜〜!!!!」
クーガーに背負ってもらっている魔法少女、高町なのはは人間はここまで速く走れるものなのかと身を以って実感していた。
空中戦の経験のお陰で高速移動や3次元の動きには慣れているので、かつて彼に振り回された少女のように酔うような事は無い。
しかし、だからといって彼女が平然としていられる訳ではなかった。
「この速さを以ってすれば、なのかちゃんの友達だってすぐに見つけられるから、安心していてくれよ!」
「だから、な・の・はあああああああああ!!!」
困惑を隠せないまま、クーガーに乗せられた二人目の乗客は市街地の南部を爆走していた。
……いや、させられていた。


クーガーとなのはが市街地の南方で爆走している頃。
専業主婦、野原みさえはホテルの入口前にまでやってきて、その惨状に唖然としていた。
「……な、何なのよ、これは」
目の前に見えるのは完全にガラスが砕け散り、フレームだけになった自動ドア。
そして、その向こうにある見るも無残なロビーの光景。
何者達かによる交戦があったのは目に明らかだった。
「まさか、この中にしんのすけが……」
そう呟き、みさえはその中へと入ろうとする……が、その刹那、轟音と強い揺れが建物全体を襲った。
「な、何!?」
1階ロビーもその余波を受けて、天井からパラパラと粉状になったコンクリートが降り、フロアを支える太い柱に僅かだがひびが入る。
それを見てみさえは悟った。
交戦があったのではない。今なお、交戦が続いているのだ、と。
そして更に言えば、このホテルが強度的に危険だと言うことも。
「て、鉄筋不足とかってレベルじゃないわよ、これは……!」
しんのすけを探したい気持ちは変わらないが、倒壊や交戦に巻き込まれるといったとばっちりを被ってしまっては身も蓋もない。
みさえは慌ててホテルから脱出し、進路を一路、南に向けた。


「待ってて、ゲイン。……今すぐに風ちゃんを見つけてくるからっ!!」
みさえがホテルを離脱してから、間もなく。
ホテルでの戦闘を終えた光は風を探すべく大通りへと出ると、道を飯鹿駅方面――東へと向かっていた。
最初に自分がいた北東の山間部、そして現在いる東部市街地。
そのどちらでも、探し人の姿は見当たらなかった。
ゆえに彼女は風が西部にいると推測、そこへ行く手段として鉄道を選んだのだ。
「電車……運賃いるのかな。私、お金どれくらい持ってたっけ……」
ポケットをまさぐるが出てきたのは……
「キャンディ……だけ?」
それは、プレセアに武器を作ってくれるように頼みに行った時と同じような状況だった。
光は溜息をつく。

そして、そんな彼女が東進した先にあった交差点にて、南下してきたみさえと遭遇したのはそれから間もなくの事であった。

102 :暴走、そして再会なの! ◆lbhhgwAtQE :2007/01/15(月) 18:48:04 ID:+TRLBQ0r


光が見る限りでは、みさえの格好はラフで手には何も持っておらず、いきなり自分に危害を加えてくる危険性はなさそうだった。
だが、みさえは突然鉢合わせになった光を見て、明らかに動揺し更には警戒をしていた。
……確かにこのような状況である為に、疑われるのも無理はないが、このまま誤解されたままでは何かと都合が悪い。
光はこちらを見ながら後ずさりしつつある女性に、声を掛けた。
「あ、あの……!」
声に反応したのか、みさえは声を出した瞬間にぴたりと動きを止める。
「……えっと……こ、こんにちは! 私、光――獅堂光!」
「あ、こ、こんにちは……」
止まった隙を好機として警戒を解く為に、なるべく元気な口調で喋り笑顔を向けると、みさえも警戒が解かれていくように返事をしてくれた。
……どうやら、元気な挨拶で相手の警戒を解くという光の作戦は成功したようだった。
作戦の成功に胸を撫で下ろすと、光は言葉を続ける。
「えっと……オバサンの名前は……」
その何気ない一言が、相手の顔を強張らせることになる事に気付くはずもなく。
「野原みさえ、一応20代よ。よ・ろ・し・く!」
現役女子中学生の光には何故みさえが怒ったような口調になっているのかは当然、分かるはずもなかった。


みさえと光が顔を合わせている一方で……。
「いや〜人っ子一人見当たらないねぇ、なのかちゃん!」
「私の名前は、な・の・は、だってばぁぁ〜〜」
「まぁ、見つからなければ、もっと探せばいいこと。俺のスピードをもってすれば、それも実現可能容易楽勝!!」
飯鹿駅を中心に路地裏まで探し回っていたクーガーなのは組は、次第にその捜索範囲を北へと移していた。
「あ、あの、クーガーさん。もうちょっとスピードを落としても……」
「何を言ってるんだい! 移動時間も速ければ速いほど、他の事に割ける時間が増える! すなわち、今何よりも必要なのはスピードってことなんだよ、なのかちゃん!!」
「だから、なのは…………」
この頃になってくると、なのはも諦めはじめる。
ヴィータだって、“高町なんとか”だの“なにょは”だの散々間違えていたが、最後はちゃんと名前を呼んでくれたではないか。
それに、彼の言うとおり今はフェイトを探すことに専念したい。ならば彼の言うことは尤もだ。
……そうでも思わないと、やっていけなかったのかもしれないが。
「それにしても、街だって言うのに本当に誰も見当たりませんね」
「う〜ん、それは俺も思ったところだ。この調子だと、もしかしたらここらには誰もいないのかもしれないねぇ」
「そうだとすると、フェイトちゃんはもっと西のほ――――あ、あれ? ねぇ、クーガーさん、前に誰かが」
クーガーの肩越しに指差した先、前方の路上には確かに二人分の人影があった。
まだやや遠いので、はっきりとは見えなかったが、一人は赤いセーラー服のような服装が目立っていたことだけは分かる。
「あれ、赤いセーラー服って……」
なのははそこで気付く。
そんな事を離していた男の存在を。
それはまさしく、今背負ってもらっているクーガーその人で……。
「見つけたっ!!! ついに見つけたぜ、赤の少女!! なのかちゃん、少しスピード上げるからしっかりつかまっていてくれよ!!!」
「ふぇ? にゃあああああ〜〜〜!!!」
その捜し求めていた少女の姿を確認した彼が興奮するもの無理はなかった。

103 :暴走、そして再会なの! ◆lbhhgwAtQE :2007/01/15(月) 18:49:19 ID:+TRLBQ0r


――ゴォォォ…………

「う〜ん、私は見ていないわねぇ、そんな子」
「そう、か……。ありがとう、みさえさん」
なのはが指差していたちょうどその時。
二人は何かが近づいてくる音にも気付かずに、互いに情報を交換し合っていた。
「それにしても、あのホテルでそんな凄いことが起きてたなんてね……。入らなくて正解だったわ」
「うん……私があそこに到着した時には、もう酷い事になってたんだ」

――ゴォォォォォォ

二人が言葉を交わしている間も、その音は着実に近づいてくる。
「ねぇ、電車に乗るんだったら私と一緒に行かない? 光ちゃんの話だとこの辺りにもしんのすけはいないみたいだし、私もあっちに行きたいから」
「え? う、うん! あ、それだったら、その……私お金持ってないから、その……」
「え? 運賃取られるの、あれ!? ……私、持ってたかな、小銭なんて……」

――ゴオォォォォォォォ!!!!

流石にこの頃になると、音に気付き始めてくる。
「ねぇ、みさえさん。音、聞こえないか……?」
「あちゃ〜、十円玉しかないや――って、え、音? ……そういえば、何か風を切るような音がするような……」

――ゴオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

ようやく音がする方向を見たときにはもう遅かった。
二人のすぐ間近には、煙のようなものを巻上げながら、こちらへと爆走してくる奇妙な格好の男が迫っていた。
「な、何!? 何なのあれは!?」
「あ、あれは確か……!!」
きょとんとするみさえとは対照的に、光はその男の姿を見て思い出しつつあった。
あの夜、自分が無意味に失踪する羽目になった原因を作ったスクーターの運転手を。
「見つけたぜぇ!!! 赤いお嬢ちゃん!!!!」

それは、ちょうどギガゾンビの姿が空に浮かぶのが迫っていた頃――およそ6時間ぶりの再会だった。

104 :暴走、そして再会なの! ◆lbhhgwAtQE :2007/01/15(月) 18:50:23 ID:+TRLBQ0r
【D-6 交差点 1日目 昼(放送間近)】

【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:気分高揚 なのはを背負って疾走中
[装備]:ラディカルグッドスピード(脚部限定)
[道具]:支給品一式(一食分消費)
[思考・状況]
1:光と勝負して宇宙最速を証明する!
2:なのはを友の下へ連れてゆく。
3:証明が終わったら魅音の元へ行く。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:悲しみ、友を守るという強い決意、クーガーと共に疾走中
[装備]:無し
[道具]:グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り18品)・支給品一式
[思考・状況]
1:何が起こっているのか知りたの。というか教えてほしいの!
2:フェイトと合流。
3:はやてが死んだ状況を知りたい。
4:カズマが心配。
[備考]
シグナム、ヴィータは消滅したと考えています。


【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:無我夢中、三十路間近
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:スモールライト@ドラえもん(残り1回分)、エルルゥの傷薬(使いかけ)@うたわれるもの 、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、基本支給品一式
[思考]
1:光ちゃん、この人……誰?
2:しんのすけを見つけ保護する。その為ならなんでもやる。
3:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る 。キャスカを見つけたら保護、グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する
4:しんのすけ、無事でいて!

【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:全身打撲(歩くことは可能)中度の疲労 ※服は生乾き
[装備]:龍咲海の剣@魔法騎士レイアース、鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(風)@魔法騎士レイアース
[道具]:支給品一式×2、ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
  :デンコーセッカ@ドラえもん(残り1本)、
[思考・状況]
1:何か嫌な予感が……。
2:風と合流し、早急にゲインを治療。
3:風と合流できなくても、何かしらの治療手段を手に入れる。
基本:ギガゾンビ打倒。

[全体備考]:クーガーの足音のせいでエクスカリバーの発動に伴う轟音に気付いていません

105 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:14:29 ID:xNydzuqc
徐々に日が高くなり始め、森の中も明るみを増してきている。
遊歩道のように整備された道から少し外れたところで、俺とロックさんは腰を落ち着けていた。
温泉の方へと向かっていた俺たちが森にいるのは、市街に出るのは危険かもしれないという判断からだ。
人が集まりそうな市街は、人探しにもってこいの反面、襲撃のリスクが付きまとう。
戦闘を避けたかった俺たちは、森を移動することを選択していた。
カズマや風ちゃんが市街にいる可能性もなくはないが、それは低いと思う。
俺は放送前に市街を通ってきているのに、どちらの姿も手がかりも見なかったんだから。
今、俺たちは東の川を目指す途中だった。
もし川を越えることが出来るなら、川を越えて温泉へ向かおうという計画だ。
川越えに備え、多少なりとも休みを取った方がいい。
だから、俺たちはここで休憩をしていた。

「父ちゃん……母ちゃん……」

俺にもたれかかって眠っている、太い眉毛の子どもの口から寝言がこぼれる。
まだまだ親が恋しい年頃に決まってる。
こんな子どもや、かなみちゃんまでまで巻き込んで殺し合いをさせるなんて。
あの仮面野郎はふざけてやがる。
面白そうに死者の名前を読み上げる声を思い出しただけでも、腹が煮えくり返りそうだ。
なんとかして、あいつを一泡吹かせてやりてぇ。
戦えない俺がそうしてやるには、このクソ下らない殺し合いを破綻させることしかない。
そのためには、この首輪をなんとかしないとならねぇ。
首輪がある限り、俺たちの命はあいつに握られているようなものだ。胸糞悪いぜ。
だが、簡単になんとかする、と言ってもどうすればいいのか見当もつかないのが現実だ。
支給された四角い機械の使い道さえ分からないのに、首輪をなんとかできるのかとも思う。
「……そういや、ロックさん。あんたの支給品って何だったんだ?」
首をもたげてきた弱気をごまかすため、俺はロックさんにそう話しかけた。
子どもに向けられていた申し訳なさそうな視線が、俺へと動く。
「ロックでいいよ。
 俺の支給品は転ばし屋、っていう三度まで相手を転ばせてくれる機械に、黒い篭手。それに、こいつだ」
言って、ロックさん――ロックがデイバックから取り出したのは、三十センチくらいの細い棒だった。
武器に使うにしては短く、頼りない。
「何だそれ?」
「びっくり箱ステッキ。
 これで叩いたドアはびっくり箱になるらしい。お前のは?」
小さく溜息を吐きながら、びっくり箱ステッキとかいう棒をしまうロックに代わるように、俺は四角い機械を取り出す。
訳の分からない支給品を見ると、改めてついてないなと思っちまう。
「これなんだが、使い方がさっぱり分かんねぇんだよ」
俺が機械を見せると、ロックの眉が小さく動いた。

106 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:17:08 ID:xNydzuqc
「ipodじゃないか」
「知ってるのか?」
「ああ。そこに入れた音声や動画の再生ができて、ファイルの持ち運びにも使える。
 ちょっと貸してもらえるか?」
手を向けてくるロックに、俺は頷いて四角い機械――ipodと言うらしい――を渡そうとする。
「何だったらあんたが持っててくれて構わないぜ。俺が持ってても役に立ちそうに――」

「ダメぇぇ――ッ!!」

俺の言葉を遮り、叫び声が響いた。その大きさに思わず耳を塞いだ俺の手から、ipodが離れていく。
くるくると回りながら落ちていくipodは、地面に着くよりも先に小さな手の中に収まった。
俺の手でも、ロックの手でもない。
いつの間にか目を覚まし、不意に叫んだ坊主の手に、ipodは握られていた。
坊主は大事そうにipodを両手で持ち、ロックからダッシュで離れると俺を見上げた。
「あのお兄さんは悪い人なんだゾ! あのお兄さんはヘンゼルを、ヘンゼルを……」
坊主の言葉は、それ以上続かなかった。
大きな瞳にいっぱいの涙を溜めた坊主が、必死に唇を噛み結んでいたからだ。
その姿が意地らしくて、俺はそいつの頭に手を乗せてやる。それでも、坊主は喚き声一つ出さない。
俺はロックに目を向ける。彼は辛そうに、だが目を逸らさず、坊主に視線を注いでいた。
少しの間が、その場に落ちる。
「坊主、落ち着いて聞くんだぞ。あのお兄さんは――」
「……待ってくれ。自分で話すよ」
いたたまれなくなった俺が仲立ちをしようとするが、ロックに遮られる。
本人がそう言うなら、俺は何も言えなくなっちまう。
だからせめて、坊主をロックと向き合わせてやろうと思う。
「やめろぉ〜! お兄さんは騙されてるんだ〜!」
「こら! いいから落ち着けって!」
坊主が抵抗するが、子どもの力だ。大したことはない。
無理矢理引っ張ってやるが、しかし、その動きは他ならぬロックの手で止められた。
疑問に思ってその顔を見ると、ロックは片手を耳に当てていた。
その耳にある、マイクロ補聴器の様子を確かめるように。
「……誰か、近づいてきてるのか?」
坊主の口を押さえつけながら尋ねると、ロックは頷いた。
「西からだ。数は一つ、金属が地面を叩くような音だな。鎧でも着ているのかもしれない」
報告をしながら、ロックは舌打ちをして顔を顰める。
「その割に速いな。しかも真っ直ぐこっちへ向かって来やがる。さっきの叫び声で勘付かれたか」
「信頼できる相手だと思うか?」
自然と小声になる。それと同時に、拍動が速度を増していく。掌には、じっとりと汗が滲んできやがった。
俺の問いに、ロックは重々しく首を横に振って返事をした。
おいおい、勘弁してくれよ。
「鎧を着ているにもかかわらず速く接近できるということは、鎧を着慣れていると思っていいだろう。
 ならば戦闘にも慣れている可能性が高いな。そんな奴が迷わずこっちを目指しているんだ。警戒しておいて間違いはないと思う」
そんな会話をしているうち、俺の耳にも足音が届いてくるようになった。
硬く、それでいて軽い足音は俺を身震いさせる。
「下手に逃げ回って居場所を教えるのはまずいな。隠れてやり過ごそう」
異論はなかった。こちらの戦力はほとんど皆無と言っていい。
相手がたった一人でも、カズマのように強い奴なら俺たちなど簡単に蹴散らしてしまうだろう。

107 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:19:41 ID:xNydzuqc
俺は必死で全身の筋肉に力を入れる。そうしないと、勝手に震え出してしまいそうだった。
情けねぇ。みっともねぇ。かっこ悪ぃ。
そう思っても、気を抜けば歯の奥はがたがたと鳴り出しそうだった。仕方ねぇだろ、怖いものは怖いんだ。
コルトを握り締める右手が、どんどん汗ばんでいく。吐き気がしそうなほど、拍動は速さを増している。
左手で坊主の口を塞いだまま、その体を抱える。そして、俺は極力音を立てないように歩き出した。
森の奥に入って物音さえ立てなければ、きっと大丈夫だ。
そろそろと、俺は中腰で足を進める。少し振り返れば、ロックの姿が見えた。
左手の中、坊主が暴れている。小さな足が俺の太ももを蹴るが、構っている余裕はない。
俺は全身に力を込め、意識を張り詰めさせる。
耳が音を捉える。心なしか、聴覚が鋭くなったようだった。
音は徐々に距離を詰めてくる。それに比例し、焦りは強くなっていく。
畜生、怖ぇよ。
カズマぁ、どこにいんだよ。お前ならどんな奴だってぶっ飛ばせるだろ? 早く助けに来てくれよ……。
そんなことを考えていると、腰をそっと叩かれる。もう一度振り返ると、ロックが左の方を指差していた。
そっちを見ると、背の高い草が密集し、広がっていた。言いたいことを察した俺は、そっちへと足を向ける。
ゆっくりと、そろりと、物音を立てないように、自分の姿を晒さないように、あらゆることに気を払いながら。
やがて、そこへと辿り着く。俺がその中に身を隠して足を止めると、ロックも俺の隣に並んだ。
自分の鼓動が、嫌になるくらい聞こえてきやがる。その音でばれそうになるんじゃないか不安になっちまう。
草の隙間から様子を窺う。目を皿にし、何も見逃さないつもりで俺は音の方へ視線を送る。
背の高い草が、ゆらりと風に揺れる。葉が擦れ合うざわめきは、不安を駆り立ててくる。
もしかしたら、火でも放たれたら終わりなんじゃねぇか?
ふと浮かんだ疑念を慌てて振り払おうとした、その直後。

突如、俺の左手に激痛が走った。
痛みに耐えかねて、俺は反射的に左手を離してしまう。
「痛ッ――!」
つい開いてしまった口を、俺は急いで閉ざす。空になった左手を見れば、歯形がくっきりと浮かんでいた。
「おぉー、苦しかったー!」
俺の手から逃げた坊主が声を上げ、深呼吸を始める。
顔から血の気が引くのを、俺は実感した。おいおい、空気読んでくれよ。
もう一度、坊主へと手を伸ばす。その手が届くよりも先に、坊主の鼻がひくひくと動き始めた。
深呼吸のせいで草が坊主の鼻をくすぐったのだろうと察するが、既に遅い。

「ひ、ひぃ〜っくしゅんッ!!」

盛大なくしゃみが、あたりに響き渡った。
背中を嫌な汗が伝い落ちていく。鼻を啜る坊主を捕まえようとするが、すばしっこい動きであっさりと避けられる。
その動きで、坊主は草むらから飛び出した。足音の主がすぐそばまで来てるってのに。
俺は、急いで引き戻そうとする。今度はあっさり捕まった。
俺たちが逃げてきた方向を、坊主はじっと見つめて突っ立っていたからだ。
「おねいさん……」
坊主の口から呟きが漏れた。そして、俺は気付いてしまう。
いつしか、足音が止まっていることに。
坊主が見つめている先に、ドレスに軽鎧を纏う、金髪の女が佇んでいるということに。
女は睨むようにこっちを見てやがる。完全にバレてるじゃねーか。
俺は観念する。この女が殺し合いに乗っていないことを願いながら、草むらから出ようとして。

「おねいさん……また、オラたちを殺そうとするの……?」

108 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:22:24 ID:xNydzuqc

その動きが、止まっちまった。
坊主が呟いた一言は、俺を恐怖の谷底へと突き落とすような言葉だった。
坊主は、この女に殺されかけたことがあるらしい。
こんな子どもに手をかけようとする女だ。相当危ない女に間違いない。
ついに、奥歯ががちがちと鳴り始めやがる。足腰の震えは大きくなり、掌は気色悪いくらいに汗でまみれていた。
怖ぇ。クソ、なんでこんなことになっちまったんだよ。死にたくねぇ、死にたくねぇよ。
俺は震える手で引き金に指をかける。撃たなきゃやられる。殺られる前に殺らねぇと。
そう思うのに、体は竦んじまって言うことを聞いてくれねぇ。
這い寄ってくる死に自由を奪われたように、俺の体は硬直していた。
隣を見てみるが、ロックの姿はいつの間にかそこから消えていた。ロックは、坊主をかばうように前に出ていた。
隠れているのは俺だけだ。
バレているのも分かっているのに、それでも出て行くことができないのは俺だけだった。
情けねぇ。みっともねぇ。こんなんじゃ、銃を持っていても役立たずじゃねぇかよ。
「……私には為すべき使命があります。そのために、最後の一人にならなければならない」
坊主の声に、女が答えた。間髪入れず、ロックが口を挟む。
「その使命とやらは、こんな子どもを殺してまで為さねばならないほどの価値があることなのか?」
女の表情に少しだけ影が差す。だがそれを、そいつは瞬き一つで振り払った。
「国を、民を守るためならば。どれほど血に塗られようとも、非道だと罵られようとも……構いません」

「ダメだゾ……」
ロックの足の間から前へ出て、坊主が言葉を紡ぐ。
「このお兄さんは悪い人で、後ろにいるお兄さんは騙されてるおバカなお兄さんだけど……」
坊主が両手を左右に広げ、女の前に立ちはだかる。
「でも、オラは絶対にどっちにも酷いことはさせないゾぉ――ッ!」
声に、涙の色が交じる。それはあっという間に坊主の声色を変えていくが、坊主は叫ぶのを止めない。
それどころか、その叫びは強さを増していく。
「ヘンゼルがあんなことになって、オラはとっても悲しかった! 
 だから悪いお兄さんも、おバカなお兄さんも、それに、おねいさんも! 死んじゃったら、友達は悲しいんだ!!
 だから、だから……」
坊主の声が、完全に涙に支配される。それでも、坊主は退かない。
精一杯両手を広げ、背伸びをし、女を見上げていた。

109 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:24:12 ID:xNydzuqc
……何だよ。格好いいじゃねぇか。
坊主より背が高くて、剣を持っていて一度襲ってきた相手を前にして。
それでも退く気配を見せるどころか、食って掛かるくらいの勢いで啖呵を切って。
あいつが怖くて泣いてるんじゃないことくらい、分かる。
坊主は、自分が味わった悲しみを繰り返させないようにしているんだ。必死になって、全力で。
畜生、格好良すぎるだろ。

それに比べて俺はなんだ。隠れて震えているだけかよ。ここにはいないカズマに助けを願うだけかよ。
最低だみっともなくて情けねぇ。
いいのか、それで。
俺はずっとあいつに、カズマに憧れていたんじゃなかったのか。
相手が何であろうと構うことなく、気に入らない奴はぶっ飛ばす。
ガラが悪くて、バカで、だけどそんなことが有り余るくらいに、力も心も強い。
そんなあいつみたいになりたいって、俺はずっと望んでいたんじゃなかったのかよ。

なのに今の俺は、カズマどころかこの坊主以下だ。
悔しいじゃねぇかよ、畜生。
こんなガキに負けてちゃ、一生カズマに追いつけやしない。
男を見せろ君島邦彦! 今がそのときだろうが!!
震えは止まらねぇし、まだ恐怖は残ってる。だが、負けてなんてらんねぇんだよ。
「どうしても、見逃してはくれねぇのか?」
俺は、立ち上がっていた。震えをなんとか隠し、銃のグリップを強く強く握って。
「……無論です」
おしゃべりは終わり、とでも言うように、女は剣を構えなおす。
俺はそれを視界の正面に捉えながら、ロックと坊主の横を通り過ぎて前に出た。
「なんとかして撒くぞ。あの女の使命とやらのために殺されてやる義理はない」
ロックが、擦れ違いざまに囁いてくる。だが、俺はそれに頷くことはできなかった。
「あんたは坊主を連れて先に逃げろ。時間稼ぎくらいはやってやる」
俺が銃を小さく掲げると、ロックは訝しげに俺と女を見比べる。
「勝算はあるのか?」

「言ったろ。時間稼ぎくらいは、ってな。三人一緒に逃げて皆殺しだけは避けなきゃなんねぇだろ」
「お前、まさか死ぬ気か?」
驚いたようなロックの問いに、俺は、ゆっくりと首を横に振る。
死ぬ気でいるわけなんてない。死ぬのは怖いんだからよ。
「大丈夫だって。俺を信じろよ」
できるだけ、軽口のように言ってやる。何でもないことのように、冗談のように。
それでも察してくれたのか、ロックは坊主を小脇に抱き上げた。
「予定通りのところへ向かうからな。追いついて来いよ」
ロックが、思い切り駆けて行く。
そちらを、一瞬だけ振り返る。
勇敢で強くて、格好いい坊主は、俺の腕に捕まっていたときよりも激しく暴れていた。
「やめろぉ! 離せぇ――ッ!」
「坊主! そのお兄さんの話をきちんと聞くんだぞ! そうするだけの時間は、今、俺が作ってやる!」
俺は声を張り上げる。坊主の叫び声をかき消して、届けるように。
「オラは坊主じゃないゾ! 野原しんのすけだーっ!」
ああ、そうか。まだ名前すら聞いてなかったし、言ってなかったんだよな。
そんなことを今更思いながら、俺は返すべき答えを返す。
野原しんのすけという一人の男と、対等になるために。
「俺だっておバカなお兄さんじゃねぇ! 君島邦彦だ!」
答えながら、思う。
もし無事でまた合流できたなら、ゆっくり話でもしたいもんだ、と。
ロックの足音と、しんのすけの声が遠ざかっていく。

110 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:26:20 ID:xNydzuqc
さてと、ここからが正念場だ。大見得切ってあいつらを逃がしたのはいいが、怖ぇものは怖ぇ。
だけどそんなものに潰されてたまるか。恐怖が広がるなら、それさえもぶっ飛ばしちまえばいいだけだ。
そうだろ、カズマ?
「自らの身を危機に晒してまで仲間を逃がすその覚悟。見事と言わせてもらいましょう」
女の言葉に、俺は表情が緩むのを感じた。
場違いだというのは分かっている。それでも、俺は込み上げてくる笑みを抑えられない。
「何がおかしいのです?」
女は眉を顰め、如何わしいものを見るような目をして俺を見つめてくる。
別に、恐怖で狂っちまったってわけじゃねぇ。
「あんたが勘違いをしているからさ」
そうだ。
俺は別に、ロックやしんのすけを守ろうだなんて偉そうなことを考えちゃいないんだ。
俺がここに残ったのは、この女と対峙している理由は、ただ一つ。
その理由を、俺は全身全霊の声に込めてぶつけてやる。

「――意地があんだろ! 男の子にはッ!!」

銃口を、女に向ける。そのまま、ろくに狙いもつけずに一発ぶち込んでやる。
俺の意思を汲んでくれたかのように、銃弾は真っ直ぐ女へと吸い込まれていく。
次の瞬間、甲高い音が俺の鼓膜を震わせた。
確かに、銃弾は当たった。女の持つ剣に弾かれる形で、弾は確かに当たっていた。
「……いいでしょう」
耳鳴りの向こうから、女の声が聞こえる。剣の向こうから、鋭い目つきが俺を捉えていた。
「貴方の意地、私が受け止めるまで!」
女は気迫の篭もった雄叫びを上げ、突進してくる。
相手の得物は剣だ。その間合いに入ると不利なことくらい、俺にも分かる。
とはいえ、飛んでくる銃弾を受け止めるような相手だ。離れていたところで勝てるとは思えない。
無駄弾を撃つわけにはいかねぇ。この女を倒せば終了、というわけじゃないんだ。
確実に倒すため必要がある。

零距離射撃だ。必殺の一発に賭けるしかない。

111 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:28:23 ID:xNydzuqc
決意すれば、あとは行動に移すだけだ。それだけに集中しなければ殺られる。
走る。
全力を足に込め、地を蹴る。
女との距離がみるみる縮まっていく。だが、まだ遠い。
全身から汗が吹き出てくる。それでも、俺の体は冷えそうになかった。
叫ぶ。
意味のある言葉なんかじゃない。
俺の意地を力にするように。女の気迫に、消えてくれない恐怖に屈しないように。
ありったけの力で、俺は喉を震わせる。
それでも、女の突撃は止まらない。
疾走しながら、女は剣を少し引いて切っ先を俺へと向けてくる。
突きが来る。
直感した俺は、左に思い切り跳んだ。それと同時に、トリガーを引く。
乾いた銃声の直後、女の右腕に鮮血が走る。女が顔を歪め、突きの勢いが僅かに削がれる。
速度の落ちた突きは、俺の真横を通り過ぎていく。
それでも、女は正面から突っ込んでくるだけで止まろうとしない。
俺と女が、密着するまで時間はかからなかった。

嬉しい誤算だった。
相手の方から、まさかここまで接近してくれるとは思わなかった。

――必殺の一撃をぶっ放す、絶好のチャンスをわざわざ与えてくれるなんて、な。

俺は銃を女の首元に押し当てようとする。
銃口が女の肌に食い込む、その直前。
俺の鳩尾に、衝撃の乗った膝が食い込んだ。
強烈な痛みが駆け抜けていく。
体を貫いてしまいそうなほどの膝蹴りを受け、体がくの字に曲がっちまう。
痛ぇ。
痛ぇけど……。
「やられて、たまるかよぉッ!」
俺は決死で声を絞り出す。
まだ終わっちゃいないんだ。終わってたまるかよ。
銃口が何処を向いているのか見当もつかないが、構っていられねぇ。

112 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:30:10 ID:xNydzuqc
引き金を、引く。
その動作よりも一瞬早く、銃を握る手に下からの痛みが来やがった。
剣の柄尻が、俺の右手を跳ね上げていた。
強引に上へと向けられた銃口が、空に向けて銃弾を放つ。
それに動揺している暇なんてない。急いでその手を引き戻そうとして――。
空気を裂くような音を、俺は聞いた。
その音へと、目を向ける。
さっき俺の手を叩き飛ばした柄尻が、今度は喉元へと肉薄して来ていた。
止められない。避けられない。防御すら間に合いそうにない。
反射的に目を閉じた、そのとき。

喉に、硬い柄尻が直撃した。
気道が思い切り圧迫され、息が詰まる。
なんとか酸素を取り入れようと口を開けるが、酸素がまともに入ってくる気がしなかった。
体が後ろへと傾いでいくのを、俺は実感する。実感しても、立て直すことはできそうになかった。
背中に痛みが広がる。目を開けると、木々越しの青空が見えた。
差し込んでくる日差しに目を細めたとき、ようやく呼吸が戻ってきた。
むせるようにして、俺は酸素を取り入れる。足りない酸素を求め、喉仏が大きく動く。
そうしながらも、急いで身を起こす。もたもたしている暇は――。
「終わり、ですね」
声が降ってきて、喉元に冷たい刃が宛がわれた。

◆◆

倒れこんだ男の喉にカリバーンを宛がい、私は内心で溜息を吐く。
ようやく掴めそうな勝利だ。あと少し、手に力を入れてカリバーンを突き込むだけでいい。
もうすぐ一歩を踏み出せる。
迷いを断ち切るための一歩を。王の選定をやり直すための一歩を。
これは意味のある歩みだ。国を守るために、民を守るために。
私は最後の一人にならなければならない。使命を果たすために、迷ってはならない。
剣を持つということは、命を奪う覚悟をするということだ。
選定の剣を手に取ったあの日から、その覚悟はできているはずだ。
それなのに。
私の手は、手に馴染んだカリバーンは、たった一人の男を貫けないでいた。

迷いを捨てろ。望みを叶えるため、不必要なものは全て斬り捨てろ。
そうやって自分に言い聞かせるが、それを止めるように他の声が聞こえてくる。
この殺し合いの最中、投げかけられた声が私を惑わせようとする。

113 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:32:15 ID:xNydzuqc
――もし叶うなら、その時まで斬らざるべきを斬らぬよう……。

迷うな。
斬らざるべきなど、存在しないのだから。
王の選定を果たすために、私には全てを斬らなければならないのだ。

――その使命とやらは、こんな子どもを殺してまで為さねばならないほどの価値があることなのか?

迷うな。
国と、そこに住まう民を守るためならば、子どもであろうと何であろうと斬り伏せなければならないのだ。
私が守りたい民の中に、多くの子どもはいる。その全てを救うためには、僅かな犠牲は必要だ。

――だから悪いお兄さんも、おバカなお兄さんも、それに、おねいさんも! 死んじゃったら、友達は悲しいんだ!!

迷うな。
悲しむ者がいるのなら、その者もまた斬ればいいだけのこと。
どの道、私は最後まで生き延びなければならないのだから。

迷いは私に苦痛しか与えない。
迷いは私の目を曇らせることしかしない。
だから、振り払え。非情になれ。
人を斬ったことのない新兵とは違うのだ。今更、殺すことを恐れる必要などないだろう。
このままカリバーンを突き込めば、迷いは消える。そうすればきっと、楽になれる。目的を果たすため、走り続けることができる。
きっと、そのはずだ。
深く、息を吸う。
取り入れた空気を力にするようにして、手に力を込めて。
一息に男を貫こうとして。
そこで、私は初めて気が付いた。

男の手が、武器が、私へと向けられていたことに。
背筋が寒くなるのを感じる。対策を考えている暇もない。
やられる前に、やるしかない。
そう決断するが、既に遅かった。

私が男を貫くよりも早く、その武器は乾いた音を吐き出していた。


114 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:34:16 ID:xNydzuqc
◆◆

銃声が、俺の耳から遠ざかっていく。
痺れるような反動を感じながら、俺は女の顔を見上げてやる。
端正なその顔立ちには、かすり傷さえ見当たらなかった。
……あーあ、外しちまったか。
手は震えてたが、それでも女の顔にしっかりと照準をつけたつもりだったのによ。
それでも当たらなかったのは、引き金を引くその直前に、1つの声が蘇ってきたからだ。
女を殺そうとしたときに蘇ってきたのは、しんのすけの言葉。
死んじゃったら、友達は悲しいという、しんのすけの叫び。

そいつが、照準をブレさせた。
この女が死んだなら、悲しむ奴がいるのかと思うと撃てなかった。

喉に触れる圧力が、一気に強くなる。もうダメだな、俺。
もし俺が死んだら、カズマは悲しんでくれんのかな。
そうだったら嬉しいけど、そんでも泣くんじゃねーぞ。俺はそんなカズマなんて、見たくねーからな。
絶対、泣くんじゃねーぞ。

目の奥から、何か熱いものが込み上げてくる。
近づいてくる死が怖くて、俺が泣きそうだった。
だから、固く強く目を閉じる。そうすれば、きっと泣かずに済むよな。
俺の視界が、真っ黒な瞼の裏で覆われる。
そこに坊主の、野原しんのすけの姿が浮かんできやがった。
あいつと話、したかったんだけどな。どうも無理みたいだ。
「生きろよ、しんのすけ……」
届かないことなんて分かっている。
それでも、願うようにして、俺はそう口にしたんだ。
口にすれば叶うような、そんな気がしたからよ。

115 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:36:15 ID:xNydzuqc
◆◆

ゆっくりと、喉元からカリバーンを引き抜く。
選定の剣が、男の血液で彩られていた。
私はそれから目を背け、男の顔を一瞥する。彼の死に顔は、どことなく誇らしげに見えた。

それが、私には羨ましかった。
意地を貫き通した彼――君島邦彦と名乗っていた男のことが、私は羨ましかった。
私が勝てたのは、単純な力量の差だ。私には力があり、彼には力がなかった。ただそれだけのこと。

だが、意識の面では違う。
意識では完全に、私は負けていた。彼の意地と対等になれるだけの誇りは、私にはなかった。
私にあったのは、迷いだけなのだから。
「君島邦彦。貴方の意地、しかと感じ取りました」
だから、私は姿を消した2人を追おうとは思わなかった。
君島邦彦の意地に負けた私に、その資格はないのだ。

私は、物言わぬ屍に背を向ける。
彼の支給品も、手に握られた武器もそのままに。
後ろを振り返らず、私は歩き出す。もう、後戻りはできないのだから。

そのとき、木々の奥に広がる空に巨大な人影が映し出された。
見覚えがあるその姿から、私は目を背ける。これから聞こえてくる声は、聞かなければならない。
しかしあの男の姿を見るのは、何故か嫌だった。

116 :君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2 :2007/01/15(月) 20:38:19 ID:xNydzuqc
【C-5 初日 昼(放送直前)】

【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:疲労。精神的疲労大。後悔。
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:支給品三人分
     黒い篭手?@ベルセルク?、
     どんな病気にも効く薬@ドラえもん、現金数千円
びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)
[思考・状況]1:しんのすけを連れて逃亡。東の川へ向かい、越えられるなら越えて温泉を目指す。戦闘は避けたい。
       2:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る。
       3:休憩しながら、情報を集め推理する。
       4:しんのすけに謝る
       5:しんのすけ、君島、キョン、トウカの知り合いを探す。
       6:しんのすけに第一回放送のことは話さない。

       ※びっくり箱ステッキについて
        びっくり箱ステッキに叩かれた開けるもの(制限によりドアのみ)は、
        びっくり箱になり、開けるとびっくりするものが飛び出してきます。
        一度飛び出した後、閉めれば元のドアに戻ります。

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ。
   腹部に軽傷。精神的ショック大。深い悲しみ。悪いお兄さん(ロック)に抱えられている。
[装備]:ニューナンブ(残弾4) 、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品一式 、空のプラボトル×2 ipod
[思考・状況]1:悪いお兄さん(ロック)から逃げたい。
      2:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する。
      3:ゲームから脱出して春日部に帰る。
      4:ヘンゼルを弔う

【C-4 森 初日 昼(放送直前)】
【セイバー@Fate/ Stay night】
[状態]:腹三分、全身に裂傷とやけど(動きに問題ない程度まで治癒)、両肩を負傷(全力で動かせば激痛)、右腕に銃創
[装備]:カリバーン
[道具]:支給品一式(食糧1/3消費)、なぐられうさぎ@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
1:ロックたちを追わず、他の参加者を探して殺害する。
2:優勝し、王の選定をやり直させてもらう
3:エヴェンクルガのトウカに、見逃された借りとうさぎを返し、預けた勝負を果たす。
4:調子が狂うのであまり会いたくないが、小次郎に再戦を望まれれば応える
※うさぎは黒焦げで、かつ眉間を割られています。

【君島邦彦@スクライド 死亡】

君島の持ち物(支給品一式、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、コルトM1917の弾丸(残り6発)、スコップ)が
C-4の君島の遺体のそばにあります。
コルトM1917(残り3発)は君島の手に握られています。

117 :浮かぶ姿は暗雲 ◆M91lMaewe6 :2007/01/15(月) 20:48:01 ID:LpIM4+Eh
「ピッケルみーっけ!」
「おれは缶詰を見つけたぜ!」
「翠星石に合う服が見つからねーです」

あの三人の声が、間近の水の流れる音に混ざって聞こえる。
鬱陶しい。
私は座り込み小さくため息をつきながら、先ほど魅音によって突きつけられた現実を考える。

『今日の部活は宝探し……』

「……深海魚が陸揚げされ、既に息絶えた後……」
だとしたら前の世界より急激に『期日』が減っている。
この世界では関係はないだろうが、もし私が殺された場合、どれだけ猶予が残されてるのやら。

『遊園地に行けばレナがいるかもね』
『そいつ頼りになるのか?』
『あの子、嘘見抜くの得意だからねー。それと翠星石は気をつけた方がいいよー』
『何言って……』
『変な意味で言ってるんじゃないって。かぁいいもの好きなだけだから』


もう圭一達を探す必要はほとんどない。
だが…もし魅音達と出会う前に、圭一達と……特にレナと出会ったなら……

『これ何て書いてあるんだ?』

……私は危なかったかもしれない。

118 :浮かぶ姿は暗雲 ◆M91lMaewe6 :2007/01/15(月) 20:50:27 ID:LpIM4+Eh
雛見沢症候群。

私が死んだ幾多の世界において、稀に圭一・レナ・詩音がそれに感染・発症し惨劇を起こしてきた。
レナと詩音の場合、私を殺したケースさえある。
もし今回の世界において圭一かレナが発症していれば、二人は決して引いてはならないカードだ。

レナと出会わなければ問題はない。
生きてるケースを考えれば、遊園地に行くのは遠慮願いたい。
彼女相手に嘘をつくのは難しいから。

「………………」

『沙都子なら、裏山かねえ……』

彼女は常に発症している。
主催者に処置されてるのだろうか……。
でなければ……このゲームに参加できるかどうかも、怪しい。

完全に発症すれば自滅は確実。
優勝など出来るはずがない。

私の願いとは矛盾しているけれど……このゲームは参加者全員が優勝できる可能性がなければならない。
そうでなければ、私のような非力な小娘が勝ち残れる希望はなく、優勝の褒賞があるかどうかさえ疑わねばならないからだ。

119 :浮かぶ姿は暗雲 ◆M91lMaewe6 :2007/01/15(月) 20:51:45 ID:LpIM4+Eh
「羽入」

さりげなく相棒の名を呼んでみた。

「……」
返事がない。
本当にどこにいるのやら。
…………もし、この世界にいないのなら……

「………………」

再び水が流れる。
そんなはずはない……ありえない……。
私は自分の迂闊さを実感しつつも、頭から最悪の可能性を取り払おうとする。

……ただ、勝ちに徹すればいい。
そうすれば……運命に勝つことができる。
そう信じるしか……。

私は腰を上げ、支度を整えると、トイレの流れる音を背後に
逃げるように魅音達の下へ向かった。

120 :浮かぶ姿は暗雲 ◆M91lMaewe6 :2007/01/15(月) 20:52:53 ID:LpIM4+Eh
★★★

なんとか遊園地行きを止めさせることができたわ。
魅音はグズグズ渋ったけれど。

「ほんとに薬あるのかなー」
「駅員のいるところにあるんじゃねーのか?」
「あるわけねーです。ギガなんとかが用意してるわけが……」
「食べ物はあったのですよ」

病院へはもう少し時間が経ってから行くのが良い。
怪我人が増え、付け入る隙が多くなる。
その頃にはこいつらは生きてはいないでしょうけど。
駅に向かいながら、私は空を見上げる。

いい天気ね。
私の未来もこの空と同じように晴れやかに……

唐突に仮面の男の映像が空に映し出された。

121 :浮かぶ姿は暗雲 ◆M91lMaewe6 :2007/01/15(月) 20:58:37 ID:LpIM4+Eh
【E-5・東部 駅の近く 昼】
【年少組 引率:魅音】
[共通]
1:駅に行って、電車に乗ってみる、その後病院に行くつもり
2:カレイドルビーと水銀燈を警戒

【剛田武@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:虎竹刀@Fate/ stay night、強力うちわ「風神」@ドラえもん、
[道具]:支給品一式、エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、ジャイアンシチュー@ドラえもん 、シュールストレミング一缶、缶切り
[思考・状況]
1:手遅れになる前にのび太を捜す
2:翠星石と梨花と魅音を守り抜く
3:ドラえもんを捜す
基本:誰も殺したくない
最終:ギガゾンビをギッタギタのメッタメタにしてやる

【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労(小)
[装備]:エスクード(炎)@魔法騎士レイアース 、アイスピック
[道具]:スルメ二枚、缶詰二缶、レジャー用の衣服数着
[思考]
1:武からはもっと、いずれはドラえもんからもギガゾンビや首輪について情報を聞く
2:圭一ら仲間を探して合流
3:胃腸薬ほしい
4:襲われたらとりあえず逃走
5:翠星石の拳銃が欲しい
6:………………クーガー?
基本:バトルロワイアルの打倒。

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:スタンガン(服の影に隠しています)@ひぐらしのなく頃に
   虎のストラップ@Fate/ stay night
[道具]:荷物一式三人分、ロベルタの傘@BLACK LAGOON
   ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾5発、劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING 、ビール二缶
[思考・状況]
1:猫をかぶって、魅音と剛田武と翠星石を利用する
2:三人が役に立たなくなったら、隙を見て殺す
3:ゲームに対しての若干の不安と不信
  圭一達の『雛見沢症候群』が治療されてるかどうかの不安
4:羽入を探す
基本:ステルスマーダーとしてゲームに乗る。チャンスさえあれば積極的に殺害
最終:ゲームに優勝し、願いを叶える

【翠星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:軽度の精神疲労
[装備]:FNブローニングM1910(弾:7/6+1)@ルパン三世
[道具]:支給品一式、オレンジジュース二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ(すぐに引き抜けるようにしてあります)
[思考・状況]
1:魅音と梨花を警戒(水銀燈と結託しているのでは無いか?)
2:も、もちろんデブ人間を警戒するのも忘れてないですっ!
3:蒼星石を捜して鋏を届ける
4:真紅とチビ人間(桜田ジュン)も“ついでに”捜す
5:デブ人間(剛田武)の知り合いも“ついでのついでに”探してやる
6:庭師の如雨露を見つける。
基本:蒼星石と共にあることができるよう動く
備考:彼女ら4人は、それぞれの知り合いの情報を共有しています
     魅音の缶詰の中身は不明です
     彼女ら4人はシュールストレミングがどんなものか知りません。

122 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:15:34 ID:rZFTi7Ez
 いつのことだったか、明確な時期は覚えていないが、あれはたしか茹だるような蒸し暑さの残る夜のことである。
 レヴィは安っぽい缶ビール片手に、ラグーン商会の事務所で暇潰しにビデオを眺めていた。

『だぁーはっはっはっ! ヘイ、ロック見てみろよ! このムービーの役者は最高にイカれてる。日本の俳優っつーのはみんなこうなのかよ!?』
『レヴィ、これは映画じゃない。お笑い芸人がやるコントのライブだ。狙ってやってる喜劇だよ』

 TVを前に爆笑するレヴィ、その横に呆れ顔で失笑するロックが立つ。
 レヴィの笑いの元であるTV映像には、全身をロープでグルグル巻きにされ、
 その上さるぐつわを口に嵌められた状態の男が、んーんー言いながらジタバタともがく様が映し出されていた。
 ロックの説明通り、このビデオは日本のお笑い番組を編集したコントビデオである。
 どこから入手したのか、そこまでは覚えてはいない。ただ、目に届く範囲にあったから暇潰しに拝見してみた。
 そしたらとんだ大当たりだ。腹が捩れて仕方がない。この時ばかりは日本人のセンスに感服した。

『しっかし信じられるか!? コイツ、「敵のアジトに侵入したら、うっかり転んで見つかってぐるぐるにされて捕まった」んだぜ!?
 誰がやるよそんなヘマ! この街でそんなアホなミスやらかしたら即死亡だな。ギャラリーが笑い飛ばしてる間にケツに銃弾ブチ込まれてオダブツさ』
『そりゃロアナプラならな。ていうか、これはそういうネタなんだよ。平和な日本ならではのジョークさ。
 設定は請ってるけど、ブラックユーモアにもなりゃしない。実際、このビデオに出てる連中は全員マイナーなお笑い芸人ばかりだし』

 コントの内容はこうだ。悪の巨大組織のアジトに侵入したFBI捜査官が、自らが招いたドジのせいで敵を呼び込んでしまい、色々醜態を晒されるという現実ではまずあり得ないお話である。
 ちなみに、現在捜査官は敵の手によって鞭打ちの刑を執行されている最中で、身動きの出来ない身体をくねらせながら気持ち悪い声で喘いでいる。
 どう考えても一般受けは狙えないネタだった。しかしレヴィにはこれがツボだったようで、酔っ払った頑固オヤジのような振る舞いで呵呵大笑していた。

『ったくよー! 世の中にこんなアホがいるとしたらぜひお目にかかってみてぇもんだぜ! ま、こんな奴ぜってェいるわけねェけどな!!』

 夜のロアナプラに、レヴィの大笑いが延々と響き続けた……。


 ◇ ◇ ◇



123 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:18:15 ID:rZFTi7Ez
(あー……あったかもな、そんなこと。いや、ない。錯覚だ。とりあえずロック、テメェは今ゼッタイ顔見せんじゃねェぞ。いいか、絶対だからな?)

 笑い話が笑えなくなったのは、全てあのいけ好かない眼鏡ヤローのせいだ、と。
 レヴィは、胸の内に溜まったありとあらゆる不満をゲイナーにぶつけていた。

 後頭部を酒瓶で殴られ、気絶させられている最中はロープでぐるぐる巻き。オプションで手錠とさるぐつわまで追加されている。
 さて、この落とし前はいったいどうつけさせてもらおうか……レヴィは、身動きの取れない身体でただそれだけを考えていた。
 いきなり殺し合いに参加させられ、出合った少年はトンでもない食わせ者で、頭は酒臭いったらありゃしない。
 レヴィでなくても不満を感じ得ずにはいられない境遇を、人より数段こらえ性のない彼女がどれだけ我慢できるというのだろうか。
 その答えは、手綱を繋がないまま放置した暴れ馬がどんな行動を取るか、それを考えれば容易に出てくる。
 脳内では既に、パニック・ムービーが上映されている。もちろん、慌てふためきながら逃げ戸惑うのはゲイナーだ。
 妄想が現実に変わるかどうかは、今後のゲイナーの出方とレヴィの運によって左右されるが、もしチャンスが廻ってこなかったとしても、彼女がこのまま大人しくしているはずはない。
 そう、チャンスは自らの手で掴み取るものだ。
 現に、今レヴィの前にはチャンスが転がっている。厳密に言うと、チャンス入手を妨害する輩が姿を消しているのだ。

 ゲイナー・サンガは、今ここにはいない。
 何やら気になることがあるらしく、人気のない森にレヴィを置いて、一人で出かけてしまった。
 何をしに行ったのか。そんなことはレヴィの知ったこっちゃない。重要なのは、ゲイナーがいない今のこの時間をどう使うか。
 時は金なりというほどに、時間とは貴重なもの。それが自由を獲得するためのものであるというなら、なおさらのことだ。

 しかし……まったくいい案が浮かばない。
 そもそも、頭脳労働はレヴィの得意とするところではない。仕事においても、普段はロックやベニーの役割だ。
 気持ちを落ち着かせ、冷静になって一から考えてみよう。
 まずは、レヴィの現在の状況から。
 全身をロープでぐるぐる巻き。腕は後ろ手に手錠で拘束され、口にはさるぐつわ。
 動ける箇所はせいぜい手先くらい。陸に上がった魚のように身体をバタつかせることはできるが、移動はかなわない。
 ……まるで喜劇だ。どこぞで見たFBI捜査官だ。最悪だ。悪夢だ。チクショー。

 こりゃいよいよ飼い主に尾振るしかないか……?
 と、らしくないネガティブ思考を持ち始めたレヴィは不意に、視界に何やらキラキラと光る物質があることに気づく。
 海老反りの身体をクネクネ動かしながら、その発光の正体を確認すると……。

(……Year.女神様もまだ、完全にはあたしを見捨てちゃいないってか?)

 さるぐつわを嵌められているはずのレヴィの口元が、不気味に微笑んだように見えた。


 ◇ ◇ ◇



124 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:19:27 ID:rZFTi7Ez
 焦った。本当に焦った。
 息を切らしながら膝に手をつくゲイナーは、傍目から見てもだいぶ疲労しているように思えた。
 無理もない。なにせ、ついさっきまで人生に一度あるかないかという――キングゲイナーを乗り回していた彼にとっては一度や二度ではないが――九死に一生を体験してきたのだから。
 どういうことかというと、説明するのは簡単だ。ずばり、『エリア外に出ようとしたら、首輪が爆発しそうになった』。
 ずっと気になってはいたのだ。このバトルロワイアルの舞台、支給された地図には、致命的におかしな点が一つある。
 それは、マップの端について。普通、こんなふざけたお遊びに巻き込まれたら、真っ先に逃げ出そうとするものだ。
 主催者はそういった参加者を逃がさないため、ゲーム会場に逃げ場をなくし皆を隔離する必要がある。
 そういった場合、会場として相応しいのはどんな場所か。
 隔離目的であるならば、単純に塀で囲ってしまうのもいい。だが、ゲイナーが確認した東の果てにはそれがない。
 または、絶海の孤島というのも古典的ではあるが効果的だ。が、ここが島でないことは地図を見ても明らか。
 果たして、地図の外には何があるのか……出るとどうなるのか……そういった好奇心半分、希望半分の行動方針にのっとり、ゲイナーはエリア端まで一人足をのばしてみたのだ。
 その結果は、『警告します。禁止区域に抵触しています。あと30秒以内に爆破します』とのことだった。
 どうやらマップ外も禁止エリア区域とされているようで、一歩足を踏み出すと首輪の警告アラームが鳴る仕組みらしい。
 これでは、エリア外への逃走など到底無理……だが、活路は見い出せた。
 それは実に簡単なことだった。エリアの外に出ると、首輪が爆発する。ならば、首輪を外してしまえばいい。
 今さらな考えとも取れるが、これは無駄なようで大きな一歩だ。
 なにせ、『首輪がなければマップ外に出ることは問題ない』という事実が証明されたのだから。
 つまり、首輪解除前提での話になるが、脱出経路が判明したのだ。

(たぶん、ギガゾンビはエリア外のどこかにいる……それを見つけるには、まず首輪を解除しなくちゃいけないってことなんだ)

 SLGを解くような軽快な思考で、ゲイナーは脱出方法を考える。
 分かったのは、まず首輪の解除が大前提であるということ。ならば、それが可能な道具、もしくは仲間が必要となってくる。
 参加者八十名、その中には、機械分野に長けた人間もある程度はいるだろう。その人物とうまく接触することができれば、光明は見えてくる。

(だとしたら、いつまでもここに留まっているのは得策じゃな…………あれ?)

 ブツブツ呟きながら戻ってきた場所には、信じられない光景が広がっていた。

「ウソだ! こんなの、僕は信じない!」

 思わず声を張り上げたゲイナーの視界には、レヴィを縛り上げていたはずのロープが、残骸となって散らばっていた。
 明らかに、何か刃物で切り刻まれた痕跡が残っている。しかし、レヴィの所有物にそんなものはなかったし、使えるような状態でもなかった。

(誰かが彼女を助けた? 一番あり得る可能性だ……だけど、だとしたらレヴィさんはどこへ――げふっ!?)

 レヴィを捜し回るゲイナーの脳天に、ズカンッと何かが振り下ろされた。
 堕ちていく意識の中で、ゲイナーは視界に一体の人影を捉え……その横では。
 踵を振り上げながら、にんまり笑うレヴィの姿があった。


 ◇ ◇ ◇



125 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:22:22 ID:rZFTi7Ez
「…………っとと、鍵は…………お、これだな…………へへ、やっとはずれたぜ……」

 頭と瞼が重い。脳が痛みを訴えている。
 徐々に意識を回復させていくゲイナーは微かな肌寒さを感じつつも、唐突な気絶に納得のいく説明を求めるため、ゆっくりと目を開けるのだが……。

「――っへぶしッ!」

 開きかけた目は、盛大なくしゃみのせいでまた閉じてしまった。
 というか、寒い。気候はシベリアに比べれば全然暖かいものの、肌が感じる温度は明らかにおかしな度数だった。
 それもそのはず。覚醒したゲイナーは、どういうわけかパンツ一丁の半裸状態。山賊にでもあったかのように、身包みが完璧に剥がされていた。
 それだけではなく、何故か身動きを取ることもできない。
 確認してみると、腕は後ろに回され手首を短いロープで縛れている。足首もまた同様。そして口には――

「もがっ!?」

 たった今、さるぐつわを嵌められた――ご機嫌状態のレヴィによって。
 手足の自由を奪われ、喋ることも叶わない。さっきまでレヴィが置かれていた境遇を、そっくりそのまま返されていた。
 いや、衣服をもぎ取られた分、ゲイナーの方がレヴィより数倍悲惨だった。
 貧相な身体を海老反り状態でジタバタ動かすが、やはり先ほどのレヴィ同様、自由は利かない。
 その時ゲイナーは、まともに機能していた視覚に頼り、視界が捉えた『それ』で全てを理解した。

「よぉ、ゲイナーくぅん……寒中水泳はお好みか? たしかここにゃあ川があったよなぁ。いっちょ繰り出してみるか?」

 満面の笑みを浮かべたレヴィが、ゲイナーを見下ろしていた。
 そう、全ては彼女の仕業。今のゲイナーの悲惨な状況も、全ては彼女の報復の一部でしかないのだ。

「もがががっ、もがもが!?(訳:そんな、どうやってロープを解いたんです!?)」
「おうおう、不思議そうな顔してるねぇ……オーケイ。種明かしをしてやるよ」

 ゲイナーの必死な仕草から、彼が説明を求めているのだと悟ったレヴィは、一個のガラス片を取り出す。

「これがなんだか分かるか? 察しがいいゲイナー坊ちゃんなら分かるよなぁ……これは、お前があたしの頭をぶん殴った時に飛んだ、酒瓶の破片だよ」

 ――幸運の女神の思し召しだった。もしかしたら、レヴィの髪にでも引っかかっていたのかもしれない。
 ゲイナーがいない間に見つけた、キラキラと光るガラス片。レヴィはそのガラス片を使い、自身を縛っていたロープを切ったのだ。
 ロープは手錠付きだったため完全には自由になれなかったが、足さえ使えればゲイナーから鍵を奪い取るなんてのは、レヴィにとって朝飯前。
 あとは簡単だ。ゲイナーにこれでもかというくらいの苦渋を与え、今までの借りを返す。
 殺すのは簡単だが、それではこちらがつまらない。ゲイナーの服を剥ぎ取ったのも、復讐の一環だった。

「さてと、お次はどんな醜態をくれてやろうか……いっそパンツも脱がしちまうか? 全裸で殺し合いなんて、最高にクールだと思わねぇか?」
「もががががが(訳:思うわけないでしょ!)」
「ぷっ……ぷくっ、ぷわはははははははははははははは!! バーカ冗談だよ! 日本の喜劇じゃあるめぇし、どこにそんなバカいるよ! ぎゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 女性らしからぬ下品な笑い声で、レヴィは大爆笑していた。
 ひたすら不快にしか思わないのはゲイナーだ。今までが自分の絶対優位で進んでいただけに、少し油断してしまったのかもしれない。
 それにしたって、この仕打ちは酷い。仮にも殺し合いの真っ最中だというのに、こんな近所の悪ガキがやるようないじめをするなんて、レヴィの精神年齢を疑いたくなる。

126 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:23:54 ID:rZFTi7Ez
「はー、笑った笑った。あークソ、カメラの一台でもありゃ、この映像をベニーに手ェ借りて世界配信してやるってェのによ。
 あーあまったく、悔しいったらありゃしねェ。……いや、まだ一つ、お楽しみが残ってたな……」

 まただ。またレヴィは、ゲイナーににんまりとした笑顔を見せた。
 悪党が何かよからぬことを考える時に浮かべる、典型的な表情。
 ゲイナーは素直に悪寒を感じた。この震えは、肌寒さからくるものではない。

「…………もが、もがががーもがもが(訳:……僕のデイパック漁って、いったい何を探してるんですか?)」
「さーって、何が出てくるっかなー?」

 もったいぶりながらゲイナーの荷物を漁るレヴィ。

(――まさか、あの銃を奪って僕を射殺!? ……いや、違う。
 彼女はたぶん、もっと単純で、僕なんかが思い浮かばないような、しょうもないことをするつもりに違いない)

 変に確信が持てた。そして数秒後、その確信はやはり正しかったのだと思い知らされる。
 レヴィの手には、一本の酒瓶が握られていた。

「ゲ、イ、ナ、ア、く〜ん? 今からレヴェッカお姉さんが素敵なプレゼントを贈ってあげるよぉ」

 不気味な声調で、ゲイナーに歩み寄る。
 もう彼女が何をするつもりなのかは理解した。
 それを止める手立てがないということも。
 だから、抵抗するのをやめた。
 ただただ、不条理な大人の傲慢に不満を抱きつつ、ゲイナーは全て受け入れた。
 認めたくない。この人が大人だなんて、絶対に認めたくない。

「縁があったらまた会おーぜ。ま、それまでお前が生きてたらの話だけどよ」

 そして、ゲイナーは耳にした。


 ゴッチ〜ン☆


 どこかで聞いたような、酒瓶が頭をぶっ叩く音を。


 ◇ ◇ ◇



127 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:24:42 ID:rZFTi7Ez
 ゲイナーへの報復を済ませ、晴れて自由の身となったレヴィは、意気揚々と駆け出していた。
 マップを確認し、現在地を確認する。やはり、マップ端側の森林内のようだ。
 随分と遅くなってしまったが、参加者名簿も確認しておく。
 見知ったラグーンメンバーの名前は、レヴィとロックの二人のみ。ダッチやベニーの名前はなかった。そして、

「ロベルタ!? あのイカレメイドも来てやがんのかよ!?」

 ロアナプラでの激戦が思い出される。そういえば、ロベルタとの勝負もまだ決着がついていなかったか。
 いい機会だ、とレヴィは舌なめずり。もし出合ったなら、即行でブチ殺す。そう思いながら。
 やっと自由になれた反動か、どうやらテンションもご機嫌にハイのようだった。

 それもそのはず。首輪こそついたままだが、もうそれ以外にレヴィを縛るものは何一つない。
 お荷物ボーイも今は半裸で森の中、そして銃もゲットした。欲を言えばカトラスが欲しいところではあったが、さすがに高望みしすぎだろうか。
 ……いや、ソード・カトラスはなくてはならない。イングラムは頼れる銃ではあるが、これではまだ足りない。

「……あのヤローをぶちのめすには、まだ足りねぇ」

 ゲイナーへの報復は果たした。次なる標的は、あの『カズマ』とかいう男だ。
 勘違いで襲ってきたことについての恨みはもちろんだが、何よりもあの化け物じみた戦闘力。
 銃弾を拳で弾き、パンチで木々を薙ぎ倒す……最高にイカれてる。もはやあれは怪獣と呼んで問題ない。
 あの強さには、純粋にガンマンとして惹かれるものがある。願わくば、いや、必ず。
 再戦し、勝つ。

「借りは返す。常識だよなぁ……首洗って待ってろよカズマァァァ!!!」

 そのために、カトラスがいる。
 解き放たれた『二挺拳銃(トゥーハンド)』は、愛銃を求めて彷徨い歩く……。


 ◇ ◇ ◇


 頭から被ったバカルディが酒臭い。たんこぶのできた頭部が痛む。
 全部レヴィがやった。頭に酒瓶を殴りつけ、ゲイナーの意識を昏倒させた。

(……いつだって……大人は勝手だ…………子供の主張なんて……耳を貸しやしないんだ…………)

 ゲイナーは、途切れそうな意識の中で世の不条理に悪態をついていた。
 パンツの隙間から入る風が、どうしようもなく冷たかった。

128 :「借りは返す」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/15(月) 23:25:38 ID:rZFTi7Ez
【F-8・森林/1日目/昼】

【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:寒気がする、頭に大きなタンコブ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:パンツ一丁、ロープ、さるぐつわ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:……寒っ
2:なんとかしてこの状況を打破したい。できれば誰にも見つからない内に。
3:首輪解除手段を手に入れる。
4:もう少しまともな人と合流したい(この際ゲインでも可)。
5:さっさと帰りたい。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。
※手首と足首をロープで縛られ、最低限の身動きしか取れません。口にはさるぐつわを嵌められ、喋ることもできません。
※ゲイナーの周囲には、ロープの残骸、手錠、割れた酒瓶、ゲイナーの衣服、防寒服が散らばっています。


【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:腹部に軽傷、頭に大きなタンコブ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:ぬけ穴ライト@ドラえもん、イングラムM10サブマシンガン(ゲイナーから再び強奪)
[道具]:支給品一式、予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、バカルディ(ラム酒)1本@BLACK LAGOON、割れた酒瓶(凶器として使える)
[思考・状況]
1:ソード・カトラス及び銃火器の調達。
2:カズマを捜し出し、借りを返す。
3:ロックの捜索。
4:ロベルタと決着をつける。
5:気に入らない奴はブッ殺す。
[備考]
※双子の名前は知りません。

129 :これが小次郎の生きる道 ◆SP1RWrm9VI :2007/01/16(火) 00:43:36 ID:p1SqYKsR
小次郎は、南へ歩く。
強者を求めて、ただ歩く。
ゆっくりと、だが颯爽と風を切り、歩く。

「セイバー、あやつがあそこまで傷を負うとは…ふっ。どうやら私を楽しませる者はここには多いようだ」

この大きな剣の持ち主もだが、セイバーにあれほどの深手を負わせる者。
只者ではなかろう。
武士は、まだ見ぬ好敵手に対し強い期待を抱く。

「しかし…腹が減るな。なぜだ?」

小次郎は首をかしげる。
英霊となってからというもの。
まともに食事をせずとも、不都合など無かった。
しかし、今回はいつもとは違う。
何か、生前のときに何度かしたのと同じような、空腹を感じていた。

「何か…食べる物はあるだろうか」

バッグを開け、食べれる物を探す。
だが出てくるのはパンしかない。

「このようなもの、雅に欠ける」

小次郎は、パンを戻す。
だがかといって、わざわざ小次郎に合わせて支給品に和食など用意されているわけも無く。

「メリケンかぶれ…なぜ和を愛さない」

パンしか入ってないことに、小次郎はご立腹の様子だ。

130 :これが小次郎の生きる道 ◆SP1RWrm9VI :2007/01/16(火) 00:44:27 ID:p1SqYKsR
だがしばらく歩き続けると、近くにコンビニを見つける。

「ほう、なにやら良い匂いがするではないか。どれ、一応調べてみるか」

匂いに釣られつつも、平静を装い小次郎はコンビニへ。

中に入ると目の前には、コンビニお決まりのおにぎりが大量に陳列された棚がある。

「ふむ、これが握り飯か。なにやら陰陽な包みをしているが…食えるのだろうか?」

小次郎は迷う。
ビニールに包まれたコンビニおにぎり。
小次郎にとっては未知のもの。
躊躇してしまう。
だが、腹の虫は当然のごとく、小次郎を攻め立てる。
容赦なく、栄養を要求してくる。

「…ふ、私も武士、強者と相対する時に空腹で力が出なければ、相手への礼節を欠いてしまう」

小次郎は、意を決し包み紙を解く。
当然、正しい手順で解かなかったため、型崩れを起こす。

「なっ!?この握り飯…」

小次郎は驚愕の表情で、無残にも、二つに割れたおにぎりを見つめる。
だが、しばし迷いながらも、おにぎりを口に運ぶ。

「……ほう、上手いではないか。どれ、もう一つ」

小次郎は、たちまち一つを食べ終え、もう一つ手に取る。
二回目は、先ほどよりうまく包装を解いたため、型崩れは起こさなかった。
だがそのおにぎりは…

131 :これが小次郎の生きる道 ◆SP1RWrm9VI :2007/01/16(火) 00:45:20 ID:p1SqYKsR
「これはまた…なっ」

小次郎の口の中は、炎で焼けていた。
あまりの辛さに、バッグを空け、水を飲む。
大量に。

二つ目のおにぎりの包み紙に書かれていたのは…

『韓国風キムチ味 激辛注意!』

だが、初体験の激辛に苦しむ武士を無視して、放送が始まった。


【C−4 コンビニ 初日 昼】
【佐々木小次郎@Fate/stay night】
[状態]:右臀部に刺し傷(手当て済み)。 口の中やけど中。
[装備]:竜殺し@ベルセルク
[道具]:支給品一式 (水を1/3消費)
[思考・状況]
1.辛い。
2.兵(つわもの)と死合たい。基本的には小者は無視。
3.セイバーが治癒し終わるのを待ち、再戦。それまで違う者を相手にして暇を潰す。
4.竜殺しの所持者を見つけ、戦う。
5.物干し竿を見つける。

132 :峰不二子の動揺 ◆pKH1mSw/N6 :2007/01/16(火) 01:51:54 ID:0ez82PLc
「なんて悠長なことをしているのかしら……」

峰不二子は瓦礫の影に隠れながら嘆息した。
視線の先では、ゴーグルを額に張り付かせた少年が一心不乱に瓦礫と格闘している。
子供の頭くらいの大きさがあるコンクリートの塊を両手で持ち上げ、運び出し、瓦礫の山を切り崩す。コツコツと、コツコツと。
塵もどければ山も消ゆ。
生憎、その山は塵だけでは構成されていなかったが。
「……ッ」
少年の前には、直径2mはあろうかというビルの欠片が立ちはだかっている。
どう考えても、子供の能力を越える障害物だ。
「くそっ!」
少年は果敢だった。臆すことなく、諦めることなく壁に立ち向かった。
だが、勇気と無謀は似て非なるもの。
無理に動かそうとしたことで脆くなったコンクリートに亀裂が入る。
無遠慮な仕打ちに怒った壁が、二次崩落という名の牙を剥いた。
大破片と小破片が混ざり合った礫雨が少年の身体を粉微塵に、
「ハルバード!」
砕く前に砕かれた。
長槍を振るったのは赤髪の少女。その細腕からは信じ難いスピードで長大な武器を振り回す。
まるで身体の一部分でもあるかのような武器の使い方は、少女が常人ではないことを如実に表している。
赤髪の少女の認識をただの子供から要注意人物にランクアップさせ、不二子は更に耳を欹てた。

「あ、ありがとう!」
「……別に、それほどたいしたことじゃねーし」
少年が礼を言い、少女がそっぽを向く。微妙に頬が赤い。
「また焦ってるよ太一くん、さっき注意したばかりじゃないか。それに、大きい瓦礫があったら僕に言うんだ。僕は結構力持ちなんだよ」
どうやら反対側で瓦礫を漁っていたらしい青ダヌキが姿を現す。ところでアレ、本当にタヌキでいいのよね? 呼称雪だるまに変更すべきかしら?
「いや、これは俺がやらなくちゃいけないことなんだ。だから……」
「その理屈はおかしいよ、太一くん。君は一人じゃない、僕がいる、ヴィータちゃんがいる、仲間がいる」
「勝手に仲間って決めんじゃねーよ!」
「一人で背負い込む必要なんてないよ。少なくとも僕は、今の君に協力を惜しまない」
「……わかった、ありがとう。それと、今まで本当にごめんな」
「謝罪はさっき聞いたよ。それより捜索を再開しよう! あ、ヴィータちゃんは熱があるからじっとしててね」
「いちいちうるさいな、わかってるよ!」


133 :峰不二子の動揺 ◆pKH1mSw/N6 :2007/01/16(火) 01:52:43 ID:0ez82PLc
……私は何をしているのかしら? というか、彼らは何をしているのかしら?
殺し合いの最中にこんな三文芝居の青春ドラマを見せられても苦笑する他ないわね。
甘い。ミュスカ・ドゥ・ブランのヴァン・ムスーくらい甘い。
まるで、青臭い高校生が作った文化祭の映画のような安っぽさ。
タイトルをつけるとしたら『ゴーグル少年の冒険 Episode 00』といったところかしら。
主役がゴーグル少年、ヒロインが赤髪の少女、もう一人、いや一体は……全く可愛くないけれど、さしずめマスコットかしら? どうでもいいわね。
とにかく、高校生のパチモン映画にしても酷い。カメラマンが上映当日に部外者を決め込むくらいにあんまりなシロモノだ。
少しくらい状況と合致した行動を見せて欲しいわ。現実逃避なのかもしれないけど。
大体、注意が足りなさ過ぎる。今私が狙撃したら確実に一人は死ぬ。しないけど。
ゴーグルの少年は論外だ。さっきから何かに取り憑かれたかのように瓦礫を漁るばかりで、周囲を見ようともしない。
いや訂正、さっきのやり取りから他の二人にも話しかけるようになった。単純な子だ。頭のメモ帳に書き足す。
赤髪の少女はどうやら調子が悪いらしく、覚束ない足元を得物の槍で支えている。あの様子じゃ注意力も散漫になっても仕方ない、か。
時折誰かの名前を呟いているようだが、知人でも死んだのかしら?
最後に青ダヌ……いや、青雪だるま? ちょっと待って、別に雪で作られている必要はないんじゃないかしら?
じゃあ青ダルマ……ダメね、ダルマに手足は付いてないわ。だとしたら……しまった、これこそどうでもいいわ!
……コホン、青ダヌキも私に気付く様子はないみたい。ロボだから鈴あたりにセンサーくらいついてるものだと思ったけど……


「……なんだよ、ニヤニヤ笑って気持ち悪いな」
「それはそうだよ、太一くんがあんなに成長してくれたんだから」
赤髪の少女と青ダヌキの会話が始り、不二子は思考を中断して静聴を開始する。
「あいつって、元からあんな感じじゃなかったのか?」
「いや、最初はもっと……」
二人の会話は、太一が瓦礫を叩き付ける音によって二回分の応答で終了した。
大きな瓦礫をどかしてもらい、一人黙々と作業を続けていた太一は見つけてしまった。
予期はしていた。生きている筈がないとは思ってはいた。
それでも、期待していなかったわけじゃない。死んでいて欲しいと思ったわけではない。
生きていて欲しい、と、そう願っていた。
バーチャルは甘い。現実は甘くない。そしてここは、現実だった。

「素子、さん……」


(……運が良かった……とは言えないね。むしろ……)
予想外の早い素子の発見に、しかし喜びの要素は皆無だった。
死んでいるだろうと思われていた者が、死んでいた。ただそれだけ。
太一もヴィータも、そしてドラえもんも無言だった。瓦礫の破片が転がる音だけが空気を震わせる。
やがてドラえもんが『素子だったもの』に近づき、一緒に埋まっていたデイパックと一緒に持ち上げる。
汚れたデイパックから、灰色の粉塵が雪のように零れた。
お墓、作ってあげよう、とドラえもんが言った。
うん、と太一が答えた。


    ※   ※   ※   ※   ※

134 :峰不二子の動揺 ◆pKH1mSw/N6 :2007/01/16(火) 01:53:39 ID:0ez82PLc
「うーん、役に立ちそうな道具はないね……」
ドラえもんが素子のデイパックの検分を終え、芳しくない結果に唸り声を上げる。
地図やランタンなど、自分達も持っているようなものばかりだ。たずね人ステッキのような探索系の道具は、ない。
確か彼女は銃を持っていたはずだが、果たして未だ使える状態にあるのだろうか。
山のような瓦礫を見上げ、溜息を吐く。
できれば銃くらい入手しておきたいところだが、これ以上時間を使うことは後ろの少女が許してくれないだろう。
案の定、不機嫌そうな声がぶつけられる。
「結局、まだはやては探せねーんだな」
「……ゴメン」
ヴィータの非難に、ドラえもんは謝ることしかできなかった。
ドラえもんがはやてを探せる道具を扱える、という理由で同行しているヴィータだが、肝心の道具がなければ話にならない。
ヴィータはそれ以上追求することをせず、ガシガシと頭を掻いた。
「じゃあ、さっさとはやてを探しに行こうぜ。もうここには用は無いんだろ」
「うん、そうだね。それじゃあ行こうか、太一くん」
素子の墓――ろくな道具がないため、死体を瓦礫で囲った質素なものだ――に向かって黙祷していた太一が顔を上げる。
「わかった……でも、お墓って本当にこんな感じでいいのかな。なんつーか、物足りないような……」
人間は、死んだものに対して『形』を求めたがる。幽霊然り、仏然り、墓然り。
それは、死んだ人間に対する尊厳保持の名を借りた自己満足に過ぎない。
いなくなった人間を霊魂や物品に投影して『安心感』を得るのだ。まだここにいる、と。
ただ、太一の場合その限りではないだろう。太一は素子にもっと謝りたかったのだ、報いたかったのだ。
素子が死んでそれが不可能になっていようとも、せめて墓ぐらいはまともなものを作ってやりたかったのかもしれない。
「……しょうがないね」
ドラえもんは一言呟くと、瓦礫の山に手を突っ込んだ。
瓦礫に埋もれていた鉄骨が、ドラえもんの手によって地面に突き立てられる。
「ドラえもん!?」
「これで少しはお墓らしくなったかな」
素子の墓の前に突き立てられた鉄骨はさながら墓標のようだった。
慄然と立つ無骨な鉄骨を見た太一は、やっぱり素子さんには花より鉄が似合うな、と思った。
ドラえもんは満足そうな顔をし、ヴィータは何か言おうとして……結局何も言わなかった。
「じゃあ、今度こそ行こうか太一くん」
「……待ってくれドラえもん、もう一本鉄骨を立ててくれないか?」
「え?」
訝しむドラえもんに向かって、太一は言った。
「俺が殺しちまった男の人の分だよ」
温い風が、太一の頬を撫でた。


135 :峰不二子の動揺 ◆pKH1mSw/N6 :2007/01/16(火) 01:55:12 ID:0ez82PLc
かつてビルがあった場所に、二本の鉄が聳え立っている。
一つは鋼の意志と鋼の身体を持った女性のためのもので、もう一つは剣の意志と剣の身体を持った少年のためのものだった。
鉄の前に佇む少年が懺悔の言葉を吐き出す。彼の意志と身体は何色だろうか。
「ごめん……謝って済む問題じゃないけど、ごめんな。本当にごめん。
 素子さん、助け切れなくてごめん……逆に助けられてちゃ世話ねえよなあ。
 それと、俺が殺しちまった人……死体を見つけてあげられなくて、ごめ……ハハ、謝ってばっかだな俺。
 ……俺が犯した罪は許されるものじゃないけど……それでも、あんたたちの分も頑張るから……だから…………から…………」
最後の部分は、言葉になっていなかった。


    ※   ※   ※   ※   ※


「一応、殺し合いには乗っていないみたいね」
一通りの会話を聞き終えて結論を出した。あの三人は無害だ。
ただ、人を探しているようだから、一緒に行動すると動きを制限されそうね……。
少し悩んだ後、今まで通り尾行を続けることに決めた。
マンドレイクを収穫する際に犬を使うのと同じ理屈。危険という名の雄叫びを食らって死ぬのは、私ではなく彼らだ。
将棋の捨て駒、チェスのサクリファイス、遺跡のトラップ探索用の先行奴隷。
言い方は色々あるが、簡単に言うと情報収集の材料兼保険だ。
それ以上の価値をあの三人に見出せたとしたら接触するのもやぶさかではないけど、今は情報が少なすぎるし……。
三人が東に移動し始めたのを確認し、後を追おうと、
「ん!?」
して、瓦礫の隙間からデイパックの端っこがはみ出ているのを見つけた。見つけてしまった。
ドラえもんたちが見落としても、大盗賊峰不二子は見逃さない。
「くっ!」
三人が去っていった方角とデイパックを交互に見る。
デイパックは大きな瓦礫に挟まれており、短時間で発掘するのはほぼ不可能。
掘り出していたら間違いなく青ダヌキチームを見失ってしまう。
青ダヌキか、デイパックか。ああ、もうタヌキで定着しちゃったわ! 本物のタヌキを見たとき「あれはフェレットだ」とか思わないかしら!?
……ふざけてる場合じゃないわね。そろそろ本当に見失っちゃう。

「デイパックの回収はいつでもできるけど、尾行は今じゃないとできないわ」
選択肢を一つに絞り、東に向かって駆け出す。まあ、あのデイパックは後で必ずいただくけどね。


136 :峰不二子の動揺 ◆pKH1mSw/N6 :2007/01/16(火) 01:56:01 ID:0ez82PLc
【F-1/駅周辺の路地/1日目・昼】



【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康、慎重
[装備]:コルトSAA(装弾数:6発・予備弾12発)
[道具]:デイバック/支給品一式(パン×1、水1/10消費)/ダイヤの指輪/銭形警部変装セット@ルパン三世
[思考]:
1:ドラえもん達を尾行。後は状況に応じて適宜判断。
2:デイパックがある瓦礫の場所(F-1エリア)を覚えておき、後で盗りにくる。
3:ルパンのことが少し心配。
4:頼りになりそうな人を探す。
5:ゲームから脱出



※以下の荷物は瓦礫の山のどこかに埋もれています。



・素子が所持していたデイパック
  デイパック*2:
   共通支給品*2、トウカの日本刀@うたわれるもの
   水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、もぐらてぶくろ@ドラえもん
   バニーガールスーツ@涼宮ハルヒの憂鬱
   獅堂光の剣@魔法騎士レイアース、瞬間乾燥ドライヤー@ドラえもん

・ジュンが所持していたデイパック(素子検査済)の残り
  デイパック*2:
   共通支給品*2

・その他デイパックの外に出ていた道具
  ベレッタ90-Two、ルールブレイカー@Fate/stay night、物干し竿
  ベレッタM92F型モデルガン、弓矢(矢の残数10本)@うたわれるもの
  オボロの刀(1本)@うたわれるもの

137 : ◆SP1RWrm9VI :2007/01/16(火) 04:23:08 ID:p1SqYKsR
>>129-131の作品を破棄します。

138 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 17:57:01 ID:2nJyZD3l
長門有希という名前らしい強化義体が単身でどこかへ
(状況はいまだよく飲み込めていないが、察するにこのゲームに乗った者が襲撃してきたので撃退するためだろう)
向かっていった後。
トグサは彼女から、ここに残った少年少女たち(と一匹のよくわからない豚)の保護と
この涼宮ハルヒという、見たところ長門と同じ学校の生徒らしい娘の手当てを頼まれたものの
この場には彼女の治療に役立ちそうなものは何一つないために途方に暮れていた。

(何かないのかよ、何かっ)

今ここにある分のデイパックの中身は既に確認した。
最初からそれほど期待していたわけではないが、出てきたのは武器にカメラにハーモニカに……
とてもこの場で活用できそうなものじゃない。
一応、応急処置ということで何があったかは知らないが彼女の左上腕部に痛々しく突き刺さった矢を慎重に抜き取り、
近くの川の水で消毒させて、包帯代わりに自分の服の袖を破って巻きつけている。
治療を急がなければ化膿の恐れも出てくるが、ひとまずそっちに関してはこれでいい。
問題はそれからだ。厄介なことに、この少女は意識がないのだ。
もう片方の袖を破って彼女の頭に巻きつけることで大量の出血を抑え、
呼吸があることを確認して気道を確保するために右半身を下にして寝かせる昏睡体位をとらせてはいる。
だがそれまでだ。ここから先は何一つすることがない。
地図を見たところ近くに病院があるが、そこに連れて行くにしても今彼女をみだりに動かすのは危険だ。
まさかおぶっていくわけにもいくまい。それこそ死を近づけるだけだ。

「くそっ、役立たずが……!」

思わず毒づく。
長門やこの目の前で意識を失っている娘相手にではない。
頭を打って軽く気絶しているので日陰に寝かせておいた金髪の少年や、
さっきまでハルヒの耳元で必死に「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と声をかけていたメイド服の少女にでもない。
ましてやものすごく吐きそうな顔をしている豚にでもない、他ならぬ自分に対してだ。
俺は俺の考えうる限りのベストを尽くす?どの口がそれをほざく。
これが、この状態がベストだとでもいうのか。
セラスを死なせ、バトーを死なせ、そして今ここにまた一人の少女を死なせようとしている。
これのどこがベストなものか。そんなものが認められてたまるか。
自分に比べれば、あの長門の方がよほど自分の為すべきことを為すために動いている。
だというのに、自分は一体何をやっているんだ。


139 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 17:58:24 ID:2nJyZD3l

「…………」

いや、違う。違うぜトグサ……
今お前がやっていることは、違う。
考えろ。
公安九課としてもっとも愚かなこととは、このようにウダウダ言うばかりで実際には何もせずにいることだろうが。
それはただ絶望を手をこまねいて待っているだけにすぎない。
自分はそんな人々を救うために存在しているはずだろう?
考えるんだ。
この状態は決してベストなんかじゃない。ベターですらない。現状は何も変わっていないのだから。
それならば自分がやるべきことは、必ず存在する。それを見つけ出す。
セラスを死なせた。バトーを死なせた。ならばもう二度と、自分の目の前にある命は取りこぼさない。
それが公安九課の使命なんだ。

そう考え、あらためて彼は周りを見回す。
そこの木の下で今にも死にそうな顔をしている豚に(見たところただの食あたりで本当に死ぬことはないだろう)、
治療の邪魔になるので遠くに追いやったがいまだハルヒのことを気にかけているのか豚の側でチロチロとこちらを盗み見ている少女。
彼らはこの重傷の娘とは違って比較的無事なようだ。
相変わらず気絶している少年。これも大丈夫だ。放っておいても直に目を覚ますだろう。
横転している小型のトラック。車輪が破壊されている。修理には時間がかかりそうだ。
修理。
……修理?

「…………ッ!」

慌てて自分のデイパックの中身を探す。
畜生、なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ。
たしかあるはずだ、この状況にうってつけの道具が。
どんなものでもそれが機械であるならば短時間で直してみせる、にわかには信じられない魔法のような道具が。
……『技術手袋』が!

「あった!」

思わず歓声をあげる。
突然出された大声に少女の体がびくっと震えて、サササッと木の後ろに身を隠されたがそんなことはどうでもいい。
さすがにあんなレジのようにすぐにはいかないだろうが、これであのトラックを直せば涼宮ハルヒを乗せて病院まで運ぶことができるじゃないか。
自分のするべきことが見つかり、トグサはそれを両手に装着すると全力でトラックまで走った。


140 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 17:59:21 ID:2nJyZD3l

「?」

が……そこで彼は、あることに気づく。

「これは……この娘は……」

まるで人形と見紛うかのごとく端整な顔立ちをした黒い服を着た少女が、
トラックの側の地面に胸のところで両手の指を絡み合わせ、眠っている。
いや、違う。死んでいるんだ。息をしていないしその顔には血色もない。
屈みこんで頬の、その雪のように白い肌に触れると、まるでそれと錯覚してしまうかのごとく冷たい。
やはり体温の熱はとうの昔に抜け切っている。
さっきのトラックが倒れたことによるトラブルが原因でというわけではなさそうだ。
目立った外傷はないため詳しい死因は不明だが、それでも死んでいる。
とても綺麗な顔で、死んでいる。

「……やっぱ、気絶とかじゃなかったか」

長門がこの物言わぬ少女をトラックから丁寧に引っ張り出しているのを先ほど目撃していた。
何故こんな子供たちが遺体と共にトラックで走っていたのか。その理由は当然トグサは知らない。
……だが、なんとなくわかる気はする。
きっとそれは、彼らが子供であるが故のことだ。
この子らは、『仲間の一人が死んでその亡骸をその場に放置するような』心根に育つにはまだ早すぎたのだろう。
ある程度大人なら、そんなこと意に介さずにただ生き残ることを第一に考え、
既に死んでしまった人間など偉大なる犠牲の名の下に放っていくだろうに。
……自分ならどうする?
散々他の連中に青臭い青臭いと言われ、それは嫌というほど自覚しているが、それでもそんな心を捨て去るのに抵抗のある自分なら。

「!」

少女の遺体から目を離すと、
先ほどまで気絶していた少年が右手で頭を押さえながらむくりと起き上がるのがわかった。
ようやく目覚めてくれたらしい。
トグサはゆっくりと、今いるトラックの側から彼のいる位置に向かって歩き出した。
自分ならどうするか?決まっている。


141 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:00:17 ID:2nJyZD3l

「なあ、君」
「……え……あ………え?」

金髪の少年……ハーフかクォーターだろうか……はまだ目覚めたばかりで意識がぼやけているようだ。
何が起きたのか理解していない様子でぼーっとしている。
彼の側にしゃがみこむと、警察手帳を取り出しつつ彼の意識がしっかりするまで待ち続けた。
見たところ、あそこで縮こまっている少々人見知りの激しい少女やわけのわからない豚と比べれば、彼が一番落ち着いて話ができそうだ。

「…………あ……誰、ですか……?」
「俺はトグサ。警察だ。
突然現れて信用するほうが難しいとは思うが、俺は決して殺し合いには乗っていない」

そう、警察手帳を見せながら彼の目をじっと見つめる。
信用するほうが難しいとは言ったが、信用してもらわなければ困るのだ。
果たして少年相手にこの警察手帳の効力がどれほどのものになるかということはわからなかったが、とにかく彼の心に賭けるしか方法はない。
少年は状況把握に戸惑いつつ、

「石田……ヤマトです」

そう名乗ってきた。
それを了承の意と勝手に解釈すると、
トグサは右手の親指を立ててそのまま自分の後方にある横転したトラックを指差した。

「簡単に説明するが、君たちはあのトラックが横転したせいで今この場に留まっている」
「え、横転……?」
「大丈夫、だいたいみんな無事だ……約一名を除けば、の話だけどな」

襲撃者が現れて、長門がそれの迎撃に向かったことは伏せておく。今は余計な情報は与えないほうがいい。
もしもそのことを教えてしまえば、彼が長門を助けにいく可能性が出てくる。
強化義体である彼女ならともかく、見たところただの少年であるらしい彼が行ったところで無駄死にするだけだろう。

少年……ヤマトは首をゆっくりと曲げて右手の木の下にいる一人と一匹を見ると幾分か安心したようで、
それから体を左に傾けて、トグサの親指が指し示す先、自分達の乗っていた軍用トラックの惨状を覗いた。
右側面が下になり、少々ひしゃげて煙をあげているそれを見て驚いたようだが予想していたよりは大した混乱もなく、
彼はぼんやりとしていた頭をようやく切り換えたらしくしっかりとこちらの目を見据えてきた。


142 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:01:15 ID:2nJyZD3l

「それで、俺はどうしたらいいんですか?」

よくできた子供だ。
そう、トグサはヤマトを見て思う。
彼はちゃんと自分の役割というものがわかっていて、その上でそのように立ち回ろうとしている。
うちの娘も将来はこんな風に育ってほしいもんだ、などと場違いなことも一瞬だけ思った。

「トラックが横転したことにより、君たちの仲間の内の一人、涼宮ハルヒという少女が頭を打って
現在意識不明の状態に陥っている。放っておくと危険だ」
「涼宮ハルヒって……あの人が?」

もっとショックを受けるかと思ったがそうでもない。
これは彼がよほどしっかりした人間だからなのか、
それとも涼宮ハルヒとさして親しくなかったからなのかはトグサには判断つかなかった。
だが、混乱して恐慌状態に陥るよりは話が通じる分よっぽどマシだ。

「そうだ。できることなら今すぐにでもそこの病院に連れていきたいところだが、
今彼女の体を動かすことは非常に危険で、そんなことはあのトラックにでも乗せなきゃ無理な話なんだ」
「でも、そのトラックは……」
「俺が直す」

間髪を入れずに、トグサはそれに答えた。
少しでも彼に安心感を与えるためにできるだけ早く、そして力強く。

「…………」

そんな人知れない努力が実ったのかどうかは知らないが、このヤマトという少年はしばしの逡巡の末にこくりと頷いてきた。

「そこで君の出番なんだが」
「はい、何でも言ってください」
「君たちが一緒に連れてきていたあの女の子の、遺体」

そのことに触れたとたん、明らかにヤマトの表情が変わったことにトグサは気づいた。
そこらへんの大人なんかよりもよほどしっかりしていそうな彼とはいえやはり子供。
これを頼むのはあまりに酷といったものなのだろうか。
だが、それでも言わないわけにはいかない。

「埋めてやってくれないか」



143 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:02:36 ID:2nJyZD3l



死人は死人だ。それ以上でもそれ以下でもない。彼女はただの、死人だ。
これはやっぱり大人の判断なんだろうとは思う。
死んだにも関わらずずっと一緒に連れてきていたあの女の子を
彼自身の手で埋めてくれと告げることは考えてみれば……いや考えるまでもなく、非常に残酷だ。

だが、それでも。それでもだ。
彼女が『死んだ』というしっかりとした認識がなければ、今度は彼ら自身の身が危うくなる危険だって出てくる。
『死』という概念を、この殺し合いという場の危険性をしっかりと覚えさせなければならない。
もちろんそれは、この少年に限らず他の子供たちにも必要であることはわかっている。
それはあとでゆっくりと教えてやるつもりだ。だが今は時間がない。
彼らに話しかけようとしたところで今はまだまともに取り合ってくれそうもないし。だからせめて、とりあえずはこの少年だけでも。
それになにより一番の理由として、
彼女の身体が乗せられていたと思われる後部座席のスペースにはこれから涼宮ハルヒが横たわらなければならない。
非情と言われようが、既に死んだ人のために今生きている人が犠牲になっていい理由なんてこの世にあるはずがない。あっていいはずがない。

「……いずれは埋めようと、思ってました」
「!」

その返事に軽く驚きを覚えつつ、彼の顔を見る。だがヤマトは俯いていたため、その表情まではトグサにはわからなかった。
ただその声はどこか悲痛な想いが込められていて、多少震えている。それだけは感じ取れた。

「あの娘は……俺のせいで、死んでしまったんです……
俺が、殺したんです。あのトラックで、轢き殺した」
「……!」

掠れた声で、彼は搾り出すように言葉を発している。
それは本当に小さな声だ。いつもなら耳に入らないであろうほどに小さな声。
だが、決して聞き逃してはならない声。

トグサは自分の考えが甘かったことを知った。
彼らは……少なくともこのヤマトは、その幼い年齢には耐えられないほどのあまりに重い経験をしてきたのだ。
他の誰よりも、彼女が死んだということを理解していた。

「だから、せめて……どこかいいところで埋葬してあげたくて。
 それでずっと一緒にトラックに乗せていたんです。
 でも……ここはまだ違う。まだ、相応しくないと……思うんです」


144 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:04:00 ID:2nJyZD3l

それははっきりとした拒絶の意思。先よりはヤマトのその声も大きくなったように思える。
この子達があの女の子の遺体とずっと共にあったのは他の子の考えよりもむしろ彼個人の理由が大きいからである、とトグサは判断した。

「だから俺は、まだあの娘を埋葬したく……」
「いいところってのは、どんなだ?」

突然の質問に、ヤマトの言葉が途切れた。俯くのをやめてこちらの顔を見上げてくる。
トグサはさっきまで下を向き続ける彼を見て泣いているのかと思っていたが、
その目は赤く潤んではいるものの、涙を零している様子はなかった。

「あの娘を埋葬するのにいいところ。それは一体全体どんなところなんだ?」

そう問いかける。
別段責めているわけではない、ただ単に疑問に思ったから聞いてみた。そんな口調で。
ヤマトはこちらを見つめたまましばし黙っていたが、やがてその目を逸らすとしどろもどろながらに答えてきた。

「それは……その、見晴らしのいい丘とか。あと近くに花が咲いてるところ、とか……」

そうやって出された返答は、自分が最初に彼から受けた印象とは違ってずいぶんとステレオタイプなものだ。
まあその分、年相応に子供らしいといえるか。

ヤマトの肩に軽く右手を置いた。
いきなりのその行動に少々戸惑いを覚えたらしく、目の前のこの少年は自分の肩に置かれた手と顔を交互に見ている。

「いいか、ヤマト」
「は、はい」

そういえば、この少年を名前で呼ぶのは初めてだ。
そんなことを思考の片隅で思いつつ続ける。

「墓を作るのに本当に相応しい場所なんて、ないんじゃないか?
 どんな見晴らしのいい丘だろうが、どんな綺麗なお花畑だろうが、結局冷たい土の中ってことには変わりない。
まあそれでも野晒しにするよりはよっぽどいいとは思うがね」
「で、でも……でもそれじゃあ、どうしろっていうんですか?
 あの娘は俺が殺してしまったのに。
あの娘のために俺がしてやれることなんて、これくらいしかないんですよ!?」

肩に置かれた手を振り払って、強く拒絶してくる。

「トグサさん……でしたっけ。あなたが何と言おうとも、俺は絶対に……」
「違うだろ」


145 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:06:39 ID:2nJyZD3l

急にトグサの声の調子が変わったことに驚いたのか、勢いだっていたヤマトの言葉が止まった。

「な、何が違うんですか……」
「ヤマト。君はあの娘のために、ではなく心のどこかでそのいい墓とやらを作ってやることで自分の罪が許されるんじゃないかと思ってるだろう」
「…………!」

ヤマトの表情が強張る。どうやら図星だったようだ。
いや図星というよりは、自分でも気づいていなかったことを指摘されたというほうが近いか。
たしかに彼は彼女のためにしてやれることを探していたのだろう。
だがそれと同時に、彼女を殺したという自分の罪が償われる方法を探していた、ということだ。

「どんな理由があろうともその人の人生を奪ってしまった罪と相当する償いなんてものは存在しないんだ。
だからそれをやってしまった人はずっとその罪を背負って生きていかなければならない。とても辛いことだけどな」
「トグサ、さん……でも、俺……」
「背負っていけよ、ヤマト。そしてその人の分まで精一杯生きていくんだ。絶対に、自分の犯したことを忘れるな。
 そうするしか、ないんだ」
「…………」

甘っちょろい戯言だ。正直、自分でもそう思う。
これもまた、ある意味で自分のしたことに対する罪の重さを軽くさせるための弁解にすぎない。
だが自分は彼に対してこう言ってやるくらいしかできない。
あとは全て、彼自身の問題だ。

「スコップ、ありますか?」

不意に彼はそう聞いてきた。
そういえば、穴を掘るとは言ってもそれをするだけの道具がなかった。

「ちょっと待ってろ」

トグサは立ち上がって相変わらず酷い有様のトラックに駆け寄ると、剥がれかけたドアを外して技術手袋を使用した。


146 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:07:48 ID:2nJyZD3l
数分後、それは原型からは考えられないような新品同様のスコップとして生まれ変わる。
いつの間にか近づいてきていたヤマトにそれを手渡すと、

「トグサさん」

その時に、もう一度だけヤマトはこちらに向かって口を聞いてきた。

「なんだ?」
「ありがとうございます」

それだけ言うと、川の近くのある程度土が柔らかいところまで走っていった。

(礼なんて言われる筋合いはないんだけどな……)

彼の後ろ姿を見ながらそう思うと、トグサはぽつんと木のところで存在を忘れ去られて所在をなくしているかのように座り込んでいる少女に声をかけた。

「おい、君!」

案の定、びくっとされてまたその身を隠されてしまった。
だが姿は見えずとも、声は聞こえるだろう。トグサは大声で続ける。

「俺は今からやることがある。その間、君はそこの涼宮ハルヒっておねえちゃんを見ててくれ!」

聞こえたはずだ。
ジー…っと彼女が隠れた木を見つめていると、ぴょこっと可愛らしい獣の耳(付け耳だろうか)を覗かせて、
少女はチラチラとこっちを見つつ、やけに素早い動きでハルヒの元へと駆け寄っていった。

さあ、あとはこっちが頑張る番だ。
このトラックを修理するに気合いを入れると、トグサは技術手袋の使用を開始した。


147 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:09:45 ID:2nJyZD3l

 ◇ ◇ ◇

妙な浮遊感があった。
歩いても歩いても、まるでそこから一歩も進んでいないんじゃないかと錯覚をしてしまいそうな。
いや、錯覚などではなく実際にそうなのかもしれない。
さっきからずっと前に進んでいるつもりだが、周りの光景は暗闇のまま、一切変化しないのだから。

(ここ、どこかしら。なんだかやけに暗いわね……
っていうか、なんであたしこんなとこにいるわけ?
なにかとても大変なことがあったような気がするんだけど、ど〜も思い出せないわ)

少女……涼宮ハルヒは当てもない探索をやめて立ち止まり、思考をし始める。
不思議なことに、歩き詰めによる疲労感とかそういうものはまったくなかった。

なんでここにいるのかと自問すれば、
使い古されたありきたりな表現を使うのは腹立たしいが、気づいたら既にここにいたとしか言いようがない。

たしか自分はアルちゃんや有希たちと一緒に、ルパンのとこに行こうとしてたんじゃなかったっけ?
でもなんでそうしようと思ってたんだろ。ルパンが何かしたっけ?う〜ん……
やはりどうしても思い出せない。ところどころの記憶はあるが、細かいところが抜けているのだ。

見渡せど特に何があるわけでもないこの場所。わかるのはただここが暗いということだけ。
でもこの暗さは漆黒の闇とか、永遠の虚無世界とか、そんな本でよく見るようなフレーズが似合う大層なものじゃなくて、
どちらかというととんでもなくだだっ広いホールでただ照明が消されただけというか、そんな中途半端な感じがする。

「?」

と、そこでハルヒは何か妙な音が聞こえることに気づいた。

なんだろう、この音。どこかで聞いた覚えがあるようなないような。
犬の『ハッ、ハッ、ハッ、ハッ』という息遣いに似ているがちょっと違う気もするし……

「そこのお嬢さん」
「うひゃあ!?」

聞こえてくる音に対して精神を集中させようとしていたところに
突然真後ろから、それも耳元から野太いオヤジの声がしたのにはさすがのハルヒといえども驚かずにはいられなかった。
瞬時にその場から三メートルほど(といってもこんなところでは正確な距離はわからなかったが)離れると、
そこでようやく振り向いて先ほどの声の主の姿を確認する。


148 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:11:51 ID:2nJyZD3l
「……うあ゛」

ハルヒの第一声はそれだった。

見れば天使のコスプレをしたメガネをかけた小太り中年オヤジが、
パタパタパタパタとその体格に不釣合いなほど小さな白い羽根を酷使といっていいほどばたつかせながら宙に浮いていたのだ。
いや、本当に浮いているんだったらこれはコスプレなどではなく本物の天使といっていいのかもしれない。
いいのかもしれないが、なんとなくそれはハルヒには認めがたいことだった。ええもう、断じて。
そいつはなんだかハアハア言って小汚い汗を全身にかいている。先ほど聞こえていた音の正体はこれだったのか、と思った。
……同時に知らなければよかったと思った。

「な、なによあんた。変態オヤジ? 
悪いんだけど援助交際みたいな真似をしたいんだったら他あたってくれる?」

とりあえず相手に主導権を持たせないように強気な姿勢であたるハルヒ。
そいつは見た目からは少し想像できないほどにやけに軽くて早い口調で話してきた。

「いやいやいやいや。別にワタシはそんなことを望んでいるわけではありませんよSOS団団長涼宮ハルヒちゃん」
「なんであたしの名前とSOS団のこと知ってんのよ!
なにあんたただの変態コスプレオヤジかと思ったらストーカー!?」
「いや、だってほら。ワタシ見ればわかる通り精霊だし。ちなみにカラシニコフの精ね。よろしく〜」
「知らないわよそんなロシア人みたいな名前!」

目の前のオヤジは相変わらずハアハア言いながらこちらに近寄ってくる。
そんなきついんだったら無理して飛んでないでさっさと降りればいいのに、などと思いつつ
ハルヒは向こうが近寄ってきた分きっちりと後ろに後ずさった。
それを見たからかどうかは知らないがオヤジは進行をやめて、またその場でパタパタと飛びながら話を続けてきた。

「ホントはね、君がここにくるのはイレギュラーなことなんだよ。でもな〜んでか知らないけど君実際ここにいんだよねえ。
ワタシの予想だと多分、なにか大宇宙的な意思が働いたんじゃないかって睨んでんだけどどう思う?」
「知らないわよ!」
「うん。いやまあそんなの考えたってしょうがないしね。
 んでせっかくハルヒちゃん来てくれたんだし、どうせなら喜んでもらおうかと思って参上したわけなんだこれが」
「よ、喜ぶう? あんたの顔なんか見たってちっとも嬉しくないんだけど」

するとこの変態はくっくっくと不気味な笑いをし出した。
まさかとは思うけど襲い掛かってきたりとかしないでしょうね……


149 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:14:11 ID:2nJyZD3l
「もうすぐここに、朝比奈みくるちゃんがやってくるんだ」
「へ? みくるちゃん?」

全然予想もしていなかった言葉に、ハルヒはぽかんと口を開けた。

「ホントはさ。ここを経由せずに行っちゃうとこなんだけどまあ今回は特別!
 少しだけならここで一緒に自由にしてていいよ?」

オヤジのその言葉の意味するところはよくわからなかったけれど、そんなことはどうでもいい。
それよりも確かめたい。

「ほんとに、ほんとにみくるちゃんが来るの!?」
「そうそう嘘偽りなくホントのことよ? ワタシ嘘ついたりしたら精霊廃業だもん。
 し・か・も! 吸血鬼メイドになっているというオマケ付きで!」

「…………ッ!」

その言葉を聞いた瞬間、ハルヒの頭を雷が走り抜ける。
超高速で今入ってきた言語を情報として処理し、それからそれに対する応用方法を思いつくプログラムが進行されてゆく。
他人を僕として扱うことのできる吸血鬼。
ご主人様に対して僕(といったら語弊があるが)として仕えるメイド。
これは一見相反しそうな属性を見事にマッチさせた芸術的と言ってもいいくらいの新境地だ。文化の真髄。ワッツアワンダフルワールド。

「新たなる萌えがここに完成したわ!」

叫ぶ。
こうなったらじっとなんかしていられない。時間が一刻一秒でも惜しい。
今さっきまで自分の前でハアハア言ってた意味不明なオヤジのことなど一瞬で頭とあとついでに視界から消し去る。
早速吸血鬼メイドとして新たに誕生した彼女のためにスケジュールを組み立てなければ。
以前にSOS団とその他一部の有志で撮った最高傑作の映画『朝比奈ミクルの冒険』をも超える超最高傑作の続編だって作れる。
評判のいい映画の二作目はヒットしないというジンクス?そんなものは知ったことではない。それくらい軽々と破ってみせようじゃないか。

気づけば手元にはノートとペンが。さらに足元に撮影のためのビデオカメラまである。
いきなりどこからそんなものが出てきたのかという疑問も持たず、
ハルヒはノートにこれからの綿密なスケジュールを書き込むため、ペンを滑らせていく。

映画のタイトルは『朝比奈ミクルの冒険 Episode2』。
前作から少し時間が流れ、色々あって吸血鬼メイドとして生まれ変わった主人公朝比奈ミクルが自分の使えるべきご主人様を見つけ、
そこに例のごとく襲い掛かってくる悪の秘密結社を撃退していくという壮大かつ痛快な物語だ。

暗くて周りがよく見えなかったはずなのに、何故かノートに書かれた字は見える。それもまた疑問に思わなかった。
気分はハイの絶好調。
こんな時に取るに足らない雑多な出来事なんて考えていられないだろう?


150 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:15:28 ID:2nJyZD3l

 ◇ ◇ ◇

「いつまで寝てるのよみくるちゃん! あなたは今後、魅惑の吸血鬼メイドとして活躍するという崇高な使命があるのよ!」
「わ、わたし吸血鬼なんてできないですぅ〜」

「つべこべ言うな! もう撮影スケジュールは組み立てちゃったんだから、ビシバシいくわよ!」
「は、はいぃ〜!?」

 ◇ ◇ ◇

「はいそこでターンして満面の笑顔! チャームポイントの牙をさりげなくアピール!
 いい? さりげなくよさりげなく! あからさまにそれを見せると萎えちゃう人が結構いるんだから。チラリズムの理論と一緒ね!」
「え、え〜っとこうですかぁ?」
「ん〜〜〜〜〜っ! いい、いい、いい、いい! 最っ高よみくるちゃん! それじゃ次のシーンいくわよ!」


「はいセリフ!」
「『わたし、僕なんていりませぇん。ただメイドとしてご主人様にお仕えできるのなら、他には何もいらないんです』」
「ん〜もうちょっと感情込めて! なんかも〜『これがあたしの生き様よ!』みたいな!
 色んなものを切り捨てられなかった吸血鬼の女の子がついに自分の道を歩むことを決意したシーンなんだから!」
「は、はいぃ〜わかりましたぁ」

◇ ◇ ◇

映画の撮影も滞りなく進んで、遂にラストのシーンまでやってきた。
悪の秘密結社も必殺の吸血ミクルビームで滅ぼし、やっと平和がやってきたと思ったら
彼女の主人であった男の経営していた会社が押し寄せる不況の波に飲み込まれて倒産してしまい、
借金取りから逃げるためにメイドを残して海外へ高飛びするシーンだ。
ずっと一緒にいた二人の別れのシーン。涙なくしては観れないところである。
ちなみに主人役はいないので今度誰か適当な人をつかまえてやらせようと思う。まずはメイド役である彼女のシーンを全て撮り終えなければ。

「は〜いみくるちゃん! これが最後なんだから気合い入れてくわよ! んじゃまずは憂いを帯びた瞳を作って!」

いきなり適当に難しいことを注文するハルヒ。
でもこの吸血鬼メイドは文句一つ言わずにう〜ん、などと唸りながら懸命にその瞳とやらを作り出そうと努力している。

「あ、それ! 今のそれいいわみくるちゃん! じゃあその瞳のまんまセリフいってちょうだい!」
「は、はいぃ。え〜と……
 『もう、これでお別れになるのですかぁ?』」

『……そう、なるのかもな。もう俺は、君の主人でもなんでもないんだ』

「『そんなことはないです。あなたはずっとずっと、わたしのご主人様ですよぉ』」

『だが、お別れだ。もう二度と会うことはできないかもしれない』

「『また、会えますよ』」

『え?』

「『わたし、待ってますから。ずっと。ずっと』」

『…………』

「『ですから、さよならは言いません。また会いましょう。この世でそれが無理なら、生まれ変わった後に。
いつかきっと、また会いましょう』」

ハルヒの「カット!」という声がこの場に響き渡った。


151 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:17:39 ID:2nJyZD3l

◇ ◇ ◇

「お疲れみくるちゃん! いや〜最後の演技は特によかったわ! なんだか哀愁が漂ってたもの!」

最高だったという感情をどうにか表したくて丸めたノートで軽くパシパシとみくるの腕を叩きながら、ハルヒは非常に満足していた。
まだみくる以外のシーンは撮り終えていないのでわからないが、この調子なら来年の文化祭の目玉はいただきだ。
しかも口コミで話題になって全国上映、さらに全米進出ということも夢じゃない。
あとは学校に帰って新たにSOS団として加わった人たちも含めたみんなで頑張るだけだ。

「涼宮さん」

と、みくるがなんだか笑顔で話しかけてきた。
それも当然だろうとハルヒは思う。こんなに出来のいいシーンが撮れたのだから、彼女もまた嬉しいに違いない。
だからこちらも笑顔で、みくるの顔を見る。

「なに? みくるちゃん」

がしっと両手でこちらの両手を握ってきた。なんだかいつもと比べてやけに情熱的だ。やはり彼女も相当感激している。

「とっても……とってもとってもとってもとってもとぉ〜っても楽しかったです! 本当に、本当に楽しかったです!」
「ええ、あたしも楽しかったわよみくるちゃん! でもまだまだこれで終わりじゃないわよ?
帰ったら早速残りのシーンもやらなきゃならないし、反響次第では続編だって考えてるんだから。
っていうか反響なんて待たなくてもこの出来なら続編希望の声が多数あがるのは間違いないんだし、今のうちから企画を立てるのも……」

そこで。

「あれ? みくるちゃん、なんだか体が光ってない?」

ハルヒは彼女の衣装が……いや体全体がセピア色の光に包まれていくことに気づいた。
なんだろう、これ。別に演出ってわけでもないだろうし。
目の前のメイド服の少女の表情は変わっていない。ただ笑っている。本当に……幸せそうに。

「時間かな」
「ひっ!?」

またも真後ろから野太い声が聞こえてきた。
振り向くとやはりといおうか例の自称精霊、通称変態オヤジがそこにいる。相変わらず暑苦しそうな面だ。

「じ、時間ってなによ」

バクバクと鳴る心臓の鼓動を聞きながら、先ほど彼が呟くように言っていた言葉の意味を尋ねる。
彼は何の躊躇もなく告げてきた。

「お別れの時間だよ」
「はあ? 何言って……」
「特別なんだ。君やみくるちゃんがここにいるのは、本当に特別なこと。
 だから君はともかく、『もうお亡くなりになってる』みくるちゃんはそう長くは滞在できないわけ。お迎えが来ちゃってるから」
「え?」


152 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:20:25 ID:2nJyZD3l

振り返ると、そこにはもうあのドジっ娘吸血鬼メイドはいなかった。

「あれ?」

先ほどまで強く握られていた手の感触も、いつの間にかなくなっている。

「なんで……?」

当然あの笑顔も、どこにもない。

「…………」
「最後のお別れ、どうだった? も〜大変だったんだからね許可取るの。減給直前までいったんだから。
 でも一応、あのまま君たちが何も会えないままお別れっていうのも忍びなかったし……」

「うるさい、バカ」

トーンを落としたどす黒い声が突然彼女の口から漏れ出たので、カラシニコフの精はびくっと体を震わせた。
恐る恐る、彼女の顔を覗き込みながら聞き返してみる。

「え、あの、団長サン……?」
「うるさいって言ってんのよこの体脂肪率三十パー越え歩く猥褻物陳列罪オヤジ!」
「な!?」

今までになくショックを受けている精霊。変態などという言葉にはさして反応しなかったくせに、どうも肥満に関しては気にしていたらしい。
だがそんなことは知ったことではなく、ハルヒはただただ湧き上がる感情をそいつにぶつけ続ける。

「ふざけんじゃないわよ! 何がお別れですって!? そんなのあるわけないでしょ知った風な口きいてんじゃないわよ!
 精霊? お迎え? ばっかじゃないのただの妄想のくせに!
 みくるちゃんはね! とってもいい娘で、そんな死んだりするような悪いことは何にもしてないの!
あたしの大切な団員なの!あたしの大切な友達なの!
 ちゃんと元の世界に帰ったら、アルちゃんといっしょにSOS団の二大マスコットとしてやっていくの!
 それでまだまだ色んな可愛い衣装を着て、色んなところに行って、色んなことをたくさん話して!
 お別れ? 何よそれあたしは絶対に認めない!
 みくるちゃんが……いやみくるちゃんだけじゃない。キョンも、有希も、古泉くんも、鶴屋さんだって!」

何故だか不意に、昔見た夢のことを思い出した。
キョンと自分、二人だけいれば他に何もいらないと思って作り出した世界の夢。
あの時は他の人が全部、ただ邪魔にしか思えなくて。

「この中の誰かたった一人だけでもいなくなっちゃったら、元の世界に戻ったって楽しくもなんともないのよ!」


153 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:22:54 ID:2nJyZD3l

◇ ◇ ◇

いきなり現れた知らないおじさんはよくわからない乗り物のところでさっきから何かやっている。
ここからではよく見えないが、時々ガガガガ、とかシュイーンとか怖そうな音が聞こえてくる。何をしているんだろう。
可愛らしい生き物はさっきと変わらずぐてーっとしている。
金髪のお兄ちゃんはどこかへ行っちゃった。
正義のお姉ちゃんはまだ帰ってこない。
このハルヒお姉ちゃんも全く目を開ける様子がない。

アルルゥはハルヒの右手をギュッと握り締めながら、彼女が起きてくれるのを願い続けていた。
ハクオロ……父と慕うあの人は死んだ。もうこの鉄扇を渡す相手はいないのだ。とても悲しくて胸が潰れそうになるけど、それを認める。
ルパンも今は自分の前から姿を消している。この上ハルヒまでいなくなってほしくない。
お願いだから、行かないで。一人にしないで。
ただ願う。願うしか自分にはすることがない。

「!」

気のせいだろうか。
そう思いアルルゥはもう一度よくハルヒの顔を覗いてみる。

……やっぱり、気のせいなんかじゃない。

「おねーちゃん……いたいの?苦しいの……?」

そう呼びかけるがハルヒからの返事はない。
意識がないんだから当然だ。

だがその意識のないはずのハルヒの目からは。



一筋の涙が、零れていた。



154 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:29:10 ID:2nJyZD3l
【D-3・E-3境界・道路脇 1日目 昼】
【新生SOS団 団長:涼宮ハルヒ】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:左上腕に損傷、頭部に重度の打撲
[装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+
[道具]:支給品一式、着せ替えカメラ(残り19回)@ドラえもん、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
[思考・状況]
基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームからの脱出。
1、気絶
[備考]
腕と頭部には包帯代わりにトグサの服の袖が巻かれています

【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:人見知りモード。右肩に中程度、左足に軽い打撲。SOS団特別団員認定
[装備]:ハクオロの鉄扇@うたわれるもの、ハルヒデザインのメイド服
[道具]:無し
[思考・状況]
1、「正義のみかたのおねーちゃん」の帰りを待つ。
2、ハルヒの様子を見守る。
3、ハルヒ達に同行しつつエルルゥ等の捜索。

【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】
[状態]:人をはね殺したことに対する罪を背負っていく覚悟、右腕上腕に打撲、相次ぐ精神的疲労、SOS団特別団員認定
[装備]:クロスボウ
[道具]:ハーモニカ@デジモンアドベンチャー
 デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、支給品一式
 真紅のベヘリット@ベルセルク
[思考・状況]
1:グレーテルの埋葬
2:病院へ行ってぶりぶりざえもんとハルヒの治療
3:ハルヒとアルルゥにグレーテルのことを説明。
4:八神太一、長門有希の友人との合流
基本:これ以上の犠牲は増やしたくない。生き残って元の世界に戻り、元の世界を救う。
[備考]
ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。
また、参加時期は『荒ぶる海の王 メタルシードラモン』の直前としています。
額からの出血は止まりましたが、額を打ち付けた痛みは残っています

155 :お別れ ◆4CEimo5sKs :2007/01/17(水) 18:30:36 ID:2nJyZD3l
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:黄色ブドウ球菌による食中毒。激しい嘔吐感。無視されている。
   なぜか無傷。SOS団非常食扱い?
[装備]:照明弾
[道具]:支給品一式 ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー
    クローンリキッドごくう@ドラえもん(残り四回) パン二つ消費
[思考・状況]
基本:"救い"のヒーローとしてギガゾンビを打倒する
1.いいか!私こそが真なる正義の味方なのだ!無視するなって言ってんだろうが貴様ら!
2.強い者に付く
3.自己の命を最優先
[備考]
黄色ブドウ球菌で死ぬことはありません。

[共通思考]:市街地に向かい、グレーテルを埋葬するのに適当な場所を探す。
[共同アイテム]:おにぎり弁当のゴミ(後部座席に置いてあります)
 RPG-7弾頭:榴弾×1、スモーク弾×1、照明弾×1(地面に置いてあります)

【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労
[装備]:暗視ゴーグル(望遠機能付き)/刺身包丁/ナイフ×10本/フォーク×10本/マウンテンバイク
[道具]:デイバッグ/支給品一式/警察手帳(元々持参していた物)/技術手袋(残り17回)@ドラえもん
[思考]:1、軍用トラックの修理
    2、トラックが直りかつ長門が戻り次第、ハルヒを乗せて病院へ直行
    3、情報および協力者の収集、情報端末の入手。


156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/17(水) 20:36:54 ID:6V0G3vYt
くだらねえ長文書いてんじゃねえよ糞ハルヒ厨wwwwwwwwwwww
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157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/17(水) 21:34:25 ID:HK+pwenx
せめてSSって言えばいいのにね



158 :すくわれるもの ◆q/26xrKjWg :2007/01/17(水) 23:14:33 ID:PWfELQxI
 倒れた電柱に、潰れた家屋。そしてところどころで燻る炎。
 商店街の一角は滅茶苦茶になっていた。
 こう大災害の惨状とかを彷彿とさせて、あまりよろしい気分ではない。それでもまあ、さっきの雑貨店やら病院やらに比べればまだましではあるのだが。
 ……今のところ死体が見当たらない分。
 トウカさんもトウカさんで、俺と似たような感情を抱いているようだ。ただ、似てはいても切実さで言えばトウカさんの方が遙かに上なんだろう。

「まさに軍場。いや、もうその跡か」

 そして、この現状はトウカさんの呟きにこそ近い。
 あの青年、ロックさんが言っていただけの――あるいは言っていた以上の戦いが、この場で繰り広げられていた。
 トウカさんが跡と言い切るなら過去形にしてしまっても大丈夫そうってとこが不幸中の幸いか。

「ああ、あれですね。うどん屋」

 かろうじて残っていた看板のおかげで何とか分かったのだけども、もはや建物それ自体は原型を留めてない。

「ところでキョン殿、ウドンなるものは一体全体どのようなものなのであろうか?」
「あー、そのですね、まあ機会があればご馳走しますよ。百聞は一見に如かず、とも言いますし。店がこの状態じゃあ、ここでってわけにはいかないですけど」

 下手すれば小麦粉とは何ぞや、麺とは何ぞやというところから説明しなければならないかもしれないからして、今回は適当にあしらわせていただこう。
 異文化交流とは、かくも難しきものである。

「それよりも、ロックさんが残してきたっていうころばし屋なるものを探さないと。確か黒い卵に短い手足が生えたような、そんな人形だって話でしたよね」
「人形か……」

 トウカさんの目がきらりと光ったような気もしたが、見なかったことにしよう。
 目的のものは、瓦礫を漁るまでもなくすぐに見付かった。手足の生えた黒い卵、もとい黒スーツに黒帽子とサングラスというダンディーな服装で決めた強面のヒットマンが、悠然とそこに立っていたのだ。

「随分と面妖な人形だが、これが本当に役に立つのだろうか?」

 俺が手にしたそれを、トウカさんがしげしげと見つめる。
 どうやらいまいち気に入らなかったらしい。トウカさんの『かわいいアンテナ』には引っかからなかったようだ。こんなのじゃあ仕方もないか。
 と、それはさておき。

「ちっちっち、そこはぬかりないですよトウカさん」

 俺とて同じ失敗を二度も繰り返すつもりはなーい!
 今回は一応の用心も兼ねて、ロックさんからころばし屋の説明書をちゃんといただいてあるのだ。体裁がけんかてぶくろのそれと同じだから、多分出元も同じだろ。
 そして、どんなふざけた能力でもその実現が期待できるってことだ。少なくともけんかてぶくろよりは役に立つこと間違いなし!

 そうそう、ロックさんにころばし屋の話を聞くまで気にもしていなかったが、俺の財布やら定期入れやらは没収されることなくポケットに入ったままだった。お金や定期がこんな場所で役に立つかは怪しいものではあるが――
 いや、お金は早速役立ちそうだから、ここは素直に感謝しておくとしよう。ギガゾンビにじゃないぞー、あくまで俺の悪運にだ。


159 :すくわれるもの ◆q/26xrKjWg :2007/01/17(水) 23:16:27 ID:PWfELQxI
 早速、説明書に書いてあったことをこれみよがしにトウカさんに実演してみせる。

「ほら、頭の後ろに穴空いてるでしょう。ここに10円玉入れて――ああ、これが10円玉ってものです。で、これを入れてから相手の名前を呼ぶと、その人を転ばせられるって寸法なんですよ。
使いようによってはかなり強力なんじゃないですか? うまいこと相手の名前を聞き出しさえすれば、それだけで隙作れますし」
「おお、さすがはキョン殿! 既に効果の程、しかと把握されて――」

 トウカさんの言葉が終わる前に、俺の手の中からころばし屋は消えていた。
 それと同時に、バギュンッ! という小気味よい音が響く。

 どうやら俺にもトウカさんのうっかりが移ってしまったらしい。トウカさんがうっかり俺の名前を呼ぶことを想定もせず、うっかり10円玉を入れてしまうとは。
 ああー俺としたことが! このうっかり者!
 いや、うっかりだとか以前に、そもそもこのころばし屋とやらも俺のことをキョンだと認識してるのか!?
 名簿のみならずこんなわけの分からないオモチャみたいな道具までかよ!
 でもまあ、そりゃそうだよな。俺が死んだら放送じゃあキョンって呼ばれるだろうし、誰かが気を利かせて墓でも作ってくれたとしても『キョン、ここに眠る』とか書かれるに違いないぜ。

 やり場のないしょーもない思いが心中でぐるぐる回っていようがいまいが、俺が宙を舞っているのも確かなわけだ。

「いてっ!」

 そのまま尻餅をついた。
 よく教室で見かける光景――誰かが椅子に座ろうとしているところで、その椅子をこっそり引いてしまうという定番の悪戯をご想像いただきたい。
 何だその程度のことか、とか思っている奴! 甘いぞ! あれで尾てい骨を骨折して入院、なんて奴も世の中には結構いるのだ。油断は禁物である。
 まあ幸い、今回はそういう大事には至っていなさそうだ。

「てて……」

 尻をさする。いくら大事ではないと言っても痛いことには違いない。
 さっさと100円玉を入れて解除しなければ――

「どうされた!? 大丈夫かキョン殿!」
「あああ、ちょっと待ってくださいよトウカさ――」

 今度は俺の腕を無理矢理掴んで引き起こそうとしたトウカさんまで巻き込んで、問答無用ですっ転ばされる。

 トウカさんが『某としたことがー!』と叫んだのは、俺に巻き込まれて転んだあと、曲者だ敵襲だと騒ぎながら起き上がって、もう一度俺を俺を引き起こそうとしてまた諸共転んで、
ようやっと俺の話を聞いてくれて、彼女が俺の名前を呼んだからころばし屋の効果が発動したんだということを理解してからのことだった。

   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


160 :すくわれるもの ◆q/26xrKjWg :2007/01/17(水) 23:18:40 ID:PWfELQxI
 ――といったやりとりを経て、この凄腕ヒットマンは俺が持つこととなった。財布から出しておいた10円玉も何枚かポケットに忍ばせてある。うむ、備えあれば憂いなし。
 ころばし屋をトウカさんに預けたところで、剣技の邪魔にしかならないだろう。それどころか、10円玉を入れて準備万端の状態にも関わらず先に自分の前口上を述べて自爆したりするに違いない。ああーその光景が目に浮かぶようだー。
 そんなトウカさんは、あれからずっと複雑な面持ちで俺の横を歩いていた。

「もしもし、トウカさーん? 俺はもー気にしてないですから」

 別に怪我したわけでもないし、もう慣れっこだしな。さんざ謝り倒されこそしたが、むしろ切腹騒ぎを起こされなかっただけも有り難いと言っていい。
 そういえば朝の騒動以来、切腹がどうとかは一度も言い出してない。

「あ、ああ。すまぬキョン殿」

 彼女の意気消沈っぷりの理由は、ころばし屋の件だけが原因ではないだろう。

「……結局、エルルゥさんは見付かりませんでしたね」

 ロックさんの足跡を逆に辿りつつ、エルルゥさんを探す。うどん屋に到達したらロックさんが残していった支給品を探す。それが俺達の目的だった。
 そして、目的は一方しか達せられなかった。他にあてもなく、何となくもと来た道を引き返している。

 この悪趣味極まりない催し物が始まって以来、俺とトウカさんはもう半日近くも行動を共にしていた。しかし未だに、知り合いには出会えず仕舞い。言ってしまえば何の成果も上がっていないのだ。
 そうこうしているうちに、朝の放送では探し人の名前が呼ばれてしまった。
 俺は一人、トウカさんは二人。
 次の放送ではどうなるだろうか。その時、俺達はまた悔やむのかもしれない。

「某が至らぬばかりに、エルルゥ殿やアルルゥ殿は未だこの戦火の中。己の不甲斐なさが情けない……」
「そんなことないですよ。それに、そんなこと言い出したら一介の高校生に過ぎない俺なんて不甲斐ないこと極まりないじゃないですか。トウカさんのお陰で何とか無事でいられてますけど。
俺一人じゃ、あの金髪の女だとかに斬りかかられて生きていられる自信ないですよ。ははは……」

 我ながら、慰めってよりは単なる自虐っぽい。特に最後の乾いた笑いが。
 自分の身を守る力を、さらに力余って他人までをも守れてしまう力を持ってる人と、俺みたいな一般人とじゃ全然――

「違う!」

 俺のモノローグを中断させたのは、モノローグに被るように発せられたトウカさんの一声だった。

「武芸に秀でていれば強いというものではない。コウコウセーがどうとか、地位も身分も関係ない。真に強きはキョン殿だ。キョン殿がおられたからこそ、某は我が道を見失わずに済んだ。こうして前に進んでいられる」

 熱っぽく弁を振るうトウカさんを、俺はぽかーんと見つめていた。
 だがしかし、そんな風に言われてしまうと、人間だんだんその気になってしまうのだから現金なものである。
 今までハルヒのせいで無茶苦茶なことにこれでもか! というぐらいに巻き込まれまくった。殺されそうになったりだとか、世界が終わってしまいそうになったりだとか。
 でも、最後には何とかなってきたじゃないか。ほとんど人任せだったけど。
 これからだって、きっと何とかなるさ。多分。

「……エルルゥさんは身を守る術がないって話ですし、もしかしたら一人でどこかに隠れてたりするのかもしれない。戻りながら、もう一度よく探してみましょう」
「心得た!」


161 :すくわれるもの ◆q/26xrKjWg :2007/01/17(水) 23:19:59 ID:PWfELQxI



【F-2/北東部/1日日/昼】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:普通
[装備]:バールのようなもの、わすれろ草@ドラえもん、ころばし屋&円硬貨数枚
[道具]:支給品一式、キートンの大学の名刺、ロープ
[思考・状況]
基本:殺し合いをする気はない
1 :病院に戻りつつ、引き続きエルルゥの捜索
2 :トウカと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いの捜索
3 :ハルヒ達との合流
4 :朝倉涼子とアーカードとロベルタを警戒する

【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:左手に切り傷
[装備]:物干し竿@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、出刃包丁(折れた状態)@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況]
基本:無用な殺生はしない
1 :病院に戻りつつ、引き続きエルルゥの捜索
2 :キョンと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いの捜索
3 :エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンを守り通す
4 :ハクオロへの忠義を貫き通すべく、エルルゥとアルルゥを見つけ次第守り通す


162 :いつか見た始まり 1/4  ◆1vV4MvJUPI :2007/01/18(木) 01:43:41 ID:WVc+IjJQ
 塵を含んだ乾いた淀みが、グリフィスの銀色の髪を無遠慮に撫でて過ぎた。
 間もなく、太陽が南天へ昇りきる。それまでは、多少勝手を知ったこの場所で辺りを見渡すつもりだった。
 だが、少々消極的に過ぎたと思い至った。遊園地の高い建物はあらかた破壊されてしまっており、
 積み上がった瓦礫はお世辞にも見通しが良いとは言えない量で、いくつもの小高い山脈を成している。
 目の前には、いつかの老紳士が残骸に紛れていた。
 勝者となるためにはどうすればよいかというのは、簡単なことだ。こうならなければ良い。
 半日を過ぎた今、他の参加者たちはどうしているだろうか。
 生き残るために、徒党を組む者もいるだろう。
 いずれは自分もそうする必要がある。
 輝いていたあの頃と少しも遜色のない己の肉体を見下ろし、少し地底暮らしが長すぎた、と思った。
 だが、鷹は久方ぶりの空に尻込みをしても、飛び方を忘れたわけではない。
 行く宛はなくていい。何かに会いさえすれば、状況は変わる。

 そうしてしばらく遊弋していた時、ふと気づいた。
 ぎらぎらと金に眩む風が、グリフィスの髪を静かに吹き払う。
 一足ごとに地面を噛み千切るような歩み。
 溢れ出る熱を隠そうともしない無策が、遊園地の残骸の中を恐れもせずに進んでくる。
 何も考えていない、何も考えなくても今まで生きてこられた、純粋な力の足音。
 背筋を熱と冷気が一気に駆け上がった。
 白く光るミッドランドで、実力で自由を勝ち取る約束に従って、グリフィスを置いていった男の薫り。
 傲岸不遜は星ほどいても、これ程の熱と力を感じさせる男は、ミッドランドはおろかチューダーまで合わせた
 全ての騎士をかき集めても、一人しか知らない。
 会いたかった、しかし顔も見たくなかった、そしてまだ会ってはいけなかった、グリフィスにとってたった一人の「友」。
「ガッツ……」
「おいてめえ」
 振り返った先には少しやせ気味のちんぴらが、下手な答えを返せば噛み殺さんばかりの形相で唸っていた。
 体中に通った高揚が、すっと引いていく。
「……何の用かな」
 見たところ、素手である。初めて会った時のガッツより、少しだけ年上だろうか。
 左目ばかりが、研ぎすぎた刃物の輝きでグリフィスを刺し通している。
「人に会わなかったか」
「どんな人間だ」
 至極真っ当な質問に、左目だけの青年がしばし詰まった。
「ナイフ持ったガタイのいい奴だ。血もついてるかもしれねえ」
 奇妙な条件だ、と思った。仲間探しなら、もっと詳しい特徴を言うだろう。
「男か? それとも」

163 :いつか見た始まり 2/4  ◆1vV4MvJUPI :2007/01/18(木) 01:45:07 ID:WVc+IjJQ
「どっちでもいい! 知ってんのか、知らねえのか!」
 探し人が何なのか、大体の予測がついた。
「親しい人間が、殺されたんだな」
 10歩は先の青年の歯軋りが、ここまで聞こえてきそうだった。
 この男の力を見たいという気持ちが高まってきたが、あいにくグリフィスの手元には慣れない武器しかない。
 今後のことも考えて、戯れは極力控えるべきだという結論に達する。
「残念だが、俺は知らないな」
「本当だな」
「逆に聞くが、嘘をついて何になるんだ」
「知るか!」
 ここに至って、この青年に感じたガッツに似た印象を改めざるを得ないことを実感していた。
 ガッツが身を隠さなかったのはただ、明日死んでも構わないという捨て鉢の感情からだった。
「本当に知らねえんだな」
「仇討ちもいいが、他に尋ねる人間はいないのか?」
「ああ?」
 既に相手は背を向けかけていた。
 その背に、あの頃のガッツに感じた死の匂いはない。
「死なれては困る人間の居場所とか、な」
 青年の顔色が変わった。
 まさか頭から抜け落ちていたとでも言うわけでもないだろう。
「……関係ねえだろ!」
「何があったのか知らないが、強がる場面ではないと思うがな。
 ああ、残念ながら何を聞かれても、お前が満足できる答えは出来ないぞ。俺は今まで誰にも会わなかったからな」
 老人のことは伏せておく。関係者だったりしたら、余計な厄介ごとを背負うことになる。
 そして、グリフィスにとってはここからが本題になる。
「そこでどうだ、俺と手を組まないか。俺も、生き残るために味方が欲しい。こう見えても腕には覚えがある」
 グリフィスの実感として、あの仮面の男の言うとおりでなければ生き延びることは出来ないだろうという実感があった。
 今、死にたくない人間たちが額を寄せ合っているだろう。そうなれば、やはりこちらにも人数がいる。
 もちろん味方の中には、グリフィスが最後の一人を目指していると聞けば、快く思わない者もいるだろう。そうあって当然だ。
 味方とは、一人では対処できない相手を倒すために手を組む者だ。
 そして味方とは、一時的にしろ背中を任せる者だ。
 手を組み続ける限り、好機は何度でも巡ってくるだろう。
 こちらに背を見せないような理解ある相手なら、もはや気を使う必要はない。
「……ケッ!」
 そしておぼろげに予期していた通り、目の前の青年はどちらでもなかった。
「他人とつるむなんざ、性に合わねえな。他所で仲良くやってろよ」
 似たような言葉を、どこかで聞いたことがある。
 剣を持っていないことが心底残念だった。もしあったなら、あの時と同じやり方で――
 強い者が弱い者を従える、当然の摂理で、目の前の男を従えていただろう。
 その強い衝動を、飲み込んだ。

164 :いつか見た始まり 3/4  ◆1vV4MvJUPI :2007/01/18(木) 01:46:06 ID:WVc+IjJQ
「なら仕方がないな」
 青年の左目が、まだ話を続ける気かと牙をがちがち鳴らしている。
「もしどこかで、黒い髪に浅黒い肌の女を見かけることがあったら、グリフィスが探していたと伝えてくれ。彼女の名はキャスカだ」
「勝手に決めんじゃねえ!」
「お前の探し人は?」
 柳に風の態度に酷く機嫌を損ねたようだったが、青年は割と素直に答えた。
「茶色い頭をこう、」
 と、両のこめかみあたりに拳を持ってくる。
「この辺でまとめて伸ばしたガキと、俺くらいの年のひょろっとした奴だ。別に、探してるなんて言わなくていいけどよ」
「名は?」
「……なのはと、君島だ」
「お前の名もだ」
「…………カズマだ。てめえは」
「さっき言ったがな。俺はグリフィスという……その二人に、体格のいいナイフを持った人間だな。覚えておこう」
 どうにも不満そうな青年を残して、グリフィスは今度は自ら背を向けた。
 これは、信用したという証だ。
 この様子なら不意を突かれることはないだろうという確信に近い判断があってこその行動ではあったが。
「さっきの話、次に会った時に良い返事を聞きたいところだな」
 自分が背を見せれば、相手も背を任せようと思うだろう。
「ケッ!」
 カズマの靴で砂利が鳴る音がする。
 ふと振り向いて、その背を見送った。
 体格のいい男には、一人心当たりがある。
――カズマ。お前に似た男だよ。
 言おうと思って、やめた。

165 :いつか見た始まり 4/4  ◆1vV4MvJUPI :2007/01/18(木) 01:48:02 ID:WVc+IjJQ
【F-4南東部・1日目 昼】

【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:普通
[装備]:マイクロUZI(残弾数18/50)・耐刃防護服
[道具]:予備カートリッジ(50発×1)・ターザンロープ@ドラえもん・支給品一式(食料のみ二つ分)
[思考・状況]
1:手段を選ばず優勝する。当面は使える頭数集め。殺す時は徹底かつ証拠を残さずやる
2:剣が欲しい
3:午後からキャスカを探して、協力させる。
4:ガッツどうしよ……

【カズマ@スクライド】
[状態]:不機嫌
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式
   鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード
[思考・状況]
1:かなみ・鶴屋を殺害した人物を突き止め、ブチ殺す(ナイフを持っているやつと断定、かなみと鶴屋を殺した犯人は同じだと思っている)。
2:ギガゾンビを完膚無きまでにボコる。邪魔する奴はぶっ飛ばす。
3:君島と合流。
4:なのはが心配。

166 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:44:15 ID:Aagiss6d
「服は、これでいいよね」
彼女は静かに、店を出る。


彼女、朝倉涼子は民家を出てからは、街を歩き続けた。
そして幸運にも歩き始めてすぐに、女性向けのブティックを見つけた。
ここなら、変えの衣服はいくらでもある。
案の定、自分のサイズに合う服はすぐに見つかった。
彼女はとにかく制服のイメージを大きく変えるために、白のクラシックパンツと水色のブラウスを選択した。
その上には、先ほどの民家で手に入れた漆黒のコートを着込む。中に編みこんだ髪は防具の役割を果たすからだ。
本来の彼女なら、もっと素晴らしいコーディネートを見せてくれただろうが、今の彼女にはそんな余裕は無い。
服選びに時間を割く、心理的余裕を彼女は無くしていた。


「早く、誰か助けてくれる人にっ!」

彼女は焦っていた。
一刻も早く、自分を護衛してくれる人を見つけたかった。
死への恐怖、今までに無い感情に、かつての氷のような冷静さは、失われつつあった。

167 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:45:07 ID:Aagiss6d
「あと十分」

吸血鬼アーカードは、時計を一目見て呟く。
二回目の放送までの残り時間。
ほとんどの参加者は、放送を気にして動きを止めるだろう。
アーカードも、獲物が見つかる可能性が低いのに、太陽の下を歩く気にはならなかった。
そのため、適当な建物を見つけ、中で放送が終わるまで待つことにした。
だが、その必要はすぐに無くなった。
窓越しに見える、反対側の店のショーウインドウが鏡の役割を果たし、そこに人影が映し出された。

「獲物!怪物か、それとも逃げるだけの狗か、先ほどのような殺し屋か?」
アーカードは、外へ向かう。
狩りへの出発だ。


「人間、私を倒してみろっ!」

突然、目の前の壁が突き破られた。
少女の前に男が現れる。
獲物を見つけ、直射日光の最中にも関わらず飛び出した吸血鬼。
目は、新たなる闘争への喜びで輝いて見えた。

168 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:46:19 ID:Aagiss6d
「ひっ!?」

少女は怯えた。
だけど怯えつつも、かろうじて残っている直感で全てを感じ取った。
この男は自分を『護衛』してくれる優しい男では無いと。
むしろ、獲物を狙い『狩る』ことしか考えていないと。

ーーー逃げないとーーー

少女は思った。
逃げないと死ぬと。
でも…足は震えて動かない。
目の前の男に対する恐怖は、機動力を奪った。

少女は必死で考える。
逃げると言う選択肢を失った今、何をすべきか。
あらゆる考えが、浮かんでは消えた。
その無数の案の中で、最もシンプルな選択肢が残った。
右手に持つ鎖鎌を一目、見る。
そして、一番勇気の要る選択肢を、採用した。
少女は勇気を振り絞った。

「…うっ…えいっ!」

意を決して鎖鎌の分銅を、男の頭部めがけて投げる。
自分と男の距離は、わずか三メートル。
強化された分銅は、男の頭蓋骨を砕き、脳漿をぶちまけ、彼女は勝利を収めるはずだった。
仮に分銅が急所を外しても、当りさえすればひるんだ隙に、相手の首を鋭さを増した鎌で切り裂き、やはり彼女は勝利を手にするはずだった。

そして彼女は死の恐怖に怯える、無力な少女ではない。
かつて、キョンに対し笑顔でナイフを向けた、このゲームでもピンク髪の少女の爪を笑顔で剥ぎ、笑顔で男二人の首を刈った。
笑顔が似合う、死を呼ぶ天使の朝倉涼子に、彼女は戻るはずだった。

だった。
そのはずだった。

169 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:47:23 ID:Aagiss6d
「どうした、ヒューマン」

理想と現実は大きく食い違った。
上半身だけの手投げ、かつての殺人的勢いは分銅には無かった。
男はあっさりと、そして当然のごとく、左手一本で分銅を掴み取ってしまった。
そしてそのまま、鎖を引っ張る。

「うっ、くっ…う」

彼女も必死で鎌を、握り締める。
鎌を渡すまいと、両手で全力で、力強く握り締める。
今の彼女には、これ以外の武器が無かった。
これは彼女の強さを保つ唯一の術だった。

しかし現実は少女に対し、ことごとく残酷に進む。

「弱すぎるぞ、女!」

「きゃっ!」

男の怪力は、少女のそれを遥かに凌駕した。
鎖鎌を放さなかった少女は、自分の体ごと引っ張り上げられた。

ーーーうそ!ーーー

少女は体に浮遊感を感じる。
かつてない感覚。
周囲の全てが、スローモーションで見えた。
ただその中で、自分の体は…流されるだけだった。

「HAHAHAHAHA、チェックメイトッ!!」

銃弾を失った銃、ジャッカル。
その銃身を男アーカードは右手で握り締め、鎌を握り締めたまま宙を舞う少女朝倉涼子の腹部へと叩きつける。
銃弾を失ってなお、ジャッカルは猛威を奮い続けた。


170 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:48:23 ID:Aagiss6d
「ぐっ…はっ……」

血を吐いて、少女は倒れる。
唯一の武器も、少女の手から離れた。
その武器は、男の左手に収まった。

「死んでないのか、素晴らしいしぶとさだ、ヒューマン」

普通なら背骨が砕け散り、致命傷となるはずだった。
しかし幸運にもジャッカルを叩き込んだ位置は、彼女が事前に服に仕込んだ硬質化した髪と同位置だった。
彼女はまだ意識があった。腹部への激しい激痛を伴いながら。

「うっ、うう」

腹を押さえもだえ苦しむ少女、男はそんな少女に向けて、鎌を振り上げた。
ゆっくりと、だが高く、鎌は振り上げられた。

「うう…ひっ!いやっ!お願いっやめてっ!」

少女の目に、高く振り上げられた鎌が映る。
彼女の恐怖は最高潮に達した。
自ら切れ味を強化させた鎌、あれを振り下ろされたらどうなるかは、本人が一番よく知っている。

「やめてっ!…うっうっうう」

少女の声は涙声に変わる。
目からは涙があふれ出る。
手で顔を押さえる。
男の絶大な力の前に、少女のプライドは崩壊した。

「……」

男は無言で、一瞬動きを止めた。

「…えっ!?」

男の動きが止まった、少女の恐怖がほんの少しだけ和らぐ。

ーーー助けてくれるの?−−−

171 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:49:29 ID:Aagiss6d
少女は期待した。
このまま自分を見逃してくれることを。
もしかしたら、無力な自分を『保護』してくれるかもしれないことを。
助けてくれることを。

「弱すぎる」

男の声と共に、少女の淡い期待は打ち消された。
そして次の瞬間、鎌は勢い良く振り下ろされた。
一度静止した分、力が込められていた。
狙いは、少女の…

「ひいぃぃぃっ!」

鎌は少女の顔と一センチも離れていない、路上の硬いアスファルトに鎌が深々と突き刺さった。
大きな音を立てて。
嫌いな陽の光の中での戦いに、集中を切らし仕損じたのか。それとも……
だがその一撃は、少女の心に絶大な恐怖を刻み付けた。
彼女は生まれて初めて、悲鳴を上げた。
そして彼女の意識は、恐怖が精神の限界を超過して、遮断された。

「つまらぬ、失望したぞ人間っ!」

男の罵声は、既に少女の耳には届かなかった。
男はただ、失望した。
恐怖で気を失った少女に。

少女から流れた体液が、アーカードの靴を汚した。
少女は自らが選んだ服を自らの体液で濡らした。
白のクラシックパンツは、濡れて少し黒っぽくなった。


青空には、放送を告げるギガゾンビの映像が、映し出されようとしていた。

172 :圧倒的な力、絶対的な恐怖 ◆Xbtp/256QU :2007/01/18(木) 18:51:17 ID:Aagiss6d
【E-4 市街地/1日目/昼 放送直前】


【アーカード@HELLSING】
[状態]:全身に裂傷(回復中) 、強い日光に若干集中力切れ気味。靴に少女の体液が付着
[装備]:鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾無しのため、鈍器として使用予定)
[道具]:無し
[思考]:
 1.とりあえず、放送を聞く。
 2.目の前の少女を???
 3.不愉快な日光を避けるため、一時建物に潜伏。
 4.ただし、獲物を見つければ闘争に赴く。

【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:恐怖による気絶、側頭部に傷(少し回復)、首までの短髪、死に対する恐怖、腹部に強い打撲。
[装備]:布状に編みこんだ髪(ある程度の強化済み) 、黒のコート(濡れている)、水色のブラウス、白いクラシックパンツ(濡れている)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料無し)、ターザンロープの切れ端@ドラえもん
   輸血用血液(×3p)@HELLSING、
[思考・状況]
1:目の前の男への、絶対的恐怖
2:優しい人に助けて欲しい。
3:劉鳳には会わないようにしたい。
4:桃色髪の少女が約束を守ってくれてるなら、一緒に居てほしい。
基本:絶対に死にたくない


備考
アーカードが朝倉涼子をどうするかは、不明です。
朝倉涼子の支給品のSOS団団長のワッペンは、近くの女性向けブティック店内に制服と共に放置されています。

※鎖鎌の切れ味が強化されています。
※布状に編みこんだ髪は硬度を強化されていますが、ナイフが通りにくい程度です。

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/18(木) 21:55:12 ID:2kIv0Bfr
アーカードなら絶対に殺しますよwwwww
次に書くのがハルヒ厨だったら別だけどなwwwwwww

174 : ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:18:24 ID:6B55J0AR
私――フェイト・テスタロッサは、双眼鏡で空から麓を見下ろしていた。
普通だったらいい眺めなのかもしれないけど……あいにく、そんなことを感じる余裕は無いみたいだ。

「……ひどい」

詳細は見えないけど、下はひどい有様。今も、強力な魔力放出の光が走ったばかり。
もし誰かが巻き込まれたとすれば、おそらく……

「見つかったかい?」

例の機械、タチコマが無邪気な様子で呼びかけてくる。
私は首を振って答えようとして……突然、違和感を感じた。

「……あれ?」
「どうしたの?」

ふと西を見る。空に……何かいたような?
だけど、見直した視界の中には何もいなかった。

「……気のせいか」
「?」
「なんでもないよ。
 この辺だとやっぱり木に邪魔されて探しづらいから、お寺の中に誰かいないか確認して山を下りよう」




カレイドルビーは待ち伏せせず、人探しを優先する、と言った。
ならば敵と遭遇するのは避けたい。自分達にとって有効な戦法とは待ち構えて射撃する、というものだからだ。
特にあの蜘蛛と遭遇するのは計画さえ崩れかねない。何としても遭遇は避けなければならない。
そのために、カレイドルビーに「貴女って飛ぶのがへたくそらしいわねぇ」などと告げ、
まず自分が空から誰かいないか探ってみるから二人は隠れているように提案した。
カレイドルビーはぶつくさ言ったものの了承。子供の方も断る理由は無い。
そのまま上手く森の葉に隠れ、マントを羽織って上空へと飛び上がる。
幸い、目撃される心配は少ない。
まず、あの眼鏡の子供はカレイドルビーの方に目を向けがちだ。
カレイドルビーを庇護者として見なしているからだろう。以前私が言った事を覚えているのかもしれないが。
そのカレイドルビーは私の言葉が悔しかったのか、あの杖から魔法の講義を受けていた。
声が微妙に目立ちそうなのが問題だが……結果的には自分の望み通り。
あの蜘蛛はあっさり見つかった。子供を乗せてまだのんびり空を飛んでいる。
真っ直ぐどこかに向かうのではなくその辺を回っているところを見ると、何か探しているのだろうか。
もっとも、こちらに気付ている様子は無い。当然と言えばそうだろう。
あっちは山頂、こっちは森の中、そして私は透明なマント。見つかりようが無い。

175 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:19:11 ID:6B55J0AR
素早く降りて、木の葉の中でマントを脱ぎ、隠す……隠し場所が少々、いやかなり不愉快だがしょうがない。
普通に上空から降りてきましたよ、という風に見せかけるにはこうするしかないだろう。
それにここならいざとなれば私の構造物の一部だとでも説明できる。
そうして葉の中から現れた私に、二人は全く疑いの様子を見せていない。マントのことは気付いていないようだ。
この周辺の森は葉が濃くて助かる。あの二人が間抜けなだけかもしれないが。

「どうだった?」
「南西に誰かいるみたいよぉ」

もちろん、嘘だ。
ただあの蜘蛛が北東にいたから、それと正反対の方角を言っただけ。
カレイドルビーに続いて、眼鏡の子供が声を上げた。

「それ、青いまん丸なロボットじゃなかった?」
「さあ? 森の中だからはっきりとは見えなかったわねぇ」

そもそも何も見ていないのだが。
そんな事実を露知らず、眼鏡の子供ががっかりしたような表情になる。
どうやら知り合いと会えるかもとでも期待していたらしい。
私の知ったことではないが。

「その様子だと、どんな武器を持ってたかも……」
「ええ、はっきりとは見えなかったわねえ」
「……しょうがないわね。とりあえず見に行くから案内して。
 それとあなた、いつでも逃げ出せるように覚悟しときなさいよ。
 ゲームに乗ってる奴かもしれないんだから」
「う、うん」

カレイドルビーの言葉に眼鏡の子供が頷いた。どうやら私の言った通り南西に向かう気になったようだ。
……実際はただの嘘なのだが。

――誰も見つからなくても、すれ違ったんじゃないって言えばいいしねぇ。

そう心の中で呟いて、あの蜘蛛がいた方向と反対に歩き出す。
……この時は、まさか本当に誰かと遭遇するとは思わなかったのだが。




歩いてしばらく後。
川の向こうに、人影。変な耳を生やした女だ。
それを見て、ふと思った。

――まるで、ジャンクみたいねぇ。

表情は無い。ただ、あても無く歩いているだけ。まるで白痴。
自分達姉妹よりこの女の方がよっぽど人形のようだと思う。

176 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:20:05 ID:6B55J0AR

「水銀橙、あんたが見た人影ってあれでいいわけ?」
「多分ね。詳しく確認はできてないから違うかもしれないけどぉ」

カレイドルビーからの問いに、私はそう答える。
言うまでも無く、口からでまかせである。
そしてこちらも言うまでも無く、カレイドルビーはそんなことに気付かずに呟いた。

「にしても変な格好ね……」
『「「あなた(貴女、お姉さん)も」」』
「……ぐぅ」

三者(?)からの強烈なツッコミにカレイドルビーはぐうの音も……いや、出てるか。
それはともかく、これだけ騒いで要れば相手に私達の声が聞こえているはずだ。
しかし、反応する様子は全く無い。……本当に白痴か?

「すみませーん!」

そんなことに気付いているのかいないのか、眼鏡の子供が大声を上げる……
馬鹿が、違う参加者にまで声が聞こえたらどうする?
とはいえ効果はあったようで、女はこちらに振り向いた。

「……何ですか」

眼鏡の子供は何か言おうとしたらしい。喉を鳴らすような音が聞こえた。
もっとも「らしい」に留まっていたが。理由は簡単に分かる。
女の顔には、生気と言うものが全く感じられないからだろう。
カレイドルビーもどう声をかければいいか迷っているようだし、
私には元々声をかける理由は無い。あんな女なんてどうでもいいから。
沈黙が周囲に広がる。そんな中で始めに動いたのは、あの女。
こちらを無視して再び川沿いに歩き出した。
私としてはそのまま放っておきたかったのだが、そうはならなかった。
カレイドルビーが慌てて止めたのだ。放って置けばいいものを。

「ちょっと待ちなさいよ!
 見る限りじゃろくな武器も持ってない……というか、
 ろくな注意さえ払ってないわね。自殺でもするつもり?」
「……関係、無いじゃないですか」

今度はこちらに目さえ向けようとはしない。見さえしないで川沿いに歩いていく。
まるでゼンマイで動く人形だ。ただ歩くためだけが目的に作られた、下らないジャンク人形。
カレイドルビーが言葉に詰まる。詰まりながらも、強引に言葉を続けた。

「確かに、確かに関係ないけど……
 あんたなんのために歩いてるのよ。何も目的が無いんなら、せめて……」
「もく、てき……?」

それがきっかけだった。
女が、突然足を止めた。そして、言葉を呟き出す。まるで、壊れた精密機械のエラー音のように。

177 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:21:17 ID:6B55J0AR

「私は、ハクオロさんを探して……見つけて……一緒に……」

小さな声で呟く女は、自身を掻き抱いた。無表情のままで。
ジャンク人形を思わせるその様は、私ですら一瞬寒気を感じた。
他の二人は言うまでも無い。子供に至っては明らかに二、三歩退いている。

「ハクオロさんは……死んじゃってて……
 でも、おかしいよ……あの人が死ぬはずない……」

明らかに私たちのことは……いや、周囲の全てが視界に入っていない。
他の二人が黙りこむ中、私は冷静に言葉を出した。

「……係わり合いにならないほうがいいわぁ」
「水銀橙?」
「カレイドルビーも分かってるんでしょお?
 あれはもう……ジャンクよ」

これは嘘じゃない。本音だ。
連れて行くには不安要素が大きすぎる。
突然発狂したあの女に後ろから刺される、なんて目には遭いたくない。
放っておきたい、というレベルじゃない。放っておくべきだ。
カレイドルビーも分かっているはずだ。私の言葉が正しい。
……それを。

「お姉さん、でも……」

眼鏡の子供が妨害する。
憐憫か、同情か、それともカレイドルビーは何でもできる、救えると思い込んでいるのか。
理由はどうでもいい、問題なのはあの女を放っておけないと思っていることだ。
更に問題なのは、カレイドルビーが溜め息を吐いたこと……分かったわよ、と言わんばかりに。
吐きたいのはこっちの方だ。どうやら、また厄介ごとを背負うつもりらしい。

『Flier Fin』

ふわりとカレイドルビーが飛んだ。
どうやらコツを掴んできたらしく、華麗に川を飛び越えて、女の正面に着地する。
せいぜい十数メートル程度の飛行距離だったからかもしれないが。

「……私は、私は」
「即興でも補助があれば余裕よね」
『Accel Mode』

未だに呟き続ける女に、カレイドルビーが杖を向ける。同時に、その左腕が光った。

「眠りなさい」

そう告げると同時に、変な耳を生やした女は崩れ落ちた。
まるでゼンマイの切れたジャンク人形のように。
まあ、殺したわけではないんだろう。残念極まる。

「凄い、本当に魔法使いなんだ」
「魔法使いじゃなくて、魔術師」

178 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:22:04 ID:6B55J0AR

子供の言葉をそう訂正して、カレイドルビーは女を抱えて再び飛んだ。
多少ふらつきながらも、再び川を飛び越えて私達の前に着地する。
もう予想は付くが、制止を兼ねて確認の言葉を出してみた。

「……まさか眠ってる人間を背負いながら進むつもり?
 今襲われれば、その女どころか貴女さえ助けられる自信はないわよぉ?」
「うっさいわね。使い魔らしく従ってなさい!」

今度は我慢せずに溜め息を吐いた。吐かざるを得ない。全く……甘いことだ。

――ま、いいでしょ。

所詮は無力なただの女。
殺すチャンスはいくらでもある。あの妙な髪形をした子供のように。
盾にするのもいい。これ以上人が増えるようなら、隙を見て暗殺するのもいいだろう。
……ただし、自分の本性を晒すつもりはまだない。
やるなら敵の攻撃に見せかけるか……もしくは、罪を擦り付けるか。
……やりやすい状況くらい作っておくべきか。
そう思い、一つ提案をする。

「ねえ、病院にいかなぁい?」
「どうしたのよ、急に?」
「いい加減、人が増えてきたわ。
 だったらひとまずその眼鏡の治療をしてやればいいじゃなあい。
 まだ走れないんでしょお?」
「う、うん」
「それに、病院ならその女を置いてこれそうなところもあるしぃ」
「置いてくるってあんた……」
「下手に連れて歩くより、隠しておく方がどっちも生き残りやすいと思うけどねぇ?」

実際は邪魔だからさっさとどこかに置いてきたいだけだが。
もっとも、正論ではあるだろう。あまり世話を焼いてやる義理はないはずだ。
しかし。

「……駄目よ。少なくとも目が覚めて事情を聞くまでは。またさっきみたいにうろつくかもしれないでしょ。
 数時間あれば催眠も解けるから、それまで病院に留まる。
 それでいいわね」
「……好きにすれば?」

再び、溜め息を吐く。
やはりか。予想通り、だ。随分甘いこと。
もっとも、こうなるだろうから病院行きを提案したのだけれど。

179 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:22:57 ID:6B55J0AR
そう。私が病院に行くのを提案した理由は、拾った女を捨てるためではない。
私の目的は毒の入手。これ以上、カレイドルビーが人を拾うことに備えて。
別に薬に詳しいわけではないが、手に入れるのは水銀などの重金属でもいいのだ。人を殺せれば。
あまりに人が増えるようなら、そういった毒物を飲み物などに混入して殺す。
ドールである自分には毒が通用しない以上、自分が毒見をやって安心させるという手も使えるだろう。
使える人間か否かにもよるが……七人前後。それくらいが、私の許容範囲だ。
同時に、これくらいの数がいれば不信を煽るのも簡単な人数だろう。
もっとも、殺すのは一人か二人でいい。必要なのは内部分裂とカレイドルビーの安全だけ。
カレイドルビーが誰かに疑心さえ持てば、そのまま先制攻撃で殺してしまえる。
但し、強力な前衛が見つかればそいつは生かしておく。騙されやすい馬鹿である場合に限り、だが。
とりあえず、一言だけ言っておくことにする。

「前にも言ったと思うけど、私は……」
「……分かってるわよ」

返ってきたのは嫌そうな顔と溜め息。けれでも、反論は無い。
理由は分かる。なぜなら、これが正論だから。
同時に、これは大甘なカレイドルビーにとって厳しい言葉だ。
だからこそ、その裏にある闇には気付けない。
ある程度の黒さだけを表に出しておけば、まさかこれ以上の闇を抱えているとは思えないだろうから。
無駄に善人ぶる演技なんてできないし、したくもない。
だから徹底的なリアリスト程度に思わせておけばいい。言いたいことをはっきり言う人形だと思わせておけばいい。
カレイドルビーが私に言う事はもっともだと感じている以上、捨てられる可能性もまた、低いのだから。

「さっさと行くわよ」
「うん」
「はいはい」

そんな思惑は心の底に隠し、私はカレイドルビーに従って歩き出した。

180 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:23:43 ID:6B55J0AR
【B-7 1日目 昼】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:疲労(小)、全身に軽傷、背中に打撲、決意
[装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)
[思考]
1:ひとまずお寺へ行って、そのあと山を下りる。
2:双眼鏡を使い、タチコマに乗って他の参加者を探す。
3:カルラの仲間に謝る。
4:自分の友人とタチコマの仲間との合流。
5:眼鏡の少女と遭遇したら自分が見たことの真相を問いただす。
基本:シグナム、ヴィータ、眼鏡の少女や他の参加者に会い、もし殺し合いに乗っていたら止める。
[備考]
カルラの墓には『西瓜@スクライド』が供えられています。

【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:装甲はぼこぼこ、ダメージ蓄積、燃料わずかに消費
[装備]:ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)、タチコマの榴弾@攻殻機動隊S.A.C
   タケコプター@ドラえもん(残り使用時間6:32)
[道具]:支給品一式×2、燃料タンクから1/8補給済み、お天気ボックス@ドラえもん、西瓜47個@スクライド
   龍咲海の生徒手帳、庭師の如雨露@ローゼンメイデンシリーズ
   エルルゥの薬箱@うたわれるもの(治療系の薬はなし。筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、
   揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
[思考]
1:ひとまずお寺へ行って、その後山を下りる。
2:空中から他の参加者の捜索。
3:フェイトを彼女の仲間の元か安全な場所に送る。
4:九課のメンバーと合流。
5:自分を修理できる施設・人間を探す。
[備考]
光学迷彩の効果が低下しています。被発見率は多少下がるものの、あまり戦闘の役には立ちません。
効果を回復するには、適切な修理が必要です。
タケコプターは最大時速80km、最大稼動電力八時間です。

181 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:24:42 ID:6B55J0AR
【D-4山道・1日目 昼】
【魔法少女カレイドルビーチーム】
【遠坂凛(カレイドルビー)@Fate/ Stay night】
[状態]:魔力小消費/カレイドルビー状態/水銀橙と『契約』/エルルゥを背負っている
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式(パン0.5個消費 水1割消費)、ヤクルト一本
[思考]
1:高町なのはを探してレイジングハートを返す。
2:ドラえもんを探し、詳しい科学技術についての情報を得る。
3:アーチャーやセイバーがどうなっているか、誰なのかを確認する。
4:知ってるセイバーやアーチャーなら、カレイドルビーの姿はできる限り見せない。
5:自分の身が危険なら手加減しない。可能な限りのび太を守る。
[備考]:
緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音。名前は知らない)を危険人物と認識。
レイジングハートからの講義は何らかの効果があったかもしれませんが、それらの実践はしていません。
レイジングハートは、シグナム戦で水銀燈がスネ夫をかばうフリをして見捨てたことを知っており、水銀燈を警戒しています。

【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:服の一部損傷/『契約』による自動回復
[装備]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、
[道具]:透明マント@ドラえもん
1:カレイドルビーとの『契約』はできる限り継続、利用。最後の二人になったところで殺しておく。
2:レイジングハートを警戒。できれば破壊したい。
3:カレイドルビーの敵を作り、戦わせる。
4:何かしらの有害性物質を病院で見つけ、あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。
5:真紅達ドールを破壊し、ローザミスティカを奪う。
6:青い蜘蛛はまだ手は出さない。
7:バトルロワイアルの最後の一人になり、ギガゾンビにメグの病気を治させる。
[備考]:凛の名をカレイドルビーだと思っている。
   透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。
   また、かなり破れやすいです。
   透明マントについては凛にものび太にも話していない。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:喪失に対する恐怖/左足に負傷(走れないが歩ける程度に治療)
[装備]:ワルサーP38(0/8)
[道具]:USSR RPG7(残弾1)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
   スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、支給品一式(パン1つ消費、水1/8消費)
[思考]
1:カレイドルビーと共にドラえもん、ジャイアンを探して合流する。
2:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
[備考]:凛の名をカレイドルビーだと思っている。

水銀燈の『契約』について
厳密に言うと契約ではなく、水銀橙の特殊能力による一方的な魔力の収奪です。
凛からの解除はできませんが、水銀橙からの解除は自由です。再『契約』もできます。
ただし、凛が水銀橙から離れていれば収奪される量は減ります。
通常の行動をする分には凛に負荷はかかりません。
水銀橙が全力で戦闘をすると魔力が少し減少しますが、凛が同時に戦闘するのに支障はありません。
ただしこれは凛の魔力量が平均的な魔術師より遥かに多いためであり、魔力がない参加者や
平均レベルの魔力しかない魔術師では負荷が掛かる可能性があります。
逆に言えば、なのは勢やレイアース勢などは平気です。

182 :黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:25:43 ID:6B55J0AR
【エルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:ハクオロの死による重度の虚無感。暗示による強制睡眠(数時間で解除)。
[装備]:なし
[道具]:惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
  市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り4パック)
[思考・状況]1:睡眠
[備考]※絶望により何をする気もなれない状態ですが、今のところ優勝して願いを叶えるという考えは否定しています。
  ※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。
[道具備考]
1:惚れ薬→異性にのみ有効。飲んでから初めて視界に入れた人間を好きになる。効力は長くて一時間程度。(残り六割)
2:たずね人ステッキ→三時間につき一回のみ使用化。一度使用した相手には使えない。死体にも有効。的中率は70パーセント。

183 : ◆2kGkudiwr6 :2007/01/19(金) 18:37:44 ID:6B55J0AR
修正
>>181
1:カレイドルビーとの『契約』はできる限り継続、利用。最後の二人になったところで殺しておく。
2:レイジングハートを警戒。できれば破壊したい。
3:カレイドルビーの敵を作り、戦わせる。
4:何かしらの有害性物質を病院で見つけ、あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。
5:真紅達ドールを破壊し、ローザミスティカを奪う。
6:青い蜘蛛はまだ手は出さない。



[思考・状況]
1:カレイドルビーとの『契約』はできる限り継続、利用。最後の二人になったところで殺しておく。
2:カレイドルビーの敵を作り、戦わせる。
3:何かしらの有害性物質を病院で見つけ、あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。
4:真紅達ドールを破壊し、ローザミスティカを奪う。
5:青い蜘蛛はまだ手は出さない。

184 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:02:59 ID:yVGQe1g/
「服は、これでいいよね」
彼女は静かに、店を出る。


彼女、朝倉涼子は民家を出てからは、街を歩き続けた。
そして幸運にも歩き始めてすぐに、女性向けのブティックを見つけた。
ここなら、変えの衣服はいくらでもある。
案の定、自分のサイズに合う服はすぐに見つかった。
彼女はとにかく制服のイメージを大きく変えるために、白のクラシックパンツと水色のブラウスを選択した。
その上には、先ほどの民家で手に入れた漆黒のコートを着込む。中に編みこんだ髪は防具の役割を果たすからだ。
本来の彼女なら、もっと素晴らしいコーディネートを見せてくれただろうが、今の彼女にはそんな余裕は無い。
服選びに時間を割く、心理的余裕を彼女は無くしていた。


「早く、誰か助けてくれる人にっ!」

彼女は焦っていた。
一刻も早く、自分を護衛してくれる人を見つけたかった。
死への恐怖、今までに無い感情に、かつての氷のような冷静さは、失われつつあった。

185 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:04:16 ID:yVGQe1g/
「あと十分」

吸血鬼アーカードは、時計を一目見て呟く。
二回目の放送までの残り時間。
ほとんどの参加者は、放送を気にして動きを止めるだろう。
アーカードも、獲物が見つかる可能性が低いのに、太陽の下を歩く気にはならなかった。
そのため、適当な建物を見つけ、中で放送が終わるまで待つことにした。
だが、その必要はすぐに無くなった。
窓越しに見える、反対側の店のショーウインドウが鏡の役割を果たし、そこに人影が映し出された。

「獲物!怪物か、それとも逃げるだけの狗か、先ほどのような殺し屋か?」
アーカードは、外へ向かう。
狩りへの出発だ。


「人間、私を倒してみろ!」

突然、目の前の壁が突き破られた。
少女の前に男が現れる。
獲物を見つけ、直射日光の最中にも関わらず飛び出した吸血鬼。
目は、新たなる闘争への喜びで輝いて見えた。

「ひっ!?」

少女は怯えた。
だけど怯えつつも、かろうじて残っている直感で全てを感じ取った。
この男は自分を『護衛』してくれる優しい男では無いと。
むしろ、獲物を狙い『狩る』ことしか考えていないと。

186 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:05:30 ID:yVGQe1g/
――逃げないと――

少女は思った。
逃げないと死ぬと。
でも…足は震えて動かない。
目の前の男に対する恐怖は、機動力を奪った。

少女は必死で考える。
逃げると言う選択肢を失った今、何をすべきか。
あらゆる考えが、浮かんでは消えた。
その無数の案の中で、最もシンプルな選択肢が残った。
右手に持つ鎖鎌を一目、見る。
そして、一番勇気の要る選択肢を、採用した。
少女は勇気を振り絞った。

「…うっ…えいっ!」

意を決して鎖鎌の分銅を、男の頭部めがけて投げる。
自分と男の距離は、わずか三メートル。
強化された分銅は、男の頭蓋骨を砕き、脳漿をぶちまけ、彼女は勝利を収めるはずだった。
仮に分銅が急所を外しても、当りさえすればひるんだ隙に、相手の首を鋭さを増した鎌で切り裂き、やはり彼女は勝利を手にするはずだった。

そして彼女は死の恐怖に怯える、無力な少女ではない。
かつて、キョンに対し笑顔でナイフを向けた、このゲームでもピンク髪の少女の爪を笑顔で剥ぎ、笑顔で男二人の首を刈った。
笑顔が似合う、死を呼ぶ天使の朝倉涼子に、彼女は戻るはずだった。

だった。
そのはずだった。

187 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:06:21 ID:yVGQe1g/
「どうした、ヒューマン」

理想と現実は大きく食い違った。
上半身だけの手投げ、かつての殺人的勢いは分銅には無かった。
男はあっさりと、そして当然のごとく、左手一本で分銅を掴み取ってしまった。
そしてそのまま、鎖を引っ張る。

「うっ、くっ…う」

彼女も必死で鎌を、握り締める。
鎌を渡すまいと、両手で全力で、力強く握り締める。
両手は強く汗ばんでいた。
恐怖で、体は震えていた。
でも、絶対に手放せなかった。
今の彼女には、これ以外の武器が無かった。
これは彼女の強さを保つ唯一の術だった。

しかし現実は少女に対し、ことごとく残酷に進む。

「弱すぎるぞ、女!」

「きゃっ!」

男の怪力は、少女のそれを遥かに凌駕した。
鎖鎌を放さなかった少女は、自分の体ごと引っ張り上げられた。

――うそ!――

188 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:07:27 ID:yVGQe1g/
少女は体に浮遊感を感じる。
かつてない感覚。
周囲の全てが、スローモーションで見えた。
ただその中で、自分の体は…流されるだけだった。

「HAHAHAHAHA、チェックメイトだ人間!!」

銃弾を失った銃、ジャッカル。
その銃身を男アーカードは右手で握り締め、鎌を握り締めたまま宙を舞う少女朝倉涼子の腹部へと叩きつける。
銃弾を失ってなお、ジャッカルは猛威を奮い続けた。

「ぐっ…はっ……」

血を吐いて、少女は倒れる。
唯一の武器も、少女の手から離れた。
その武器は、男の左手に収まった。

「死んでないのか、素晴らしいしぶとさだ、ヒューマン」

普通なら背骨が砕け散り、致命傷となるはずだった。
しかし幸運にもジャッカルを叩き込んだ位置は、彼女が事前に服に仕込んだ硬質化した髪と同位置だった。
彼女はまだ意識があった。腹部への激しい激痛を伴いながら。

「うっ、うう」

腹を押さえもだえ苦しむ少女、男はそんな少女に向けて、鎌を振り上げた。
ゆっくりと、だが高く、鎌は振り上げられた。

「うう…ひっ!いやっ!お願いっやめてっ!」

少女の目に、高く振り上げられた鎌が映る。
彼女の恐怖は最高潮に達した。
自ら切れ味を強化させた鎌、あれを振り下ろされたらどうなるかは、本人が一番よく知っている。

「やめてっ!…うっうっうう」

少女の声は涙声に変わる。
目からは涙があふれ出る。
手で顔を押さえる。
男の絶大な力の前に、少女のプライドは崩壊した。

189 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:08:20 ID:yVGQe1g/
「……」

男は無言で、一瞬動きを止めた。

「…えっ!?」

男の動きが止まった、少女の恐怖がほんの少しだけ和らぐ。

――助けてくれるの?――

少女は期待した。
このまま自分を見逃してくれることを。
もしかしたら、無力な自分を『保護』してくれるかもしれないことを。
助けてくれることを。

「弱すぎる」

男の声と共に、少女の淡い期待は打ち消された。
そして次の瞬間、鎌は勢い良く振り下ろされた。
一度静止した分、力が込められていた。
狙いは、少女の…

「ひいぃぃぃっ!」

鎌は少女の顔と一センチも離れていない、路上の硬いアスファルトに鎌が深々と突き刺さった。
大きな音を立てて。
連戦によるダメージの蓄積が、手元をわずかに狂わせたのか。
少女の汗で湿った鎌の柄が、男の手を滑らせたのか。
それとも……
だがその一撃は、少女の心に絶大な恐怖を刻み付けた。
彼女は生まれて初めて、悲鳴を上げた。
そして彼女の意識は、恐怖が精神の限界を超過して、遮断された。

「つまらない、失望したぞ女!」

男は失望した、とても強く。
意識を失った少女に、罵声を浴びせるほどに。
この場に来てからの戦いは、どれも血肉踊る物だった。

自らの首をはねた魔術師、頭を使った賃金労働者、高潔な雰囲気を保ち続け自分と対峙した生き人形、
自分に幾つもの傷を負わせた女子学生、同じく幾つもの傷を負わし、死ぬまで真正面から戦い続けた殺し屋。

全ての戦いが、男にとって最高に幸せな時間だった。
だが今回のような、震えて逃げることも出来ず、命乞いをするだけの少女は、男を失望させるだけだった。

少女の黒いコートから、液体が流れる。
その少女の体液は、男の靴を汚す。
少女は自らが選んだ服を自らの体液で濡らした。
黒いコートの裏の白のクラシックパンツは、濡れて少し黒っぽくなった。

男は少女の醜態に、更に強く失望した。
これ以上に無いほどに。

青空には、放送を告げるギガゾンビの映像が、映し出されようとしていた。

190 :圧倒的な力、絶対的な恐怖(修正) ◆Xbtp/256QU :2007/01/21(日) 00:10:26 ID:yVGQe1g/
【E-4 市街地/1日目/昼 放送直前】


【アーカード@HELLSING】
[状態]:全身に裂傷(回復中) 、靴に少女の体液が付着
[装備]:鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾無しのため、鈍器として使用予定)
[道具]:無し
[思考]:
 1.とりあえず、放送を聞く。
 2.目の前の少女を???
 3.不愉快な日光を避けるため、一時建物に潜伏。
 4.ただし、獲物を見つければ闘争に赴く。

【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:恐怖による気絶、側頭部に傷(少し回復)、首までの短髪、死に対する恐怖、腹部に強い打撲。
[装備]:布状に編みこんだ髪(ある程度の強化済み) 、黒のコート(濡れている)、水色のブラウス、白いクラシックパンツ(濡れている)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料無し)、ターザンロープの切れ端@ドラえもん
   輸血用血液(×3p)@HELLSING、
[思考・状況]
1:目の前の男への、絶対的恐怖
2:優しい人に助けて欲しい。
3:劉鳳には会わないようにしたい。
4:桃色髪の少女が約束を守ってくれてるなら、一緒に居てほしい。
基本:絶対に死にたくない


備考
アーカードが朝倉涼子をどうするかは、不明です。
朝倉涼子の支給品のSOS団団長のワッペンは、近くの女性向けブティック店内に制服と共に放置されています。

※鎖鎌の切れ味が強化されています。
※布状に編みこんだ髪は硬度を強化されていますが、ナイフが通りにくい程度です。


191 :逃げたり諦めることは誰にも ◆KpW6w58KSs :2007/01/21(日) 11:39:48 ID:yLi8nUsv
 戦闘音も、大分小さくなってきた。
 それだけ離れているという証拠だろう。

 予め言っておくと、あの化け物と対峙しているであろう高校生と男を見捨てたのではなく、
また断じて恐怖から逃げているわけではない。
 今、私も介入したところで戦局は対して傾かぬことだろう。僅かに気をそらして、何らかの
不意打ちで傷を負わせることは出来るかもしれないが、あの化け物にそれが通じるとは思えない。
 ましてや、失敗して私に狙いが定まれば確実に破壊されると見て間違いあるまい。
あいつが私という存在に何の興味も持たなかったのが幸いだ。

 何とかして、あの化け物に打ち勝てような『もの』を探す。支給品でも参加者でもいい。
 支給品だったら回収し、あれを地に伏せられる物さえあればそれを拝借する。
それでもやはり、私一人では──

 そして参加者。
 こんな状況なのに、笑いがこぼれた。それはあの男と同じ自嘲の笑み。
 最初に仲間以外のものを信じられないと言ったはずなのに、今更私は何をしているのだろう。
 それでも、今だけは塵ほどの可能性でも縋るしかない。
 会う人物がただの一般人の可能性もある。あの化け物のようなマーダーの可能性もある。
一時は力を貸したとしても、事が終われば裏切るような人物である可能性も──
 それでもあの化け物をあのままにするべきではない。あれがこの領域に潜む限り、仮面の男の野望を
破壊できる可能性は低くなっていく。
 そしてあれは片っ端から『餞別』とやら渡し、次々と参加者の頭数を減らしていくのだろう。

 もし、その中に姉妹が──ジュンが含まれていたら。

 不思議な感情が沸いてくる。恐らく、これは『悔しさ』というものだ。
 しかし、それは誇りを捨て誰かに頼るしかなくなったからではない。
 それ以前に、私は薔薇乙女としての誇りを捨てた覚えなどない。

 力を集めよう。今私が選べる道はこれしかない。
完全に信じきることなど、きっと無理だろうけれど。

192 :逃げたり諦めることは誰にも ◆KpW6w58KSs :2007/01/21(日) 11:41:33 ID:yLi8nUsv
(……あれは……)
 暫く南に向かっていると、三人分の小さい人影を見つけた。
 遠くからで顔立ちは分かりにくいが、二人は子供でもう一人はギガゾンビと面識があるとおぼしき青ダヌキのようだ。

 迷っている暇はない。すぐさま行動に移る。
 もしも時のため、レヴァンティンをいつでも引き出せるように準備する。
 そして、接近を──しようと足を踏み出したその刹那。

 少年の悲鳴があがった。肩から血噴出している。銃で打ちぬかれたか矢で射られたかしたらしい。
「……また、なのね」
 やはり、悲劇の連鎖というものは止められないものなのだろうか。
 きっと自分が行ったこともないような場所でさえ、今なお戦闘が行われているのかもしれない。
 地を踏みしめる足が、少し重くなった気がしていた。

 ある程度の距離をとって観察するうちに、二人の人間が対峙していた。
 いつのまに出たか──どうやら私とそう遠くない位置にいたらしい──攻撃を仕掛けたと思われる騎士と、
三人組の方にいた少女。青ダルマは蹲る少年の傍についている。
 このままであれば戦闘は避けられまい。

「……いえ、何とかしてみせるのだわ」

 対峙する二人に気付かれぬよう、少年と青ダヌキの方へと迂回する。
 ただ傍観しているだけでは終わらない。終わらせるつもりはない。

「そこの人間共」

 放送を告げる主催者の顔が上空に浮かび上がったのは、私が少年と青ダルマの前に歩み出たのと同時のことで。

 そしてまた、新たな戦いも同時に始まりを告げていた。

【E-2 1日目 橋付近 午前】
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、焦燥、人間不信気味?
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's、くんくんの人形@ローゼンメイデン
[思考・状況]
1:少年と青ダルマから情報か道具を手に入れたい。
2:出来る限りで『戦い』を止める。危険なマーダーは動きを止める
3:あの高校生(長門)と男(アーチャー)の生死が心配。
4:戦闘や対主催に有益そうな人物がいれば交渉に出る。
  (装備や協力が得られてもあまり信用するつもりはない。常に警戒)
5:化け物(アーカード)を常に警戒。現時点では敵わないと認識
6:自分の能力が『魔力』に通ずるものがあるかを確かめたい
基本:ジュンや姉妹達を捜し、対策を練る
   ゲームの破壊、及びそれの障害となりうる危険人物の動きを止める。最悪一人でも行動に出る


193 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 22:53:53 ID:AbcrqUHK
 風を切る衝撃が幾度となく帽子をはためかせようとしたが、それでも次元大介は走ることをやめなかった。
 前原圭一と竜宮レナの死闘――殺し合いの最中という極限状態ゆえに起こってしまった、知り合い同士の悲しい衝突。
 彼等を止めるのに、次元は適した存在ではないのかもしれない。
 こういう厄介事は、彼等の仲間やカウンセラーの適正を持つ存在こそが相応しい。
 それでも、次元は向かわなければならなかった。
 大人としての義務感が働きかけたのか、はたまたダンディズム溢れる優しさがそうさせるのか。
 詳細は定かではない。だが確かに、本能は語りかけてくる。
 闇の世界を知らない少年少女二人。彼等に、殺し合いなんてものをさせてはいけない。
 普段は泥棒の相方を務め、場合によっては人殺しも厭わない、次元大介はそういう人間だった。
 そんな次元が、今は関わりの薄い子供達を助けに向かおうとしている。
 そいつはいったい、どんな正義のヒーローだ。自分で考えて失笑したくなった。
 たまには正義のヒーローでもいいじゃないか。たまには慈善事業も面白いもんじゃないか。
 相棒だったら、そんな適当な理由付けを持って答えてくれるかもしれない。
 違ぇねぇ。次元は口元だけで微笑み、脚をさらに加速させた。

 程なくして、住宅街路上を舞台に戦う圭一とレナを発見した。
 振るわれる獲物は、鉈とナイフ。その振りの鋭さは狂気的で、使い手が子供だと分かっていも、十分に殺意が含まれているのは否定できない。
 戦況を分析するに、まだ勝敗の優劣は決していないようだったが、次元は長年のカンから一つの起こり得る結論を摘出する。

 この戦い、果てにはどちらかが*ぬ。

 当たり前だ。この二人は、殺し合いをしているのだから。
 圭一にレナを殺す気がないとしても、今のレナは圭一を殺さないことには止まれない。
 勝負は、どちらかの死をもって終結する。それ以外の結末は、ない。

 そう思ったならさっさと行動しろ、と次元は自らに言い聞かせ、一歩踏み出す。
 しかし駆け出そうとした脚は二歩目を踏み出すことなく、唐突に停止した。

「一対一の決闘を邪魔するとは、随分と無粋な輩がいたものだ」

 理由は、いつの間にか次元の前に立ち塞がっていた、この男。
 結った長髪は時代錯誤の丁髷にも見え、服装は日本の武士を思わせる。ひと目で侍という印象がピッタリ当てはまる、怪しい男だった。
 もちろん次元が警戒しない理由もなく、一刻も早く圭一たちの下に向かいたい衝動を抑え、冷静に対処する。

「決闘、ね。俺から言わせりゃ、あんなもんはガキのお遊びさ。命のやり取りってのは、あんな笑いながらやるもんじゃねぇ」

 次元と侍風の男が、なおも戦い続ける子供二人を見やる。
 部活の延長、とてでも思っているのだろうか。圭一もレナ、笑みを浮かべながら楽しそうに汗を流している。
 同年代の子供から見れば、とても理解できたものではないだろう。
 次元とて、あの歳の子供達が殺し合いをしているという現実に違和感を覚えているのだ。
 それも、あの二人は平和な世を生きてきた人間。育まれた環境がどんなに悪かったとしても、彼等が一般人である事実には変わりない。

194 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 22:54:58 ID:AbcrqUHK
「その意見には同意するが、童ゆえの無邪気さというのもまた、狂気の一種であるとは思わぬか?」
「ま、世の中にゃ笑顔で銃ぶっ放すガキもいるだろうがな、あの二人は違うさ。黙って見過ごすわけにはいかねぇな」

 男を無視し、次元は二歩目を踏み出そうと構える。が、

「……なんのつもりだ」
「そなた、名は?」
「次元大介だ。そういうお前さんは?」
「我が名はアサシンのサーヴァント――佐々木小次郎、とでも名乗っておこうか」

 佐々木小次郎と名乗るその男は、自身の身の丈を優に超える大剣を握り、次元の行く手を塞いでいる。

「佐々木小次郎ねぇ……それより、俺はなんのつもりだ、と訊いたはずだったんだがな。そっちにゃ答えてくれないのか?」
「答えなど不要であろう。兵(つわもの)と死合う――我が悲願、やっと叶いそうで嬉しいぞ」

 次元とて、そこまで鈍感ではない。
 得物を取り出し、目的の妨害をする。そして放たれるは、殺気。
 眼前の武士が戦闘を望んでいようことなど、容易に察することが出来た。

 こういった手合いは、力で屈服させるのが一番効果的だ。
 闘争の種を摘み、戦意を損失させる。状況によっては、殺害に至るのも止むなしであろう。
 次元にはそれを行えるほどの力があったが、視界の奥の方で馬鹿騒ぎしている子供達を考えれば、そんなことに時間を割いている暇はない。
 交戦は回避するのが懸命――そう判断し小次郎の脇をすり抜けようとしたのだが、敵の力量は次元の予想の遥か上をいっていた。
 剣というよりは鉄塊という言葉をイメージさせる小次郎の得物、竜殺し。
 常人では持ち上げることも難しいであろうそれを、小次郎は易々と振り上げ、次元へ向けて一閃。
 剣の持つ重量を感じさせないほどの自然な流れで、斬撃は次元の脇を掠める。

「ちょっと待った。あんた、ようは強い敵と戦いっていう類のヤツだろ?
 あいにくだが、俺はメチャクチャ弱っちくてね。悪いが、喧嘩なら他を当たってくれねぇか?」

 ギリギリの回避を行った直後、次元は小次郎の馬鹿力加減に呆れたのか、飄々とした態度で交渉に躍り出た。
 危機感を感じなかったわけではない。怖くて逃げ腰になっているのでもない。
 今、ここで小次郎と戦うのは、あまりにも面倒くさい。そう思ったから、こんなことを言っているのだ。
 ただでさえ、圭一とレナの二人をどう止めようかと思案していたところ。その上でこんな戦闘狂の相手など、面倒なことこの上ない。

195 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 22:56:24 ID:AbcrqUHK
「謙遜するな。そなたの内から滲み出るその気迫――まさしく、強者のそれだ。
 出し惜しみせず、真っ向から死合うとしようではないか。あの、童たちのようにな」

 しかし小次郎は、次元が考えていたよりもさらにタチの悪い人種のようだった。
 小次郎が踏み込み、剣を振るう。
 次元はそれを回避に努め、脚は圭一やレナたちのいる路上とは反対方向へ。
 残念だが、今は彼等の下へ行くような余裕はない。
 次元は舌打ち一回、そのまま踵を返して逃げ出した。


 ◇ ◇ ◇


 ガサツで乱暴。無機質で狂気的。無邪気だからこそ、罪を感じない。勝った方が、正義。
 前原圭一と竜宮レナの戦いは、一般人はもちろん、戦いに身を置く人間でも理解のしがたいものだった。
 裏切りの制裁。反乱分子の削除。ただ単にムカツクから。理由付けなんてものは、不可能に近かった。

「あはははは!」

 疑心暗鬼が招いた結果。未知の幻覚症状によって晒しだされた狂気。殺し合いを部活の延長としか考えないその思考。
 明確な正解なんてものは、どうでもよかった。
 言うならば本能だ。二人が戦うのは、本能がそうさせているに違いない。
 鉈を振り、ナイフで受ける。ナイフで切り込み、鉈で流す。この動作がハイスピードで続いていく。
 それが、たまらなく爽快だった。平和な部活動では味わえない、得がたいスリルがそこにあった。

「へへっ、この緊張感、たまらねぇぜ! 決着が着くことすら、興ざめするくらいになぁ!!」
「あっははははは! 負けても恨まないでね!!」

 一言で言うならば、異常。
 しかしそれは、あくまでも他者から見た観点にすぎない。
 異常という概念は、当人たちにとっては至極当たり前のことにすぎないのだ。

 レナの繰り出す鉈が圭一の正面に振られ、ナイフでそれを受け止める。
 鍔迫り合いの両端に浮かぶ表情は、共に笑顔。傍から見れば異常な、当人たちにとっては普通な。
 殺し合いの最中に会話が飛び交うことすら、おかしいことではない。

196 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 22:57:38 ID:AbcrqUHK
「んじゃもう一回確認するぜ! 俺が勝ったら、レナは義理の妹になって毎日『お兄ちゃん』って愛情込めて言う!
 人前では、ちゃんとお兄ちゃんって呼びながら接するんだぞ!」
「可愛い服じゃなきゃ嫌だよ?」
「そこは任せろ! 監督の完全監修のもと、色々揃えてやるぜ!」
「スゴイスゴイ! 負ける気なんてさらさらないけど、なんだか楽しそう!」

 鍔迫り合いが解け、圭一とレナの間に一定の距離が生まれる。
 一秒の間を置いて、レナが再び仕掛けた。
 横振りに大きな軌道を描いた刃は、圭一の頭部をギリギリで掠め、空を切る。
 屈んだ体勢から、圭一は味わい深いスリルに舌なめずり。あと少し回避が遅れていれば、頭が吹き飛ばされていたというのに。
 これでいい。これこそが、前原圭一と竜宮レナの戦いだ。
 放課後、部活のみんなで興じたカードゲーム大会。体操着姿で校内をはしゃぎ回った、水鉄砲合戦。
 いつだって、二人はライバルとして君臨しあった。強敵と書いて友と読む、そんな関係だった。
 この戦いだって、果てにはきっと、幸せが待っているに違いない。
 互いの健闘を称えあい、握手を交わす。それは、当然の結果なんだ。
 だってレナは、信頼できる仲間だから。圭一は、その考えにまったく疑問を抱いていなかった。

「不思議だぜレナ! なんだか、お前とは過去にもこうやって命懸けの戦いをやりあった気がする!」
「そうだねぇ! なんだか、レナもそんな気がしてきたよ! こんなことした記憶、全然ないのにさぁ!」

 交錯する鉈とナイフ。その刃にはもはや、微塵の躊躇もなかった。
 いつどちらが死んでもおかしくない。そんな状況の中でも二人は笑い合い、戦うことをやめなかった。
 最後には、信頼が取り戻せると分かっていたから。
 このバトルロワイアルにおいて、信頼という脆く崩れやすい要素を頑なに信じ、まったく疑おうとしない。
 それは、強さでもあり危うさでもある。

「うああああああっ!」

 蓄積された疲労に嫌気が差したのか、レナは勝負を決めるため、残りの体力を振り絞って圭一に飛びかかった。
 跳躍と共に、鉈が頭上高く掲げられる。今までどおりナイフで受け止めようとした圭一だったが、間際の一瞬で気づいた。
 この一撃は、レナの全体重を乗せた渾身の一撃だ。バットならともかく、こんな小さなナイフ一本では受けきれないかもしれない。
 ならば、回避するべきか。いや、ダメだ。このギリギリのタイミングでは、回避した後に体勢を整える時間を食う。
 そこを狙われれば、防御も回避も不可能になる。先の先を読み、圭一は回避行動をキャンセルした。
 そして、必要になってくるのは代わりの選択肢。防御も回避もダメだというのであれば、残された選択肢は決まっている。

197 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 22:58:46 ID:AbcrqUHK

 そう、反撃だ!

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

 逆光が視界を眩しく照らす中、圭一は果敢にも、ナイフ一本で空中から来るレナに立ち向かった。
 二つの影が交錯し、飛沫が飛ぶ。斬撃は、確実にどちらかの皮膚を裂いた。
 結果は――


 ◇ ◇ ◇


 痛い。

「ぐ……あ……あ、あああああ」
「ハァ、ハァ、は…………!?」

 痛い。痛い。痛い。

「れ、レナ!?」

 ――あまりの痛みで、何がどうなったのか理解するのに時間が掛かった。
 痛むのは、眼。私の左瞼が、燃えるように熱い。
 そっと手を触れてみると、紅い鮮血がベットリと付着していた。
 これは、私の血だ。そして、これを流したのは、圭一くんの持っているナイフだ。
 その証拠に圭一くんが握るナイフの刃は紅く濡れており、ポタッ、ポタッ、と真っ赤な水滴を垂らしている。
 私は、開かなくなった左目を諦め、残された右目で圭一くんの様子を窺う。
 その顔には、どんよりとした雨雲のような色が浮かんでいた。
 動揺、しているのかな。かな?
 私の左瞼が切れたから? 初めて血が流れたから? そんなのおかしいよね。二人とも、相手を*す気で戦ってたっていうのにさ。
 ……そうだ。圭一くんは、私を*す気で挑んできてたんだ。
 だって圭一くんは、ソロモンに洗脳されてしまっているから。
 あの男は、きっと人間なんかじゃない。圭一くんを利用して地球侵略を企む――そう、宇宙人かなにかに違いないんだ。
 かわいそうに……圭一くん、*されちゃうよ。怒ったレナに、*されちゃうよ。
 でもいいよね。あんな男にいいように使われるよりは。せめてレナが、この手で*してあげる。
 だって圭一くんは、レナの大切な友達だから。
 でも圭一くんは、もうレナの味方じゃない。

198 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:00:20 ID:AbcrqUHK
「れ、レナ……。おい、あんまり動くと……!」
「ぐ、ぐぅ……が……ああああああああああああああああああああああああ!!!」

 私は、鉈を振り翳した。
 圭一くんは、頭をグチャグチャにされて*んだ。


 ◇ ◇ ◇


 逃げる。
 この単純な行為において、ルパン一味ほどそれが得意な人間はこのゲーム内にはいないだろう。
 次元もその一点だけにおいては自身があり、下手をしたら射撃よりもこっちの方が得意なのではないだろうか、と考えて憂鬱になってしまうほどだ。
 これも相棒であるルパンの影響か。次元は既に亡き者となっている大怪盗を胸に思い抱き、すぐに「ガラじゃねぇ」と吐き捨てた。
 次元が彼の死を知るのは、もうあと数分後のことになる。その時が訪れるまでには、どうにかして小次郎から逃げ延びなければならない。

「……どうやら、撒いたみてぇだな」

 ここが入り組んだ住宅街であったことが幸いした。
 次元はこれまでルパンと共に歩んできた経験を生かし、塀を越え、電柱に登り、茂みに隠れ、時には民家を突き抜けて、
 ありとあらゆるものを逃走のダシに使い、まんまと小次郎から逃げのびた。
 しかし安心は出来ない。ああいう手合いは、とにかくしつこいのが特徴だ。
 再び絡まれない内に、どうにか圭一とレナを連れ帰らなければ。
 逃走経路は一周し、圭一とレナが死闘を繰り広げていた地点へと舞い戻る。
 小次郎がどこから襲い掛かってくるかも分からないため、周囲に気を配りながら路上を確認する。
 そして、見つけた。二人の内の片方。
 路上に横倒れになり、周りに血を散布させているその姿は。
 前原圭一だった。
 視界で目標を捉えた。だが次元は、すぐに歩み寄ろうとはしない。
 何故か。倒れた彼の状況確認と、最悪の事態が起こってしまったかもしれないという不安に時間を要してしまったからだ。
 やがて、次元は誰もがそう思うであろう一つの結論に到達する。

199 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:01:28 ID:AbcrqUHK

 地面に突っ伏した前原圭一。彼は、*んでいるんじゃないか?

 そうとしか思えない。そうでなければ不自然なほど、圭一はピクリとも動かなくなっていた。
 近寄って確かめに向かおうとするが、倒れた圭一の様子を見て、注意力が散漫になったことが災いした。

「見つけたぞ、次元大介!」

 次元の背後から、巨大な剣の斬撃が一閃。
 地に叩きつければコンクリートですら粉砕できそうな一撃が、次元の身体を掠める。
 嫌な状況というのは、制限なく続くものだ。
 敵を求める佐々木小次郎は、まだ次元を諦めてなどいなかった。

「あんたもしつこいな。こんな丸腰の男追っかけて楽しいかい?」
「ふっ、兎狩りとてそれはそれで趣のあるものだ。それに次元大介、お前はまだ奥の手を隠し持っているだろう」
「はっ、拙者の眼は誤魔化せん、ってやつか? あいにくと、俺は切り札は最後の最後まで取っておくタチでね」

 ここまで追い詰められれば止むなしか――
 次元は腰元のバケモノ銃に手をそえ、交戦を考え始めた。
 相手は五ェ衛門クラスの達人と窺えたが、カスタムオートの銃弾が一発でも命中すれば、鎮圧は容易いだろう。
 問題は、この人間の手に余る銃をどう扱うか。接近した状態では、満足に扱うことなど不可能に近い。構える最中に斬り込まれて終わりだ。
 …………やっぱり逃げるか? 次元が思いなおし始め、再び背後の圭一へと視線を促した。

「――ッ!?」

 確認できたのは、コンクリート上に残された血溜まりだけ。
 死体と思わしき影は、綺麗さっぱりと消失していた。

「構えろ、次元大介。私を失望させるな……!」

 殺気全開で竜殺しを構える小次郎の姿は、もはや日本武士を超越して、歴戦の英雄王と敬称してもいいほどだった。
 それも、次元の前では面倒くさい邪魔者にしか過ぎない。まだ望みが残されているかもしれないと知っては、なおさらのことだった。

「悪いが…………やっぱあんたとはやれねぇな!」

 小次郎が剣を振り下ろす隙を縫い、次元はまたもや逃走を図った。


 ◇ ◇ ◇



200 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:02:53 ID:AbcrqUHK
「ねぇ、ソロモン」
「なんですか、蒼星石」

 一足先に合流ポイントを目指していたソロモンと蒼星石の二人は、B-4の路上で不意に脚を止めた。
 きっかけは蒼星石の何気ない呼びかけから。意味など窺えないような自然な呼びかけではあったが、ソロモンはそれだけで意図を察しているようだった。

「レナさんたちのことが心配なんですね?」
「……うん」

 レナの幻覚症状は、このような敵だらけの環境においては何の不思議もない、むしろ当たり前ともいえる自然なものだった。
 その引き金をソロモンが引いてしまったとしても、彼自身に非はない。だがそれで罪悪感が残らないかといえば、そんなはずもなく。
 ソロモンと蒼星石は、レナたちが心配だった。
 圭一は無茶をやらかしていないだろうか、次元は無事に二人を止められただろうか、レナは正常に戻ってくれるだろうか。
 心配は尽きないが、今のソロモンではレナの感情の起爆剤にしかならない。
 ならばせめて、冷却期間を置いて彼等の無事を祈ろう。それぐらいしか、できることはないのだから。

「我々は我々で、皆さんのお仲間を捜すとしましょう。もうすぐ二回目の放送――時間は、有効に使った方がいいですからね」
「そうだねソロモン。きっと、みんななら無事でいてくれる」

 小夜も、翠星石も、きっと――
 

 ◇ ◇ ◇


 その後方数メートルの地点。
 血に濡れた鉈を強く握り締め、レナは東を目指していた。

「……ソロモンさんはどこかな。かな?」

 鉈に付着した血が誰の者かは、今さら説明する必要はないだろう。
 彼女の思考にあるのはたった一つ。
 元凶である、ソロモンを殺す。そう――『殺』す。

201 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:03:53 ID:AbcrqUHK
「圭一くんがあんな風になっちゃったのは、全部あの人のせいなんだ。蒼星石ちゃんも、次元さんも、きっとみんなグルなんだ。
 でもねぇ……レナは騙されないよ。レナは奴らの陰謀に逸早く気づけた。奴らを殺して、地球を救えるのはレナだけだから」

 闇に染まった右眼と、紅く閉じられた左眼を前に見据えて。
 レナは、敵を捜す。友達を陥れ、みんなを滅ぼそうとする絶対悪を。

「かわいそうな圭一くん……待っててね。全部終わったら、レナが、レナがきっと、連れて行ってあげるから……」

 黒い表情に、もう笑みの欠片はなかった。


 ◇ ◇ ◇


 その後方数メートルの地点。
 頭から垂れる流血を手で押さえながら、圭一は必死に東を目指していた。

「……レナ…………まだ、勝負はついちゃいないぜ……」

 即死。攻撃を与えた方も受けた方も、間違いなくそう思った。
 しかし実際のところ、レナの鉈は圭一の頭を掠めただけに終わり、浅い裂傷を与えただけにすぎなかった。
 左眼に負った傷もあり、圭一が死んだと錯覚したのか、はたまた別の意図があったのかは分からない。
 とにかくレナは圭一がまだ生きているにも関わらずあの場を立ち去り、向かった先はおそらくソロモンたちの下。
 ならば行かなくてはならない。まだ動ける以上、圭一は勝負を捨てていけない。

「へへ……忘れなんなよレナ……俺が勝ったら、毎日『お兄ちゃん』だからな……今から楽しみだぜっ……」

 途切れ途切れの息を繋ぎ、圭一は歩き続ける。
 傷は致命的とはいえないが、決して無視できる範囲ではない。
 とくに酷いのは、出血の量。未だ衰えることのない出血は、圭一の身から確実に生の実感を奪っていく。
 このまま病院にでも駆け込んで、美人のナースさんに手厚い看護をお願いしたい気分だった。
 でも、圭一は止まれない。
 レナを止められるのは、自分しかいないと、まだ信じていたから。

「俺たちは、仲間だ……仲間ってのは、信頼し合うもんだ。…………それを思い出させてやるよ、レナ」

 満身創痍の身体を引き摺りながらも、歩みだけは確かだった。


 ◇ ◇ ◇



202 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:05:26 ID:AbcrqUHK
 その後方数メートルの地点。
 しつこく迫ってくる武士を後ろ眼で気にしながら、次元は東を目指していた。

「早まんじゃねぇぞ圭一。せめて、俺が行くまで生き延びてろよ」

 あそこで確認した横倒れの身体は、間違いなく圭一のものだ。
 それが数秒後に確認した時には消えていた。理由を考えれば、答えは二つに狭められる。
 一つは、誰かが圭一の死体をどこかへ運んだケース。
 あの場でそんなことをする可能性があるのはレナのみ。目的は不明だが、錯乱状態の人間であれば、何をしでかしても不思議ではない。
 二つ目は、圭一がまだ生きていて、自らの足でどこかへ移動したケース。
 希望的観測とも取れるが、これが一番あり得る答えだった。そして圭一が向かう先といったら、それは一つしかない。
 ソロモンが向かったのは東。圭一もレナも、向かうとしたらそちらの方角を選択するはず。

「ちっ、もうすぐ放送か……今度は全員、生き延びててくれるとありがたいんだがな」

 五ェ門と銭型の死が、今になって信じられなくなってくる。
 相棒は殺しても死なないような奴だ。それに付きまとう女も、保身にかけては達人と呼んで問題ない。
 そんな奴らがこんなところで死ぬなんてありえねぇさ――次元は余裕を感じながらも、心の隅では不安を感じていた。
 数秒後、その不安が現実のものとなる。


 ◇ ◇ ◇

 その後方数メートルの地点。
 獲物をまたしても取り逃がした小次郎は、静かな歩みで東を目指していた。
 
「――惜しい」

 思うのは、たった一人。
 次元大介という男は、正しく兵(つわもの)と呼ぶに相応しい。
 逃げ腰の臆病者を装ってはいたが、時折見せる驚異的な剣気は、まるで遥か虚空の仇敵を見つめているような鋭さだった。
 剣士ではないとしても、互いの武器を合わせるには十分価値のある逸材。
 見たい。次元の本気が。彼が牙をむく様を、正面から見据えたい。

「やはり、このまま捨て置くにはあまりにも惜しい」

 不気味な微笑を浮かべ、小次郎は東へと駆け出した。
 次元の目的は、あの二人の子供。ならば、彼等の向かった先に次元もまた。

203 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:06:16 ID:AbcrqUHK


 ◇ ◇ ◇


 それからほんの一秒後のこと。 
 多者多様、東を目指す六人は、同じ時、同じ瞬間を持って、空に浮かび上がった仮面の男を目撃する。
 これはまだ、出口のない惨劇の入り口にすぎない。



【B-4・路上/一日目/昼(放送直前)】

【ソロモン・ゴールドスミス@BLOOD+】
[状態]:健康、僅かながらの焦り
[装備]:レイピア
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、白衣、ハリセン、望遠鏡、ボロボロの拡声器(運用に問題なし)
[思考・状況]
1:音無小夜と合流し、護る。
2:C-5を中心に、周囲のエリアでそれぞれの仲間を捜索する。
3:圭一達が生き残ってくれると信じる。
基本:次の次(夕方)の放送でC-5(禁止になったら次に該当する場所)に行くようにする。それまでは探索

【蒼星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:健康、少しだけ焦りと心配
[装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、リボン、ナイフを背負う紐、双眼鏡(蒼星石用)
[思考・状況]
1:翠星石と合流し、護る。
2:C-5を中心に、周囲のエリアでそれぞれの仲間を捜索する。
3:圭一達が生き残ってくれると信じる。
基本:次の次(夕方)の放送でC-5(禁止になったら次に該当する場所)に行くようにする。それまでは探索


【B-3東部/一日目/昼(放送直前)】

【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:祟りへの恐怖、雛見沢症候群発症、左瞼に裂傷(適切な手当てを施せば、視力は十分回復する余地があります)
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:圭一を洗脳したソロモンと、その仲間を殺す。
[備考]:※圭一が死んだものと思っています。

204 :「あはははは!」 ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:07:09 ID:AbcrqUHK
【B-3中心部/一日目/昼(放送直前)】

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労、半覚醒(レナと似たような状況に圭一は陥った自分があるのでは? と思っている)
   :頭部に裂傷(傷は浅いが、出血が酷い。早急に手当てをしなければ危険なレベル)
[装備]:コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:レナを追う。


【B-3西部/一日目/昼(放送直前)】

【次元大介@ルパン三世】
[状態]:疲労
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@ヘルシング ズボンとシャツの間に挟んであります
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)
[思考・状況]
1:圭一とレナの保護(圭一優先)。
2:小次郎への対処(1を最優先させるため逃走に徹するが、状況によっては応戦する)。
3:ルパンを探す。
4:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す。
5:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する。
基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない。


【B-2東部/一日目/昼(放送直前)】

【佐々木小次郎@Fate/stay night】
[状態]:右臀部に刺し傷(手当て済み)。
[装備]:竜殺し@ベルセルク
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:次元大介を追い、死合う。
2:兵(つわもの)と死合たい。基本的には小者は無視。
3:セイバーが治癒し終わるのを待ち、再戦。それまで違う者を相手にして暇を潰す。
4:竜殺しの所持者を見つけ、戦う。
5:物干し竿を見つける。

205 : ◆LXe12sNRSs :2007/01/21(日) 23:18:47 ID:AbcrqUHK
>>204
圭一の状態欄を以下のように修正します。

>半覚醒(レナと似たような状況に圭一は陥った自分があるのでは? と思っている)

>半覚醒(レナと似たような状況に以前陥ったことがあるのでは? と思っている)


206 :第二回放送 ◆jFxWXkzotA :2007/01/23(火) 00:08:27 ID:+Rjlc7GC
ギチリ、ギチリ
時を刻む二つの刃が時計盤の1と2を分かち、長く短い一日は折り返し地点を迎える。
僅かな晴れ間から覗いた太陽光が、大地を、海を、そして戦場跡を照らしている。
鉄くずになった観覧車、焼亡した図書館、廃墟と化したホテル。
陽光は、その全てに平等に赫々と光を与え続ける。
そんな、どこか穏やかな白昼の空を人工的な光が侵す。
現れ出ずるは虚栄の独裁者。自己顕示欲の塊。自惚れ王。
そして、全ての元凶。


   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


――12時間生き延びることが出来た哀れな生存者どもよ、おめでとう。
心から祝わせてもらうぞ他人を食い物にして命を繋いだ畜生ども!
なに、褒め言葉だ。弱肉強食の理を体現した君達は実に賢い。


では、第二回目の定刻放送を開始しよう。耳をほじくり返し脳まで穿って聞くがいい!


今回の禁止エリアは――

13時よりB-1
15時よりE-4
17時よりF-8

――だ!


例によって期限を過ぎても禁止エリアに留まっていたならば、首輪の爆弾がドゥカァン! だ。
殺戮に興奮しすぎて頭から失念しないよう気をつけてくれたまえ!

207 :第二回放送 ◆jFxWXkzotA :2007/01/23(火) 00:11:05 ID:+Rjlc7GC
ああ、そうそう。一つだけ楽しいニュースを教えてやろう。
17時から禁止されるF-8にだな……なんと身動きが取れないバカが転がっているのだよ!
笑わせてくれるだろう? 命を賭けてコントをやってくれているのだからな。
殺しにいくもよし。笑いにいくもよし。爆発するのを遠くから眺めるもよし。好きにするがいい!


そして死亡者だが――


朝比奈みくる
君島邦彦
ルパン三世
アーチャー
ロベルタ
ヘンゼル
草薙素子
バトー
音無小夜


――以上9名!

  
悲しいか? 悔しいか? 
ハァハハハッ!! その涙が、叫びが、怒りが、愉快で痛快で滑稽で仕方がないわ!
しかし……前回と比べて死者の数が半分以下に減ってしまったか。
安心しろ、私は心が広い。数についてはとやかく言わないから存分に殺し合え!
さて、現在の情勢は……んー、盤上では三分の一以上の駒が脱落したようだな。
この分だと明日の今頃には決着が着くだろう。全く、楽しい時間は早く過ぎるものだ。
まあ、残りの役者はせいぜい粘って私を楽しませてくれたまえ。意外な結末を期待しているぞ!
次の放送は午後6時か。それまで健在でいる自信がある奴はまた会おう。そうでなかったら死ね。
ククク……ハァーハッハッハ! ヒァハハハハハハッ!


   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


映像が霞み、やがて元の空が姿を現す。
しかし、その空に晴れ間は見えず、羊の群れのような雲海が横たわっているだけだった。
陰々と、昏々と――  

208 : ◆jFxWXkzotA :2007/01/23(火) 00:18:59 ID:+Rjlc7GC
>>207を修正
>ああ、そうそう。一つだけ楽しいニュースを教えてやろう。
>17時から禁止されるF-8にだな……なんと身動きが取れないバカが転がっているのだよ!
>笑わせてくれるだろう? 命を賭けてコントをやってくれているのだからな。
>殺しにいくもよし。笑いにいくもよし。爆発するのを遠くから眺めるもよし。好きにするがいい!


ああ、そうそう。一つだけ楽しいニュースを教えてやろう。
これから禁止される3つのエリアのどこかにだな……なんと身動きが取れないバカが転がっているのだよ!
笑わせてくれるだろう? 命を賭けてコントをやってくれているのだからな。
探し出して殺すもよし。笑うもよし。爆発するのを遠くから眺めるもよし。好きにするがいい!

に変更します。

209 :復讐の炎は地獄のように胸に燃え ◆5OBhuaMu0o :2007/01/23(火) 19:28:07 ID:ufjlnSaI
やっぱり嫌悪感しか浮かばない。
あの仮面の男の、酷い演説。
ルイズは木にもたれ掛かり、愛しいサイトの首を抱きしめながら、その放送を聴いた。
だが今回は嫌悪感にプラスして、わずかながら朗報もあった。

ルイズは放送を聴いて、笑顔を浮かべる。

「あの女、死んでないんだ」

これで自らの手で殺すチャンスは残った。
もし、自分が手を掛ける前に死んだら。
張り合いが無くなってしまうような事態を回避し、むしろ気持ちよかった。

重大な情報かもしれないはずの『身動きの出来ない者』については、ルイズはどうでもよかった。
あの女は狡猾で強かったのだ。
身動きの取れない状態になるのは考えにくい。
どうせ、子供が怪我でもしたのだろう。
それに、サイトは自分の腕でしっかりと抱いている。
愛しいサイトが傍にいる以上に、重要なことなんて無かった。

「ねえサイト、サイトはあの女、どうして欲しい?私は爪を全部剥ぐつもり何だけど、サイトは何して欲しいの?」

物言わぬ首に、無邪気に嬉々した笑顔で問いかける。

「…もう、どうして言わないの?…そっか、残酷なことは言いたくないんだ。サイトやさしいもんね」
「でもいいのよ、サイト、眼が痛かったんだよね。だから、まずは眼をつぶさないとね。それから爪を全部剥いで…最後に首撥ねてあげるね」
「だってサイト凄く痛かったんだもんね、私サイトの為ならいくらでも、何だって出来るんだよ」

ルイズは愛する男の首に話し続ける。
優しく、笑顔で。

「ねえサイト…愛してる」

ルイズはたまらなくなりキスをした。
体温は既に無くなり、冷え切った唇に。
強く濃密なキスを。
顔を蒸気させながら。

210 :復讐の炎は地獄のように胸に燃え ◆5OBhuaMu0o :2007/01/23(火) 19:29:12 ID:ufjlnSaI
「サイト大好き、私の唇…美味しいよね」

ルイズは更に、貪るように唇を重ねる。

「サイト…サイト、サイトッ!」

ルイズはサイトの首を優しく、愛おしく抱きしめる。

「サイト…愛してる」

もう一度、愛の言葉を語りかける。

ルイズはサイトの首を胸に抱きながら、しばらく歩き続けた。
いろんなことを話し続けながら。
一方通行の会話も、ルイズには楽しかった。
二人だけの時間を惜しむように、ゆっくりと歩き続けた。
そして防波堤の前にたどり着く。

「…この先に、きっとあいつが…あの女が」

ルイズが先ほどの笑顔から、険しい表情に変わる。
愛しいサイトの首を左腕に抱えなおす。
優しく、慎重に。
そしてルイズは、右手に武器を握り締める。

「行くわよ、あの女を殺しに…サイト、今だけは、私を守ってね。終わったらすぐに、会いに行くから」

復讐の炎、更に強く、燃え上がる。

211 :復讐の炎は地獄のように胸に燃え ◆5OBhuaMu0o :2007/01/23(火) 19:31:02 ID:ufjlnSaI
【H-2 防波堤手前・1日目 日中】

【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態]:健康/左手中指の爪剥離
[装備]:平賀才人の首、グラーフアイゼン(強力な爆発効果付きシュワルベフリーゲンを使用可能)
[道具]:ヘルメット、支給品一式、平賀才人の左手
[思考・状況]
1.サイトと一緒に防波堤から遊園地に向かう。
2.サイトと一緒に朝倉涼子を探し出し、殺す。
3.2のために、サイトと一緒に朝倉涼子の情報を集める。
4.2と3の邪魔をする者は、躊躇無く殺す。ただし深追いはしない。
5.サイトと一緒に優勝して、ギガゾンビを殺す。 手段は問わない。
6.サイトに会いに行く。


212 :さよならありがとう ◆lbhhgwAtQE :2007/01/23(火) 20:17:45 ID:nTaPwcjM
『12時間生き延びることが出来た哀れな生存者どもよ、おめでとう』

俺としんのすけ少年が小川を渡り切るのと、仮面男の姿が空に浮かぶのはほぼ同時だった。
これが、君島やキョンが言っていた定時放送とやらだろう。
「お、おぉ!? お空にあの変なオジサンが浮かんでるゾ!」
俺の腕の中にいた少年も、この時ばかりは抵抗を止め、その空に広がる光景を見て驚いていた。

『心から祝わせてもらうぞ他人を食い物にして命を繋いだ畜生ども!
 なに、褒め言葉だ。弱肉強食の理を体現した君達は実に賢い』

男はいかにも人の神経を逆なでするような声と口調で長々と喋る。
俺は、こんな奴に俺達は踊らされているのかと情けなくなる一方、その言葉に確かに動揺していた。
他人を食い物にして――あの少年を殺した俺には、笑う資格も憤る資格も無い台詞だった。
だが、そんな俺の気持ちを他所に放送は続く。

――まず告げられたのは禁止エリア。
地図を確認する分には、これで指定されたエリアは恐らく今後の進路には問題ない。
ただ、そこで身動きできない奴がいるというのは気になったが。
レヴィみたいな場慣れしている奴なら、そんな間抜けなことにはなってないはずだ。……きっと。

続いて告げられたのは死亡者。
あの女ターミネーターのロベルタの名前があったのは驚きだったし、ヘンゼルという名前を聞いた時は改めて胸が痛くなった。
だが、何よりもその告げられた名前の中には……

――あいつの名前があった。
少しの間だったが行動を共にしていたが、西洋剣士から逃げる為の時間を作るといって一人あそこに残ったあいつの――君島邦彦の名前が。
俺だって馬鹿じゃない。
あそこで別れた時からこうなる可能性があったことは予想できた。
だけど……だけど、だからといって実際に死を告げられて、予想通りだと平然としていられるほど俺も非情にはなり切れない。
「……くそ! くそっ!!」
結果的に俺は、あいつを見殺しにしたことになる。
もし、あそこで残って一緒に戦っていたら……俺の脳裏ではそんなイフの世界が描かれるが、戦いなんかに慣れてない俺が出たところで結果は恐らく……。

俺は自分の弱さにつくづく呆れていた。
そして……それがどうしようもなく悔しかった。

213 :さよならありがとう ◆lbhhgwAtQE :2007/01/23(火) 20:19:48 ID:nTaPwcjM


お空に浮かんだオジサンは、変な声を出しながら訳の分からないことをべらべらと喋っていた。
そして、その中で「きみしまくにひこ」と「ヘンゼル」って名前が聞こえた。
「きみしまくにひこ」ってのは、この悪いお兄さんに騙されちゃうようなちょっとおバカなお兄さんの名前だ。
お兄さんはおバカだったけど……何故かアクション仮面みたいにカッコよかった。
「ヘンゼル」は、勿論オラの友達の名前。ちょっとオラより年上だったけど、友達には変わりない。
強くって優しくって…………だけど、もうここにはいない。悪いお兄さんがいっぱいいっぱい叩いたせいで、喋らなくなったんだ。
……そうだゾ!
オラはヘンゼルをぶった悪いお兄さんに捕まってるんだったゾ!
早く……早く、逃げないとダメなんだゾ!
「ふ、ふんぬ〜〜〜〜!!!」
オラは力を籠めて、お兄さんの脇からすり抜ける。
……あれ、何でだろう。ちょっと前は全然抜けられなかったのに、今は簡単に抜けられたゾ?
――ん? 何かが頭に……当たった?
これは……水?
「……くそ! くそっ!!」
お兄さんの顔を見上げてみると、お兄さんは泣いていた。
悪いお兄さんなのに泣いていた。
「お兄さん……どうして泣いてるの?」
なぜかオラは逃げるより前に、お兄さんにそう聞いていた。
何でか知らないけど、この時のオラはお兄さんから逃げようと思わなかったんだ。
「お兄さん、何で泣いて――うわっ!!」
お兄さんはいきなり膝から崩れて両手を突いた。
そして、その拳骨を振り上げると地面に叩きつけ始めた。
「俺は……俺は……!!!」
お兄さんにはオラが見えていないみたいだった。
お兄さんは何度も地面を叩くと、そのまま動かなくなってしまった。
……逃げるなら今だゾ。
オラはリュックを背負うと、お兄さんに背を向ける。
……けど、オラは足を前へ進められなかった。
何でだろう。
オラはお兄さんをほうっておけなかったんだ。
「も、も〜〜仕方ないなぁ〜〜。全くかーちゃんといいとーちゃんといいオラがいないとダメなんだからぁ〜〜」
オラは空っぽになったボトルをリュックから取り出すと、川へと向かった。


214 :さよならありがとう ◆lbhhgwAtQE :2007/01/23(火) 20:22:03 ID:nTaPwcjM


「ほい!」
項垂れていると、そんな言葉が聞こえた。
顔を上げると、目の前では少年――しんのすけ君が水の入ったペットボトルを差し出していた。
「お、お兄さん、きっと疲れてるんだゾ! 疲れてる時は水を飲んで休憩するといいってかーちゃんも言ってたんだゾ!」
「あ、あぁ、ありがとう」
……毒が入ってるかもしれない。
そう思うが、もしそうだとしても、それはきっと俺に対するこの少年からの罰なのだ。
甘んじて受けようじゃないか。
俺はペットボトルを受け取ると、その中身を一気に飲み干す。
……少し塩辛い気がする。……海水……いや汽水か、これは?
だが、体には何の変化も無い。……つまり、毒とかではなく、これはただの塩辛い水だということだ。
「オ、オラ、不思議なんだゾ」
「……え?」
すると、突如しんのすけ君が口を開き始めた。
「お兄さんはヘンゼルを酷い目に遭わせた悪い人なのに、オラ何だかそう思えなくなってきたんだゾ」
「…………」
「な、何でお兄さんはヘンゼルを殴ったの? ねぇ!」
しんのすけ君は俺から逃げずに、真正面を見据えてそう尋ねてきた。
その幼い顔からは、何か決意じみたものがにじみ出てきている……そう思えてきた。
……どうやら、俺にも逃げずに語らなくてはいけない時がやってきたようだ。
俺があの病院で行った事を。そしてその真実を。
何も出来ない俺かもしれないけど、それを語る事くらいは出来るのだから。


「――という訳だったんだ」
俺は一通り、この子にも分かりやすいように説明した。
変な薬を飲んだせいで、感情が変になってしまい、その為にあの少年を殺してしまったということを。
そして、本当の俺に殺す気は無かった事を。
「本当にすまなかった。償っても償いきれないのは分かる。……だけど、今の俺に殺意は無い。それだけは信じてくれ」
頭を下げるものの、これは到底許されることではない。
だが、こうしないと俺の気が済まなかった。
すると、少年は……。
「オラは……オラはお兄さんがヘンゼルに酷い事したのは忘れられないんだゾ」
そりゃそうだ。
どんな形であれ、この子が親しくしていたヘンゼルを殺した事実は揺ぎ無い。
「だけど……かあちゃんはこう言ってたんだぞ。『頭を下げてごめんなさい』をしたら、皆仲直りって。だから……だからオラはお兄さんと仲直りするんだゾ」
仲直り……。
そういえばガキの頃は、ケンカしても互いに謝ればそれでチャラになって、また一緒に遊んだりしたっけ。
今回のこれが、そんな単純なことじゃないのは分かってるけど……だけど、目の前の少年は純粋だった。
そして、純粋だからこそ、俺の胸にその――仲直りという言葉は強く響いた。
今はその言葉に甘えようと思う。
「……あぁ、仲直りだ。……ありがとう」
この子は俺と仲直りしてくれると言ってきた。
……今度は俺の番だ。俺は……この子に何かしてやれるだろうか。

215 :さよならありがとう ◆lbhhgwAtQE :2007/01/23(火) 20:24:06 ID:nTaPwcjM


お兄さんと仲直りをした後。
お兄さんは、一緒に温泉に行こうと言ってきた。
「温泉……おぉ、お肌ツルツルになるっていうあの温泉! さてはお兄さんもお肌ツルツルに……?」
「違うよ。そこに向かいながらこの山の中を歩いて、何か情報になるようなものを探したくてね」
何を言ってるのかはよく分からなかったけど、温泉ならもしかしたらかあちゃんがいあるかもしれない。
かあちゃんは美容とかダイエットって言葉にすっごく弱いからな。
もしかしたら、今もずっと温泉に浸かってるかもしれなんだゾ。
「……一緒に来てくれるかい?」
お兄さんはオラにそう尋ねてくる。
オラとしては、かあちゃんがいるかもしれないし、お風呂にも入りたかったから温泉には行ってみたい。
……だけど、お兄さんは頼み方がなってないゾ。
「人に物を頼むときはお願いします、だゾ」
「…………一緒に来てください。お願いします。……これでいいかい?」
「んも〜、そこまで言うなら仕方ないなぁ〜〜」
オラの返事に、お兄さんは嬉しそうに笑った。
「ありがとう。……それじゃ、行こうか」
「ほっほ〜い。出発おしんこ。きゅうりの糠漬け〜〜」
オラは元気を振り絞って、お兄さんと一緒に一歩を踏み出した。


……ヘンゼル、これで良かったのかな?
このお兄さんと一緒にいていいのかな?
オラは空の向こうにいるヘンゼルの方を見る。
空に映るヘンゼルは複雑そうな顔をしていたけど……だけど最後には笑ってくれたような気がした。

……さよなら、ヘンゼル。
ヘンゼルはずーっとオラの親友だゾ。
オラは……絶対にヘンゼルのこと忘れないゾ。

216 :さよならありがとう ◆lbhhgwAtQE :2007/01/23(火) 20:25:32 ID:nTaPwcjM
【C-5 川を東へ越えた辺り 1日目・日中】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:後悔
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:支給品三人分
    黒い篭手?@ベルセルク? どんな病気にも効く薬@ドラえもん、現金数千円
    びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)
[思考・状況]
1:温泉を目指す。
2:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る。
3:休憩しながら、情報を集め推理する。
4:しんのすけ、君島、キョン、トウカの知り合いを探す。
5:しんのすけに第一回放送のことは話さない。

      ※びっくり箱ステッキについて
       びっくり箱ステッキに叩かれた開けるもの(制限によりドアのみ)は、
       びっくり箱になり、開けるとびっくりするものが飛び出してきます。
       一度飛び出した後、閉めれば元のドアに戻ります。


【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、悲しみ
[装備]:ニューナンブ(残弾4) 、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品一式 、プラボトル(水満タン)×2、ipod(電池満タン。中身不明)
[思考・状況]
1:お兄さん(ロック)と一緒に温泉へ行く。
2:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する。
3:ゲームから脱出して春日部に帰る。
[備考]
ヘンゼルが弔われたことを知りました。
空のプラボトルに川の水を充填しました。
放送の意味を理解しておらず、その為に君島の死に気付いていません。

217 :Boys don't cry 1/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:05:30 ID:Pu1U00Fe
昔、"悪いのは私"とよく心の中で呟いていた。

実際、それは便利な言葉だった。
どんな酷い仕打ちを受けても、どんな酷いことをしても、"悪いのは私"と考えていればラクでいられた。
母さんがおかしくなったのは私のせい、アルフが悲しい顔をするのも私のせい、ジュエルシードを集めるために恨みを買っても、全部私のせい。
私がいい子でいれば、ワガママでなければ、もっとしっかりしていれば、うまく立ち回っていれば、余計なことを言わなければ。

あの事件が終わった後、私は自ら進んで時空管理局で嘱託の仕事を受けた。贖罪のつもりで。
義母や義兄に『フェイトは悪くない』と言われたって納得できなかった。
自分を罰することが、罪に対する償いになると、そう思っていた。
私は、確かに悪いことをしてしまったのだから。

けど、もうその時には"悪い"の意味が変わっていたんだと思う。
単なる罪に対する"自分だって傷付いている"という言い訳から。
自分が傷付けてしまった人達と真摯に向き合うための覚悟の言葉へと。

そう、あの言葉を受け取ったときから。

………………………………………………………………………………

「フェイトちゃん、フェイトちゃん」
「え?」

急に名前を呼ばれて、タチコマのポッドの中から地上を見渡していたフェイトは双眼鏡から目を離した。

「ええと……今、お寺の地点から約100m上空にいるんだけど……」
「うん、なら降下して中を調べないと」
「そうなんだけど……。たいへん申し上げにくいんですが……」
「?」

何を躊躇しているのだろう。無駄に滞空していてもバッテリーが勿体ないだけだ。
やがてタチコマは意を決して言った。

「なにやらこの"タケコプター"、調子がおかしくて……。さっきから全然命令を受け付な――――」

丁度その時。
プスンプスンと嫌な音を立てながらプロペラの回転数が落ちて行き。
ガクンと一度大きく揺れたきり、タケコプターはその機能を完全に停止した。
空中においては、タチコマには推進力も揚力もある訳が無い。
当然タチコマはフェイトもろとも真っ逆さまに自由落下を始めた。

「うひゃあああぁぁぁ〜〜〜」
「きゃあああぁぁぁ〜〜〜!!」

"推定終端速度:54m/s...推定終端運動量:113kNs..."

218 :Boys don't cry 2/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:06:47 ID:Pu1U00Fe
墜落まで、5秒。
近場にある20m以上はあろうかという針葉樹の幹の上部に向けて2発ワイヤーを発射。

「ハッチを閉めて!」

墜落まで、4秒。
ワイヤーの先端が2発とも幹の真ん中に命中した。
フェイトはハッチを開放したままSU2を取り出す。

墜落まで、3秒。
瞬時にワイヤー液が硬化した。
呪文詠唱を受けてSU2が待機状態から魔法杖に変形する。

墜落まで、2秒。
ワイヤーを操作して、半ば錐揉み状態になりかけていた姿勢を立て直す。
同時にバリアジャケットがソニックフォームに換装される。

墜落まで、1秒。
高度がワイヤーの着弾点より下がると同時に、フルパワーで引き戻す。
落下スピードが急激に減衰。
しかし、幹のたわみが予想以上で速度を殺し切れない――――

「ソニックセイル!」

フェイトの両手足に光の翼が展開。タチコマもろとも魔力フィールド内に押し込む。
強力な上方への加速により、瞬時に落下速度がゼロに。
二人は地上より50cm程上空をしばし浮遊した後、ぽすんと腐葉土に落下した。
重りに耐え兼ねた巨木がみきみきと音を立てて折れ始める。
間一髪だった。

「あ、あぶなかった……」

フェイトはSU2をカードに戻しタチコマから降り、そのまま地面にへたりこむ。
魔導士にとって飛行魔法は比較的簡単で便利な半面、常に落下の危険と隣合わせ。
それゆえ、空中では安全確認を怠ってはならない。
基礎中の基礎を忘れていた、反省せねば。
と、つんつんとタチコマのマニピュレータがフェイトの背中をつついた。

「?どうしたの?」
「ダメじゃないか。さっきの魔法が間に合わなかったらどうするつもりだったんだい?僕の中なら対衝撃機能が付いてるから安全だったのに」

褒められこそすれ、叱られる筋合は無い。
ちょっとムッとなる。

「でも、……もしそうしたらタチコマはどうなってたの?」
「相当ダメージを受けていただろうね」
「ダメじゃない!」

ここは少し自分の能力に対する認識も改めてもらおうと、二の句を告げようとしたその時。

忌々しい笑い声が空に響く。
見上げると空を割ってあの仮面の男の映像が浮かんでいた。


◇ ◇ ◇

219 :Boys don't cry 3/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:08:17 ID:Pu1U00Fe


哄笑だけを残して男の姿が消えていく。
フェイトは先ほどの放送の内容を反芻した。

彼女の友人は一人として名を呼ばれなかった。
結構な事だ。
状況は依然絶望的だが、そうでも思わないとやってられない。

そして死亡者数は前回の時のほぼ半分にまで減った。
結構な……事なのだろうか?
予想していたより少なかったからと言って、素直に喜べることではない。
そして、最後の方で呼ばれた二人の名前。
草薙素子とバトー。
確か、彼らはタチコマの……。

フェイトはおそるおそる振り返った。
タチコマは、ただそこにたたずんでいた。

「……タチ、コマ?」
「うん?」

なんだい?とタチコマはフェイトの方にセンサーを向けた。

「キミの友達の名前は呼ばれなかったみたいだね。侵入禁止区域も確認したし、そろそろ行こうか」

そういうと目的地の寺に向けてガショガショと歩き始めた。
いつもの口調。悲しみなど微塵も感じられない。
ゆえにフェイトの不安はますます募った。

「悲しく……ないの?」
「何が?」
「あの……タチコマの仲間が死んじゃったこと」

言ってしまってから、無神経だったと恥ずかしくなって顔を伏せる。

「うーん、どうだろう?」

タチコマはセンサーユニットを捻った。

「以前よりは、なんとなく"死"について理解できるようになったとは言え、僕は半不死だからね。人間の死に対する観念に共感できないから……。
もちろんバトーさん達と相互にコミュニケートできなくなった事を"イヤな事"と認識してはいるけど、それを悲しいというものなのかな……」

220 :Boys don't cry 4/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:09:46 ID:VUtgiqRY
"半不死"という言葉がなんとなく引っかかる。

「タチコマは、死なないの?」
「うん。基本的に記憶は二重構造だし、たとえ大破してもメモリさえ無事なら、それを新しい機体に移せば完全に元の個体と同一になるよ」

記憶だけ移したところで、それは果たして元のタチコマと言えるのか。
自身の出自故か、フェイトには納得できなかった。
再生は別れの悲しみを癒しこそすれ、完全に無くせる訳では無い、フェイトはそう思う。

言い返したい。
それは間違っていると伝えたい。
でも、何と言えばうまく伝わるのか。
考えてもタチコマを納得させられるような言葉が見付からなかった。

しばし無言で二人は歩く。
寺は着地地点から数十メートル程のところだった。
山門の代わりに何故か鳥居が入口に建てられている。

『椎七寺』

そう大書された板を二人して見上げた。
こんな状況でつまらない冗談をかます神経に、フェイトは呆れ果てる。

「これはひょっとすると、マップのC-7エリアと椎七を掛けているのかな?」
「そーなんじゃないかな」

精神的に疲れたフェイトは、普段よりいささかぞんざいに答えると寺の引き戸に手をかけた。
こんな所になのはが籠っているとは考え辛いが、ひょっとしたら休憩しているのかもしれない。

「開けるよ」
「あっ!タンマ――――」

既に足を一歩踏み入れた状態。
頭上に気配を感じて見上げると、子供ぐらいのサイズの物体が何個かこっちに向かって落ちてくる。
とっさに飛び退くと、さっき居た辺りを陶器制の人形が雨あられと降り注いだ。
人形は木端微塵に砕け散り、破片が辺り一面に舞うが、防御が必要なほどの勢いは無い。
一瞬安心して気を抜きかけるフェイトに、左側面から猛烈な勢いで何かが迫る。

避けられない――――!

目を瞑って身を硬くするフェイトの頭上を、ひょいと巨大な機体が飛び越し盾となる。
飛翔物は3つともタチコマの装甲に弾かれ、一つは壁に突き刺さって止まった。

221 :Boys don't cry 5/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:11:09 ID:VUtgiqRY
「ど、どうなったの……」
「トラップだよ、二段構えの。頭上の奴は囮だね。本命はこっち」

タチコマは壁から竹槍を引き抜いた。

「……竹?」
「うん。空洞に小石と土を詰めて重量を増やしてある。人間の筋肉位なら貫通できるかもね」

良く見ると扉には細いロープが張り付けられており、左手の繁みまで延びている。
タチコマが繁みをかき分けると、すぐにそれは見付かった。
連動式のボウガン。材料は竹と紐と重りの石だけ。
これだけの材料で満足に動作するトラップを設営した犯人に、タチコマは感心した。

赤外線で辺りを見渡すがそれ以上仕掛けらしき物は発見できなかった。
ボウガンを踏み潰すとそのままフェイトの待つ寺の扉の前に戻った。

「やあ、お待たせ」
「うん……それより、さっきので怪我とかは大丈夫なの?」
「?キミは特に怪我してないみたいだけど?受動神経系にバグでも生じたかい?」
「そうじゃなくて!タチコマが……」
「ああ。それなら問題ないよ。アルミ合金とセルロースじゃ強度が段違いだからね」

言うが早いかさっさと寺の中に入ってしまう。フェイトも慌ててそれに続く。
寺の中はさっき頭上から落ちてきたものと同じ遮光型土偶で埋めつくされていた。
悪趣味極まりない。

「あんまり物と接触しないようにね。罠があるかもしれないし」

巧みに土偶を避けながら奥まで進んでいるタチコマに声を掛けられる。
それから10分程二人で慎重に家探しをしたが、使えそうな物は全く見付からなかった。
フェイトは、仏壇をひっくり返した上で仏像まで手に掛けようとしているタチコマに声をかけた。

「長居しても仕方がないし、一度外に出てお昼にしよう」

境内まで戻り一息つく。
フェイトはパンと水を、タチコマはオイルをとる。
味気の無い食事だった。
パンを半分ほどかじったところで、フェイトはぽつりと口を開いた。

「タチコマは、もっと自分を大事にするべきだと思う」

既に燃料の補給を終えたタチコマのセンサーが少女に向けられた。

「きっとタチコマだって、いなくなったら悲しいって思う人がいると思う。
人間だからとか機械だからとか、そういうのは関係ないよ。だから……」
「ありがとう」

はっとしてタチコマを見上げる。
ジェスチャーのないその機体からは表情を読み取ることが出来ない。

「キミは僕の事を心配してくれていたのかぁ。いま、やっと判ったよ」

さあっ、と風が凪いだ。

222 :Boys don't cry 6/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:12:54 ID:VUtgiqRY
「でも、言ってしまえば余計な御世話、かな?」
「え?」
「僕の自己保全の権限は人間より低いって決まっているんだ。それを覆したいとは思わないようにプログラムされてるし。
それに考えてもごらんよ。仮にあらゆるプライバシーを侵害できる偵察能力と、人間をミンチにできるパワーを持った思考戦車が自己の保全を優先するようになったらどうなるか。社会はメチャメチャになるよ」
「タチコマはそんなこと――――」
「できるよ。命令があったら、そうする。そこで悩んだりしないし、対象に同情して傷付いたりもしない」

フェイトは再びうつむいた。
きっと彼らが生きる社会は自分達のそれ以上に厳しい物なのだろう。
自分なんかがタチコマの生き方に口をはさむのは、軽率なのかもしれない。

「それに、さ」

タチコマは続けた。寂しさなど微塵も感じさせない、いつもの口調で。

「僕達は何も生み出せない。次の世代に受け渡せる新しい価値を創り出すことが出来ないんだ」
「価値を……生み出す……?」
「うん。きっと、それが出来るのはキミ達ゴーストを持った人間だけだよ。僕達にできるのは、記憶することと破壊することだけ」
「コピーができるんじゃ……」
「それは創造とは呼べないよ。ただ増え続けるだけならウィルスにだってできる。自らを知り、他者を知り、その同一性と差異を定義して全く新しいネットワークを構築するのは凄いことだと思う。
けど、その可能性を踏みにじり、自分の価値を押しつける人達も居るんだ。ギガゾンビのようにね。彼は殺し合いに価値を見出しているみたいだけど、その為に79人分の価値を侵害して良い訳がない。
それらを排除するのも九課の仕事さ。前は何も考えずにただ命令に従ってたけど、いまではその可能性を守るために自分の存在を賭けるのも悪くないって思う。
僕が自己保全を優先しない理由がそれじゃ、ダメかな?」

フェイトはようやく理解できた。
タチコマは人間ではなく機械なのだ、どこまで行っても。
その機械ならではの純粋さで世界を見ている。
"親に従わされる"理不尽を嘆いて目を閉ざしてしまうのでなく、自分の出来る範囲で聞こえない声にまで聞き耳をそばだて、自分のやりたいことを知ろうとしているのだ。
人間は、きっと一人ではそんなことは出来ない。
きっと目を閉ざし、耳を塞いでしまう。かつての自分の様に。
それが出来るのは、きっとタチコマが機械だからだろう。

でも。
例えばバルディッシュは人間じゃない。
アルフだって厳密には人間とは違う。
けれど彼女らを蔑ろにして良いとは、決して思わない。
彼女たちは生きている。
だから、きっと、タチコマだって生きているに決まっている。
その思いを、フェイトは最後のパンのかけらと一緒に飲み込んだ。

223 :Boys don't cry 7/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:14:24 ID:Pu1U00Fe
「あと、いつだって男の子は女の子を守るものさ」

おどけてタチコマはそう締めくくった。
フェイトは少し吹き出す。
タチコマに性はない。その概念すらよく判っていない。
しかしそれを冗談のネタにするセンスは持ち合わせている。
それに"男の子なんだから"というフェイトの認識に乗ってみたいと、なんとなく感じていた。

「もう、行こうか。僕は少佐達が遺したネットワークを探さないといけない」
「ネットワーク?」
「この状況を制圧するための人材、物資、あと何と言っても電脳に記録された情報を遺しているはずだよ。これが無駄になったら、彼らは本当に死んでしまう。きっとそれらは人の集まる市街地にあると思う。
でも、なのはちゃんがそこにいるとは限らないね。辺りを探せば誰かいるかもしれないけど」
「なのは達がいたら私を避ける理由が無いよ。それに、なのはもきっと街の方にいると思う」

そう、彼女なら積極的に事態の解決に向けて動いているはず。そういう子だ。

「とりあえず山を降りてみよう」
「いえっさー!」

ぴょこんと敬礼の真似をする。
SirではなくMomが正解なのだが、フェイトはあえて訂正しない。
相棒の口癖を思い出して彼女は微笑んだ。


◇ ◇ ◇

224 :Boys don't cry 8/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:15:38 ID:Pu1U00Fe
沙都子は水色のロボットが見えなくなったのを確認すると、ほうっと息をついた。
同時に忘れていた恐怖がぶり返し、ガタガタと震え始める。
予想外だ。
あんなバケモノ相手では、自分の作ったトラップなど豆鉄砲も同然。
もしアレが戻ってきて自分に襲いかかって来たら。
そう思うと生きた心地がしない。
生き残るにはあんなのも倒さなければならないのか。

そういえば、自分と同じくらいの歳の女の子が側に居た。
姿を表して申し出れば、自分も保護してもらえたかもしれない。
でも、もしトラップを仕掛けたのが自分だとバレたら、そう思うと足がすくんで動けなくなった。

だけど、いつまでも座り込んでいる訳にはいかない。
にーにーは、ここにはいないのだ。
生き残るためには、強くあらねばならない。

沙都子は立ち上がった。
もっと、トラップを作らねばならない。
もっと沢山、もっと強力なものを。
ボウガン程度では大怪我をさせるのがせいぜい。あのロボットは愚か大人に襲いかかられたら、ひとたまりもない。
他の部活メンバーは未だ生き残っているのだ。自分も最後まで生き残って見せる。

寺に戻る途中、ふと見ると何かの箱が転がっている。
そういえば、あのロボットが落下している最中に何かを落としていたような気がする。
近付いてみると、何かの薬箱のようだ。

「なんですの……」


◇ ◇ ◇


少女を載せ、タチコマは山を下りる。
フェイトはハッチを開いて身を乗り出し、双眼鏡で辺りを見回す。
だから、搭乗席内のモニタが明滅していることに気付かない。

――――renewing LTM...
    〈長期記憶野更新中〉

――――mv file "Motoko Kusanagi" & "Batou",division "alive" to "lost".
    〈"草薙素子"と"バトー"の項を分類"生存者"から"行方不明者"に移動〉

――――cp file from STM,"Fate T Haraoun".
    〈短期記憶野より新項目追加、"フェイト・T・ハラオウン"〉


225 :Boys don't cry 9/9 ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:18:21 ID:Pu1U00Fe
【C-7 1日目 日中】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に軽傷、背中に打撲、決意
[装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)
[思考]
1:下山して市街地に入る。
2:双眼鏡を使い、タチコマに乗って他の参加者を探す。
3:カルラの仲間に謝る。
4:自分の友人とタチコマの仲間との合流。
5:眼鏡の少女と遭遇したら自分が見たことの真相を問いただす。
6:放送で言っていた"身動きの取れない参加者"が気になる。
基本:シグナム、ヴィータ、眼鏡の少女や他の参加者に会い、もし殺し合いに乗っていたら止める。

【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:装甲はぼこぼこ、ダメージ蓄積、燃料満タン
[装備]:ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)、タチコマの榴弾@攻殻機動隊S.A.C
  タケコプター@ドラえもん(故障中、残り使用時間6:25)
[道具]:支給品一式×2、燃料タンクから2/8補給済み、お天気ボックス@ドラえもん、西瓜47個@スクライド
  龍咲海の生徒手帳、庭師の如雨露@ローゼンメイデンシリーズ
[思考]
1:下山して市街地に入る。
2:フェイトを彼女の仲間の元か安全な場所に送る。
3:トグサと合流。
4:少佐とバトーの遺体を探し、電脳を回収する。
5:放送で言っていた"身動きの取れない参加者"が気になる。
6:自分を修理できる施設・人間を探す。
[備考]
光学迷彩の効果が低下しています。被発見率は多少下がるものの、あまり戦闘の役には立ちません。
効果を回復するには、適切な修理が必要です。
タケコプターは最大時速80km、最大稼動電力八時間、故障はドラえもんにしか直せません。
二人はエルルゥの薬箱を落とした事に気付いていません。


【C-7、寺付近 1日目 日中】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:右足粉砕(一応処置済み)
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:基本支給品一式、ロープ、紐、竹竿他トラップ道具、
  エルルゥの薬箱@うたわれるもの(筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)(落下による破損の度合は不明)
[思考・状況]
1:生き残ってにーにーに会う
2:寺の内外に罠を張り巡らせ、ここに来る者を仕留める
         (ガッツやみさえでも構わず仕留めるつもり)
3:ひぐらしメンバーとは会いたくない

226 :Boys don't cry 2/9(訂正版) ◆TIZOS1Jprc :2007/01/24(水) 01:47:47 ID:VUtgiqRY
墜落まで、5秒。
近場にある20m以上はあろうかという針葉樹の幹の上部に向けて2発ワイヤーを発射。

「ハッチを閉めて!」

墜落まで、4秒。
ワイヤーの先端が2発とも幹の真ん中に命中した。
フェイトはハッチを開放したままS2Uを取り出す。

墜落まで、3秒。
瞬時にワイヤー液が硬化した。
呪文詠唱を受けてS2Uが待機状態から魔法杖に変形する。

墜落まで、2秒。
ワイヤーを操作して、半ば錐揉み状態になりかけていた姿勢を立て直す。
同時にバリアジャケットがソニックフォームに換装される。

墜落まで、1秒。
高度がワイヤーの着弾点より下がると同時に、フルパワーで引き戻す。
落下スピードが急激に減衰。
しかし、幹のたわみが予想以上で速度を殺し切れない――――

「ソニックセイル!」

フェイトの両手足に光の翼が展開。タチコマもろとも魔力フィールド内に押し込む。
強力な上方への加速により、瞬時に落下速度がゼロに。
二人は地上より50cm程上空をしばし浮遊した後、ぽすんと腐葉土に落下した。
重りに耐え兼ねた巨木がみきみきと音を立てて折れ始める。
間一髪だった。

「あ、あぶなかった……」

フェイトはS2Uをカードに戻しタチコマから降り、そのまま地面にへたりこむ。
魔導士にとって飛行魔法は比較的簡単で便利な半面、常に落下の危険と隣合わせ。
それゆえ、空中では安全確認を怠ってはならない。
基礎中の基礎を忘れていた、反省せねば。
と、つんつんとタチコマのマニピュレータがフェイトの背中をつついた。

「?どうしたの?」
「ダメじゃないか。さっきの魔法が間に合わなかったらどうするつもりだったんだい?僕の中なら対衝撃機能が付いてるから安全だったのに」

褒められこそすれ、叱られる筋合は無い。
ちょっとムッとなる。

「でも、……もしそうしたらタチコマはどうなってたの?」
「相当ダメージを受けていただろうね」
「ダメじゃない!」

ここは少し自分の能力に対する認識も改めてもらおうと、二の句を告げようとしたその時。

忌々しい笑い声が空に響く。
見上げると空を割ってあの仮面の男の映像が浮かんでいた。


◇ ◇ ◇

227 :ゴーゴーメガネ! ゲイナーくん ◆C0vluWr0so :2007/01/24(水) 02:32:11 ID:QPYhEbom
 第二回放送から三十分……累計すると一時間もの長きに渡って、僕はこの体を縛る憎き縄と格闘している。
 まったく、何故こんなことになったのか……。
 まぁ、それの原因の殆どは僕の過失やら詰めの甘さなんだから仕方が無いと言えば仕方がないのかもしれない。
 だがしかし、だ。
 今僕が凍えているこの状況は、おおよそ八割方はレヴィさんの性格に起因しているだろう。
 なんだって服まで脱がせるんだよ、あの人は。
 冷えた身体を震わすと、僕は小さなくしゃみをした。
 くしゅん。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ゲイナー少年がパンツ一枚という全裸寸前、その上縄によって緊縛中という格好で放置されているのは、決して彼の性癖に因るものではないと、彼の名誉のために言わせてもらおう。
 そう、彼が人に言えない少々特殊な性癖を持っているだとか、そういったことでは断じてないのだ。人に見られて困る格好であることは否定しようがないが。

 酒瓶で殴られた頭部の痛みも引き、自らの身体を縛る縄をどうにかしようと少年が行動を開始したのがおおよそ一時間前。
 彼はこの縄を断つために、痛快な音と共に彼の頭を叩き、そのまま割れてしまった酒瓶の欠片を探した。
 ガラス片でこの縄を切ることが可能であるかという心配も無くはなかったが、レヴィという前例もある。さほど時間もかからずにこの緊縛から逃れることが出来るだろうとゲイナーは高をくくっていた。
 だが彼はとんでもない事実を目の当たりにすることになるのだ。

「もっ……、もがが!?(訳:なっ、ガラス片なんてどこにも無いぞ!?)」

 ああ、レヴェッカ嬢はなんと酷い仕打ちをなさるのだろうか。
 ゲイナーの近くには、縄を切れるだけの大きさを持った酒瓶の欠片など、一つたりとも存在しなかった。懇切丁寧なことに、レヴィが大きい破片だけを持っていってしまったのである。
 ゲイナーの手元には小指の先ほどの大きさの破片しか無く。これで縄を切ろうとするのなら何時間かかることやら……。

「もがががっ(訳:大人ッてのはいつもこうだ!)」
「もがががが(訳:僕らには酷い仕打ちばかり!)」

 ゲイナー少年の憤りももっともである。だがおそらく、まともな大人ならばこんなことはしまい。
 相手が悪かった、ということだ。おそらくはレヴィにとってもお互いに。
 とは言うものの、なんにせよ脱出は最優先事項。いつまでもこの格好でいるわけにもいかないと、渋々縄を切る作業を開始したということである。
 そして放送が始まり、終わった。

228 :ゴーゴーメガネ! ゲイナーくん ◆C0vluWr0so :2007/01/24(水) 02:34:14 ID:QPYhEbom

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 僕はロープを切る作業と平行しながら考え事をしていた。勿論先ほどの放送についてである。
 新たに呼ばれた死者の名は九つ。……知っていた名前は一つ。
 朝比奈みくる。僕が話した顔も知らない少女は死んでしまった。原因は電話中に起きたらしい何らかの騒動――おそらくは殺戮者のホテルへの乱入――だろう。思った通り、市街地はかなりの激戦区になっているらしい。
 そこへ向かったなのはちゃん達の安否も心配だが、クーガーさんもカズマさん同様かなりの戦闘能力を備えているようだった。今は二人を信じることしかできない。
 ゲインもまだ生きている。まぁあの請負人がそう簡単に殺されるとは思っちゃいないけどさ。
 それでも既に全体の三分の一が死んでしまっているこの現状。ゲインにも、もちろん僕にもいつ殺戮者が襲いかかってくるかも分からない。

(考えろ、ゲイナー)
 今生きのびている人間は『力』なり『仲間』なり『頭脳』なり、死んでいった人たちが持たなかった『何か』を持っているはずだ。
 僕にはカズマさんやレヴィさんのような『力』は無い。
 なのはちゃんにとってのクーガーさんのような、頼れる『仲間』もいない。
 なら僕はどうすればいい?
 『考えろ』 『頭を使え』
 それが僕に出来る唯一のことだ。
 そして……さしあたっての問題点。これが一番厄介で、死に直接関わってくる問題だ。
 僕のいるこのF-8が禁止エリアに指定された。この首輪がその効果を発揮するまでに残された時間は四時間強。おそらく、それまでにはこの縄を解くことも不可能では無いだろう。
 だがそれよりも恐れていることは、ここに殺戮者が来ることだ。
 ギガゾンビは放送の中でこう言った。『禁止エリアに動けない人間がいる。好きにしろ』と。
 冗談じゃない。善意で助けに来てくれる人間ならまだしも、明確な殺意を持った人間が来たとき、僕は為す術もなく嬲り殺されることになるだろう。『無力』で『仲間』もいない僕は。
 だから――『考えろ』
 このピンチを乗り越えるために。生きてエクソダスを続けるために。
 大丈夫さ、僕はチャンプだ。こんな修羅場、いくつも乗り越えてきた。その経験が教えてくれる。今重要なのは情報。
 そしてその鍵は――この頭の中に刻まれた名簿にある。

229 :ゴーゴーメガネ! ゲイナーくん ◆C0vluWr0so :2007/01/24(水) 02:36:53 ID:QPYhEbom

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【ゲイナー・サンガによる名簿に関する考察】※名簿を片手に読むことを推奨します。

 まず、わかりやすくするために名簿の頭から順に番号を振ってみる。1番キョン、2番涼宮ハルヒ、……80番平賀=キートン・太一といった具合にだ。
 僕とゲインがそうであるように、元からの知り合いは前後して並べられているということは、なのはちゃんとの情報交換、レヴィさんやカズマさんの言葉の端々から確定と見て間違いないだろう。

 『名簿は知人同士が固まって記載されている』

 この前提を元に、分かる範囲で参加者を分けてみる。

・1番〜6番(なのはちゃんが接触した鶴屋さんの証言より)
・12番〜16番(カズマさん、かなみさん、クーガーさんの面識より)
・37番〜41番(なのはちゃんの友達一同)
・47番〜48番(レヴィさんとの会話よりロックという人物と知人だということは確定)
・76番〜78番(僕とゲイン)

 少なくとも5つのグループを確認。どうやら元々の知り合いの数にもバラツキがあるらしい。
 そして、知人の数が多いほど、名簿のはじめの方に記載される傾向が見られる。これは参加者名簿を暗記したときにも感じたことでもある。
 なんというか……名簿の後半になるにつれて、名前の表記形式や印象というものがコロコロと変わっている気がするのだ。
 まぁ、なのはちゃん達のように元々の友達同士でもバラバラな例もあるんだし、そういう傾向があるかもしれないという程度で頭に留めておこう。もう少し情報が集まればこれについても確定できるんだろうが、今はそこまでは望めない。
『名簿は知人同士が固まって記載されている』ことを把握しておけば、例えばカズマさんのように知人の死を知り、興奮や逆上、その他感情の昂ぶりを見せている相手がここに来ても、少しはマシな接触が出来るはずだ。
 それに、こちらが人を捜すときにも、上手く名簿を使えば効率的に情報を集められるだろう。
 例えばこの忌々しい首輪に関してだ。いずれ解除か無効化をしなきゃいけなくなるだろう。
 そのとき参加者一人一人に首輪に関する知識の有無を確認していたら、とてもじゃないが間に合わない。だが、グループ単位で考えれば?
 機械技術の発達した世界や、魔法という全く別の技術体系を持つ世界から来たグループを特定すれば、対象は個人から集団へと変わり、技術者の発見も容易になる。


 そして、これがこの名簿から得られ、今の僕にもっとも必要な情報かもしれない。
 今まで二回の放送で呼ばれた死者……それの『偏り』だ。
 より分かりやすくするために、十人単位で区分けして考えてみよう。

・1番〜10番→3人(4番、6番、10番)
・11番〜20番→3人(11番、14番、15番)
・21番〜30番→1人(29番)
・31番〜40番→5人(31番、32番、35番、36番、39番)
・41番〜50番→4人(42番、45番、49番、50番)
・51番〜60番→5人(51番、52番、55番、59番、60番)
・61番〜70番→5人(61番、62番、65番、67番、69番)
・71番〜80番→2人(78番、80番)

 明らかな偏り。これが意味するところとは? ただの偶然か?
 いや、違う。『名簿は知人同士が固まって記載されている』のだ。これはそのままグループ毎の生存率、さらには単純な生き残るための力、戦闘能力を表しているのではないか?
 例えば、カズマさんやクーガーさんの能力。例えば、なのはちゃん達の魔法。例えば、レヴィさんの戦闘技術。いずれも一般人、ただのピープルとは無縁のものなのだ。
『その世界の人間は強い』と認識しろ。16番〜28番。他と比べてあまりにも人が死んでいない。単純に『強い』のだ。
 49番〜52番、59番〜62番。人死にが続きすぎている。『弱い』のだ。
 見極めろ、強さを。情報を。それが自らの生存率を高めるのだから。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

230 :ゴーゴーメガネ! ゲイナーくん ◆C0vluWr0so :2007/01/24(水) 02:38:33 ID:QPYhEbom
「へ……へぶっ」
 突然鼻からむず痒さが広がり、僕は我慢出来ずにくしゃみをする。さるぐつわのせいで音まで間抜けだ。
 いけないいけない、少しばかり考えるのに熱中しすぎて縄を切る手を止めてしまっていた。
 今一番にすべきことはこの緊縛を解くこと。名簿から情報を得るなんてことはあくまで保険だ。
 優先順位を間違えて、いつ来るのか、その前に来るのかどうかもあやふやな相手の対策を練っているうちに首輪がドカンだなんて、洒落にもならない。

(しかしまぁ、これからのこと――考えなくちゃいけないかもしれないな)
 死者は増え続け、僕もまた危険な状況にあるんだ。相棒の消息もようとして知れない。
 脱出に向け、具体的な策を考えなきゃ。ゲインも動いているはずだ。
 むざむざと市街地に向かって殺される気はないけど、積極的に他の参加者と接触をとる必要はある。
(中心部を避けながら、避難している参加者を集めるか……)
 力が無ければ、数で対抗すればいい。いずれゲインとも合流出来るはずだ。

 そう、気を引き締めるが――不意に僕の身体を悪寒が襲う。そう言えばなんだかさっきから熱っぽい感じも……
(風邪、ひきかけてるな……)
 確かA-8には温泉があったはずだ。ガウリ隊長には天然のお風呂だと聞いている。まさかこんな形で隊長のヤーパン知識が役に立つなんて思ってもいなかったな。
 ひとまずこの緊縛から自由になったなら、温泉でじっくり身体を暖めるのも悪くない。
 というかこのままじゃホントに風邪をひいてしまうだろう。
 誰か僕に服を下さい。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 かくしてゲイナー少年は未だ半裸のまま、もぞもぞと縄と格闘している。
 貧弱な肉体を露わにし、不格好な動きをするその姿はひどく滑稽ではあったが――少年の瞳は、決意と意志とで輝いて見えた。


【F-8・森林/1日目/日中】

【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状(寒気、くしゃみ、微熱など)、頭にたんこぶ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:パンツ一丁、ロープ、さるぐつわ
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:……寒。暖まる……。
2:なんとかしてこの状況の打破。出来れば誰にも見つからない内に。
3:温泉で暖まり、少しでも風邪の進行をくい止めたい。
4:首輪解除手段を手に入れる。
5:もう少しまともな人と合流したい(この際ゲインでも可)。
6:さっさと帰りたい。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※手首と足首をロープで縛られ、最低限の身動きしか取れません。口にはさるぐつわを嵌められ、喋ることも出来ません。
※ゲイナーの周囲には、ロープの残骸、手錠、割れた酒瓶(大きな破片は無く、ほとんど粉々)、ゲイナーの衣服、防寒服が散らばっています。
※ロープはこのまま作業を続ければ三時間ほどで切ることが可能です。

231 :嘘800(1/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 20:55:23 ID:PVXpGzNh
あの仮面の男が無慈悲に、そして傲慢に死を告げた。

「小・・・夜・・・・・・」

僕の目の前でソロモンさんがうなだれ、路上にへたり込む。
絶対無いって思ってた。僕達が探すべき人の一人である音無小夜が死んだと、そう言っていた。
僕達の探し人は今まで全員無事だった。だから圭一君の言っていたように、誰も死なないと思っていた。
でも・・・、僕は信じたくない。ソロモンさんはもっと信じたくないだろう。
僕は生気の抜け、呆然としているソロモンさんをなんとか励まそうと声をかけて慰める。

「ねぇ、ソロモンさん。僕たちはまだ誰の死体も見つけていないんだ。
 だから小夜さんが死んだなんて真っ赤な嘘かもしれないよ。」

僕はへたり込んだソロモンさんの背中に手を当て、なんとかソロモンさんに立ち直ってもらおうと必死に励ました。
だけど、ソロモンさんは小夜さんの名前を呟いたり、何かぶつぶつと呟いているだけだった。
僕もソロモンさんと同じように悲しくなる。もし小夜さんじゃなくて翠星石が放送で呼ばれていたとしたならば・・・
そんな想像をして、ソロモンさんと同じように落ち込む。

そう、翠星石が呼ばれていたならば、置き換えればあの時と逆になる。
僕はお父様を救うためにためにアリスゲームを行った。その為に双子の姉を裏切り、死んでいった。
僕があの時ローザミスティカを奪われ、動かなくなった時と全く逆の想像をする。すなわち、翠星石が死んだとき。
ただの想像なのに、僕はとても悲しくていたたまれない気分になってしまった。

大切な双子の姉である翠星石をこんな悲しい気分にしてしまった僕は、今考えるととても罪深いことをしてしまった。
僕はここに来てから二度目の反省をする。翠星石だけじゃない、ジュン君やマスター、真紅たちだって同じなんだ。
大切な人が亡くなって悲しむということは、・・・とても辛い。
あの時、僕はどうしてもお父様の苦しみを和らげたかった。
僕はお父様のために、大切な姉である翠星石のことさえ考えずにアリスになろうとした。
僕は残された人の苦しみをよく考えてなかった。それがこんな悲しい気分だなんて、とても辛い。
だからもう二度と翠星石たちを苦しめたくないし、それが僕に出来る唯一の罪滅しなんだろうと思う。
僕に今出来る罪滅しは、大切な人を亡くして苦しむソロモンさんをなんとかして救ってあげることだ。

「ソロモンさん・・・、小夜さんはきっとこんなに苦しむソロモンさんなんて見たくないと思う。
 だから、僕たちは前を向いて、小夜さんの願いを叶えるように頑張るべきだと思うんだ。」

僕はソロモンさんに呼びかけるが、反応は無い。でもきっと分かってもらえる。
先に逝ってしまった人を苦しませるのは、僕達のように一度死んでしまった者が一番よく分かるはずだから・・・



「あははははははははははは、ソロモンさんみ〜つけた。」


232 :嘘800(2/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 20:56:42 ID:PVXpGzNh
僕が振り返ると、血濡れの鉈を構えるレナさんがこちらを目指して歩いていた。
あの血ついたの鉈、そして一人で向かってくるレナさん。・・・嫌な考えが頭をよぎり、頭の中で無理やり否定した。
レナさんの左目は血に染まり、首からも血が流れている。
そして、僕の目の前のレナさんは・・・右手で鉈を持ち、左手で喉を掻き毟っていた・・・。

「圭一君は・・・」
「*した。」

ぴしゃりと言い切る。狂気に満ちた瞳のレナは僕達、特にソロモンさんに対して強い憎悪の炎を滾らせている。

「かわいそうな圭一君、そこのソロモンに洗脳されたせいで*んでしまった。
 圭一君はもう私のことを信じてくれない、だから*すしかなかった。
 圭一君が死んだのはその男のせいに違いない違いない違いない。」

僕はコンバットナイフを構え、レナの動きを伺う。

「レナはね、圭一君をこんな目に会わせるために洗脳したソロモンを絶対に許さない。
 圭一君の敵討ちのために、そこのバケモノを*す。」

レナは首を掻き毟ることを止めると思い切りよく両手で鉈を振り上げ、ソロモンさんに向かって踏み込む。
僕は地面を思いっきり踏み込んで、レナの鉈目掛けてナイフをなぎ払う。
レナは一撃をなんとかいなし、バランスを取って鉈を構え、こちらに向かってきた反撃する。
僕はその一撃を回避し、レナさんに言いたかった言葉をぶつける。

「レナさん、あなたのやっていることは絶対に間違っている!」
「間違ってなんかいない!悪いのはあいつだ!あいつが死ねば全て終わるんだ!」
「誰もこんなことなんか望んでいない。圭一君こそこんなことは絶対に望んでなんかいない!」

激情に狩られたレナがこちらに向かって踏み込んでくる。
僕はレナの懐に潜り込み、ナイフを鉈の側面に叩きつける。
しかしその一撃を想定していたレナは、打点の方向に体ごと回転し、側面を叩き付けようとする。
跳んで一撃をナイフで受けとめ、反動を軽減するために空中でバランスを取る。
レナは回転力を右足で受け止め、飛行中の僕目掛けて思いっきり叩きつける。
空中移動により回避されたそれは道路に叩き付けられる。僕は鉈めがけてもう一発一撃を叩きつける。
鉈の金属音が地面に響いたその直後、なぜか僕はレナの拳に吹き飛ばされていた。
くっ・・・これが圭一君の言っていたれなぱんか、彼の言った通り冗談ですまない一撃だった。

「蒼星石ちゃんはな〜んにも分かっちゃいない。
 圭一君を救おうと私は頑張った。でも誰も信じてくれなかった。そして全ては終わってしまった。」
「圭一君はこんなの望んでなかった。圭一君は言ったじゃないか、仲間を信じろって!」
「うるさい!仲間を信じていないのはお前達だ!お前達がその男に騙されて洗脳されて裏切ったんだ!!」

互いの獲物の届かぬ間合いで拮抗した僕は、レナさんを説得するべく言葉を紡ぐ。

「死んでしまった圭一君は仲間同士が殺しあうなんて絶対に願っていなかった。
 レナさん、あなたは死んでしまった人の苦しみも、残された人が何をすればいいか分かっちゃいないんだ!」
「うるさい!!!!!」

激情したレナが再び金属音を響かせ、再び場は静寂に戻る。

「・・・蒼星石ちゃんも、ソロモンさんに次元さんも、みんなみんな死んでしまえ。
 私がみんなみんな殺して、こんな嫌なことは『なかった』ことにしてやる。」

"なかった"ことにする。それはもしかしてあの馬鹿な仮面の男が紡いだ一言を信じているのだろうか。

「レナさん!あの仮面の男が素直に願いを叶えると思うの?冷静に考えてよ!」
「私は全然冷静、私の大好きな圭一君との生活を取り戻すために、1%でも勝利の可能性があるほうに向かう。
 レナは絶対運命なんかには屈しないっ!!!」


233 :嘘800(3/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 20:58:25 ID:PVXpGzNh
レナは言い切る。狂気に染まった瞳は少しも矛盾に気づかず、続ける。

「私は絶対に負けない。勝って、勝って、絶対に幸せな日常を完璧に取り戻す。
 オヤシロ様がくれた幸せを絶対に無駄にはしないっ!!!」

レナがこちらに走りこんでくる。僕も迎え撃つべくナイフを構えて走り出す。
勝負は一瞬っ!!!!
僕がナイフを突き立てた地点は空に切られる。読み違えたっ!?
上を見上げれば鉈を振り上げ飛び掛るレナがいた。

グシャリと嫌な音がする。間に合わなかった。
そして・・・お父様に貰った大事な僕の腕はコンバットナイフごともぎ取られ吹き飛ばされていた。

「ゲームセットかな?かな?」

しかし、レナの言葉は実行されなくなった。レナの胸に赤い柱が姿を現していた。
その後ろにはソロモンさんが立っていたからだ。





「バケモノめ・・・ようやく本性を表したな・・・。」

私の後ろには全ての元凶、ソロモン・ゴールドスミスが居た。
ようやく本性を表したな、死ね死ね死んでしまえ。

そうだ、私は正しかったんだ、やっぱりソロモンは私達を騙していた。
圭一君は嘘をついた。仲間同士嘘をつかないと言ったあの誓いは嘘だったんだ。
嘘つきのソロモンは今すぐ死ね。いや今すぐ*す。蒼星石も次元も*す。
もう誰も信じられなくなった。魅ぃちゃんも、沙都子ちゃんも、梨花ちゃんも
みんなみんな悟史くんを救おうと努力しなかった嘘つきどもだ。死ね死ね死んでしまえ。
嘘つきの圭一君も「信じない」死ね死ね、・・・ああ、*したっけ。

もう誰も信じない。この『嘘つき』どもめっ!死ね!死ねッッッ!!!

.
...
.......

レナさんの胸にぽっかりと穴が開き、そのまま倒れ落ちる。
手が槍のような腕となり、シュヴァリエとしての能力を発揮したらしいソロモンさんに僕は駆け寄る。

「ソロモンさん!どうしてこんなことをしたんだ!」
「決めたんですよ、蒼星石・・・」

疑問符を浮かべる僕に向かって槍が突き立てられる。僕は回避すらままならないまま貫かれる。

「残された僕にできること、それは小夜のために僕が犠牲になる。」
「ソロモンさん、なんで・・・」
「僕は小夜のいない世界になんて興味は無い。僕が犠牲になることで小夜が幸せになれるなら、それでいい。」

ソロモンさん、それこそ絶対間違ってるよ。
そう言いたいが体は言うことを聞かない。翠星石、また先に行ってしまってごめんなさい・・・





234 :嘘800(4/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 20:59:42 ID:PVXpGzNh


「蒼星石!!!!!レナ!!!!!!!」

嘘だろ・・・?なあ、誰でもいいから嘘といってくれよ・・・。
必死にレナを追いかけた先にあったのは、決して見たくなかった光景が広がっていた。
ソロモンさんの右腕に貫ぬかれ、宙ぶらりんだった蒼星石は投げ捨てられ、その姿は無残にも原型を止めないバラバラとなった。
その横には血まみれのレナが転がっている。

つまり、つまり・・・

俺はレナたちを救えなかった。そうだ、"また"救えなかったんだ。

・・・いやいやいや、違う違う違うッ!!!!
そうだ、俺もちょうどあんな風に罪を犯していたんだッ!!!!

目の前にある光景がフラッシュバックする。あの時はどうだった。
そうだ、俺がちょうどあんな風に魅音を殺し、レナも殺してしまったんだ。

レナも魅音も俺のことを心配してくれた。だから俺のことを元気付けようとしてたんじゃないか。
だが俺は何をしたッ!!!!ありもしない注射器におびえて、魅音を・・・レナを殺してしまったんだ。
それだけじゃない。俺はやさしく接してくれたがゆえに、気を利かせてくれた厚意を裏切ったッ!!!!
どうして俺はあの時ありもしないものを疑ったんだッ!!!
次々にありもしない記憶が、浮かび上がる。そこからは後悔、・・・そして涙しか生まれなかった。
俺と同じように罪を犯したソロモンさんは、どうしてこんなことをしたんだろう。

「圭一くん、悪いけれど死んでもらいますよ。小夜のためにね。」
「・・・なあ、ソロモンさん。本当にソロモンさんはレナと蒼星石を殺したのか」
「殺しました。」

間違いだと思ってた。ソロモンさんは俺と同じようにただ間違いを犯してしまっただけだと思っていた。
ソロモンは躊躇しなかった。今まで笑いあって、まだ見ぬ仲間を心配していた二人を、殺したと言い切った。
あの時の俺とは違うんだ、ソロモンさんは自分の罪を知りながらなお手を汚そうとしている。
それは、・・・小夜のためだと言う。ソロモンさんが探していたという音無小夜。
・・・俺と同じように誰かの死によって狂い、惨劇を起こした。違いは罪の認識だけだ。

なんで・・・なんで俺はいつもいつも救えないんだ・・・間に合わないんだ・・・
これだけじゃない、俺はもっともっと沢山の間違いを犯して、惨劇を起こしてきた気がする。
笑わせるぜ前原圭一、あれだけ口を大きく開けて惨劇をブチ壊す?どこが?レナさえ救えないで?
レナは俺を救ってくれた、それも二度もだ。
俺のことを信じてきっと元に戻ると信じたあの時。
そして、あの決闘の時、レナは俺のことを最後まで殺さなかった。簡単に殺せたのに・・・
俺は決着がついてないと悪あがきしてたけど、結局あの時レナに負けちまったんだな。ハハハッ・・・

完全な矛盾じゃないか、俺もみんなも唯の人。
つまり奇跡なんて初めから無くて、本当に唯の偶然に浮かれていただけだった。

ソロモンさんは俺を殺すべく間合いを詰める。もう俺はどうでも良かった。
大切な仲間を救えなかった。あの時レナの言うことをもっと真剣に聞いてれば救えた。
また、また俺は救えなかった。そういえば他にも誰か救えなかった気がする。
どうでも良かった。仲間一人信じられない俺みたいな屑なんて死ねばいいと思った。
誰にも告白しなかった俺の罪、乱射事件の罪滅しがこれだっていうならあんまりじゃないか・・・。


そこへ銃声が一発響く。

235 :嘘800(5/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 21:01:06 ID:PVXpGzNh
「ソロモン!やっぱりお前はやっちまったか・・・」
「・・・次元、君に何が分かる。」
「分かる分かる、女だろ女。音無小夜だっけ?」
「そう、僕は小夜のシュヴァリエとしてこの殺し合いに乗ることを決めた。」

俺への刑は執行されることはなく、ソロモンさんと次元さんが向かい合う形になる。
俺は向かい合う二人を避け、レナたちのところへ向かう。

無残に五体はバラバラとなり、人形としての形を失なった蒼星石、そして、憎悪の表情を浮べたレナ。
そう、俺もちょうどこんな風に変わってしまった世界を恨みを吐きながら死んでいったっけ・・・

「レナ・・・俺はどうすればいい・・・。」

俺はレナの死体に抱きつき、周りのことも忘れてただ泣き叫び始めた。
レナを信じることが出来なかった。どうしてレナがあんなことを言ったのか分からなかった。
それこそ些細な問題で、レナが言うことを俺が信じていればよかったんだ。
それこそただの"イフ"、ああすれば良かったと思っても、時は決して戻らない。
レナに泣きじゃくって懺悔を続けた所で、もうこのレナは動かない。決して動かない。





「次元、小夜のために死んでください。」
「いやなこった。」

言うが早くソロモンは人間離れしたスピードで俺に向かって変形した手を突きつける。
三十六計逃げるに如かず、考える前に逃げた方がいい。・・・本当は戦っても良かったんだけどな。
悪いなルパン。今はお前より手のかかる馬鹿でお人よしの坊主が居るから、しばらくそっちに行く予定は無いぜ。

こうして派手に逃げてりゃ小次郎の奴がこっちに気が付くだろ。
小次郎の奴、圭一の周りに居れば俺が出てくると踏んでたらしく結局撒けなかったし、すぐ出てくるだろ。
そんなことを考えながらソロモンの攻撃をかわして闘争した矢先、目の前に小次郎。

「小次郎〜〜〜後ろにやる気満々の兵がいるぜ〜〜」
「おや次元、心変わりした上に兵まで連れてきてくれるとは」
「いや、俺は戦う気はこれっぽっちも無いんだけどな。」

な〜んて小次郎と意思疎通してると思ったら、ソロモンが思いっきり俺に向かって槍を突く。

「僕のことを無視しては困りますね。」
「ふふ、次元。確かにお主の言うとおりの、"兵"だな。」

ソロモンの容赦ない急所への一撃はついに完璧には避け切れず、俺のわき腹を抉り取って行った。
ソロモンを振り切るために腰の馬鹿でかい銃身をソロモンにぶつけ、距離を取る。
そうやって間合いを開いたはいいが、三者拮抗、あいつらは俺を逃そうなんて気はこれっぽっちも無いらしい。
さて、どうやってこの状況を切り抜けるかだな。




236 :嘘800(6/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 21:02:39 ID:PVXpGzNh
少年は独り言を紡ぐ。相手に語るためでなく、自分に言い聞かせるために

「・・・ごめん蒼星石、レナ。俺は絶対にソロモンさんを許せない。敵は必ず討つ」
「・・・俺はもう二度と惨劇を起こさせない。魅音達も、蒼星石の仲間も絶対に助けてやる」
「・・・無敵の主人公様がこれじゃ、レナ達も安心できないもんな。」
「だからもう一度だけでいい、俺を信じて見守っててくれ・・・。」

「「「あの糞野郎は俺様が必ずブチのめすッッ!!!!!!!!」」」

少年は空に吼える。それは仮面の男、悪魔の脚本に対する明確な宣戦布告だった。



【B-4・路上/一日目/日中】


【ソロモン・ゴールドスミス@BLOOD+】
[状態]:健康、深い悲しみ、右腕を変形中
[装備]:レイピア
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、白衣、ハリセン、望遠鏡、ボロボロの拡声器(運用に問題なし)
[思考・状況]
1:目の前の状況に対処
基本:ゲームに乗って優勝し、 小夜を生き返らせる

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:決意、深い悲しみと怒り、覚醒(鬼隠し編の記憶を継承)
  :頭部に裂傷(傷は浅いが、出血が酷い。早急に手当てをしなければ危険なレベル)
[装備]:コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)
[思考・状況]
1:蒼星石とレナの敵を討つ
2:ひぐらしメンバー、蒼星石の知り合いを保護する
基本:ギガゾンビをブチのめして、全てを終わらせる

【次元大介@ルパン三世】
[状態]:疲労、深いショック、わき腹にケガ(激しく動くと大出血の恐れあり)
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:6/7)@ヘルシング ズボンとシャツの間に挟んであります
[道具]:支給品一式(水食料一食分消費)、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)
[思考・状況]
1:目の前の状況への対処
2:ルパンが死んだって?こいつぁ笑えない冗談だぜ
3:前原圭一の保護
4:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す
5:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する
基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない

【佐々木小次郎@Fate/stay night】
[状態]:右臀部に刺し傷(手当て済み)
[装備]:竜殺し@ベルセルク
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:次元大介、後ろの兵と死合う。
2:兵(つわもの)と死合たい。基本的には小者は無視。
3:セイバーが治癒し終わるのを待ち、再戦。それまで違う者を相手にして暇を潰す。
4:竜殺しの所持者を見つけ、戦う。
5:物干し竿を見つける。

※レナ、蒼星石のディパックと装備は死体付近に放置。
※蒼星石のローザミスティカは死体の傍に出現しました。しかし誰かの元へは向かいません。

237 :嘘800(7/7)  ◆qwglOGQwIk :2007/01/24(水) 21:03:33 ID:PVXpGzNh
【蒼星石@ローゼンメイデンシリーズ 死亡】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に 死亡】

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