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シンラクスがないからデス種は糞になった 2

1 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:01:00 ID:???
立ててしまった

2 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:04:15 ID:???
はいはい糞スレ糞スレ

3 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:09:19 ID:SOijUumX
スレ立て乙

4 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:10:14 ID:???
鬼ジュール氏こないと始まらない

5 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:11:31 ID:???
糞スレ決定ww

6 :鬼ジュール(今回も番外編):2006/04/03(月) 13:32:34 ID:???
「あの・・・・俺どうしてこんな所にいるんでしょう?」
「それはシンが今日はわたくしの護衛だからですわ」
「いや、それは分かってるんスけど・・・」
朝一番、まだ眠っている時にシンの部屋の回線に直接通信を入れて来たのは、イザークだった。
自分よりも遅くまで起きていて仕事をしている筈の上官は一体いつ寝て、一体いつ起きて、一体いつから不機嫌なのだろうかと疑問に思う位朝から不機嫌だった。
そのイザークが切れ気味にシンに命じたのはアプリリウスへ戻る事だった。
30分で来いという無茶苦茶な要請にぎりぎり応えられたのは、ヴォルテールの管制やら、デスティニーをちゃんと整備してくれていた整備班の尽力のおかげである。
そして慌ててアプリリウスの最高評議会議長の執務室にやって来ると、更に命じられたのはラクスの護衛であった。
ラクスの護衛はキラの筈で、ラクスの護衛以外の仕事は無い筈である。
しかし、今日の護衛はキラでは駄目なのだと言う。
ザフトのトップシークレットに関係する事なので、ザフトの人間ではないキラには決して見せる事の出来ない場所に行くのだとか。
だったらそれこそイザークがいるではないかと思うのだが、イザークはこれから国防委員会でこの件に関して追求しに行って来ると鼻息を荒くしている。
「この件」というのがシンにはわからなかったが、話の流れからしてラクスがこれから向かう「トップシークレット」に関係する事なのだろう。
ではアスランは・・・と、言うと、アスランは今地球に行っているのだとか。
地球ではまだザフトと連邦で時々小さな諍いがある事は知っていた。
それでも軍備として今回の戦争で地球のザフトには大した影響はなかったので、いつも諌める程度で死者などは最低限らしい。
一刻も早く新たな地球との条約を結ばなくてはならないのだが、プラントからの援助の関係であったり、地球の至る所で起きているこの紛争の為にまだきちんとした条約は結ばれていない。
その為、現場視察としてアスランが地球のザフト基地を回っているのだとか。
そんな大変な状況で自分がわざわざヴォルテールから呼ばれたというのは、イザークから信用されているのだろうかと、ほんの少し得意げになってみたのだが・・・・・。

「今回の議長の視察の結果によっては処分し易いからな。俺の部下の方が」

という無情な一言(おまけにイザークは首を切る仕種までしてみせた)によって少し口論になったというのは言うまでもない。
ラクスが止めなければ取っ組み合いになっていたかもしれない激しい口論の後、イザークは国防委員会に向かい、キラは執務室でシンとラクスを見送った。
その後ラクスは「わたくし、今日は急いでおりましたので朝食がまだですの。シンは食べましたか?」と、尋ねられ、眠っている所を叩き起こされて、
通常であれば確実に1時間はかかる仕事を30分でさせられたシンは、食べていないと答えると一緒に食事を摂る事になった。

こういう護衛の時は、護衛対象者の傍らに立ち警戒するのが常であるのだが・・・・。
「護衛の方がきちんとご飯を食べていないのでは心配ですわ」
と、何故かラクスの方から心配され、一緒のテーブルについて食事をしている。
これがイザークに見つかったら首を切られるどころか、本当に胴体から首を切り離されそうな所だが、そのイザークには絶対に見つかる心配は無いのでシンも遠慮無くラクスと一緒に食事を摂った。
まだまだ育ち盛りな自分が此処で食事をしなければ次いつ食事をする時間があるのかも分からない(ラクスの今日のスケジュールも知らされていない護衛というのはいかがなものかと思うのだが)、
そんな状態でお腹が空いたままだというのは良くない。

第一今は朝の5時前だ。
熱心なラクスの追っ駆けでさえまだ眠っている頃だろう。

夜会などにも出席し、様々な年齢、様々な業界の人間と話す事の多いラクスの話題は豊富で、食事の間中、シンは退屈する事が無く、楽しかった。
(男としてこれでいいのか?とは思い反省したが、シンの手持ちの話題はラクスも知ってそうな事ばかりだったので仕方がなかった)
それからまだ少しザフトに赴くには時間があると、24時間営業の総合ショッピングセンターに行くと言われた時には「議長、それは流石に控えて下さい」とシンも進言したのだが、
ラクスの行動を止める事に慣れていないシン相手では一向に気にした様子もない。


7 :鬼ジュール(今回も番外編):2006/04/03(月) 13:35:35 ID:???
これがキラであり、イザークであればラクスの行動を諌める事にも成功しただろうが
(因みにアスランはラクスの行動を止めようとする機会の最も多い人物ではあるのだが、ラクスの行動を止められた事はない)ラクスの護衛初心者であるシンにラクスの気ままな行動は抑えられず、結局ただ後ろを付いて行く羽目になり・・・。

冒頭の言葉に至る。

今シンが立っているのは女性用の下着売り場のあるフロアで。

見渡す限りレースの下着が並べられている。
ラクスも特に下着が欲しかった訳では無いようなのだが、たまたま到着した所、可愛い一枚を見つけた為に暫く見て回るつもりのようだ。
ラクスは色んな商品が見れて楽しいのかもしれないが、シンにとっては何かの罰ゲームか、拷問のように思える。
何処に目を遣っていいのか分からず、視線を彷徨わせても女性用の下着しかない。
結局どこにも視線を遣らないようにとラクスの背中ばかり見つめているのだが、そのラクスはシンを時々振り返り「この下着可愛いと思いませんか?」と、のんびりと尋ねて来るのだからこれはこれで拷問だった。

頼みますから、服の上とはいえ体に当てて俺に聞くのは止めて下さい。

心の中で溜息を吐きながら顔は真っ赤にしてラクスに「はぁ。まぁ・・」と、曖昧に答える。
下着に体に押し当てて尋ねられると想像し易くて、少し、嫌だ。
いや、嫌という事も無いのだが・・・・、こう、結局は恥ずかしいのだ。

「シンはどういう下着が好きですか?」

それは女が男に聞く質問なんですか!?議長!

と、叫びたくなるのをこれまた堪えて。
以前からラクスの事はマイペースだ、マイペースだとは思っていたが、此処までマイペースにされるとキラやイザークやアスランがどれだけ凄いのかと思えてくる。
(アスランのラクス御し率0%だという事をシンは知らない)

そして、返事を待ってないで下さい議長!

もう頭から湯気が立ちそうだとシンは肩を怒らせると、ラクスの手から何も言わずに下着を取ると、ハンガーに戻し、「議長は何でもお似合いです!」と、叫んでラクスの手を取るとそのまま売り場を後にした。
因みに何の返事にもなっていない。
店を出た後、ラクスが楽しそうに「デートみたいでしたわね」と、ほんわり笑った事に対してシンは心臓の鼓動を高鳴らせ、明日心臓が筋肉痛になるのではないのかと心配になった。

ラクスの行動はシンの心臓に悪い。

「さぁ、シンも覚悟されて下さいな。そして、これから見る物は誰にも言ってはなりませんよ?」

と、同じノリで言われた時には闇雲に怒りたい気分になったのだが、その言葉の内容と、声の音の割に真剣なラクスの瞳にシンは何も言えなかった。


8 :鬼ジュール(今回も番外編):2006/04/03(月) 13:36:44 ID:???



ザフトの最深部。
シンも知らないような裏道をいくつも通り過ぎ、狭い通路の割には厳重にロックされた扉を幾つも越えた所にそれはあった。




「最新機・・・。これは・・・・ガンダム?」




確認するように隣のラクスを見たが、ラクスは何も言わずにその灰色の機体を見上げていた。
睨み付けるように。
イザークがキラには見せられないと言った意味が分かった。
場合によっては自分が処分されるかもしれない機密というのが、あながち冗談では無いようだとも認識した。
シンもまた、「そんな馬鹿な」と、小さく呟き、眉根を吊り上げてきつく拳を作った。
少しどきどきしたデート気分など、一気に払拭されてしまった。


<終>
********************
2スレ目おめでとうございます。>>1さんお疲れ様です。
此処まで来たら自分で立てるべきなのだろうかとも思っていたのですが、それは何でもおこがまし過ぎるかと静観していました。実は。
いや、自分ばかりが書いてなくていいと思うのですが。
2スレ目突入記念にちょっと番外編のつもりで書いてみたのですが、デートよりも最新機の話になったような気がしなくもありません。
最新機が本筋に出てくるのは当分後で、それもパイロットも、名前も考えていません。
設定としてはギルバートの最後の企画機という位置にあります。
それで考えると、本当にアスランに渡すつもりの機体か、それともレジェンドにアスランが乗った時のレイ用の機体というのが一番しっくり来るかと思ってはいるのですが、もうアスランにはインジャがあり、レイにはレジェンドがあるので新たなパイロット募集中の機体です。
こういう機体のネーミングセンスは全く無いので、どなたか考えていただけたら・・・とか頼っちゃいけないのでしょうか。
機体の特徴とかも考えてないのですが・・・。
裏設定のような物で、この機体が本当に動くよう話が書けるかも分からないので番外編という名目のこの話に入れました。


9 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 18:02:29 ID:???
機体の名前…難しいw
まさか新機体がでてくるとは…すごい展開
誰が乗るん?

ラクスは天然だなwシンも焦るわ

10 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 13:56:21 ID:???
保守

11 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 22:19:48 ID:???
機体名称ねぇ。
できれば、どういう機体か決めて貰ったほうが付けやすいかも知れない、と思ったり。
こっから、チラシの裏。
できれば、「ガンダム」の名称は出さないで欲しかったなぁ。
自分の記憶違いでなければ、種死本編では一度も「ガンダム」の名称はでてなかった、と思うので。
別に種がガンダムじゃないとか言いたいわけではなくて、そういう、(本編では)ガンダムを名乗らないガンダムが好きだったんで;


12 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 22:25:41 ID:???
女難スレ行ってください



13 :11:2006/04/04(火) 23:51:37 ID:???
>>12
???
…書き方が悪かったかな?
本編では、インパルス「ガンダム」、デスティニー「ガンダム」とは呼ばれなかった、てところが好き、て言いたかったんたがね;
どうでもいいことだがね。

14 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 01:56:41 ID:???
カガリやスティングがしっかり「ガンダム」と言ってたぞ

15 :鬼ジュール:2006/04/05(水) 16:15:20 ID:???
>>11
えっと・・「ガンダム」というあだ名(?)を最初につけたのはキラで、ラクスもキラにフリーダムを渡した時に「そちらのお名前の方がいいですわね」(うろ覚え)
と言っていたところから名前が出ただけであって、連合の方では伝わったあだ名でも、ザフトの方では「ガンダム」という通称は出回ってないという事でしょうか。
だったら自分のミスです。
読んだ時によくよく考えてそうだったような気がすると思いました。

ただ起動画面を見る限りでは頭文字が「GUNDAM」である事には変わりないので此処には意図的な物を感じるので、キラとは接点はない設計者の間でも「ガンダム」という通称を使っているかもしれませんね。
と、誤魔化してみる。


次の投下は少々お時間下さい。本筋行きます。

16 :11:2006/04/05(水) 18:50:10 ID:???
チラシの裏なのであまり気になさらずにm(_ _)m
以降、期待しております。がんばってください。

17 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 09:25:15 ID:???


18 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 21:45:28 ID:V310/RD1
保守

19 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 20:44:54 ID:Q1M0g7KY
保守

20 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 21:29:00 ID:???
自由正義運命伝説と来たら、レゾルブ?

21 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 09:19:43 ID:???
保守

22 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/09(日) 13:17:31 ID:???
保守

23 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 08:49:03 ID:???
鬼じゅーるさん来ないね

24 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:49:00 ID:???
今日も今からイザークに対する報告書を作らなくちゃならないなぁ、面倒臭いなぁと、思いながらシンがデータ管理室に向かうと、管理室の中から何やら叫び声が聞こえてドアが開き、メイリンが飛び出してきた。

「メイリン!」

部屋の中から彼女を呼び止める声を上げたのはレイで、シンは反射的にメイリンに道を譲るとその背中を見送った。

・・・泣いていた?

一体何が起きたのか分からなかったシンは首を傾げて管理室に入ると、レイが入り口に背を向けて壁際に立っていた。

「・・喧嘩したのか?」
「いや・・・、何でもない。メイリンの分の仕事は俺が代わる」

一度レイは拳を壁に押し当てた後、本当に何も無かったかのように自分の席に腰掛けて端末を開いた。
シンも何があったのか気になる所だが、レイが質問の全てを全身で拒否している。
そこまで頑なに予防線を張られてしまうと今は何も聞かない方がいいのかと思ってしまう。
シンもまたレイに続いて隣の自分の机に座ると端末を開く。

「それで間に合うか分からないだろ?・・・副艦長に応援呼ぶか?」
「今日はヴォルテールも移動したからな。副艦長もいつもより長い報告書になるだろうからそれは無理だろう」
「そっか・・・まぁ、メイリンも泣いてたし・・・、ちょっと落ち着くまで時間が欲しいよな。ディアッカさん呼ぶかなぁ」
「メイリンが・・・?」
「んぁ?・・あぁ。・・・・・気になるなら行ってもいいぞ?いざとなったらシホさんも呼ぶし」

シンの言葉にレイは一度目を伏せたが直ぐにシンに視線を向けて「いや」と、首を振った。

「俺が行ってもまた泣かせてしまうだけだ。俺も落ち着いてから謝りに行くから今は作業を始めよう」

やはりまた喧嘩をしていたのか。
シンにはレイとメイリンが何の確執で喧嘩をしているのか想像もつかなかったが、いつもの無表情を装いながらどこか硬い雰囲気を醸し出すレイに、それ以上を尋ねる事は出来ず、場を誤魔化すようにディアッカに内線を入れた。
訪れたディアッカが場の雰囲気を何となく察したのか、手は休める事無く軽快に色んな話をしてくれたのが有難かった。

メイリンも戻って来た時「ごめんねぇ!ちょっとさぼっちゃった」と、目元を真っ赤にしながらも陽気に笑いながら差し入れの飲み物を配ってくれた。
ディアッカもそれに「気にすんなって」と、軽いノリで応え、一瞬シンはディアッカがその勢いで涙の理由を聞くのではないかとひやりとしたが、結局そんな事も無かった。

ただ、ディアッカもまた決してメイリンを見ようとしないレイを一度だけ目を眇めて見た。





25 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:51:18 ID:???

軍人であるシンには政治の世界はよくわからない。
しかし、上官に当たるイザークと話していると時々政治の話をされる。
軍人でありながら政治とも深く関わらなければならない立場の人間は考える事が沢山あって大変だなぁと、本当に他人事として思うのだが。

大抵が愚痴だ。

こればかりはシンも聞いていて辛い。

『何がプラントは地球の財産だ。いつの時代の話をしてるんだ!?大体マティウス建造の資金はもうユーラシアには支払っただろうが!なのにまだ自分達の所有物のように言って誰が建造費を出したと工面したと思っているのだと恩着せがましくねちねちねちねちと!!!!
だったらヘリオポリス再建造の資金も惜しまず出してみろ!俺が欲しいんだったらそんなまどろっこしい事などせず、真正面から言って来るのが道理だろう!おまけに議長は議長でアスランが帰って来たかと思えばべったり張り付いてゴシップ騒ぎ!あんの腰抜けが!
何を考えてるんだか家に帰っても何も言わないんだからな!』

たんたんたんたん・・・と、爪の先で机を叩くのは耳障りだから止めて欲しいと思うのだが、怒り心頭の時には余り口を挟まない方が自分の睡眠時間が確保出来るものだと最近になってシンは悟った為基本は何も言わない。
おまけに今日はレイとメイリンが喧嘩した事もあり、レイは思い詰めた様子でイザークに言われた修正個所を直している。
今日はメイリンはディアッカが送って行き、その為ディアッカもこの場には居ない。
なんだか思いっきり自分が色んな人間関係の間に挟まれている気がして全体的に場が重苦しくて息苦しい。
早くディアッカが帰って来てこのしつこい上司を宥めてくれないだろうかと切実に思う。

しかし、気になった単語がいくつか出て来たのでつい口を開いてしまう。

「ヘリオポリス、また建造するんですか?どうして」
『まだ発案だけだ。議長が提案をされた。月とはまた別の、完全に軍備の敷かない宇宙コロニーを建造の為に、仮にヘリオポリスと呼んでいるだけだ』
「そんな・・・。そんな事出来る訳ないじゃないですか!それでプラントだけじゃなく、地球からも出資させようだなんて!!」
『プラントとてディセンベル、ヤヌアリウスの回収作業だけで莫大な資金が動いている。それに加えて新しいコロニーの建造資金を用立てる事は難しい。
それも完全中立区にしたいのであれば地球からも出資させるのが道理だろう。完全プラント出資で建造してはいらぬ詮索を受けるかもしれないしな』

イザークは一度爆発すればある程度は冷静になる性質らしい。
シンの方が声をあげる事になったが、それにはイライラとした様子は見せているが、声は落ち着いていた。
シンにはラクスの考えている事がわからなかったが、今回の戦争ではプラントは一度は友好的な姿勢を見せたが、結果一度は落としたレクイエムを利用し、大きく圧力を掛け攻撃した。
確かにプラントでもヤヌアリウス、ディセンベルを破壊され多くの人が死に、未だに行方不明の者も多くいる。
しかし、地球でも同じ位多くの人が亡くなったのだ。
なのに「宇宙に中立コロニーを造りました、どうぞナチュラルの方も宇宙に上がって下さい。コーディネイターも移住しますが仲良くして下さい」と言って簡単に理解出来る物でもない。
コーディネイターだってナチュラルと一緒に住みましょうと呼びかけて応じる人間が何人いる事か。

いくら、互いが攻撃した本人達でなかったとしても。

ラクスが以前もう戦争はしないのだとシンに約束してくれた。
それはシンも信じたいと思っているし、戦争をしない世界を造る為の第一歩として提案したのだろうが、シンにしてみれば時期尚早だ。

おまけに・・・・。

「議長が・・・アスランにべったりというのは・・・その・・・。別にいいんじゃないんですか?婚約者・・・同士なんでしょう?」

自分はレイに聞いてラクスとアスランが婚約は破棄されていると聞かされた。
しかし、目の前のイザークがそれを知らないとは思えないが、なにやら怒っているし、自分がそれを知っているとなると情報源を追求されては困る。


26 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:53:30 ID:???

今、レイは傍目には分かり辛いかもしれないがかなり落ち込んでいる事だし。

色んな方面に気を遣いながらの会話というのはどうにもシンの気性に合わない。
それでも気を遣わなければ人間関係は円滑にならず、自分の睡眠時間も確保出来ず、怒られ損になるかもしれないと思うとこれも仕方なく。
すると、イザークもそのシンのぎこちなさに我に返ったのか大きく咳払いをする。

『まぁな!婚約者同士仲の良い事は結構なんだが・・・。それでもこの重要な時期に余計なネタを提供する必要もあるまい!』
「まぁまぁ。イザークも色んな所から見合い話が来てる事だし、たまには一緒に堂々とデートでもしなくちゃ不仲を噂されて見合い話が来ても困るって思ってるんじゃないのか?まぁアスランにもさ、あんまり変な事聞くなよ?一晩何回?とかさ」
『俺がそんな事聞くか!貴様じゃあるまいし!!!』

戻って来たディアッカの軽口にイザークが眉を吊り上げ、机を拳で殴った為画面が揺れた。
シンはほっと息を吐き、つられて苦笑する。
イザークがアスランに下世話な質問をしている所などとてもじゃないが想像出来ない。
ディアッカがシンの隣までやって来て背中を軽く叩いて来た時には安堵すらした。

「とにかく、議長とアスランの事はあんまり過ぎるようだったらお前が手綱を引けばいいだけの話だろ?それよりも自分の心配しろよな。見合い話、まだ正式に決定にもなってなければ取り消しにもなってないんだろ?」
『あー。それは・・・・何故か母上が戦ってくれていてそろそろ決着がつきそうだ。地球側としても母上の研究している造船技術は魅力的らしい』

自分の力ではなく親の力でどうにかして貰っているというのがイザークにとっては屈辱的らしい。
僅かに目を逸らして唇を噛み、重々しく吐き出す言葉は力弱い。
そしてどのような交渉でエザリアが有利になっているのかは・・・、その口調からすると貴重なプラントの造船技術の一つや二つ地球に渡すつもりでもあるのかもしれない。
取り敢えずイザークがカガリと見合いをするという話は白紙に戻るようだとシンも推測すると心のどこかでほっとする。

やはり、知り合いがアスハと繋がりを持つのは嫌だ。

すると後ろで作業していたレイが椅子を返して立ち上がると「隊長、修正完了致しました」と敬礼する。
イザークはその言葉に一つ頷くと、いつもの調子に戻って「直ぐに送れ」と、言葉を続ける。
そしてデータを受け取るとそれに目を通し、「これで受諾する」と、形式通りの言葉を伝えるといつもであれば通信が終了するのだが、今日はイザークはシンとレイに視線を向けた。

『二人とも明日から二日間休暇だったな。祝い事はめでたいが、羽目を外すなよ』
「はーい」
『因みに議長の手料理でお勧めなのはパエリアとデザートだな。食いはぐなよ』
「は・・・、はぁ」

楽しげににっと笑みを見せて通信を切ったイザークに、まさかそのような助言が来るとは思っていなかったシンは呆気に取られ、思わずレイを振り返り、顔を見合わせてしまった。

一応イザークにも茶目っ気のような物があるのだろうか?疑問だ。

しかし、明後日にはメイリンの誕生日会が行われるのだと思うと、シンは思わず頭を抱えた。
誕生日プレゼントがまだ決定していない。

「女の子へのプレゼントって何がいいんでしょうかね?」

思わず今日のディアッカの頼りになる姿を見た為、ついでに助けを求めるように尋ねてみる。
ディアッカはシンの困惑した声に豪快に笑ってみせると、にっこり笑って親指を立てて振り返った。


27 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:54:34 ID:???


「メイリンだったら白いレースのたっぷりついた下着かな」
「それはセクハラです」

心底楽しそうなディアッカに、レイが片付けをしながら突っ込んだ。

シンの中の「頼りになる先輩像」が音を立てて崩れた瞬間でもあった。





イザークが片付けをしていると、執務室の扉が開きキラが入って来た。
今日もラクスとアスランはデートに出ている為キラは暇なのだろう。
てっきり帰ったものだと思っていたイザークは嫌味に肩を竦めた。

「宿題でも忘れたか?」
「ううん。ちょっと眠れなくて」
「まだ議長は家にお戻りではないのか?」
「・・・さぁ。家には帰ってないから分からないけど。・・・・ストライクフリーダムの調整をしてたんだ」

キラはどこか気落ちした様子が見えるが、それに対して優しい言葉を掛ける理由もない。
また一人何か企んでいるのかと気にせずイザークは片付けを済ませると、「なら俺は先に帰るぞ」と、声を掛ける。
最近は最後に執務室を出るのがイザークだったので明かりの事は任せたという意味を含んでいたのだが、それにキラが気付いたのかどうかは不明だ。

「あのさ」

扉を開いたイザークの背にキラが声を掛けた。





「ストライクフリーダム・・・・・・。イザークに返すよ」





その思い詰めた表情に、イザークは顎を上げ、鼻で笑ってみせた。



<続>

28 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:55:30 ID:???
**************************
やっとメイリンの誕生日に入れます。
種運命の小説最終巻だけ、資料のつもりで買ってみたんですが、停戦が7月になっていたので、その時点でこの話間違っている事が判明。
そして、テレビではディセンベルエイトに突っ込んだのはヤヌアリウスフォーとは言っていなかったのですが、小説では書かれてあったのでこれは同じようでほっとしました。
ラクスはプラントに帰ったとは書いてあったのですが、政治の世界とは関わりのない感じで終わっていたので、それもまた違うという・・・。
まぁ、比べて違いを比較していたらキリがない上に、間違いだらけなので「まぁ。鬼ジュールの妄想だから」という一言で片付ける事に。
そして、このスレでのもう一人の主人公である筈のラクスがまた裏で動いています。
シンはいつもそれを聞いてばかりです。
この関係をいずれ変えたいと思っているのですが・・・・ラクスの傍にいるシンよりも、宇宙で駆け回っている方がシンには似合うような気もします。
ヘリオポリスは壊れた後、地球とプラント、どちらがいつ回収したのだろうかとふと思ったのですが、これは考えない事にしました。
2年の間になんとかしたのだと思います。
キラもイザークにストライクフリーダムを返すという言い方をしていますが、ストライクフリーダムはキラの機体として造られたものなので、フリーダムとは違う筈なのですが、それでもキラの気持ちとしては「返す」がぴったりなのでしょう。
イザークは鼻で笑ってましたが。

新しい機体の事を最近考えていたのですが、インパルスのような換装式MSが新しいデスティニーやレジェンドにどうして引き継がれなかったのか、というのが気になっていまして。
核を搭載した時に不都合があったりするんでしょうか。
どうせ換装式にして、小説の中で考えるだけだったら換装式トランス●ォー●ー型変形可能ガンダムとか夢見てみたのですが・・。
夢見ただけです。
ひんしゅく買うだけだと思ってやめました。
>>20
ありがとうございます。
そしてスミマセン。無知を晒しますが、「レゾルブ」とはどういう意味でしょうか?


29 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 23:22:42 ID:9uFn79Uq
GJ!

30 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 09:35:19 ID:???
面白かったです
本編も設定あるようでないみたいなもんだったし
気にしなくていいと思う

31 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 13:07:34 ID:???
ほしゅ

32 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 19:40:21 ID:U7mh3TQF
保守

33 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 00:16:35 ID:???
ドトハクのヒーローヒロインがこの二人に見える

34 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/15(土) 19:31:03 ID:???
保守

35 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 14:44:35 ID:???
保守

36 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 17:16:12 ID:???
あげ

37 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:02:26 ID:???

メイリンの誕生日を明日へと控えた休暇初日、パイロットスーツに着替えたシンはデスティニーでアプリリウスに戻るよう要請があった為それに従い格納庫に向かう。
同じく今日から休暇組であるルナマリアとレイもまた自分の機体で戻るように要請されている。
整備や調整はこのヴォルテールで完璧に対応して貰っているが、稼動データと各部位の調整記録と共に今後の研究の為のデータを取りたいのだと、アプリリウスの技術者達が申し出たらしい。
何かの欠陥が新たに見つかる可能性もあるので見て貰っておけという隊長命令もあり、シンには異論もなかった。
それにシャトルでじっとしているよりも自分で操縦した方が楽しい。
そうして格納庫に向かうと、朝一番だというのにインフィニットジャスティスと、そのパイロットであるアスランの姿が目に入る。
3週間近くしか会っていなかっただけなのだが、なんだか懐かしい気すらするのだから不思議だ。
相変わらず生真面目な顔で隣のディアッカとモニターボードでヤヌアリウス、ディセンベルの様子を確認して打ち合わせをしている。

「おはよーございます」
「あぁ、シンか。おはよう。どうだ?指揮官として動くのは」
「正直面倒っスね。隊長はデータの鬼だし。ちょっとでも仕事が進んでなかったら煩いし、指揮官って言っても好きなようにやらせて貰ってる訳じゃないし」
「おーおー、一丁前に言ってくれちゃってぇ。じゃあ今度俺からイザークに言ってみようかな。ちょっとはシンに任せてみろって」
「仕方ないさ。イザークはこの作業に掛かる費用がどれだけ掛かってるのか毎日のように報告されて叩かれてるからな。プラント全体の財政を考えると一刻も早く終わらせたいんだろ」

まるで新たなイベントを見つけたようなディアッカの含み笑いに、アスランも困ったように眉を寄せて溜息を吐く。
必要な事には幾らだって資金が掛かりそうな計画を立てるイザークだが、抑えられる所はきっちり抑えたいらしい。
そういう姿勢を見せる事でいざという時に話を優位に持って行こうと考えいるのだろう。
ザフトの権威を損なわない為の要求なのだからちょっとは我慢してくれというアスランに、シンは思わず「この作業に毎日どれ位の費用が掛かってるんですか?」と、聞いてしまう。
その質問にアスランは一瞬言い難そうな顔を見せる。
余程言いたく無いのだろう。
こればかりはディアッカも知らないのか、興味津々とばかりにアスランの言葉を待っているので誰もこの話を終わらせようとする者がいない。

仕方なく溜息を吐くと、「詳しい数字は俺も知らないからな?」と、前置きをして言葉を続けた。

「一基につき、一日で億単位の金が動いているのは確かだな。プラントの外の活動についてはまた別に掛かってるみたいだから総額にしたら気が遠くなるような資金が動いている事になるな。
これを聞いても自分の好きなように仕事させてくれ、責任は取りますって言うのなら俺からもイザークに進言してもいいぞ?」
「いや。いいです。今のままで」

そりゃイザークも神経質になる筈だと、シンはこの話題から逃げるように顔を背け、ディアッカも肩を竦めた。
「まぁ、今日から休暇なんだ。今の話は忘れて楽しんで来い」
アスランが誤魔化して笑うと、シンもつられて苦笑する。
「メイリン位の年頃の女の子だったらセントラルストリートの下着がいいと・・」
「そのネタはもういいですから、ディアッカさん」
「シン。明日は彼女も参加する事になっているから、シンも少しは気に掛けてやってくれないか?」
生真面目な顔で話題を引っ張るディアッカに苦笑混じりで突っ込むと、アスランがシンに向き直る。
聞いた瞬間は「彼女?」と、疑問に思ったものだったが、その「彼女」に当たる女性の名前を思い出してシンはアスランを睨み付ける。

「いいんですか?婚約者がいるのにそんな事言って」
「月で眠っていた歌姫を迎えに行ったのに、帰って来たらプラントの歌姫に捕まりましたとさ」
「ディアッカ。ラクスはそんな・・」
「じゃあ月に行ったのがそもそも浮気旅行だったとか?」

容赦の無いディアッカの言葉にアスランは苦しげに顔を顰めるが、シンも言われて当然だと思うのでじっとアスランを見つめている。
アスランは心底困った様子を見せたが、重々しく口を開いた。


38 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:03:37 ID:???

「彼女には、ラクスと俺から話をしている。一応彼女も了承してくれている。心の中ではどう思っているのか知らないが、今は彼女の善意に甘えるしかないんだ。ラクスも、俺も」
「イザークみたいに見合話がわんさか押し寄せて来ても困るしな」
「俺とラクスにはエザリア様のような100%信頼を寄せる後ろ盾はないからな。面倒な話は出来れば事前に防ぎたい」
「ただ自分達が楽をしたかったって事ですね」

シンの止めの一言にアスランは俯く。
しかし、それもすぐに顔を上げると「そうだ」と、何かを決意して重く口を開いた。

「俺達には時間がない。その中で利用出来るものは全部利用しようとラクスと決めたんだ。それが彼女を守る事にもなる」
「・・・次から次に自分に見合い話が来て色々不安にさせるより、二人で彼女を説得してそれ以上の噂は立たないように安心させようと?まぁ、一々アフターケアするよりそっちの方が楽だわな。・・・はぁ〜。なんだかお前等つくづく苦労性なんだな。お似合いだぜ?ある意味」
「それ以外の事ではなるべく心配は掛けたくない。だからシン。明日は少し話相手にでもなってやってくれないか?好奇心旺盛で我侭な所もあるけど、良い子だから」

月の彼女の事を思い出しているのか、シンに向けるアスランの視線が凄く優しい。
物凄い惚気を聞かされた気分だが、それは恐らく間違いではないだろう。
本当なら此処でディアッカと共に接触点での活動についてもう少し話をしようかと思っていたのだが、そんな気も失せた。
ディアッカにそこは任せていれば大丈夫だろう。
あれだけアスランにずけずけと痛い所を突けるのなら。

「じゃ、俺もうアプリリウスに向かうんで」
「気を付けて行けよ。スピード出し過ぎるなよ」
「へーい」

床を蹴ってデスティニーに向かうと、後ろで「どうしてディアッカがミーアの事知ってるんだ?」「お前がイザークのストレス溜めるような事すれば自然とこっちに話が回って来るっての」と、いう会話が聞こえたが、シンはもう振り返らなかった。


「おはよー。シン」
「おはよ。・・・・・あれ?ヴィーノ。お前そろそろシャトル乗らなきゃならないんじゃないのか?」

デスティニーの整備をしていたヴィーノもシンと同じく今日から休暇の筈である。
なのに作業服を来ていつものように仕事をしているのだからシンは軽く目を見開く。

「へっへっへ。シンにデスティニーに乗せて貰おうかと思ってさ」
「はぁ!?」
「アプリリウスまでなんだし、いいだろ?」
「駄目に決まってるだろ!点呼だってあるんだし、さっさと着替えてシャトルに乗れよ。それとも午後からのにするのか?」
「ちぇー。レイがメイリン引っ張って行ったからOKかなぁ?って思ったのに。やっぱ駄目か」

コックピットに座り、シートベルトを締めて機体のチェックを入れているシンをハッチの外から覗き込むヴィーノが言葉を続ける。
「それでもデスティニーの整備は俺がやってやんないとな。アプリリウスの整備なんかに負けてらんないっての」
「・・・ちょ・・・。レイが?レイがどうしたって?」
「レジェンドにメイリン乗せてアプリリウスに帰ったんだよ。ルナマリアが相当切れてたけど」
「そりゃ切れるだろ!規定違反なんだし!」
思わず立ち上がろうとして、シートベルトが胸を圧迫する。
立ち上がれずもう一度シートに座ると、シートベルトを解除してヴィーノに掴み掛かる。


39 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:04:51 ID:???

「当然メイリンは宇宙服着てるんだよなぁ!?」
「それは当然。でなけりゃ俺だって止めてるよ」
「メイリンが納得してレジェンドに乗ったのか?」
「さぁ・・・。もうがっちりと背中から抱え込んでてたし。ただルナマリアが後ろから叫んでたけど」

襟が締まって苦しいとヴィーノを掴むシンの手を必死に叩いて「ギブギブ・・」と、訴えるのだがシンは気付かない。
「最近レイとメイリン喧嘩したみたいなんだ。それでまた何かあったとか!?」
「知らないよぉ!レイも恋愛下手みたいだし、ちょっと強引になっちゃってるのかなぁとか思うけど!」
「そんな恋愛って・・・・。・・・は!?何だよそれ!」
更に掴んだの襟を振り回し、ヴィーノは喉を逸らせて気管だけは確保する。
どうして自分がこんな目に合わなくてはならないのかと内心で恨み言を呟きながら、とにかく手を放して貰おうと言葉を続ける。

「気付いてなかったのか?あんなに一緒にいるのに。・・・・レイは、メイリンが好きなんだよ。多分」

聞いた瞬間シンはぱっと手を放した。
ヴィーノはげほげほと咳込み、涙目になってシンを見た。

「何で!?」
「知らないよ、そればかりは。でもレイはメイリンに会う為にザフトに戻って来たんだと思う」
「何で!?」
「他に好きな子に会う口実が無かったら、会えるようにするもんだろ、やっぱ」
「何で!?」
「何が!」

何が「何で」なのかと尋ねられるとシンにもよく分からない。
なんだか最近自分の周りの話題が愛だの恋だのばかりでうんざりしそうなのだが、それも戦争がないからこそだと思えば納得もして。
そういうのは得意じゃないと自覚のあるシンは「何で何も相談してくれなかったんだ」という思いがある一方、相談された所で自分に何が出来るだろうかと思い悩む。
何も出来る筈が無い。
自分だって満足な恋愛経験は無いのだから。

「ラクスを好きになって欲しいな」

と、シンに微笑んだキラの事を思い出す。あれだって結局はシンには理解出来ない言動で。
好きになるとはどういう事なのかと思うと3日徹夜した所で答えは明確に出ないように思う。
ごちゃごちゃ煩いとシンが髪をがしがしと掻くと、うんざりと溜息を吐いた。

「とにかくアプリリウスに行ってみる。・・・・恋ってしなくたって生きていけると思うんだけどな」
「でもすれば楽しいもんだよ。レイはちょっと茨道進んでるけど、その内いい思い出になると思うし」
「・・・レイが振られる・・・って?」
「それは俺にも分からないよ。メイリン次第だろ」

振られるレイなんて想像出来ないけどと、笑うヴィーノの頭を軽く叩いて「もう出る」と、コックピットに戻る。

40 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:06:33 ID:???

シートベルトをしてハッチを閉じるとデスティニーを起動させる。
目の前のモニターに明かりが灯り、微弱な起動音が至る所から聞こえてデスティニーの目覚めを感じる。
管制に連絡すると、警告音と共にCICの発進シークエンスが格納庫中に響き渡る。
コックピット内でがたがたと揺れる振動に身を任せ、自分が動かしている訳ではないのにどんどん変わる景色をじっと見つめているのは僅かな緊張と高揚感を呼び起こす。
がたんっとカタパルトが固定されたと同時にスピーカーから『デスティニー、発進、どうぞ』と、声が掛かる。

真上のボタンを幾つか切り替えグリップを強く握る。

「シン・アスカ!デスティニー。行きます!」

グリップを前に押し出すと同時にペダルを踏み込む。
バーニアの噴出と共に掛かるGにくっと喉を締めると星が輝く宇宙に飛び出した。





朝の早くからホテルに押し込められる事になったメイリンは戸惑いを隠し切れず、自分を此処まで連れて来たレイを振り返った。
「あの・・・今日昼からママと買い物に行く約束をしてるの」
「じゃあ昼までに送る」
今からじゃ駄目なのだろうかと言い掛けたが今日までレイを避けて来たという現実にそれは無理だろうと思い至る。
メイリンはレイが怒る理由が分かっていた。
しかしそれに対して自分がどう説明すればレイが納得してくれるのかが分からなかったのだ。
レイは何度もメイリンに尋ねる。

恨んでいるんじゃないのか。
怒っているんじゃないのか。
何か言いたい事があるんじゃないのか。

その一つ一つに「恨んでない」「怒ってない」「レイが生きていて良かった」と答えるのだが、レイが、レイ自身がその返事に納得してくれない。
「怒って欲しいの?」と聞けば「そうじゃない」と、首を振る。
メイリン自身自分の中にある真実を語っているのだが、レイがそのメイリンの真実を信じてくれない。
これではどうすればいいのかと悩むのだが、メイリン自身には答えが見つけられない。
結局は二人で話し合うしかないのだろう。
レイもメイリンも自分の考えにばかり夢中になって何も話が進まなかったから。

「じゃあ、座っていい?・・・話そう?ちゃんと」
「あぁ」


41 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:08:30 ID:???

ソファに腰掛け、レイもその対面に腰掛けるとレイは窓の外を見た。
改めて話すとなると何処から話し出せばいいのかいつも悩むのはレイもメイリンも同じなのだろう。
メイリンもまた間が持たなくてレイと同じように窓の外を見た。
プラントは今日も晴れている。
まだ早朝なのでその日差しは強くないが、それも時間の問題だろう。
明日も晴れると決められていて、自分の誕生日が清々しい気分で迎えられるのかと思うと嬉しい。
何か世間話からした方がいいだろうかとメイリンがレイに向き直った時、彼は何時の間にかメイリンをじっと見ていた。
その真剣な瞳にメイリンは胸が締め付けられる。
頬にさっと朱が走り、思わず姿勢を正す。

「メイリン」
「な、何?」

思わず上擦った声にメイリンは肩を竦めた。
少し格好悪い自分の姿に恥ずかしくなる。
しかしレイはそんな事は気になっていないのか特に表情も変えずにじっとメイリンを見つめ、再び口を開いた。


「俺はメイリンが好きだ。・・・しかし、俺の体には重大な欠陥があって他人と同じような生き方が出来そうにない。・・・それでもずっと一緒に居て欲しい。そう、言ったらどうする?」


聞かされた言葉のどれにも現実味がなくて、何かの例え話か何かなのだろうかとメイリンは反応に困る。
しかし、頭で何かの結論が出るよりも先に胸を詰まらせメイリンは顔を歪めた。

涙が零れる。そう、思った。


<続>
*******************
お久しぶりです、こんにちは。
最近執筆速度が落ちましてスミマセン。
様々な要因があって執筆時間が少なくなってきているのですが、それでも投下はきちんと続けて行きます。
本当に本当にようやく誕生日前日になってくれました。
シンの代理としてアスランが到着しました。
アスランが居た時には接触点での作業は無かったのでこれに関してはシンの方が威張れる所だったのですが、一日の作業に掛かる資金に一気に怖気付いて逃げてしまいました。
そして直接自分は関係ないのに他人の恋愛話が気になるのは年頃の男なら当然の反応かと。
それに対してまだ自分が恋をしたいという願望は持てないのはまだ恋をした事がないからとしました。
次回レイメイを入れようかとも思ったのですが、此処で切って後は皆様のご想像の中でとした方がいいのかもしれないと考え中です。
前回のキラとイザークも中途半端な所で切って放置しているところといい、何かと放置が続いていますが、次回か、その次かでキラとイザークの会話については明かします。
その頃にはシンラクっぽくなればとも思っているのですが、これも計算が上手くいくかまだ見通しは立っていません。
レイメイに関しては・・・・次回入れるか、それとも当分放置にするか・・・・・。
次を書きながら考えます。

個人的にデスティニーの発進の所は書いてて楽しかったです。
あのシーン全く書く必要なかったのですが、どうしても、こればかりは趣味です。
メカ詳しくないので間違っていた所があったら見逃して下さい。

42 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 19:41:15 ID:???
>>37-41 GJ
誕生日楽しみにしてます。
アスランとラクスの虫よけを揶揄するシーンが面白かったです。
発進時の掛け声「xx 出るぞ!」「yy 行きます!」って作中であんまり変わりませんよね。
逆襲のシャアで年取ったアムロは何て言ってたかなあ。
シンも「シン・アスカ zz 出る!」とかベテランパイロット風に言う日はくるのかなあ。


43 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 00:22:55 ID:???
鬼ジュールさん、キララクSSも書きにきてよ

44 :鬼ジュール(本筋とはまったく関係のないパラレルな話):2006/04/19(水) 11:03:24 ID:???

「シンは恋をした瞬間とは覚えていますか?」
「は?」

突然のラクスの言葉にシンは硬直した。
今日はクライン邸にラクスの護衛として迎えに来た筈だったのだが、何故か「ちょっとお茶して行きませんか?」と、言われて庭にまで連れて行かれた。
そこにはラクスを先に迎えに来たらしいアスランとイザークとキラの姿があり、皆此処で捕まったんだろうなぁと思うと少し気の毒になった。
自分も含めて。
そこでラクスにハーブティを振舞われたのだが、ハーブティなど殆ど飲んだ事の無いシンは、その奇妙な苦味に顔を顰めた。
「かもみーる」とかいう名前のハーブらしかったが、効能があるのかすら疑問で、取り敢えず一緒に出されたクッキーで口直しをする。
と、そこで尋ねられたのが冒頭の言葉だ。
恋と言われてもイマイチ理解出来ない。

「さぁ・・・。そういうのはまだ・・」
「まぁ♪まだですの?」
「はい」

シンが答えた瞬間イザークとアスランの溜息が聞こえた。
イザークはそれまで飲んでいたティーカップをソーサーに置くと腕を組み、足を組んでプラントの湖をじっと見る。
アスランもまたティーカップをソーサーに置くと身を乗り出して「ラクス」と、小さく咎める声を発した。
アスランの声に「いいではありませんか、実験ですわ」と、くすくす笑いながらラクスが反論した時には一体何が始まるのかとぎょっと目を見開く。

「あの!?」
「はい」

ラクスはシンに向き直ってテーブルの上に置いていた手を取った。
突然手を握られた事に疑問に思って「あの・・」と、もう一度声を掛けると、やはりラクスは「はい」と、答える。

いや、「はい」じゃなく。

と、シンが心の中で突っ込んでみると、じっとシンの様子を見ていたラクスが今度はシンの手を取っていた指を絡めて来た。

「あの!?」
「はい♪」

楽しそうですけど、一体何が起きてるのかさっぱりなんですけど。

と、やはりシンは思うのだが、ラクスはにこにこと笑っている。
何が此処で起きているのかとラクスに聞いても埒があきそうにないのでアスランに視線を向けるがアスランは溜息を吐きながら首を左右に振った。
「諦めろ」という事であろうか。
何を諦めるんだ?と、結局何の解決にもならず、ただ疑問がまた一つ増えただけだとシンは首を傾げるとラクスが立ち上がった。
それを目で追いかけてラクスを見上げると、ラクスはシンを見下ろして微笑んだ。
プラントの歌姫の微笑みである。
当然それが自分に向けられているものだと思うと少し恥ずかしくて、照れ臭い。
思わず目を逸らすと、その瞬間、繋がれていた手が離れ、ラクスの手がシンの背後に回った。

45 :鬼ジュール(本筋とはまったく関係のないパラレルな話):2006/04/19(水) 11:04:26 ID:???

抱き締められてる!?

そう、気付いた時には視界がピンク色になっていた。
それがラクスの髪を通して物を見ているからだと冷静に判断した後、どうしてこんな事になっているのだろうかと硬直した。

動けない。

イザークの溜息がまた盛大に聞こえた。
そうだ。此処には二人きりという訳ではなく、周りに人がいるのだと思うとシンは慌てて声を発した。

「あの!?」
「はい♪」

先程からシンとラクスの会話が同じである事にシンは気付いているのか。
いや、気付いていたとしてもそれ以外の言葉が思い当たらず、結局はラクスの考えを求めているのだが、ラクスはそれに対して何も明確な返答はしていない。
自分から触れてもいいのだろうかと肩をトントンと、指で突付くが腕は放してくれそうにない。
此処で自分が抱き締め返しても何の解決にもならなければ上司やら先輩やらに怒鳴られそうである。
何をすればいいんだ?と、必死に考えていると、ラクスの手がシンの肩に移動した。
そしてラクスが体を少し離すとシンを見る。
僅かに潤んだ瞳にシンもまたどきりと頬を染める。
破天荒なお姫様だが、黙っていれば可愛い。
いや、可愛いなどという言葉では表現出来ないような綺麗な人で。
じっと見つめられると恥ずかしくて胸が高鳴る。

しかし夢見心地になったのも束の間、ラクスの瞳がゆっくりと閉じられた。
その反応に「まさか!」と、大きく見開き、心臓が胸を痛いほど打つ。
ラクスの長い睫が震え、近付いて来る顔から目を離す事が出来ず、石になったように瞬き一つ出来ないでいた。
くっとラクスの顎が上がり本当にキスされるかも!と、思った瞬間、ぎゅっとシンは目を閉じたのだが、その柔らかそうな彼女の唇がシンに触れる事は無かった。

恐る恐る目を開けるとラクスの口には手が置かれていて。
その手の主を辿ると苦笑したキラだった。
ラクスもぱっちりと目を開けるとキラを見上げる。

「もう少しでしたのに」
「駄目だよラクス、そこまで。これ以上やっちゃうと只の痴女だよ」
「イザークの時にはほっぺにキスするまででしたら許して下さったではありませんか」
「あの時は僕も初めて見たし。まさか色んな人にそんな事してるなんて知らなかったんだから」
「まぁ、今回も頬にするつもりでしたのよ?」

ここら辺。と、限りなく唇に近い頬を指すと、「それでも駄目だよ、シンが驚いてるんだから」と、キラは苦笑する。

「悪いな。ラクスの変な実験なんだ。親しい人間には一度はする儀式みたいなもんだ」
「カガリの時は大変だったよね。止めないとラクスったら押し倒すんだもん」
「あれはカガリも嫌がってなかったのが原因なんだが」


46 :鬼ジュール(本筋とはまったく関係のないパラレルな話):2006/04/19(水) 11:05:17 ID:???

シンもごめんね?早くに止めなくて。

と、キラがにっこりと微笑むとシンは耳まで真っ赤に染めて両手でぶるぶると震える程に拳を作る。
そして徐に立ち上がると。


「純(と書いてピュアと読む)な青少年の心を弄ぶな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


クライン邸の庭を全力疾走で走り抜きながらシンは大声で叫んでいった。
その大声にラクスはきょとんと、シンを見送り、他の一同に目を向ける。

「これはわたくし、今日はお仕事に行かなくてもいいという事でしょうか?」
「戻ってくればいいけど」
「戻って来なくとも我々がいますから、仕事はして貰います」
「でもシンの反応は可愛かったですわ。今度は食べてしまってもいいでしょうか?」
『それは駄目』

本人の意思も無視して食べるのは、そりゃ痴女も通り越して強姦です。

と、議長に犯罪者になって貰っては困る面々は、厳しい表情でラクスを見た。
それに対してラクスは「残念ですわ」と、小さく感想を零した。



<終>
********************
真面目な話を最近書いているので、またシンラクでちょっと軽い話が書きたくてこんなのを。
もし時代背景やら何も関係なかったらこんな感じでラクスの方がシンにちょっかいを出して欲しいかなと。
キラ、アスラン、イザークという面々は出さなければ出さないで良かったのですが、ラクスのストッパーを一人に選ぶ事が出来なくて結局意味も無く全員出しました。
欲望丸出しの天然ラクスは書いていて楽しかったです。
そして今回プラントの湖と書きましたが、海ではないですよね?と、思ったり。
わざわざ海水にする事もないだろうと思い、水だとすると湖なのか?と、推測してみたのですが、他の表現がどこかでされているんでしょうか。

>>42
ありがとうございます。
アスランとラクスにはコネはあるが後ろ盾は無い状態なので自分の身は自分で守らなくてはならなくて、「いい話を持ってきました」と、余り仲の良くない人との接触から何を仕掛けられるかわからないのでとにかく婚約者同士として協力体制を取ろうという事になっています。
ミーアには可哀想な感じですが、アスランがフリーだと知れて満足に動けないミーアに何か仕掛けられては、地球に向かう事の多いアスランにとってはそっちの方が怖いのです。
ミーアの好意を知りながらそれを裏切る事でしか彼女を守れないアスランにとっては、当分また色んな苦労をしてしまうのだと思います。
シンの発進時の掛け声は・・・もうちょっとヴォルテールでも地位を確立出来たら変わるかもしれませんが、シホやらディアッカやらと、ベテラン勢がいる限り早々変わりそうにないですよね。
>>43
読みようによってはこの話も少しはキララクかと。どうでしょう。


47 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 01:00:00 ID:???
信楽ええわ

48 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 10:10:50 ID:???
保守

49 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 02:02:45 ID:wQbBFt8z
保守

50 :鬼ジュール:2006/04/22(土) 19:38:24 ID:???

―― アプリリウス

無事到着したシンは、アプリリウスの整備班の説明によりこれから明日の21時まである研究機関に引き渡す手順になっていると聞かされる。
ザフトには様々な研究機関が関わっている為、それが何処だで、何の研究をしているのかは正直シン自身にはどうでもいい事だった。
その為聞いた傍から何処の研究機関が何を調べたいのかというのは忘れてしまって隣のレジェンドを見上げる。

「あの、レイは?」
「もう確認を終えて休暇に入られました」
「メイリン・・・女の子も一緒だったと思うんだけど」
「えっと、そこまでは・・・」

デスティニーとレジェンド。この最先端技術を使って造られた二機を同時に担当する者など、人員の多いアプリリウスでは考えられないのだろう。
ヴォルテールでは大抵どの機体の事も整備班は把握しておくように徹底されている。
その為どの機体の事を聞くにしても誰に聞こうと同じ情報が手に入っていた訳なのだが、流石アプリリウスは保管機体数がヴォルテールの何倍にもなる為全てを管理する事は難しいのだろう。
ヴォルテールやミネルバの感覚で尋ねても仕方ないと「分かった」と、シンは着替えるべくその場を立ち去った。

ざっと周囲を見渡してレイとメイリンの姿は見えない。
ならばもう市街に出たのだろうとシンも着替える事にした。
本当にレイがメイリンの事が好きなのか分からない。
しかし、心配するような事は無いように思う。
特に親切という訳でもないが、女の子に優しいレイが無茶な事をするとも思えない。


「あれ、早いね」

と、この時自分に向けて声が聞こえた気がしてシンは立ち止まった。
広い格納庫の中、様々なMSが搬送され、その接続音や警告音、整備班の怒号が響き、五月蝿いとも思える中、確かにその声はシンを呼んでいた。
メイリンの誕生日プレゼントを買いに行かなくてはならないので出来ればさっさと町に出たかったのだが、声を掛けられたと気付いてしまってはそれを無視する事も出来ない。
声の主を探すと、ぱっと見てそれが誰なのかシンには直ぐにはわからなかった。
しかし、確かに知り合いだとシンは目を凝らして見て・・・・・・。

キラだ。と、気付いた。

どうして彼だと直ぐに気付かなかったのかというと、その格好だ。
飾りベルトの多い私服の姿は何度も見た事があったが、ザフトの整備兵と同じつなぎを着ている姿はどうにもキラだと思えなかったのだ。

「キラ・・さん?」

戸惑ったシンの声に漸く自分の姿に気付いたキラは、格好を見下ろして「ははは、似合わない?」と、笑う。
別に作業着なのだから似合う似合わないはどうでもいいとシンは「いいえ」と、答えるとキラの元に歩み寄った。
そしてその向こうにストライクフリーダムの機影を見つけてシンは納得する。

「整備ですか?」
「うーん。どっちかというと修正、開発?」


51 :鬼ジュール:2006/04/22(土) 19:39:30 ID:???

どうして自分が疑問形で尋ねられるのだろうかとシンは「はぁ」と、答える。
しかし平和に向かおうと日々尽力しているラクスの護衛がMSの開発とはまた物騒な話だ。
シンも今日アプリリウスにデスティニーで戻って来たのはやはりMSの開発の為なのかもしれないが、そんな自分は命令があったからだと言い訳をして棚に上げてしまう。
第一研究者がデスティーの何を見たいのかはシンにも分かっていないのだから。
自分はあくまでパイロット。
それ以上の研究や、開発等には興味はない。

「また戦争でもしたくなったんですか?」

嫌味に尋ねるとキラは穏やかに微笑みながら「それは嫌だな」と、ストライクフリーダムを見上げる。

「ちょっと僕専用になりすぎちゃってるからね、もうちょっと他の人でも操縦出来るようにと思って弄ってるんだけど・・・・。この間パイロット候補のイザークに断られちゃって、どうしようかなぁと思ってるんだ」

まぁ、いざとなったら押し付けちゃうんだけど。

と、やはりのんびりと、とんでもない事をさらりと言う。
「これを・・・隊長に?」
「本当はフリーダムのパイロットにはイザークがなる筈だったんだ。それを僕が貰っちゃったから今度こそ返そうと思ったんだけどね。鼻で笑われたよ」

困ったね。

と、またも大して困った様子も見せずに微笑むキラに、シンは少し「勿体無い」という気持ちで改めてストライクフリーダムを見上げた。
これはザフトの機体ではないが、この機体もデスティニーに負けず劣らずの性能を持っていると、シンだって素直に認められる。
しかし、キラの「他の人でも操縦出来るように」という一言はシンだって聞いていて嫌味に聞こえる。
本人に自覚はないのかもしれないし、実際弄らなければ他の人間には乗りこなせない物だとしても。
シン以上にプライドの高いイザークがこの言葉を聞けば絶対に「いらない」と言うに違いないと思うと、シンは納得する。

頑固だからなぁ。

それに、のんびりとしたキラと何事も即断、即決、即実行のイザークではそもそも会話が成立しているのかどうかも疑問だ。
きっとキラが一方的に「仲が良い」と、思っているに違いないと、そこまで推測してシンは余り関わらない事に決めた。
最近様々な人間関係に悩まされているのだ。
これ以上誰かに振り回されたくない。

「じゃあ俺、やる事あるんで」
「あ、うん。ごめんね、引き止めて。また、明日」

いえ・・・と、敬礼すると踵を返す。
それをキラは少しだけ見送り、直ぐに自分もストライクフリーダムの元に戻った。
シンも格納庫を出てからある事を思い出し、一度立ち止まる。

以前言われた言葉の意味を聞けるチャンスだったのだろうか、と。


52 :鬼ジュール:2006/04/22(土) 19:41:50 ID:???

しかし沢山の人が行き交う格納庫で落ち着いて話が出来る筈もないかと、シンは再び歩き始めた。
キラが「また、明日」と、言ったのなら明日また話す機会があるだろうと判断して。

誕生日プレゼント、結局何にすればいいんだろ・・・・。

と、直ぐに考えを切り替えた。
キラと話をするのは明日にでも出来る事だが、メイリンの誕生日プレゼントは今日中に探さなくてはならないのだから、シンは早足で宿舎の自分の部屋に向かっていった。
さっさと着替えて町に出て、誕生日プレゼントを用意したらバイクのパーツを見に行くのもいいと、シンはすっかり休日を楽しむつもりになっていた。

久し振りのプラントはの空は晴れ渡っていて。
何処から無重力空間なのか確認する必要もない。何処でも足を使って歩いていける。

宇宙空間は嫌いじゃないが、地球生まれのシンにはやはり重力のある空間の方が安心する。
プラントの外郭の向こうでは今日も仲間が飛び回っているのだろうが、それはそれとしてシンは休日を楽しもうと大きく伸びをした。



<続>
********************
今回は物凄く他愛の無い話のまま終わってしまいました。
レイとメイリンの話の続きでも入れようかとも考えていたのですが、それは余り楽しい話でも無いので、盛り上がりそうな時に話を持って来ようかと考え中。
大昔は此処でルナマリアの事にも触れようかと思っていたのですが、それも次回入れようか、それとも諦めようかと思案中。
姉妹の会話とか好きなんですが。
特に何だかんだと言いながらメイリンの心配をするお姉さんなルナマリアの発言とか書きたいのですが、これもタイミング次第です。


53 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 22:24:26 ID:???
今回はマターリとした感じで
次回は休日だしシンとラクスの会話あるかなワクテカ

54 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 23:32:19 ID:???
>>50-52 GJ
私は年甲斐もなく「〜専用機」という感覚が好き(でもインパルスにルナが乗るのは全然抵抗ないし必然とも思うのが自分でも不思議)なのですが、
そのキャラクターを縛り付けるような感じになってしまう場合もあるのだな、と気づかされました。
面白かったですよ。また書いてください。

以下はこういうのもありますよ、というガンダムに出てきたキカイ群です。何らかの参考になれば、と。

・デスティニーインパルス 出典 Gundam Seed Destiny MSV(モビルスーツバリエーション)
 インパルスにデスティニーシルエット(背中に付けるユニットの一種。本編ではフォースシルエットを装着してフォースインパルスになる)を搭載した機体です。
 大砲、対艦刀を両肩に装備し、フォース、ソード、ブラストの特徴を併せ持っています。
 試作が何機か作られましたが、戦闘中にエネルギー補給が何回も必要、インパルスの変形合体機構というある種華奢なフレームに過剰な装備は荷が重い、と問題点を解決できずに試作のまま終わりました。
 その結果デスティニーが作られたわけです。
 設定だけの存在ですが人気は高く、問題点が解決されたとして登場するssはそれなりにあります。
 私が見た中では、戦後ルナが搭乗、敗戦直後故デュランダル議長の遺品としてシンが搭乗、などがありました。

・フルアーマーxx(xxはMS名) 出典 GundamZZ VGundamなど
 追加装甲、追加武装などをMSに付けた機体です。デュエルとアサルトシュウラドの関係と同じです。
 追加装甲部分が壊れてもまだ戦えるためアニメという表現方法では見栄えが良く、最終決戦前にこの状態になる場合が多かったと記憶しています。

・バイオセンサー(簡易サイコミュ) 出典 ZGundam GundamZZなど
 非常に大雑把に言うとニュータイプ(NT)のパイロットの意思を受けて機体がパワーアップするシステムです。
 パイロットの感情の高まりに応じて機体反応性、武装出力、推進力などが上昇したり、ピンク色のオーラをまといバリアを張ったりします。
 デスティニーにもこれが搭載されているなあ、と感じたことはあります。シンが高ぶると光の翼が展開され動きが速くなりますから。単なる演出でしょうが。

・リフレクタービット 出典 ZGundam GundamZZなど
 ファンネル(≒ドラグーン)の一種。
 ファンネルがビームを発射するのではなく、アカツキの装甲のようにビームを受け止め反射します。
 敵のビームを反射するだけでなく自分の撃ったビームを反射させ死角をカバーするようなことも出来ます。

・エンジェルハイロゥ 出典 VGundam
 数キロ?メートル以上の直径を持つドーナッツが幾つも組み合わさったような形をしています。
 何百人ものサイキッカーと呼ばれるNT的素養を持った人々が乗り込み、彼らの持つ力をキールームに乗る人物が制御します。
 大雑把に言うと強力な「電波」を発して人々の精神に影響を与えるキカイです。
 使用した人物は人々の心に平安を与え争いを無くすつもりでしたが、効果が強すぎて人々を赤子同様の精神状態に戻してしまい社会機能が停止してしまいました。

・ムーンバタフライ 出典 ターンエーガンダム小説版
 ソレル家専用のMA(モビルアーマー=人間型ではない機動兵器)
 全長数百メートルの蝶の様にも見え、数百機のファンネルを放出する様は蝶が鱗粉を撒き散らすに似ると表現されます。
 高度に自動化されており、操縦者の意思に従い動きます。
 「消えてしまえ」と思えば攻撃し、「どこかに行きたい」と思えば動き出し、「守りたい」と思えば対象を護衛します。

 思いつくまま、私が記憶するままに書きましたので色々間違っているところがあると思います。興味がわきましたら御自分で調べていただけると幸いです。
 分かって頂きたいのは「使ってほしい」と言っているのではなく、「こんなのもあるんですよ」というレベルの思いつきという点です。
 興味なかったら無視して頂いて全然かまいません。何となく書いただけですから。
 では、長文失礼しました。


55 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 02:12:50 ID:???
>>54
すげー!
自分機体のことわからんから勉強になるわ
バイオセンサーとかなんかいいねー

56 :鬼ジュール:2006/04/23(日) 15:11:30 ID:???
>>54
ありがとうございました!
自分も全部のガンダムを観ている訳ではないので、色んな作品の機体やパーツを紹介して頂けるととても助かります。
しかし、どうしても種の世界観に合うだろうかと考えると、エンジェルハイロゥやムーンバタフライはちょっと難しいかもと考えてしまいますよね。
今自分の中で使えると思っているガンダムの設定はWの「ゼロフレーム」だろうかと考えていたりします。
Wというだけで少し印象が悪い部分があるかもしれないのですが、外装の90%を喪失してもフレームだけで戦えるというのは「格好いい」と思ってしまいます。
PS装甲やNジャマーキャンセラー等と合わせるとデスティニーガンダムに負けず劣らずのとんでも機体になりそうで、武器や盾を派手にするよりもこっそりこういう基盤がしっかりしているという方が魅力的なようにも思えたりしています。
極めて緻密な動きで人間の仕種のレベルまで動作可能という設定はなんとも自分には魅力的に見えました。
個人的にはターンエーガンダムも好きなのですが「月光蝶」は反則技過ぎると思うし、ガンダムダブルエックスのツインサテライトキャノンなんて破壊力が恐ろし過ぎるので種世界で使えるとも思えないのでこういうのは却下にしてます。
種で好きな機体はデュエルガンダム・アサルトシュラウドだったりするので、自分の趣味に偏ってしまうとどうしても近・中距離の決闘型ガンダムになりそうです。
復讐の為の機体という設定が好きでした。プラモの絵が赤と黒で毒々しい感じで描いていたというのも格好いいと思っていたものです。

しかし、他のガンダムから設定を持って来るというのは確かにいい考えかもしれないです。
種作品の中でどうにかしようかとも思っていたのですが、個人的SSなので色んな機体の設定を見てみようと思いました。
ありがとうございました。
宜しければまた何か使えそうな機体がありましたら教えて下さい。

57 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 08:19:38 ID:???
保守

58 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/25(火) 11:41:59 ID:???
保守

59 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:42:20 ID:???

着替えて宿舎に置いている自分のバイクを覆っていたビニールシートを外すとエネルギー量が限りなくゼロに近い事が判明した。
充電しなければ動かない。
1時間もあれば十分充電は出来るのだが、特に困りもしないので充電だけして街に出てしまう。
バイクを使いたかったのだが、それは自分が乗りたいというだけで交通の便が悪いという訳ではない。
明日ラクスの家に行く時に乗れればいいかと判断する。

そして久し振りに街に出れば、余りに様変わりしていて驚いてしまう。
あると思っていた看板は取り外され、新しい看板になっているなどはよくある事だが、建物自体がなくなっていたり、建物が全面的に改装されていたりするのを見ると自分が世間に取り残されている感がひしひしとしてくる。
それは嫌な事でも無いので街中を歩きながらシンは街中の変化を面白そうに見ながら歩いていた。
その中の一軒、シンがヴォルテールに配属になる前にもあったレンガ調の建物に入る。
機械や、自分が身に付ける物、部屋に飾る物等は最新のモデルという謳い文句の物が多いのだが、女の子にプレゼントするとなると趣味が一変するらしい。
女の子の体にアンティークなアクセサリーが付いていたりすると少しどきりとする。
これが妹となると、また違ってぬいぐるみなど色気もないような物になるのだが。
少し少女趣味の入った、しかし古式ゆかしいデザインも織り交ぜられたアクセサリー等を見ると、自分は身に付ける気は更々無いが、女の子には可愛いかもなぁと思ってしまう。
そうは思ってもしかし、身に付ける対象がメイリンだと思うと少し首を傾げてしまう。
メイリンがもう少し女の子らしい格好をしていたら似合いそうだが、アカデミーの頃から見るメイリンの格好は少年のような快活そうな物が多い。
風に揺れるふんわりとした生地のワンピースを着ていたのも見た事があるが、それはルナマリアと彼女の母親の趣味だと言って恥ずかしそうにしていた。
幾ら何でも友人の女の子にアクセサリーを贈るのは重過ぎるかとその場を立ち去ろうとしたその時、一つのアクセサリーが目に留まった。

ラクス・クラインなら似合うかも・・・・。

そう思った時には店員に声を掛けていた。
そして購入してから悩んだ。

渡せるのか?
どうして渡すんだ?
何て言って渡すんだ?

それにメイリンの誕生日プレゼントを買うのが目的じゃなかったか?

何かが少しずつ変だと思いながら、しかし気に入ってしまったのだから仕方ない。
ラクスに本当に渡せるかは別として、取り敢えずは「まぁいいか」と、思ってしまう事にした。


それから更に店内を巡ってからメイリンの誕生日プレゼントは確保し、少し昼ご飯には早いが何処か食事が出来る場所でも探そうかと辺りを見渡していると、クラクションが鳴った。
誰か飛び出しでもしたんだろうかとふと視線を向けると、その車は少し青みの掛かった黒の、スポーツタイプのオープンカーだった。

「うわ。地球製のだ」

ヨーロッパの方の高級車がプラントで走っているなど珍しいと思わず足を止めてしまう。
空気抵抗を抑えた車高を僅かに下げた流線型のフォルムの車体は、余り車の方には詳しくないシンにも最新型だと分かるし、程よく改造されているというのもなんとなく察した。
誰がこんなのに乗っているのだろうかと運転席を見た瞬間、シンは何も言わずに綺麗に踵を返した。

すると再びクラクションが鳴った。今度は二回。

じろじろと見ていたらとっくにばれてるよなと、再び立ち止まり振り返ると、運転席から降りて持ち主らしき男がサングラスを外して腰に手を当てて立っていた。


60 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:44:07 ID:???

「・・・隊長・・・・」
「運転しろ」

くいっと顎を上げて運転席に座るよう促す、世にも珍しい私服姿のイザーク・ジュールの姿だった。
てっきり今日も白服を着て駆け回っているのかと思えば、後部座席には黒髪の女性を乗せていたりして自分だって休暇だったんじゃないですか?と、思わず思う。

いや、それは無い筈だ。
アスランがヴォルテールに配属されているというのに、イザークにもまともに休暇が入るとは思えない。

「・・・サボリですか?」
「馬鹿を言わずにさっさとしろ。議長のご自宅までだ」

拒否権は元々無いのだろうかと、面倒に思いながらも高級車を運転出来る機会など滅多にないので取り敢えずエレカに近付くと、イザークも後部座席を振り返り僅かに腰を折って黒髪の女性にシンを紹介する。

「ザフトでは赤を着ているエースパイロットで、シン・アスカです。シン、彼女はミーア・キャンベル嬢だ」
「ども・・」

イザークの口から「エースパイロット」という紹介を受けると思っていなかったシンは、少し気恥ずかしい気持ちで軽く会釈する。
その時になって相手の女性の顔をまともにみると、ラクス・クラインにそっくりだった。
ラクスと同じくピンク色の髪であったなら見分けなどつかないだろうと思っていると、相手もシンを見て軽く目を見開くと、次の瞬間にはにっこりと「あたし、貴方を見た事あるわ。ヨロシク」と、手を差し出して来た。
そしてその名前にシンは思わず目を見開く。

アスランの、月の歌姫だ。

まさかこんな形で会う事になろうとは思っていなかったシンは、一気に手に汗を掻いた感覚に陥り、掌を服に擦り付けてから握手に応じた。
アスランの口から一度もミーアはラクスに似ているとは聞かされなかった。
こんなに分かり易い特徴があるのならさっさと教えてくれていれば良かったのにと、少し思う。
少なくとも話し相手にシンを選んでくれたのなら。

「彼女をクライン邸に送り届けてから議長を乗せて最高評議会議事場に向かう。その後この車を好きに使っていいから運転しろ」
「・・・・了解」

ミーアの隣にプレゼントを置かせて貰おうかと運転席側に移動して後部座席を見ると大きな風呂敷包みがあり(プラントでは珍しい物だ)、その前には折り畳まれた車椅子がある。
それでもシンの荷物も多くないので隅の方に荷物を置くと乗り込んだ。
ドアの閉まる音からして中流家庭が持てる車よりも重厚感がある。
流石高級車と、思うと心が浮き立った。
助手席にイザークが乗り込んだのも確認して発進する。
高級車とはいえ勿論それでもMSよりかは安価である事に間違いはないのだが、デスティニーは軍所有の借り物で、兵器だ。
しかし、この車は個人所有のただ人を運ぶだけの移動手段だ。
その感覚が少し違う。
シンが持っているバイクはプラント製の物だが、人気のモデルでシンと同じ16歳の少年で持っている者はなかなかいない。
しかしこのエレカと比べれば断然負けてしまう。


61 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:47:06 ID:???

「これ隊長のなんですか?」
「アスランのだ。勝手に借りた。俺はオープンカーは所持してないからな」
「いいんスか?」
「構わんだろう。今朝になって突然ミーア嬢の迎えに行けとこの俺に命じてきた不届き者だからな!あいつは!」

それも朝の5時に起こしに来やがって!
何で前もって言わないんだ!
そういうだらしない所があるから周りに迷惑掛ける事が多いんだ!

余程腹に据えかねていたのか、愚痴れる相手を見つけたとイザークの口の滑りが急によくなった。
失敗だったか?と、シンは運転しながら肩を竦めると、「ゆっくり行け」と、また命令される。
予定があるなら急いだ方がいいのではないかと思ったのだが、言われた通りスピードを落とすと「折角オープンカーにしたんだ。景色が見れなくてどうする」と、注意される。
今更景色なんてイザークとて見慣れた物だろうと思った瞬間、後部座席のミーアの存在を思い出した。
そこで彼女に景色を見せる為だったかと納得してシンはもう気持ち程度だけスピードを落とした。

「それにしても隊長普段はそんな格好なんですか?」
「制服じゃ目立つからな。スーツでも良かったんだがそれはアスランに止められた」
「拘りがあるんスかね?」
「さぁな!車椅子を運んだりするからかもな」

それからイザークは一つ欠伸を噛み殺すと「少し寝るから着いたら起こせ」と、体をずらした。
後ろに女の子がいる状況で寝るか?
と、半分呆れながらもこれから仕事の人間にそれを言っても仕方ないと「了解」と、返した。
口煩い上司とはいえ、話し相手を無くすと少し寂しい。
高級車のシートは上質で乗心地は抜群だったりするのだが、3人も乗っていて無言なのが居心地が悪い。

「あの・・・」
「はい?」
「速くない?」
「大丈夫、ありがとう」

よくよく聞けば声もラクスに似ているではないか。
親戚だろうかと推測すると納得した。
ディアッカも彼女を「月の歌姫」と呼んだ事だし、月で歌手をしていたのだろうかとも推測する。
詮索するつもりはないので推測だけではっきり知りたいというつもりはないのだが。

「明日のメイリンの誕生日、参加するんでしょう?アスランから聞きました」
「あ、そうなんだ。そっか。シンはアスランと一緒に居たんだもんね。仲がいいの?」

仲が・・・・。

そう改めて言われると非常に悩む。
仲がいいというよりもたまたま配属が同じだったと言った方がしっくり来るような気がする。

「衝突はよくあると思いますけど」


62 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:49:44 ID:???

と、そこで言葉を止めて中途半端な返事をすると、ミーアは鈴の音のような軽快さで笑った。

「アスラン優柔不断なのに頑固だもんね!」

ミーアの的を得た発言に思わずシンも噴出す。
一番最初にアスランに届いたメールを見た感じではもう少し儚げな「深窓の令嬢」を想像していたのだが、思っていたよりも全然気さくな様子を見せるのでシンも意表を突かれたが、静かで大人しい女の子よりも元気のいい方が印象がいい。
断然好感が持てる。
それからなんとなくアスランの悪口大会に発展した。
とは言っても大抵ミーアが文句を言い、シンはそれに同意するだけだ。

「アスランったら八方美人だから誰にだって優しくするのはいいんだけど、それで女の子が勘違いしちゃってるのにも気付いてないんだから!」
「プラントに戻って来てからも毎朝毎朝お見舞いに来てくれるのは凄く嬉しいんだけど、絶対に半熟の卵食べたか確認するのよ!」
「病院の先生にも逐一リハビリの経過とか聞いてたりするの!看護士の人とかにも『どういうご関係ですか?』って聞かれたりするのにあたしが毎回何て答えればいいのか分かんなくて困ってるのなんて全く気にしないんだから!」

聞きようによっては大変な惚気を聞かされている気分なのだが、本人にとっては違うらしい。
シンはそれに対して運転しながらだったというのもあったが、ついうっかり自分が何も知らないという事を忘れて尋ねてしまう。

「あれ?アスランとは付き合ってるんじゃないんですか?」
「アスランはラクス様の婚約者だもの。『好き』とだって言われた事はありません!」

ミーアの言葉に自分の質問が間違っていたと気付いて顔を顰める。
しかし、ミーアの言葉に嘘があるとも思えない。
長期休暇を取ってまで月に迎えに行った女の子に告白もしてないのかと思うとそれは男として情け無いんじゃないかと思う。
それはもう優柔不断以下だよなと何故か分からないが、優越感に浸りながらほくそえむ。

「アスランなんて大っ嫌――――――――――――い!」

大きな声で叫んだ後で胸が痛んだのか苦しそうな呻き声を上げる。
その声に驚いたシンが右端に寄せると同時に隣のイザークも目を覚ましてシートベルトを外すと座席を飛び越してミーアの体を挟むように車体とシートに足を置いてミーアの顔を覗き込む。

「あいつの事で文句を言うなら直接言ってやった方が効果的ですよ」
「・・・っは。あたしも・・・・そう、思う」
「隊長!病院に・・・!」
「いや、いい。酷い時の対処法なら聞いている。明日があるからお前も見ておけ」

手首の脈を確認しながら痛む場所を確認する。
次に彼女が押さえている手を払って胸元をくつろげる。
「ゆっくり吐いて・・・。吸って・・・・」
じわりと浮かんだ汗が可哀想でシンも上着のポケットからハンカチを出すとミーアの額を拭う。
呼吸が整い、脈も戻ったのか手首を膝の上に戻してやるとシンにぐったりとしたミーアを支えるように伝えて折り畳みの車椅子や風呂敷包み、シンの荷物も助手席に移動させてシンからミーアの体を受け取ると膝枕をさせる。

「落ち着いたら寝かせろ」
「了解」
「何度も医者からは聞いているでしょうが、貴女の胸の痛みは心因性の物です。そんな誰にでも言えるような言葉じゃなく、本心を言っていい」


63 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:51:43 ID:???

シンには業務連絡のように簡潔に伝えると、ミーアを見下ろして頭を撫でる姿はいつものイザークらしくなくてシンには奇妙な感じがした。
ヴォルテールではいつも男女の差では考えず、その者の能力で全て割り振っているからだろう。
いや、女の子にプライベートでも容赦しないというよりかは全然いいのだが。
面白ろおかしく語るのはミーアの本心じゃないとイザークが断言すると、ミーアは再び胸元をぎゅっと握り締めて目を閉じる。
その目の端からじんわりと浮かんだ涙が、シンには印象的だった。

「好き過ぎるのって、やだ・・・!あたしが、アスランの事好きじゃなかったら、あたしこれ以上アスランの事悪く言わなくて済むのに・・・・!」
「馬鹿なのはアスランです。あいつも貴女からの文句なら甘受するつもりがあります。全部本人に言っていいんですよ」
「言えないよ・・・。だって、あたしにはアスランしかいないもの」
「男なんて腐るほどいます。そこのシンも余り物です」
「隊長!?」
「なんだ?余り物一号」
「隊長だって余り物の癖に偉そうに言えるんですかぁ?」
「貴様、俺のプライベートを知ってるのか?」

にたり。

意味深に微笑まれてシンの方が「そりゃ、知りませんけど」と、小さく返す。
しかし、イザークの性格に付いて来れる女性がいるのかと考えた時「余程根性が無いと無理だろ」と、思う。
勝手な想像だが。
と、此処で肝心のミーアが話に付いて来れていなかった事に気付き、身を乗り出す。

「でも、アスランは貴女の事ちゃんと考えてると、思います。今朝もヴォルテールで貴女の事話してましたから。心配もしてましたし」
「月で貴女のリハビリに口煩かったのは、ヤツの休暇中にどうしても貴女を連れて帰りたかったからです。朝、病院には無理を言って面会時間前に会いに行くのもヤツなりにこれ以上貴女に心配を掛けたくないからだ。悪い事ばかり考えず言いたい事を言えばいい」

シンとイザークの言葉を聞いている内にしゃくりあげ始めたミーアが両手で自分の顔を覆う。
それを見ないようにイザークが顔を逸らしたのを見てシンもまた目線を逸らした。
恋をしていたというヨウランはその話をする時、照れ臭そうにしながらも聞いている方が羨ましく思うような幸せそうな顔をしていた。
しかし、ラクスを好きになって欲しいと言ったキラは寂しそうに見えて、レイは辛そうだった。
シンは改めて恋とはなんだろう、と、思う。
辛いのならしなければいいのにと、思うのだが、どうして恋はしてしまうのだろうか。

やめちゃえばいいんじゃないですか?

そう、ミーアに言えれば良かったのだが、頭の中で何度も繰り返すだけで本当にそれを口に出す事は出来なかった。

「あたし、あの時いなくなってたら・・・・目覚めなければ良かった・・・・」

呼吸をするみたいに、常にアスランを求める自分が浅ましくて、大っ嫌い。

その苦しそうな呟きに、シンもイザークも何も言えなかった。
ただ、シンはずっと手に握っていたハンカチを皺くちゃになるまで握り締め、イザークもまた拳をきつく作り、ドアに押し当てた。
何か優しい言葉でも掛けられたら良かったのだろうが、多くの戦友を亡くした二人にはそれが誰であろうと、どんな理由があろうと言って欲しくない一言だった。

64 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:53:55 ID:???

ステラ・・・・。

彼女は、最後までそんな事言わなかったから。
シンは何かを決意したかのように顔を上げ、口を開こうとした時、それを防ぐように「出せ」と、イザークが声を掛けた。
イザークが咎める声を出す理由もシンには分かる。きっとミーアだって本気でそう言っている訳では無いだろう。
心が挫けそうになれば全てを投げ出したくもなる。
それを誰も咎める事が出来なければ、今は何でもいいから彼女が本心を言う事が大事なのだ。

それでも、言って欲しくない言葉がある。

だからこそ詰め寄るように身を乗り出すと、やはりイザークに手で制止させられる。
代わりにとばかりに目を覆っているミーアの手をイザークは握り締めた。


「ミーア嬢。どうかその言葉だけはヤツには・・・アスランには言わないで下さい。貴女が生きている事が、貴女が目覚めてくれた事が、今のアイツの支えになっているんです。私も貴女と出会えて良かった」


想いの他優しい声にシンは悔しそうに唇を噛んだ。
自分はミーアを責める言葉しか浮かばなかった。
自分の怒りをただ彼女にぶつけたかった。
それが自分の只の自己満足だと、気付いて恥ずかしくなった。

逃げるように「出ます」と、告げて運転席に戻ると車を発進させた。

後部座席ではまだ何か会話をしているようだったが、もう何も聞きたくなかった。


<続>
******************
本当はこの後クライン邸に着いて、ラクスを拾って議事場に行くまでを書こうと思っていたのですが、気力が続きませんでした。
しかし、これで次回やっとシンとラクスが再会します。
本当は今回イザークを出す予定がありませんでした。
実は前回、キラと一緒にストライクフリーダムの整備を手伝わせてみようかとも思っていたのですが、あんまり色んな人間を絡ませて「皆仲良しこよし」をする必要もないかと思って却下したのはよかったのですが、
シンが一人で街中ぶらぶらさせているには自分の間が持たなかったのでミーアは外泊許可を貰ったという事にしてお迎えに向かわせました。
という訳で、メイリン誕生日イベントの話を考えた時にはシンとミーアは当日に初めて会って、話をして・・・というので考えていたのですが、それも急遽変更。
シンも当日までラクスに会わないという設定にしていたのですが、それもこれによって強制的に変更。
次回会います。
他にもちょこちょこ変更点はあるのですが、大抵は余談のカットだったりします。
イザークがシンを「余り物」と呼ぶ所でディアッカとミリアリアの話を入れようかと思ったのですが、強引になりそうだったので泣く泣く却下。
そして今回もシンは色々と自分の未熟さを思い知らされます。
イザークが女の子に優し過ぎるような感もあるかもしれないですが、どちらかというと彼の中のスタンスで行くと「人命救助」という感覚の方が強いので、「声掛け」「擦る」という行動は訓練通りの任務みたいなものです。
ヴォルテールでアスランの気持ちを聞いていたシンですが、それでも冗談でも何でも「死」に繋がる言葉は言って欲しくない。
おまけに恋愛の辛さも理解出来ないのでただ腹立たしさだけが募ります。

それでも、何故かシンはラクスに対してのプレゼントを用意しているのですが。

またリアルの方が忙しくなる予定なので執筆速度が遅くなりそうなのですが、それでも短くても、ちょこちょこ投下したいと思っています。

65 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 19:49:55 ID:???
シンはアニメ本編開始前にプラントに住んでいた。MSはシンの個人所有物ではない。
当たり前のことですが、そういった雰囲気、事実をあえて描写した部分が良かったです。
シンはミーアについてもう少し知識があるのでは、と勝手に思っていましたが、アニメ本編でかなりスルー気味だったのを思い出して、そうだよなあ、と納得しました。
アスランの対人関係の不器用さがよく伝わってきました。
あせらずのんびり書いていって下さい。楽しみにしてます。

>GundamWのゼロフレーム
GundamWの設定はよく知らないので(本編と続編OAVは見たのですが)間違っていたら申し訳ないのですが、お話を聞いた限りではムーバブルフレームの発展型かなと思いました。
気が向いたならばムーバブルフレームについて調べてみると考えやすくなるかもしれません。
勿論興味がわいたなら、の話ですよ。


66 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 19:53:52 ID:???
書き忘れがありました。失礼。
>>65>>59-64当てです。


67 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/27(木) 01:52:39 ID:???
GJ!

68 :鬼ジュール:2006/04/27(木) 21:36:36 ID:???
>>65
いつもありがとうございます。
シンはこの話の中では「ミーア」という名前から聞かされていて、偽ラクスだったという部分には一切触れていないので、ミーア=偽ラクスという図式が成立しないのです。
偽ラクスが月に居たというのも知らないですから、ミーアが月に居たというのも成立しない要因の一つにあると思います。
しかし、キラのストフリはほぼ個人所有のような形になっています。(管理責任者はラクス)
アスランのインジャはそこの立ち位置が微妙なのですが、アスランが服隊した時点でインジャはザフトに譲渡した形になってるでしょう。(と、今決めた)
アスランは・・・相変わらずへたれだと思っています。
人間すぐには成長出来ないというのが、無印種のテーマの一つにあったらしいので、人間性の成長は種世界の人間は遅い物だと思っています。勝手に。

そしてムーバブルフレームについて調べました。
確かにゼロフレームはこのムーバブルフレームの発展型だと思います。
ゼロフレームは短時間であれば活動可能、サーベルやライフルにエネルギーを供給するターミナルとしても機能するとあったり、このゼロフレームにもガンダニュウムが使われているという設定なので、
ムーバブルフレームよりもより単機決戦用としての面が出ているような気がします。
人伝に聞いた話なので、どこのソースかは不明なのですが、デスティニーやレジェンド用にもミーティアが開発されていたという事らしいので、逆にミーティアを使った機体同士での戦闘を想定した時に
生死を分けるのは機動力と装甲だと思うので、ゼロフレームのような装甲がこれから開発されてもおかしくないのではないかと妄想していたりします。
世界情勢的にも軍事力に力を入れられる環境は難しいと考えると、一番発展しそうなのが造船業で、その造船業と機体製造との共通部分はやはり駆動エンジンと、装甲、機動性になるのではないかと考えているのですが。
一人で考えているものですから、考えが足りない部分が多々あると思います。メカは詳しくないので。
「こういう事業も発展しそう」みたいなのがあったら教えて頂けたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。

69 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/29(土) 13:02:46 ID:???


70 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 16:34:57 ID:???


71 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 16:57:09 ID:???


72 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 23:46:31 ID:???


73 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/01(月) 13:45:18 ID:???


74 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/01(月) 23:20:10 ID:4CeTTxuk
保守

75 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/02(火) 23:07:46 ID:???


76 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/03(水) 08:19:18 ID:???
ほしゅ

77 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:07:36 ID:???

クライン邸に到着すると、シンは自分の認識番号と声紋、網膜を確認され門が開かれた。
個人の家で此処まで調べられるなんて・・と、シンは内心それだけで驚きながら、改めてラクスの育ちの良さを思い知る。
シンの網膜情報などアプリリウスのマザーコンピューターにでもアクセスしなければ照会など出来ない筈である。
ザフト施設の入り口や、宿舎の入り口、戦艦に乗り込む時等は認識番号と声紋のみのチェックで通れる。(それもシンの声紋はザフトのデータバンクに登録されているので、アプリリウスのマザーコンピューターにはアクセスされる事はない)
ザフトに入った当時は認識番号と声紋の確認を毎度行う事だって驚いたのだが、ザフトはプラントも支援する軍事施設だ。
プラントにおける技術の粋を集めた最重要施設という事を考えれば当然の処置と言える。
しかし、クライン邸は個人の邸宅だ。
最重要文化財という訳でもなければ(プラントの歴史は浅いので、プラントのどこにもそのような物は存在しないが)、悪の秘密結社の秘密基地という訳でもない(と、思う)。
今自分が運転している高級車といい、ザフトでも声紋取得以上のある程度の機密性のある場所にしかない網膜照合機能といい、なんだか一般人の感覚を忘れそうな環境である。
此処は別世界か夢かと思って自分の感覚も暫く麻痺させようと考える。
中に入って外来者用の駐車場に車を停めるとシンは後ろを振り返る。
イザークが「座れそうですか?」と、確認するとミーアは首を左右に振る。
その返事を見てシンに視線を移し「車椅子を運べ」と、命じる。
胸の痛みが続いているらしい。
体力的にもまだ十分ではなく、筋力も人並み以下の状態であるミーアは外出許可が出ているとはいえ、一日満足に動ける体ではない。
胸の痛みも心因性の物が一番酷いが、未だ腕を動かすと痛みが走る。
未だ安静にはしていないといけない彼女はもう既に随分と体力を消耗したのかぐったりとしていた。
シンは言われた通りに車椅子を車から降ろすと広げてその座席の上に風呂敷包みと、自分の荷物を置く。
その間にイザークはドアを開けて「失礼」と、ミーアの体を横抱きにして降りるとクライン邸に向かった。
シンは後部座席のドアを閉めて隣を歩いていく。

「大丈夫なんですか?」
「後で医者を呼ぶか。現在の状況については俺よりも議長の方がお詳しい。明日何かあったら議長に指示を仰げ」
「了解」
「ただ、今日迎えに行った時、医者から車椅子の使用は一日最長2時間だと言われているから、その後は寝かせる事」
「・・・・本当に外出許可出たんですよね?」
「当然だ。詳しい話はまた後でする」

玄関前の階段をシンは車椅子を抱えて上がる。
その最中に中からクライン家の執事らしき人物が玄関の扉を開け3人を招き入れる。

「ミーア嬢の部屋は」
「既に用意されております。御案内致します」

執事だよ。
おまけに向こうにはメイドさんの姿も見えるよ。

シンはまたも自分の感覚が麻痺しそうだと思いながらついて行き、思わずすれ違うメイドをじろじろと見てしまう。
ミーアが車椅子を使うという事を考慮してか、1階に用意された部屋は窓が大きくて外の景色がよく見える気持ちよさそうな空間だった。

当然ながらシンのザフトの宿舎より断然広い。

天蓋付のベッドなんて生で見たの初めてだと思いながらミーアを寝かせるのを手伝う。

「色々ありがとう」


78 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:10:13 ID:???

言葉の後にぎこちなくだが笑ったミーアに、シンもイザークも微笑んで返した。
シンは殆どミーアという女性を知らないが、はにかんで笑う彼女はとても可愛く見えた。
それからイザークは風呂敷包みを執事に渡してミーアの体調が気になるから医者を呼ぶようにと命じて「着替えを取ってくる」と、一度外のエレカの元に戻って行った。
人の家の執事に勝手に命令するなんて、それが当然だと思ってるのが変なんだよなとシンはただただ閉口するのみだった。
シンは横になったミーアが目を閉じた事もあって部屋を出ると、居間に通される。
初めてのクライン邸は至る所に花瓶が置かれてあり、部屋や廊下の色調に合わせた花が飾られている。
どの花瓶も元気がないという事はない。
それも凄いよなと、思いながら居心地悪くしていると、居間のドアが開かれた。

「まぁ、シン。貴方がミーアさんをお連れ下さったのですか?」
「お邪魔しています」

立ち上がり敬礼すると、ラクスも真似して敬礼する。
それからくすくすと笑って「どうぞお掛けになって下さいな」と、促されるのでそれに従い再びソファに腰掛ける。

「今朝アスランがイザークに迎えをお願いしたと言っていたのですが・・」
「あ、隊長は今着替えを取りに行っています。自分はその途中で捕まりました」

捕まったという言葉にラクスは一瞬目を見開く。
しかし、すぐにその様子が目に浮かんだのか、目を細めて微笑んだ。

「そういえばお休みでしたのに、巻き込んでしまいまして申し訳ありませんわ」
「いえ・・・・俺も高級車の運転が出来たんで楽しかったです」
「まぁ、そうですか。MSとは違って運転がし易いでしょう?」
「MSに乗るのは軍人だけですが、車は一般人も多く乗るので怖いのは車かもしれません」

おまけに宇宙には信号機が無いし。

シンの冗談にラクスは「まぁ」と、声を上げる。
ラクスにしてみればシンが冗談を言うのは少し意外だったのかもしれない。
シンもまた自分の冗談に顔を顰めた。
最近ディアッカと一緒にいる時間が多いので、彼特有の軽口が感染ったような気持ちだ。
直ぐに「忘れて下さい」と、言おうとしたのだが、その前にラクスが口を開いた。

「では、プラントで交通事故を起こさないように、宇宙にもそのうち信号機を設置しましょう」

にっこりと、しかし口調は生真面目に。
シンにはラクスの言葉が冗談なのか、それとも真面目に言っているのか判断がつかない。
笑えばいいのか、それとも突っ込めばいいのかもまた微妙だ。
そして自分はどこまでの突っ込みなら許されるのか・・・・。
色々と悩んで複雑な表情を見せたシンに、いつまでも何の反応も無いと不思議に思ったラクスが首を傾げた。

「つまらなかったでしょうか?」

冗談だったんですか。


79 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:12:28 ID:???

また微妙な冗談だったなとシンは思いつつも「いえ、そんな事は」と、取り敢えず返す。
ラクスとしてはシンの言葉がお世辞だったのかどうかは気にならないのか、それともその言葉を鵜呑みにしたのか嬉しそうに微笑んだ。

「あの、ミーアさんとは・・・」
「はい、先程こちらに来る前に少しお話をしました。具合が良く無いようでしたので、すぐにお休み頂きましたわ」
「そうですか」

ラクスは穏やかに微笑み、シンはアスランとの婚約やミーアの事はどんな風に考えているのか尋ねようかと思ったその時、居間の扉が開かれメイドが3人、トレイを手に持って入ってきた。

「お食事はこちらにお運びして宜しかったでしょうか」
「はい、構いませんわ」

主人の承諾を得たメイド達がテーブルの上に黒いつやつやとした箱を並べていく。
箱の外側は黒だが、中の色は真紅。
そこに色とりどりのおかずが入っていて、とても綺麗だったが、食器・・・というには奇妙な感じだった。

「そういえばエザリア様がアプリリウスにご滞在されているのでしたわね。重箱とはまた趣があっていいですわ」

なんだか豪奢というよりは荘厳という感じの箱の中に入っているおかずの数々をラクスはナイフとフォークで取り分け、シンに一つ渡す。
ラクスの口調からこれがイザークが持って来た物だと察すると、それではあの風呂敷に包まれていたのがこの箱だったのだろうと思う。
それにしても見慣れないせいかもしれないが、重箱とナイフとフォークのような銀食器がミスマッチだ。

「これ、重箱って言うんですか」
「わたくしもイザークに教えて貰いまして知りました。金粉で絵が描かれてあったり、漆の艶が綺麗ですわよね」

ラクスは溜息混じりに感嘆の声を上げるのだが、シンにはイマイチその価値が分からず「はぁ」とだけ返す。
一人妙にはしゃいだ様子を見せるラクスに違和感を感じたと言ってもいい。
それに、自分には関係ない事だが、ミーアの事が気になる。
正確にはミーアにあれ程までの精神的負担を掛けておきながら彼女を招き、笑っていられるラクスという人物が。
いや、部外者であるシンの前だからこそ気にした風もなく振舞っているのかもしれないが、それでもラクスとアスランがしている事は物凄い裏切りだ。
何とも思わないのだろうかと、思う。

それを問い質そうかと口を開いた時、控えめなノックの後扉が開かれ、外から白い隊長服に身を包んだイザークが入室した。
今口を開きかけたシンの強張った表情が彼の目に留まったのか、一瞬訝しげな表情を見せたが直ぐにラクスに向き直った。

「今日はアスランが居ないというのに母上が沢山用意してしまいまして」
「まぁ、キラも今外出しておりますの。・・・でもシンが居りますから全部食べてしまうかもしれませんわね」
「いや、俺もそんなには・・・・。それに、キラさんならザフトの格納庫でストライクフリーダム弄ってましたよ」

重箱一段分でも結構な量があるというのに・・・・。と、慌てながらさっきキラと会った事を伝えると、シンの真正面に座ろうとしていたイザークが不機嫌に眉を吊り上げ、ラクスが複雑な表情で微笑んだ。

「そうですか。それではお昼ご飯の事は忘れているかもしれませんわね」
「後で執務室にも持っていきましょう」

ミーアさんの分も取り分けたら上手く足りるかもしれないと提案すると、イザークもそれに頷いた。


80 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:14:06 ID:???
ミーアさんの分も取り分けたら上手く足りるかもしれないと提案すると、イザークもそれに頷いた。

「母上も漸く時間が持てるようになったのか、料理を作る楽しみを覚えたようで私とアスランはいい実験台ですよ」
「いいえ。そのおかげでわたくしもご相伴に預からせて頂いているのですから、嬉しいですわ。お母様の手料理というのはそれだけで特別ですもの」
「俺の母さんは・・・オムレツが得意でした。ジャガイモが沢山入ってて、前の日の残り物とかを結構包んでたりして」

今思えば手抜き料理だったのかな、とか思うんですが、好きでした。

静かなシンの告白にイザークもラクスも返す言葉が見つからない。
この中で誰が幸せで、誰が不幸せなのかという話をしている訳ではないし、イザークが自慢話をしているように感じた訳でもないが、正直イザークが年を言い訳に恥ずかしそうにしているのは羨ましい事だった。
ラクスが悲しげに眉を寄せて何かを伝えようと前に身を乗り出すと、その雰囲気を察知したシンはラクスが口を開くよりも先に顔を上げた。

「でも、もう味がどんなのだったのか、思い出せないんですけど」

味覚を記憶するのは難しい。
どれだけその時の味を思い出そうにもその時の思い出ばかりが先に立ち、味を正確に思い出す事は出来なかった。
意図した訳ではないが、自分がこのしんみりとした雰囲気を作ったのだと気付いたシンは、何事も無かったかのようにナイフとフォークを取った。
無神論者である彼は「頂きます」と、口に出したが手を合わせる事も指を組む事もしなかった。
ラクスとイザークは指を組み合わせてから食事前の感謝を告げるとナイフとフォークを持った。
そしてラクスはナフキンを襟に差し込む前に一度シンに向き直る。

「出来れば他のお話もお聞かせ下さいな。勿論、強要ではありませんわ」

それは優しい微笑みだった。
人の心を温かく包み込むその微笑みは、確かに慈悲深い聖女の物だと思えた。


しかし、あんなに苦しんだミーアの姿を見た後では、ラクスの微笑みを信じる事が出来ず、ただ悶々とした気持ちだけが残った。


ラクス・クラインとはどういう女性なのだろうか。


誰にでも語れそうな当り障りのない話をしながら、シンはそんな事をぼんやりと考えていた。


<続>
********************
前回の目標であった「お見送り」の所まで書こうかと思ったのですが、此処で手が止まってしまったので一区切りとしました。
あと、随分と長く書いていたのですっかり忘れていたのですが、ミーアが目覚めてからどう頑張っても1ヶ月位しか経っていない事に気付きました。
なのに前回結構元気に書いていたかもしれないと思うとちょっと失敗しました。
当分ひ弱に行きます。
今回、ミーアの事に関してはどう考えてもシンの考えの方が正しい。間違えている事をしているのはラクスとアスランです。
それを許容しているラクス、アスラン、キラ、イザークと、許容せざるを得ないミーア。
どちらかというと「正義」というものを信じているシンとしては、それまではなんとなく「それでいいのかな」という程度だったのが、「悪いだろ!」と、思うようになってきました。
しかし、その一方でラクスはミーアを気遣う所を見せていて、一方的に糾弾する事も出来ません。
これに関しては部外者というのもありますが、ラクスという人物が許容出来なくなるかもしれないとは思っているでしょう。
シンとラクスは根本的な考え方が違うので、相互理解には時間が掛かるように思います。

81 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/05(金) 21:14:25 ID:???
鬼ジュール氏、GJ!!!!!

82 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/06(土) 11:08:52 ID:???
GJ!!
そして保守

83 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/06(土) 16:50:12 ID:???
>>77-80 GJ
個人邸でのセキュリティ、使用人の存在などシンの育ちからは異世界とも言える部分の描写。
個々人の考え方に大きな影響を与えるであろう生まれや育ちの違いとシンの感じるラクスの行動への違和感とのリンクが興味深かったです。
ただ、「世界をより良いものに」という根本は一緒なのですから、どちらが一方だけが「間違っていたんだ」と自己否定するのではなく、両者歩み寄って昇華していければ良いですね。
続き待ってますよ。


84 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:42:19 ID:???

ラクスは食事を終えるとキラの分の弁当と、ミーアの食事の用意を頼み、着替えの為自室に戻った。
イザークはシンにチェスをしないかと振ったが、オーブではチェスは一般的なゲームでは無かったのでプラントに来てから少しかじった程度で、全く腕に自信が無いので遠慮した。
過去、シンにチェスを教えたレイにこっぴどくやられてから余りいい思い出がない。
イザークの実力の程は知らなかったが、イザークが負ける戦いを仕掛けるタイプには見えなかったのだ。
散々言い負かされて来たシンとしては、初心者に遠慮もない戦法で勝ち、鼻で笑う姿しか想像出来なかった。
折角の休日にそんな不機嫌になる必要もない。
なら庭にでも出るかと誘われ、それには異存がなかったので共に庭に立つと、手入れの行き届いた薔薇の園にシンは思わず溜息を吐いた。
花を愛でる趣味は無いが、それでも人並みの感性はある。
白を中心とした薔薇の数々は品種が違うのか花弁の形が違ったり、大きさが違ったりと様々な形をしていた。

「この庭も随分元に戻って来た」
「前は違ったんですか?」
「・・・・昔このクライン邸が襲撃された事があった。それから2年以上放置されていたんだが・・議長がお戻りになるという事で急遽屋敷は改築され、庭も元に戻って来た。俺も改築前の様子を最初見た時には余りの惨状に驚いたもんだ」

改築が完了するまでホテルで過ごしていたという話にも驚き、そしてどうりで屋敷が真新しい感じに見えるのだろうと振り返った。

「クライン邸に残されていた貴重品に関してはこの家の執事が管理していてくれたらしい。それ以外の最高評議会に押収された物は一部は戻って来たが、二度と戻って来ないものもある」

その時、遠くで「がしょん、・・・がしょん」と、思わず聞いていると心の中が掻き回されるような鈍い音が聞こえて来た。
そのリズム感の無さにシンもイザークも視線をそちらに向けると、黄土色の4本足の愛嬌はあるが古臭いロボットが背中に青いハロを乗せて歩いていた。

「・・・・何ですか?あれ」
「議長のお友達1号だ」

いかにも昔の仕様であるそれに、シンは昔買って貰った玩具を思い出した。
そんなに大切にしていただろうかと振り返り、壊れてしまえば直ぐに新しいのを父親に強請っていた自分を思い出して僅かに顔を顰めた。
物を大切にしている事に美徳を感じた訳ではないが、昔を思い出すと時々どうしようもなく胸が痛い。
時間が経つとは時に恐ろしい。
大切に思っていて、何より悲しかった家族の死を冷静に受け止められるようになった自分の姿に嫌悪すらする。
思い出になり、時が立てば振り返る回数も、振り返った時の胸の痛みも悲しみを感じる回数も減ってしまう。
それは嫌だと思いながら、しかし胸の痛みを忘れようと努力しているのもまた事実なのだ。
矛盾した己の行動にシンは痛みを思い出すように爪を立てて両手を握り締めた。

黄土色のロボットが人の存在を認知して方向転換して近付いて来る。
それをじっと見ていたイザークにはシンの表情の微妙な変化に気付かないでいた。
ロボットが近付いて来るまでに相当な時間が掛かったが、イザークは彼にしてはそれを根気良く待ち、足元に来た瞬間、青いハロ共々上から踏み付けた。

「た、隊長!?」
「何だ?」
「踏みつけていいんですか!?」

仮にも議長のお友達を!

ラクスが大事にしていたんだろうとしんみりしていたのを台無しにするようなイザークの所業に声を荒げると、イザークは大した事では無いように目を眇めた。
イザークの足の下でハロが「ハロ、ハロ」と、耳(?)をぱたぱたと動かしながら訴え、どうにか動けないものだろうかと左右に体(?)を動かしている。
そして更にその下の黄土色のロボットは、ぎしぎしと音を立てて何度も方向転換等を試みていたが、どうにも動けないでいた。

85 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:43:39 ID:???

「大した事じゃない。動かない程度に足を置いているだけだ」
「だから!それがまずいでしょ!議長の大切な物を!」
「だから?何でだ?お前にとってもこれは価値のある物か?」
「それは・・・・」
「俺は俺の方法で遊んでやってるだけだ。こいつらとな」

何を言ってものらりくらりとかわすイザークに腹を立てたシンは、思い切りイザークの足を蹴った。
踏みつけていない爪先を狙って蹴ったので、ハロにも影響なくイザークの足だけが振り子のように払われる。
シンが思い切り後ろに足を蹴って助走を付けていたので、イザークも蹴られる事は分かっていたのだろう。
軸足がぶれる事無く地面に足を置くと、イザークは何事も無かったかのようにシンを見た。
まるで強敵に遭遇してしまったかのように、黄土色のロボットは慌てて反転し、「ぎしょんぎしょん」と音を立てて精一杯逃げて行っているようにシンには見えた。

「何してるんですか!」
「遊んでいた。と、言った筈だが?」
「あれは遊んでいたなんて言わないでしょう!」
「何故?それはお前の主観だな」
「違う!常識だ!」

常識と聞いてイザークは面白そうに目を見開いた。
そして次の瞬間には声を上げて笑った。
馬鹿にされたようなその行為にシンは更に激昂する。

最低だ。

そう思ってそれを相手にぶつけようと口を開きかけた時、イザークが笑い声の中で言葉を発した。

「お前は当事者ではないのにな!」

言われた瞬間、更に頭に血が上った。

「アンタ何様のつもりなんだ!」
「お前こそ正義の味方ごっこは楽しいか?」

シンの怒鳴り声に答えたイザークの声は、決して怒鳴っていたという訳ではないのだが、凛と張り詰めた声はシンの頭に冷水を引っ掛けたような衝撃を与えた。
昔、アスランに同じ事を言われた事を思い出した。
いや、あれは今思い出しても自分は正しい事をしたと思っている。
今だってそうだ。

「ごっこ・・・・?違う!そうじゃない!」
「なら何なんだ?30秒以内に答えてみろ」

何故そんな常識的な事を改めて問い質されなくちゃならないんだと頭に血を上らせていたが、シンはそれ以上の言葉を見つけられないでいた。

「・・・だから、玩具を踏みつけて遊ぶなんて、常識に外れてる!」
「お前の常識と俺の常識では若干の差があるようだな。それに、踏み付けたつもりもなければ壊す意思があった訳じゃない」

86 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:44:56 ID:???

で?

更なる説得の声を待つイザークに、シンは何も言えない。
懸命に言葉を探しても、どれも「説得」と呼ぶには言葉の足りない物ばかりだった。

してはならないからしてはならない。
そう教わったから、してはならない。

そんな力弱い言葉ばかりが脳裏を掠めては通り過ぎていく。

「可哀想じゃないですか・・・!」

そんな中で精一杯出て来た言葉がこれだけだった。
自分で言っておきながら、イザークに鼻で笑われそうな言葉だと思うと、シンは顔を上げられない。
イザークを睨み返せない。

「それは誰の事を思って出た言葉なんだ?」

馬鹿にされるかと思っていた所に、イザークは意外な言葉で返した。
思わず顔を上げてイザークを見たが、特に表情に変化は見られない。
ただやはりシンを挑発する様子は崩れていない。
未だ自分の方が優位に立っているのだと示されるのは気に食わない。

絶対に言い負かせてやる、と、決意を新たにすると大きく息を吸った。

「あのロボットに・・・!」

と、此処まで口に出して自分の違和感に直面して息を止めた。
自分はあのロボットに共感して「可哀想」だと本当に思ったのだろうかと。

いや、そうじゃない。

シンは自分の言葉を思い出した。
自分がラクスの大切な物をイザークが踏んだ事に腹を立てたのだ。
自分が、嫌だったから。
すっかり勢いを無くしたシンの様子にイザークは鼻を鳴らした。

「そういう事だ。お前はお前の主観で行動した。誰かの為なんて言葉はどこまで相手を思って、どこから自分の自己満足なんだろうな。もしくは自分の美徳を晒した姿を誰に見て貰いたいと思って行動するんだろうな。貴様も・・・常にとは言わないが少しは考えるんだな。
物事には大抵加害者と被害者と傍観者が居る。お前はどの視点に立ってそれを判断しているのか。本当にその立ち位置で正しいのか・・・・。あぁ、もう面倒だ!とにかく少しは考えろ。一つの立場で物を考えるな!いいな!」

綺麗に整えられた銀糸の髪をわしゃわしゃと掻き雑ぜる。
そして唸るように小さく「これだから子守りは・・・」と、呟き、掻き雑ぜて乱れた髪を撫で付けて戻す。
まるで「相手してやった」とばかりの態度にシンはむっとしたが、取り敢えず反論はせずにおいた。
上手く言葉に出来ないが、直感でイザークの言葉が先程ラクスに詰め寄ろうとしたシンを、暗に思い止まらせる為のものだったように思ったのだ。
外れているかもしれないが。

87 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:45:45 ID:???

「隊長は俺よりも色んな視点で物を考えていると、思ってるんですか?」

自分の方が上なのだと言いたいんだろうかと尋ねると、イザークは酷く不機嫌な顔をシンに向けた。

「大概失礼な奴だな、お前は!俺がお前よりも物が考えられるから、お前は俺の下にいるんだろう!」

そうでないならとっとと昇進試験を受けて偉くなれ。
やる気が無いなら辞めてしまえ!

極端な事を言って怒鳴るイザークに、相変わらず面倒臭い人だと思いながら敬礼して「失礼致しました」と、小さく呟く。

「じゃあ、あの、ハロを踏んで遊ぶ趣味ってのは・・」
「あってたまるか!」

その前に趣味なんて一言も言ってないぞ!

ただ憤慨してばかりなのかと思えば案外考えているようで。
よくよく考えればイザークは直情的なタイプであるにも関わらず今まで口で勝った覚えが無いので、シン自身にも足りない部分があるのだろうと考えてしまう。

なんだか激しく腑に落ちない部分が大きいのだが、イザークはイザークなりに気に掛けてくれているのだろうと思うと、シンは顔を顰めてイザークの後ろを付いて行った。


<続>
********************
少し時間がないので簡単に。
シンもイザークも直情的なのですが、シンはどちらかというと自分よりも弱者の為に、イザークは自分のプライドの為にと動いているように感じます。
自分と同じタイプであるからこそ理解できる部分もあるのですが、それ故に歯痒く感じる部分もあります。
「どうしてこういう考え方が出来ないんだ!」
という部分です。
同じ方向を向いていればとても気の合う同士にでもなりそうですが、全く違う方向を向いているので、何時まで経っても二人は互いの考え方に歯痒さを感じてしまいそうです。
イザークは正確にはわかっていなくても、シンがラクスに突っ掛かろうとした事だけはわかりました。
それはイザークにも理解出来る部分だったからです。
しかしイザークにとってはそれは突っかかる程の事ではなく、シンがそれに対してムキになる事の方が理解出来ません。

もっと色んな方向から物を考えて大局を読め。

結局はただそれだけをシンに伝えたかったのですが、素直でもなければ、気恥ずかしさもあってどうしても遠回りになる。
そのせいかシンにこの言葉が通じるのは当分後になりそうです。


88 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/08(月) 00:22:08 ID:???
結構大作!
読むのに時間かかった
シンと遺作の会話っておもしろいんだな

89 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/09(火) 00:15:16 ID:???
世間は映画化話で持ちきりだな
鬼ジュール氏見にく?

何はともあれGJいつもすごいよ

90 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/10(水) 17:17:04 ID:???
ネ申乙
wktkしながら読みました

91 :鬼ジュール:2006/05/11(木) 08:54:53 ID:???
おはようございます。
何故か再び串制限に引っ掛かり、解除申請致しました。
また解除に数日掛かると思いますので続きは暫くお待ち頂きたいと思います。

私事で申し訳ありません。

92 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/11(木) 10:17:05 ID:???
願わくは、オモチャの比喩の内に命が入って無い事を。

93 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/11(木) 20:45:25 ID:???
>>91 待ってますよ〜

94 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/13(土) 21:30:33 ID:???
保守

95 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/14(日) 21:10:25 ID:???
捕手

96 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/16(火) 14:09:28 ID:???
保守

97 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/17(水) 00:09:47 ID:???
まだーー

98 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/18(木) 07:06:14 ID:???
待つしかない

99 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 18:58:55 ID:???

ミーアは部屋の中から窓の外に視線を向けていた。
そこで遠くにシンとイザークの姿が見え、なにやら話しているようだったが、胸の痛みに意識が行って集中してその様子を推測する事は出来なかった。
胸が痛いと自然と涙が溢れて来る。
堪えようとは思っていても痛みがそれを許さない。
ぎゅっと胸の辺りの服を握り締め、涙を拭うのも辛くてただただ小さく身を小さくする。

余りの痛みにミーアは助けを求めるように唇を動かした。

アスラン・・・・。

しかし、その声が宇宙にいるアスランに届く筈も無い。
分かっていても呼ばずにはいられない衝動に、涙が再びはらりと流れた。

「大丈夫ですか?」

その時ひやりと触れた手の冷たさにミーアははっと目を開ける。
僅かに頭を浮かせるとミーアの額に手を当てたラクスは不思議そうに首を傾げた。

「どうか致しましたか?」
「・・あ・・・ラクス様・・・」
「随分汗を掻いていらっしゃいますわ。胸が痛むのですか?」

ラクスは袖机の上に置いてある水の張った器からタオルを搾ってミーアの汗を拭う。
そして労わるように胸を押さえるミーアの手に手を重ねると優しく擦る。
ラクスの手のぬくもりにミーアはじんわりと涙を浮かべてラクスの手に空いている自分の手を重ねた。

「いえ・・・。少し、アスランが恋しくなっちゃって。昨日の朝会ったのに」

つ・・・と、涙がこめかみの上を滑る。
ラクスはミーアの笑顔につられて笑うとタオルを置いてミーアの涙を親指で拭う。
アスランとミーアの繋がりがどれ程の物なのかラクスには分からなかったが、余程ミーアがアスランを信頼しているのだろうというのは分かる。
アスランもミーアの事に関しては親身になっていて、何かあれば自分の事も置いて世話をしている。
笑顔の奥でそれを羨ましいと思いながら髪を撫でるとミーアは小さく「ごめんなさい」と、零した。

「どうして・・・ですの?」
「だって・・・あたし・・・・」

髪は黒髪に戻ったが、未だその顔はラクスと同じものである。
それに負い目を感じているのだろう。
ラクスはそれに気付いて「そんな事」と、心の中で呟く。
今もラクスは自分の顔を見下ろしている筈なのだが、ラクスはそれを自分の顔だという意識は無かった。
確かに、もう少しは思うところがあっても良さそうなのにと思うと、自分の順応力が可笑しくなってしまう。
良く言ってしまえばそれ程までにその顔はもうミーアの物となっていた。

「先日キラが言っておりましたわ。わたくし達は全然似ていないと。とてもそっくりな双子でも接していく内に見分けが付くように、わたくし達も、一見似ているようで違いがあるのだそうですわ。
わたくしも同じように思います。今ミーアさんとお話していてもわたくしは自分とお話をしているようには思いませんもの」


100 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 19:00:06 ID:???

だから何も負い目を感じる必要は無い。
ミーアはただミーアらしくあればいいのだ。

ラクスの言葉にミーアは胸の奥が発火剤に火が付いたかのようにかっと燃え上がり、きゅっと眉間を寄せて涙を堪える。

「ラクス様・・・・」
「ですから、わたくし達は今まで少し離れてしまった双子なのですわ。ミーアさんが、良ければ」
「そんな、勿体無いです!」

ミーアが驚いて反射的に叫ぶと、胸の痛みに直ぐにくっと表情を歪める。
その慌て振りにラクスも一瞬身を硬くするが、瞬きを何度か繰り返すと咎める様に少しだけその柳眉を寄せた。

「駄目ですわよ、お体に負担を掛けては。ミーアさんがお元気でなければわたくしの屋敷に来たから体調が悪くなってしまったのだとアスランにわたくしが怒られてしまいますわ」
「・・ごめんなさい」

肩を竦めて謝罪するミーアにラクスは穏やかに微笑む。
手の掛かる小さな子供に話し掛けるような諭し方だったと気付くとラクスは何やら可笑しくなってくすくすと笑う。

「やはり一番はアスランの名前を出すのが効果的なのでしょうか」

アスランの名前に反応して頬を染めるミーアの姿を心のどこかで羨ましいと思いつつ、もう出発の時刻だとそれまでずっと傍に控えていたメイドに後を任せるように頷く。

自分も、ずっと恋に生きる事が出来ていたら違う人生を歩いていただろうに。

思いは胸に重石を置いたが、今それを嘆いても仕方が無い。
ミーアには努めて明るく振舞う。

「今日の夕食はご一緒出来ないかもしれません。でも、ミーアさんが起きていらしたら今日は一緒に寝ませんか?わたくし枕を持ってお邪魔致しますわ」
「はい・・・」

と、此処でまた部屋を出ようと踵を返そうとして・・・、再びその足を止める。
もう一つ何か思い出したらしい。

「それと、わたくしの事はラクスとお呼び下さいな。わたくしの屋敷に遊びに来て下さる方に『様』を付けられるのは何だか変な感じですもの」
「あの・・・」

ミーアはそこまでは躊躇われたらしい。
しかし、ラクスは此処でミーアの意思を確認しようとはしなかった。
それは自分の要望であり、ミーアがそれを実行出来る、出来ないは今直ぐ要求すべき事柄ではないからだろう。

「行って来ますわ」
「はい、・・・行ってらっしゃい」


101 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 19:01:07 ID:???

扉をメイドが閉める瞬間、ラクスがミーアに微笑みかけると、その笑顔につられる様に戸惑いつつ返事を返した。
扉が閉まる音と共に再び静寂が部屋に落ちる。
まだ部屋の中にメイドは居たが、何やら忙しそうに見えてミーアに構ってくれる素振りは見せなかった。
何か自分を見てくれる者を探すように再び庭に続く窓を見たが、もうそこにはシンも、イザークも居なかった。
天井を見上げて不意に溜息が漏れると、隣の部屋らしき扉が開かれた。
他にも誰か居るのだろうかと視線を移すと、部屋の中に二つの球体が飛び込んで来た。

「ハロ!」

一つは自分の為にデュランダルが用意してくれた真っ赤なハロ。
そしてもう一つは見慣れない紺色の、ハロ。
二つのハロはミーアの声に反応して耳をパタパタを動かすと声の位置を正確に把握してミーアを目指して飛び跳ねて来る。

<ハロ、ハロ>
≪hello!hello!≫

一つはラクスのハロなのだろうと手を伸ばすとベッドの上に上がって来た。
シーツの上では跳ねる事が出来ないのだろう、暫く奮闘していたようだったが、次第にそれも諦めてころころと転がりだす。

その愛らしい様子にミーアは笑みを零すともっと近くに寄るように手を伸ばすと、その時、紺色のハロの緑色の瞳が点滅した。

<ミーア、ハロ、アソボ〜♪>
≪Meer、Meer♪≫

まさか自分の名を呼ぶとは思っていなかったミーアは伸ばした手を思わず止める。
赤いハロも呼応するように自分の名を呼ぶ。
そんな音声登録はされていないのだが・・・。

と、此処で弾かれたようにミーアは紺色のハロを掬うように掌に乗せると、自分の目の前まで持ってくる。
突然自分の思うように動けなくなったハロはミーアの掌から落ちないようにセンサーが感知しているのか、その場でぐるぐると回り始めた。
ミーアは機械工学には全くと言って良い程無知だ。
だからどうしてそのような動きが出来るのか分からないが、原因究明をするようにじっと紺色のハロを見つめる。
もう一度、気のせいでないのなら名を呼んで欲しかった。

<ハロ、ハロ>
「ねぇ、今、何て言ったの?」
<アーソーボ〜♪>
「ねぇ」
<ハ〜ロ〜♪>

しかしハロにミーアの言葉が通じる訳も無く、ミーアはもどかしく思う。
それでも根気良く紺色のハロが別の言葉を言うのを待った。

<ミーア〜♪>
≪Meer〜♪≫


102 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 19:02:15 ID:???

紺色のハロに呼応するように赤いハロもミーアを呼んだ。
やはり、呼んだのだ。

紺色のハロはラクスの物かと思ったが、そうではないらしい。
根気良く待っていると、紺色のハロの喋れる言葉の数が少ない事に気付いた。
赤いハロもミーアの名前が追加されている以外変化が見られなかったが、それでもミーアは色んな言葉をこれまでハロに覚えさせて来たが、その言葉の量が明らかに違う。
作られたばかりなのだ、この紺色のハロは。

こんな事が出来るのは・・・ミーアは一人しか知らない。

どうせなら直接手渡してくれたらいいのにと思うと、まるでそのハロが「彼」であるかのように、頬を膨らませて指先で突いた。

胸一杯の幸せを噛み締めて。






「それでは参りましょう」
「キラはどうしますか?途中で拾いますか?」

ラクスの為にドアを開け、乗り込んだのを確認して閉めながらイザークが尋ねると、ラクスはイザークを見上げて微笑んだ。

「いいえ、キラも今は夢中でしょうから」
「そうですね。今日は外出の予定も無いからの判断でしょう」

イザークは助手席に移動して乗り込む。
シンもまたそれに続いて運転席に乗るとシートベルトを締める。

「ではこのまま直接議場に向かえばいいんですね?」
「はい、お願い致しますわ」

ラクスが後ろで頷いたのを確認してシンは発車する。
折角髪を後ろで一つに整えたのに、オープンカーだとそれも台無しだなと思いながらシンは思う。
と、高級住宅地を走っていたので忘れていたが、オープンカーで街中は走っていいんだろうかと不安になる。
ラクスは有名人だ。
それも半端じゃない程の。

だというのにこんな目立つ車でいいんだろうかと思うと、走りながらちらりと隣のイザークに視線を向けた。
流石に後ろにラクスが居る状況で眠るつもりはないらしいイザークがシンのもどかしい視線に気付いてちらりと目を遣る。

「あの・・・何処走って行きますか?」
「お前の知る限りの裏道を行け」
「わたくしは普通に行っても構いませんよ?」
「いや、そればっかりは・・・」


103 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 19:04:48 ID:???

無謀過ぎる。

議場近くは一般人の行き来が無いので安心だが、どうしても街中を走らなければ議場には辿り着けない。
しかし余りアプリリウスの地理に疎いシンにはイザークに言われて直ぐに思い浮かぶような裏道を知らない。
最初はどうにかしようという気持ちがあったのだが、次第に面倒になって来たシンが顔を顰めて投げ遣りに言う。
「あーもー。俺も分からないんで、堂々と真正面から行きます。街中に入ったらなるべく信号機に捕まらないようにするんで、議長は後ろで寝てて下さい」
「議長になんて事をさせるんだ!」
「まぁ、面白そうですわね。かくれんぼみたいで」
「議長!」
とにかくラクスの目立つピンク色の髪を隠せればどうにかなるだろうと自棄になって提案したのだが、案外すんなりと意見が通ってしまった。
一瞬「いいのか?」と、思ったが、他に浮かばなかったのでイザークの怒鳴り声は綺麗に無視して「じゃあ、街中に入る時に声を掛けるんで、寝てて下さい」と、ラクスに伝えた。

そして本当に街中を突っ切る時にラクスは後部座席でキラのお弁当を守るように抱いて横になり、シンは信号機に引っ掛からない為にかなり無謀な運転をして何度もイザークに叫ばれた。

議場前に到着した時、イザークは乱れた髪を直そうともせず気持ち悪さに胸を抑えて顔を青褪めさせ、ラクスは横になっていたので酔う事は無かったのだろう。
「少しハラハラ致しましたわ」
と、楽しそうにシンに声を掛けた。

「お前は、カーナビを活用、するという、事を覚えろ」

吐き気もするのか、口元を手で隠したイザークが変なところで言葉を区切りながらうんざりとシンを睨む。
気分の悪そうな弱々しい言葉に負けるシンでもないので、イザークの言葉にカーナビに視線をやる。
一度も動かしてないので画面は立ち上がってもいない。
「MSにカーナビがついた時に活用します」
「その前に俺の家に車を届ける時、に使え。後で、家の者に言っておくから」
「了解」
そしてシンは一度ラクスに視線を向けた。
本当はミーアの事に対して何も言えなかった事がまだ心に引っ掛かっていたのだが、だからといって今すぐに短い言葉で言い表せるのかと言われたらそれは難しかったので何も言わずに車を発進させた。

特に車で行きたい場所もなかったのだが、折角の高級車である。
どこかドライブに行こうかと思った時、渡し忘れたラクスへのプレゼントの存在を思い出した。
折角会えたのだから渡しておけば良かったと今更になって後悔に眉を寄せる。
しかし同時に苦しげに泣くミーアの顔が思い浮かんで・・・・。

シンはもう一度ラクスのプレゼントを買った店に向かった。


ラクスと彼女の繋がりが何であるのか、どれほど深いものであるのか分からなかったが、どう見てもラクスの血縁者と思って間違いは無いだろうと予測する。
なら、ラクスに用意した物と同じ物を、彼女にあげた方がいいのだろうかと思っての判断だった。



<続>

104 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 19:07:30 ID:???
************************
随分とお待たせ致しました。
今回こそ誕生日前日は終わらせようと思っていたのですが、自分の時間の都合上結局あと一回書く事になりそうです。
それかもうこれ以上は書かずに誕生日当日を書いてしまうか。
シンとエザリアを会わせたいというのが自分の中にあっての次回なのですが、ちょっと考えてみます。
そこまで色んな人に会わせる理由も無いので。
ラクスのハロと、ミーアのハロの存在はいつもうっかりと書き忘れてしまいます。
あまり文章中に入れると話の腰が折れてしまうので入れにくいですから。
それでもミーアのハロはラクスが預かっていたので、ミーアに返してあげなくてはという意図もあって今回の話です。
あと、ラクスがまた暗躍している事項があるので、その伏線の為にも。
アスランの性格から考えて「喜んでくれるのならまた作ろうか」というのがあると思うので、(トリィ然り、ハロ然り)アスラン作、ミーア用のハロを用意してみました。
ラクスのハロにネイビーがいるのは分かっていたのですが、ラクスが持っていない色を探す方が大変そうだったので、此処は開き直ってアスランの髪の色のハロにしてしまいました。
しかし、まだラクスのピンク以外のハロは彼女の元に戻って来ていません。
ラクスが議長となった今、戻ってくるのは時間の問題だと思うのですが、それを書く事は無いと思います。

105 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/20(土) 15:38:19 ID:???
GJ!

106 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/20(土) 22:53:53 ID:???
>>104
登場人物が皆生き生きとしている感じがして好きですよ〜。これからも頑張って!

107 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/20(土) 22:57:10 ID:???
シンラクシンラク!

108 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/21(日) 19:17:38 ID:???
あげます

109 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 19:59:07 ID:???

車での買い物というのは、荷物の大きさや量を余り考えなくていい。
これがバイクであったなら一気に物を買うという事が出来なかっただろう。
それを思うと今日は車を借りれて運が良かったなとシンは思う。

最初は2ヶ月だけのつもりだったヴォルテール勤務が一度もアプリリウスに戻る事無く3ヶ月目に突入した事もあって、買い溜めておきたい物が結構あった。
おまけにシンのような年若い少年が高級車に乗っているという事が人目に付いたのか、特に意識しなくとも注目されているのが分かって、これは気分が良かった。

一度買い物を済ませて大きな荷物だけ部屋に置くと、バイクの充電器を外す。
簡単にバイクの状態を確認すると、何処にも異常が見られなかったので取り敢えずはそれに安堵する。
部品交換が必要な場所がないかとも点検してみたが、また明日が終われば当分は宇宙生活である。
次にいつ帰れてバイクに乗れるのかが分からなかったので、余程悪いところが無ければ我慢しようと心に決めて点検したが、今すぐ部品を交換しなければならない所は無かった。
宿舎の中に入って今日偶々休みの知り合いでバイクにも詳しい人間を見つけ、自分の留守の間のバイクの管理を頼む。
暫く使っていなかったので探すのに手間取った合鍵を渡してシンは再び外に出てちらりと遠くに見える格納庫を見た。
まだあそこにキラが居る筈である。
しかしシンは直ぐに視線を外した。
キラとは然程仲が良い訳ではない。
気に掛ける理由も、世話を焼く理由も無い。

ラクスが気にしていないのなら自分もまた気にしなくてもいいだろうとエレカの元に戻り、イザークの屋敷を地図で検索した。

「うわ」

地図でも分かるその敷地の大きさにうんざりとしながらシンは道順だけ頭に叩き込む。
自分達よりも2期上のアカデミー赤服卒業者は皆優秀で、その家柄も特に優れた者達によって構成されていたというのはアカデミーに入った当初から耳にタコが出来る程に聞かされていた。
だからこそアスラン、イザーク、ディアッカの所作が同じ男としても洗練されていると思う事は多々あった。
アカデミーで叩き込まれた所作は皆同じである筈なのだが、その中でも切れのある所作には無駄が無い。
それは優美とは違った意味で男から見ても綺麗だと思えた。
その中でもディアッカの所作には所々で微妙な、本当に微妙としか表現出来ないような色気を醸し出している。
これはシンの芸術面でのボキャブラリーが乏しいからなのだが、他の者が表現するなら「繊細」「幽玄」という言葉も出て来たかもしれない。
顎の引き方、肘から手首、そして指先の動きの細やかさが少々骨ばった男の腕から作り出される様は何とも不思議な感じがした。
そして細々とした事に気の付く所があって、飄々と笑っていて・・・。

そういう所を女の子が好むのだろうかと考えたが、そんな事はシンには分からないのでルートを確認するとカーナビの電源を切り、エレカを出発させた。





110 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:00:29 ID:???


「貴方がイザークの、部下の・・・?」
「・・・シン・アスカです」

ジュール邸と到着した途端、だらだらと汗を掻いていた。
目の前にエザリア・ジュールが腕を組み、シンの姿を上から下からと品定めをするように視線を移動させるのが、まるで赤外線のポインターを当てられているようで緊張する。
そしてシンよりも少し背は低い筈なのだが、その威圧感は相当な物で、流石はイザークを育てた母なだけはあると妙に納得した。
エレカを置いたら早々に立ち去るつもりだったのだ。
しかし、宿舎までの足が無いだろうから送るようにイザークに言付かっていると、執事らしき初老の男性に呼び止められてまごついている間にエザリアが遣って来た。
シンもモニターで何度も見た事がある本物に戸惑いつつ、しかしモニターではアップになる事が多かった為に思いの外小柄な事に興味が行った。
そして改めて見るとイザークにそっくりの外見と。
これだと誰もが親子だと納得するだろうなと、ほんの少し可笑しくなって。
それが表情に出たのかもしれない。
エザリアが眉を寄せたのを見て、慌ててシンは口元を引き締める。

「ジュール隊には貴方のような年若い者が多いのですか?」
「はい。他の隊に比べると多いと思います」
「それはあの子の年を考えると仕方の無い事なのかも知れないけど、舐められた事」

苦渋に眉間の皺を深くしたエザリアの悔しそうな呟きにシンは思わず不機嫌になる。
まるでザフトが若輩者をイザークに押し付けているような言い方がシンの勘に触ったのだ。
確かにジュール隊の、主にイザークが直接指揮を執り動かすパイロットはイザークとそう年齢の変わらない者ばかりだ。
イザークよりも年上の人間の数の方が少ないと言っていい。
しかしだからといって実力がない訳じゃない。

「俺・・・自分は、それでも最新機に乗っています。在籍期間だけで実力は測るもんじゃないと思いますが」

かっと頭に血が上ると反射的に語調強く反論してしまうのは自分の悪い癖だ。
それはシンにも分かっていたが、だからと言って此処で黙ってしまうのは自分や、レイ、ルナマリア、そしてジュール隊自体の実力が無いのだと認めるようでそれだけは断じて譲れなかった。
自分達のプライドを守って何が悪い。
シンの反論に驚いたエザリアははっとシンを見上げる。
そしてシンの意志の強さを示すような深紅の瞳の奥を覗き込むようにじっと見つめると、不意に唇の端を持ち上げた。
それが上手い戦略が思いついた時のイザークと同じ底意地の悪い顔だったので、シンは僅かに「嫌な予感がする」と、身構える。

「貴方が乗っている機体は何かしら」
「・・・・デスティニーです」
「成程。吼えるだけの機体は与えられている、という事。あの悪魔のような機体に乗る者がザフトの最年少者というのは聞いていたけれど・・・・」

エザリアの口調が固い物に変わる。
深い思考の波に揺られるような、現実味の無いうわ言のような呟きにシンも答える言葉が浮かばない。
もう最高評議会との関わりを持っていないように思っていたのだが、それでもデスティニーを「悪魔のような機体」と評するからには機体に対するある程度の情報をエザリアは握っているのだろうと思う。
世の中何がどう繋がっているのか分からない。
政治家は色々と民衆の知らないところで暗躍しているという話は何度も聞くが、どこかそれは別世界の出来事のように思っていた。
しかしエザリアが深い思慮を持って呟く様に案外嘘ではないのだろうと思ってしまう。
シンが一番身近に接している政治家がラクスだったというのもあるのかもしれない。
ラクスはどんな時も笑顔で通信に出ていたり、茶目っ気というのが前面に出されている事が多い。
その為、目の前のエザリアの方が余程「政治家らしい」と、不謹慎にも思ってしまう。

111 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:01:48 ID:???

ただ返答に困り戸惑うシンの様子に先程までの激しさは無い。
それに気付いたエザリアは意地悪く下から覗き込むように首を傾げながらシンを見上げた。
何処か妖艶な雰囲気すら見せるその視線にシンは不覚にもドキリと胸を弾ませる。
年上の女性が好みという訳ではないのだが、シンだって男として純粋に美人には弱い。

「どうしてわたくしがデスティニーについて知っているのか知りたそうなお顔だ事。ヴォルテールはわたくしも設計に関わった戦艦。
分野は違えど構造的な問題、資材の関係で他の分野の資料を手に入れる事などままある事。特に、運搬するMSの最新の構造も細かに知らなければそれに合った格納庫も用意出来ないでしょう?」
「・・・ヴォルテールの、設計?」
「あの戦艦自体もそう古い物では無いのだけど、最新の構造がザフトで設計される度に一番の実験艦としてヴォルテールを改造するようにわたくしが根回しをしていると言えばお分かり?」

だから、インパルス用の射出機もあのヴォルテールにはある。

シンが初めて乗った戦艦がミネルバだった事もあり、戦艦にインパルス用の射出機があっても何も不思議には思わなかったのだが、よくよく考えてみればインパルスはザフトで初の合体構造を持つMSだ。
他の機体とは違った形で発進するので、それ専用の射出機が必要なのだ。
そしてインパルスの利点は破損箇所があった時、修理の際に掛かるコストが少ない。というのがあるのだが、利点があればその分の問題点もある。
それが、この専用の射出機が必要等の格納庫の問題だ。
もしこれが他の戦艦で修理をしなければならないという場合、まず規格に合った格納場所を確保出来ない為に合体を解除する事が出来ない。ミネルバでは合体を解除してからの着艦も、着艦してからの合体解除も可能だったのだが、それには当然解除専用の機材があったのだ。
これが他のMSと同じように格納しなければならないとなると、合体解除がまず出来ず、修理の際には余計な手間とスペースが必要になり、他のMSよりも確実にコストが掛かる結果になる。
だからこそこのヴォルテールに配属になるまではインパルスはザフトの軍施設に直接戻っていた。
デスティニーにこの合体構造が採用されなかったのは勿論全ての機能を搭載する上での設計上の問題もあったのだろうが、ミネルバにはインパルスがもう既にある以上、他に合体構造のMSを置くスペースが無かったのだ。
他に前線に立っていた戦艦では合体構造を持つ戦艦は他に無い。

しかし、このヴォルテールには、インパルス用の射出機もあれば格納庫もある。格納庫内での分離も可能だ。
それを不思議に思った事は無かったのだが、指摘されれば確かに変だった。

まさかその理由を此処で知る事になるとは思わなかったのでシンは驚きに目を見開き、返す言葉を無くして呆然とエザリアを見返した。
少し血気盛んなシンが勢いを無くして大人しくなった事に満足したエザリアは踵を返しながら流し目でシンについてくるように促した。

「話が長くなりそうだからいらっしゃい。色々教えてあげましょう。わたくしもイザークの話が聞きたいわ」

くいっと顎を上げた仕草につられてシンはジュール邸に招かれた。



112 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:04:28 ID:???


ジュール邸の庭は、クライン邸の庭ともまた違い、噴水や人工的な小川などの水を多く使った庭だった。
この洗練された庭を見ると、確かにクライン邸の庭がまだ完成されていない庭なのだと言っていた意味が何となく分かった。

その東屋には屋内に置いていてもおかしくないような籐のソファが置かれ、その前にはソファに合わせた背の低いテーブルが置かれてあった。
肘掛にゆったりと体を預けて座るエザリアの寛いだ様子に妙に緊張してしまう。
浅くスリットの入った絹のスカートから覗く白い足は膝下しか見せていないのだが、それでも十分に刺激的に感じる。
いつもルナマリアの短いスカートから見える足を見ても何とも思っていなかったのだが、状況やその女性の雰囲気によって見え方が違うものなのかもしれない。

「ヴォルテールの話だったわね。ヴォルテールは宇宙専用艦だったから地球に降りる事は出来ず、インパルスを搭載させるには不適格だと当初は判断された。
それは当然だろうとわたくしも納得したのだけど、これからどう分離型MSが発展していくかが分からなかったからヴォルテールの射出機はそのまま残したわ。本来であれば実装実験が終われば必要が無かったのだけど」
「でも、それなら大掛かりな改造だったんじゃないですか?」
「そうね、確かに一から戦艦を設計するよりも遥かに面倒で手間の掛かる作業だったけれど、それ自体も実験のような物だった。改造の為の設計図を起こして、期間と経費がどれ程掛かるのか。
ある程度は計算機で算出されるけれど、やはり実際に行って分かる苦労や問題点もあるでしょう?それを見るには適切だったわ」

ヴォルテールはミネルバとは違った推進力に重点を置いた、どちらかというとエターナルの流れを汲むタイプの違った戦艦だったというのも実験の内にあったのかもしれない。
予想外の所で目から鱗のような話を聞かされているシンは先程からザフトの秘密を聞かされているようで少し落ち着かない。
まだ16歳の少年には受け止めるには大き過ぎる話だというのもあるのかもしれない。きちんと聞いては居たがイマイチ現実として受け止められずにいた。
それでもエザリアの話は面白いので中断しようとも、話を変えようとも思わなかった。

「インパルスのような優秀な機体を多く作るにはパイロットの能力も、人材も資材も足りなくてコストが掛かってしまう上、全戦艦の改造が求められるから中々分離型のMSは発展しないのではないかというのが今のわたくしの意見なのだけど、
MSの設計者の中には分離型に拘っている者も居る。まだまだどうなるか分からないわね」
「はぁ・・・」
「難しかったかしら?」
「いえ。俺はパイロットの勉強しかしてなかったので、他の設計とかの話は全然で・・・」
「イザークも同じように言うのよ。アスランはそこの所は話が合っていいのだけど。簡単な話、戦艦としてはMSは立たせていた方が楽なの。
もう勝手が分かっているから。分離型だと幅を取ってしまって、縦に並べる為の装置に関しては今の所紙上と口論でしか実現していないから、実装まではまだまだ時間が必要でしょう」

あんまり簡単になったような気がしないのだが、それはやはりシンに基本的な知識が無いからだろう。
専門家の「簡単」と全く知識の無い素人の「簡単」とは感覚が違うのはシンにも覚えがあるのでそこには触れずに何となく受け流した。
エザリアもシンが受け流した事に気付いたようだが、それを突っ込む事はせず、微笑を浮かべた。

「ヴォルテールは他にも色々と手を加えているからバランスのある所もあるけれど、宇宙での足の速さではトップレベルの面白い艦。
他の艦とは違って防御面での強度は劣っていたり搭載機数に問題があるけれど、それでも少数精鋭を目指すあの子には丁度いい艦だと思うわ。その内また改造する予定があるから、その時はまた楽しみにしてくれるといいけど」
「実験艦を実践に使ってるって・・・そんなにザフトって財政的に困ってるんですか?」

こんな質問していいのだろうかと微かに脳裏を掠めたが、もう口に出してしまったのを取り消す事は出来ない。
イザークと同じ白い肌に鋭い瞳の、見る者にキツイ印象を与える容貌のエザリアだが、イザークを知る限り言えない事は言えないとハッキリと言ってくれそうでつい遠慮も無くなる。
エザリアはまさかそのような印象をシンに与えたのかと瞬きを繰り返し、不意に吹き出した。
口元を手で覆い、軽やかに笑う姿は今年20になる息子を持つ母親には見えず愛らしく、シンはまるで彼女の年若い恋人にでもなったような気がして複雑な心境になる。


113 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:06:09 ID:???

「たった一人の可愛い息子を戦場に出す事を考えれば、母親としてやれる事はすべてやってあげたいと思う物。だから実験とは言っても最高の装備を付けさせているつもりなのだけど」
「でもバランスが悪いって・・・」
「とにかくスピードに特化した戦艦に仕上げてある以上それに伴う弊害はかなり無視しているから」
「何でスピード重視の戦艦にする必要があるんですか?」
「あの子の希望なのよ。現場に一番に駆けつけられる足が欲しいという、ね。わたくしとしてはもう少し強度を上げたい所なのだけど、そうするとどうしても足が遅くなってしまうからそれは嫌なのですって」

きっと現場に到着すれば艦は引き返らせてMSで飛び出すつもりだからだ。と、シンは中りを付ける。
MSで敵を殲滅し、戦艦に近付けさせない自信があれば強度など大して必要無い。それよりも逸早く現場に到着し、敵の行動を抑える事こそ重要と思っているのだろう。
らしいといえばらしいそのコンセプトに、良く考えれば自分が乗っているMSには興味が行くが戦艦にまではさして興味が無かったと気付く。
今ではディセンベルエイトの近くに駐留しているヴォルテールは、見事にその特性を生かす事無く宇宙をのんびり漂っているから仕方ない。
足が速いと思った事も無ければ防御が弱いなんて知識も必要が無かった。
ずっと軍にいて戦争が終わってからも走り回っていたが、自分も随分戦争の無い時間に慣れて来た物だと思う。

「でも随分隊長の艦をそんなに優先してて良いんですか?」
「会社で一番偉いのがわたくしなのだから、誰も文句は言えないでしょう?ザフトもわたくしの会社の協力無しでは困ってしまう。おまけにあくまで名目は『実験』なのだから、一概に優先していると言ってもメリットばかりではないと思わせておけば問題は無い」

思わせておけば、という事は、かなり優先的に最新技術を逸早くヴォルテールには注ぎ込んでいる事になる。
隠れた最新艦だったのだと知ってそれにも軽くショックを受ける。
おまけに「会社で一番偉い」という言葉からすると、造船業において有名なジュールの名を持つ研究施設は確かにこのエザリアの所有なのだろう。
イザークは社長(?)令息という事になるのかと思うとこの家の広さにも納得した。
しかし造船業が盛んなのはマティウスシティで、確かイザークの出身もマティウスの筈だ。ならこの家は別荘か何かなのだろうかと想像すると段々色んな事に驚く事自体が馬鹿らしくなってくる。

世の中庶民より数は少なくとも「金持ち」やら「上流階級」と呼ばれる人種は確かに存在するのだ。
接する機会がかなり希少な為余り実感として持てないが。
おまけにシンの知る上流階級に値する人間がラクスのような天然で無謀なお姫様であったり、アスランのように根暗でじめじめとしているのに偉そうなメカオタクであったり、
イザークのような切れ易くて無駄に偉そうな扱いの面倒な上官であったり、ディアッカのように妙に親しみやすくて育ちの良さを感じさせないような先輩であったりすると、更に実感をしようにも無理な話で。
しかし、目の前のエザリアを見ていると別世界の人間のような気がするのだから成程と、納得出来る。

と、頭の中で色々と考えている内にエザリアがシンの隣に腰掛けた。
突然距離が近くなった事に直ぐに対応出来なかったシンがエザリアを振り返って少し恐縮する。

「そんなに怖がらなくても食べはしないわ」

そう言いながら真っ赤な口紅を引いた唇が笑みで左右に薄く伸びると、思わずシンもエザリアの唇に目が行ってしまう。
何を意識しているのかとどぎまぎしているとエザリアの繊手が伸び、シンの伸びっぱなしの横髪を耳に掛けた。
急に散髪に行っていなかった事を後悔してしまう。
真っ赤なシンが指一本動かせずに固まっているのにエザリアも気付いたが、それよりも哀しげに眉を寄せた顔でシンを見つめた。

「あの・・」
「貴方位の年頃からだった・・・」
「は・・・?」
「貴方はご両親との思い出は沢山あって?」

ずきり。


114 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:07:26 ID:???

胸が痛んだ。
思わず膝の上に綺麗に乗せていた両手を握り締め肩を強張らせて俯く。
ぎゅっと瞼を閉じて唇を噛み締めたシンの様子に、エザリアは直ぐに聞いてはならない事を聞いたのだと察して髪に触れていた手を離す。

「・・・父も母も忙しくて中々休みが取れなくて・・・・。でも、アウトドアが好きでキャンピングカーを借りて・・・休みが取れたら妹と4人で山とか、川とか遊びに行きました」
「そう・・。ご両親の事、愛している?」
「それは、当然」

両親がいなければ自分は産まれて来れなかったから。

ぽつりと小さく呟くシンの様子にエザリアも苦しげに瞳を閉じた。
彼女の脳裏に浮かぶのはシンと同じ年頃の時のイザークの姿。
虚勢を張って自分は一人前だと言い張って、エザリアにとっては手の掛からない子供だった。
何も相談事も持って来ず自分一人の判断で自らの人生を切り開き、そして何かしらの成果が上がれば自慢げに報告をした。
裏切っていたエザリアの姿を見ても、それを咎める事無く自分を見て欲しいと密かに主張してくれていたイザークに気付けなかった当時の自分を振り返ると、エザリアもまたシンと同じようにその目尻に涙を浮かべた。

「ずっと、・・・ご両親の事、愛して来たのね」
「これからも、です」
「・・・えぇ、そうね」

子供は親の事になると酷く繊細で、いつまで経っても「子供」なのだ。
親は一生子供の親であるように。
独り立ちしたといって、この事実が消える訳でもなければ、絆を失う物でもない。

「もし・・・・ご両親が。・・もし、貴方に嘘を吐いていた事があったとしても?」

聞かずには居れなかったのだろう。
嗚咽を堪えてこみ上げる感情を抑えた少年に尋ねるのは酷だと脳裏を掠めたが、シンはそんなエザリアの想いに気付く事無く喉の奥を痙攣させて懸命に首を左右に振った。
脳裏には優しく笑ってくれる両親の姿があり、妹の姿があり、そして幸せだった自分の姿があった。

自分は本当にあの家族の中で愛されていて、同時に自分も深く愛して来たのだと再確認してしまうと涙を堪えるという事すら出来なかった。

膝の上に幾つもの小さな染みが出来る。
顔を左右に振っているからエザリアにも涙の雫が飛んだようにも感じたが、それを謝罪しようにも喉が痛くて熱かった。
嗚咽の声を聞かれるのは恥ずかしい。

「嘘、吐いていたとしても、それは、きっと俺達の為の嘘、だから!」
「・・・ごめんなさい、ごめんなさい」

エザリアは目の前のシンにイザークを重ねて謝罪し、抱き寄せる。
イザークに一番構ってやれなかった頃の年頃の少年を見ると、どうしても後悔の念が先に立つ。
自分は自分がイザークに嫌われたくなくて、責められたくなくて嘘を吐いていた。
それにイザークが薄々気付いている事も、外では相当荒れて居たという事も知っていたが、自分の前ではいい子で居ようとするイザークに甘えていたのだ。
しかし、きっと心の中ではこの目の前のシンのような大きな悲しみを抱いていたのと同時に、信じても居てくれいたのだろうと思うとそれだけで苦しくなる。
そしてシンはエザリアの二の腕を掴んで大きく肩をしゃくり上げた。
口調は全然違うが、深い愛情を持ったエザリアに母を重ねた。
シンは両親を無くしてから成長期を迎え、背も大きく伸びた。それもあって、母親を小さいとは思った事は無かったが、きっと今母が居てその体を抱いたならこのように細く小さく感じるのかもしれないと思うと、それもまたシンの心を締め付けた。

115 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:08:38 ID:???

知りたかった。

もし、母親が生きていたらこのように小さく思っていたのか。
もし、父親が生きていたら力比べでもしていたかもしれないのか。
もし、妹が生きていたらもっと守れるようになっていたのか。

もし・・・・!


「お母さん・・・・!」


一度も口に出して言った事が無かった。
いつでも言えると思っていた。
そんな事を口にするのは恥ずかしくて、笑われるとも思っていて。
いや、それ以前にそれを意識して言おうと思った事が無かった。


しかし、今は言っておけば良かったと、後悔している。


「お母さん・・・・・・・ずっと、好きだよ・・・・!」



エザリアのシンを抱く腕が強くなった事が、哀しくて、嬉しかった。






116 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:10:04 ID:???



「・・・・お前・・・。何でウチに居るんだ?」
「あ、隊長。お邪魔してます」

もうそろそろ翌日になろうというその時間に帰って来たイザークが、自宅の居間のソファの上に足を乗せてテレビを見ながらデザートを食べているシンの姿に体を震わせた。
エレカを届けろとは言ったが、ついでに泊まって行けとは一言も言っていない筈だがと眉尻を吊り上げる。
何しろシンが着ているのは自分の夜着だったりもするのだ。
という事は風呂も入ったんだろうかと想像するが、それを確認しようとは思わない。
シンは天井を見上げる。
エザリアは翌日が早いと言ってもう就寝している。

「隊長のお母さんに泊まって行けって言われて」
「何でそうなる!」
「宿舎の飯が不味いって話をしたからっスかね?」
「疑問で返すな!」
「アスランの部屋のベッド使っていいって言われたんで今日はそっちで寝ます」
「だったらとっとと寝ろ!そして翌日になってさっさとパーティに行け!」
「いや、流石に隊長より先に寝るのは拙いのかなぁと思ったんですけど」
「その心積もりで居たのならまずデザートを置け!ソファの上に足を置くな!立って敬礼の一つでもして見せろ!いや、敬礼はもういい!今からするなよ!」

イザークの怒鳴られるままにデザートを置いて、ソファの上に乗せていた足を下ろして立とうとした所で止められた。
注文が多いとシンは眉を寄せるが、今日は沢山泣いて胸の痞えが取れた感じがしているので不快には思わず反論はしなかった。

「隊長のお母さんって、いい人ですね」
「馴れ馴れしく『お母さん』なんて言うな!」

イザークは上着を脱ぎながらうんざりと反論すると、シンは楽しげに笑った。
そのいつもとは違ったシンの反応にイザークは眉を顰めてシンを訝しげに見る。

「貴様、何があった?」
「いえ、別に何もありませんけど」
「・・・・最近母上は野良犬を拾う趣味でも出来たのか・・・・?」

誰が野良犬だ、と、シンは唇の端を引き攣らせるが反論はしなかった。
確かに自分でもエザリアに拾われた感じがしなくもなかったからだ。
しかし、久し振りに「家族」というものに触れたシンは楽しかった。
イザークを待っていたというのも上官だから、というよりも、就寝時間などの制約無く誰か「家の者を待つ」という事をしたかったからだ。

少しだらしない事をして。
誰かが居る空間で。
「共同生活」とも違う事を。

「良かったのか?」

突然のイザークの言葉にシンは自らの思考の中に居た事に気付いた。
そして何が「良かったのか」が分からず首を傾げると、もどかしげにイザークがちらりとシンを見た。

117 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:11:12 ID:???

「折角の休日を、こんな所で!」

もっとやりたい事があったんじゃないのかと言いたいのだと察してシンは今日一日を振り返る。
なんだか慌しい一日だったが、今日はずっと誰かと一緒に居た。
ヴォルテールでは皆忙しくてゆっくりと語り合う時間も無ければ、仕事以外でずっと誰かと一緒に居るという事も無かった。
それを考えれば自分は案外休日を満喫したのではないかと思う。
誰かの心配をして、誰かに心配されて。
心の触れ合いがあった事がシンにとっては一番の癒しであったから。

「休みは明日もありますから」

照れ臭そうな笑顔でシンは答えると、イザークはまさかそんな顔をされるとは思っていなかったのか軽く驚いた様子を見せて、直ぐに眉を寄せた。

「そう思うのならとっととそれを食べて寝ろ!俺はもう寝る!」
「はい。おやすみなさい」
「・・・ふんっ」

つんと顎を上げてエレベーターに向かうイザークの背を見送って、シンはテーブルの上のデザートを見下ろした。
バニラアイスが溶けてイチゴを白く濡らしている。

今の中の会話で自分がいつもよりか少しイザークに対して素直だったような気がしてくすぐったくなる。

虚勢を張らなくていいのは凄く楽で。
自分の本当の姿とはこんな感じなのだろうかと思ってしまう。


・・・・はたり。

はたり。はたり。


涙が、落ちた。

しかし、また自分はMSに乗る。
宇宙を翔ける。

戦争が無くなる世界になるまで。
もう自分のような哀しい人が出なくなるまで。

また素直な自分は閉じ込めてしまおうと、思った。


それが、シンの決意。
家族への、愛情の示し方。


<続>

118 :鬼ジュール:2006/05/22(月) 20:12:17 ID:???
************************
再びオリジナル設定溢れる回となりました。(それを言ったら毎回なのですが)
エザリアと会わせようかどうしようか悩んだのですが、シンが宿舎で一人寝る描写を書くのが切ない気がして会わせる事にしました。
無印種の時にアスランが宛がわれていたのは狭い部屋にベッドと机と内線と端末、そしてシャワールームという構造だったので、恐らくシンの部屋も同じだろうと推測。
軍人である以上、生活に必要な物以外は余り置くスペースは必要無いという発想で宿舎はあるのではないかという事で考えると何とも味気ないので。
もう少し誰かと関わりを持って生きて欲しいと思った結果だったりします。
そしてヴォルテールの中でのインパルスの事は、実は前々から「どうしよう」と、思っていました。
ミネルバでもインパルス専用の射出機があったので、きっとインパルス用の装置が必要なのだろうとこれもまた推測。
しかし、当然そんな物がヴォルテールにあるとは思えず。
当初はインパルスも合体したまま格納されている事にしようかとも考えていたのですが、折角造船業においてのスペシャリストのエザリアを出すならと、都合良くヴォルテールは改造されている事にしました。
エザリアは身内贔屓な所があるキャラクタのようなので、これには問題は無いだろうという判断しました。
そしてエザリアの口調が前回とは違った印象を持っているのはワザとです。
最高評議会の時にはアイリーンにも負けないような固い口調でしたが、イザークと話していた時にはそんな口調も少し柔らかくなっていた印象があったので。
ヴォルテールが速度に重点を置いた艦であるというのは、もう完璧にオリジナル設定です。
外観の図も無いのでこれは自分の自由に出来るだろうという事で。C.E.71以降に造られた艦で、エターナルとヴェサリウスの中間のような鳥の姿を思わせる外観にしようと決定。
色までは考えていないのですが。
しかし足が速いという事に関しては全く根拠が無い訳でもなく、ユニウスセブン破砕作戦の際にあんな大きなユニウスセブンに対して破砕に向かったのがヴォルテール一隻だったというのがあります。
明らかにメテオブレイク(でしたっけ)の数が足りないのに他に支援の戦艦は無く、イザークは宇宙軍事ステーションからの出撃の割には近くを通ったミネルバに出撃要請が出る状況という所から「足が速いのだろう」と。
破砕機はステラ達に壊されたからというのもあるにしても、出撃MS数自体も少ないという所から搭載機体数も少ないとしました。
防御が弱いというのは最終回前の「後は下がっていろ、死ぬぞ!」というイザークの台詞からです。
当然これもエターナルとキラとアスランのミーティアの威力を知っているからの忠告なのでしょうが、それでもミネルバはアークエンジェルやエターナルに立ち向かっている訳ですから、防御面はミネルバに劣るのだろうと推測。
戦艦自体の装備も余り無い、内部構造に力を入れた艦にしようと思いました。
なので運搬専用艦のエターナルの流れを汲んでいる、という説明を入れました。

そして再び出したエザリアとパトリックの浮気疑惑の話。
折角出したのだったらもう少し有効活用しようと思っていたので今回出しました。
子供の心を知りたいと思うエザリアに振り回される形となっていましたが、当然そんな事はシンも気付かず。
しかしそのおかげで擬似家族のような体験が出来た休日となりました。

ディアッカの所作が美しい理由は勿論日本舞踊の所作を得ているからです。
日本舞踊などは男舞、女舞関係無く叩き込まれます。(歌舞伎や能の流れを汲むからだと思っているのですが)
その為ディアッカも当然女舞も踊れるだろうという推測から、指先の細やかな動きや首振りも会得しているだろうとしました。
しかし日舞の世界では「首振り3年」という言葉があるらしく、首を右に傾げて頭を回し、左に傾ける(繊細な動きですのでこの表現は適切ではないのですが)
という動きだけで体得に3年も掛かるという事ですので、ディアッカが3年以上日舞をやっているというのを前提としています。
きっとヴォルテールにも舞扇を持って来ていると思っているのですが。

次回はまたラクスに視点が行きます。


119 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/22(月) 22:07:45 ID:???
大丈夫か?この後書きは異常。メンヘルだろ…病院に行けよ

120 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/22(月) 22:45:23 ID:???
後書きを微笑ましく見ている俺は異常www

121 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/22(月) 23:22:35 ID:???
>>118 GJ
 あなたが書く文章が私は好きなんだなあ、と実感できた。これからも楽しませてくれると無茶苦茶嬉しいっす。

122 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:30:56 ID:???

星明りだけが窓の中に差す部屋のベッドの上でうとうととしていた。
腹の上のハロもミーアの動きや声を暫く感知しなかったので自然と休止モードに切り替わっていた。
と、そこで「カチャリ」と、小さな音が立った事でまず紺色のハロが反応を示した。
緑の目が点滅するとそれに呼応して赤いハロも耳をパタパタと動かした。

≪Lacus〜♪≫

「ん・・・・?」

ミーアもその声に瞼を擦りながら扉に視線を向けると、ラクスが困ったように後ろ手で扉を閉めていた。

「ミーアさん。起きていらっしゃいましたか?」
「・・あ、はい・・」

少しうとうととしていた事を誤魔化してミーアが体を起こそうとすると、ラクスがそれを手で制した。
そしてベッドに近付くと、ミーアの腹の上の二体のハロを見下ろしてくすくすと笑う。

「まぁ、わたくしが驚かせようと思っておりましたのに、勝手に出て来てしまったのですね。アスランはこのハロちゃんにも鍵を開ける能力を付けたのでしょうか」

≪Sorry〜≫
<ハ〜ロ〜>

「仕方ありませんわね。わたくしもお昼はすっかり忘れていたのですもの」

まるで会話が成立しているようなラクスとハロのやり取りに、ミーアは戸惑いながらその様子をじっと見ている。
ミーアの戸惑いを感じたのか、ラクスは昼間の言葉通り自分の枕を隣に置いてベッドに潜り込んで来た。
ミーアもそれを手伝うようにシーツを軽く上に上げる。
隣まで移動し、腰掛けたままで紺色のハロを手に取る。
ハロは不安定な場所にいる事を察知して左右に体を揺らしながら耳を動かしている。

「でも、このハロの特別な機能については教えられなかったでしょう?」
「特別な、機能?」
「はい。アスランが貴女の為に追加した機能ですわ。実は非合法な物なので他の方には内緒ですよ?ハロちゃん。アスランからのメールは届いておりますか?」

メール?

ミーアはどきりと胸を高鳴らせ、ラクスの手の中にある紺色のハロを見る。
すると、ハロは何かを探知するように目を点滅させ、ラクスの掌の上でくるくると回った。

<セツゾクフカ、セツゾクフカ>

「やはりミーアさんのお声で無いと無理なようですわ。はい。今度はミーアさんが同じようにハロちゃんに話しかけてあげて下さいな」

ラクスがミーアの掌にハロを乗せると、ミーアは困惑気味にハロとの距離を縮めてじっと見つめる。
しかしハロの瞳を覗き込んでもアスランの意図など分かる筈もない。
恐々と「ハロ。アスランからのメールって、あるの?」と、尋ねる。
するとラクスの時と同じようにハロは緑色の瞳を点滅させ、耳をパタパタと動かした。

123 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:33:05 ID:???


<チャクシン〜♪チャクシン〜♪>

体を左右に動かし耳をパタパタと動かしている様は踊っているように見える。
その愛らしさに思わずミーアも微笑んだが、着信というからには何かメールが届いているのだろう。
ミーアは次はどうすればいいのだろうかとラクスを見ると、ラクスは微笑んで紺色のハロの頭を撫でる。

「音声メールのみの対応ですので、今開いてしまうとわたくしも聴いてしまいますが、構いませんか?」

一瞬恥ずかしいかも、と、思ったミーアだったが、アスランはこれまで説教はしても甘い言葉の一つも掛けてくれた事は無い。
期待するような内容ではないだろうと思うとミーアは少しだけがっかりとしながら「構いません」と、頷いた。

「アスランの説明によりますと、『教えて』『開封』『聴かせて』この三つの単語の内のどれかを言えば自動で音声が流れるそうですわ」
「ハロ、聴かせて」

直ぐにハロに向き直ったミーアの言葉に反応してハロは再び目を点滅させて声紋照合をすると、それまでふらふらと体を揺らしていたのが止まった。
そして小さく「カチリ」と音がしたかと思うと暗い部屋の中にアスランの声が響いた。

『えっと・・・ミーア。これを聞いてるって事はラクスから説明を受けたんだと思うが・・・。実は軍事回線を使用した非合法な方法での超長距離メールなので地球とプラント間でもやり取りが可能だったりする。
俺としては不本意だったんだが・・。いや、こんな話がしたいんじゃなくて。・・・・ラクスに迷惑掛けてないだろうな?あんまり我侭を言うんじゃないぞ。それから食べ物の好き嫌いは言わないように。
夜は遅くまで起きてないで早く寝る事。明日のパーティであんまり羽目をを外すなよ。明日は少し遅くなるが必ず迎えに行くから体調は整えておくように。以上だ。・・・おやすみ』

ミーアは聞きながら肩を震わせた。
色気のあるような内容は一切期待していなかったのだが、それでももう少し愛嬌のある、「プレゼントしますよ」的な表現があってもいいような気がする。
腕に力を入れる事が出来ればぶるぶると腕が震える程にハロを掴んで、部屋の壁に投げ付けている所である。
何処までも保護者の立場を守るアスランにミーアはがっくりと肩を落としてハロをシーツの上に置いた。
隣でほんの少しどきどきとメールの内容を聴いていたラクスも余りの色気の無さにミーアが可哀想になる。
ミーアしか聴かないメールで位ならもう少し優しい声を掛けてもいいんじゃないのかと、同じ女の子として思う。

「ラクス様、これ、返信出来ないんでしょうか?」
「わたくしの事はラクスと、お呼び下さいと申しましたのに・・・・。出来ますわ。アスランにしか送れませんが、ハロちゃんに向かって『返信』と言えば録音が開始されて、『終了』で録音終了、『送信』で送れますわ」
「じゃあ、ハロ。返信したいの」

ハロはちかちかと目を光らせてカチリと音がする。
それを聴いて準備が出来たのだろうとミーアはもう一度紺色のハロを両手に乗せて睨み付けた。まるでそれがアスランであるかのように。

「アスランの馬鹿。鈍感。無神経。早く迎えに来てくれなくちゃ怒るんだから。・・おやすみなさい!終了よ、送信して」

<ハ〜ロ〜♪>

送信が終わったのか、くるくるとまた忙しなくハロが踊るように動く。
ラクスは不機嫌なミーアの勢いに押されて瞬きを繰り返す。少し声を掛けるのが躊躇われる。
ミーアはシーツの上にハロを軽く放るとシーツを被り直す。


124 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:34:15 ID:???

「アスランにとってあたしって何なんだろう・・・」
「・・・・きっと、一番大切な女の子ですわ」
「違うと思います」

フォローしようにも直ぐに否定されてラクスも困ったように苦笑する。
ラクスもアスランの口から直接ミーアに対して特別な想いがあるとは聴いた事が無い。
だからこそミーアの戸惑いも理解出来るし、アスランの無神経さには少しは腹が立つ。
しかし、今一番それを感じているのはミーアであるのだから、ラクスは自分の意見は出さずに隣のミーアの髪を指先で梳いた。

「でも、アスランも仕事場に工具を持ち込んで短い休み時間を削って造っておりましたわ。イザークには何度も怒られて、それでも螺子が一個落ちた時には皆で探した事もありましたわ。大切に造っていた物ですもの、可愛がってあげて下さいな」
「・・・・はい。・・・お礼はちゃんと直接会って言います。メールじゃ味気ないから」
「はい」

不貞腐れながらもラクスの前でその姿を見せるのは少し恥ずかしかったのかもしれない。バツが悪そうにラクスを見上げてミーアは小さく呟いた。
ラクスはにっこりと笑って気にしていないという意思表示をすると、ミーアの顔を覗き込んだ。

「それでは、わたくしのお話に入っても宜しいでしょうか?眠くはありませんか?」
「昼間沢山寝ていたから大丈夫です。・・・あの、お話って?」

ミーアが寝返りを打つのを手伝い、ラクスも横になって視線を合わせた。
そして星明りでキラキラと光るミーアの星を浮かべた瞳を見つめて手を握り締めた。

「わたくし、本日は貴女をスカウトに参りましたの」
「・・・スカウト?あの・・・あたし特に特技とか無くって」
「あるではありませんか」

何をスカウトされるのかは分からないが、満足に一人で歩けない現状で、何も出来る事は無いと困惑気味に言うと、ラクスはさして気にした風も見せずに微笑んで見せた。
「ある」と言われてしまうと一応探さずにはおれなくて、ミーアは自分に何が出来るのだろうかと眉を寄せて悩む。
ラクスはミーア自身に気付いて欲しくて何も言わなかったが、いつまで経っても答えに辿り着けそうになかったのでラクスはミーアの手を握り直した。

「ありますわ。貴女の歌が」
「でも、あたし・・・!」

ミーアが逃げるように握られた手を引くが、ラクスはそれを逃がさなかった。
一気に瞳に恐怖を浮かべた彼女の姿にラクスは悲しげに微笑む。
彼女が歌を愛していた事はよく知っている。
彼女の日記に歌に対する愛情が溢れていたから。
しかし今のミーアはラクスの歌を奪ったのだという後悔の念からその愛情を表に出す事が無くなった。

ミーアは自分以上の歌い手だと認めるラクスはそれは勿体無いと思う。
世間に歌を発表して来た時から「歌姫」として周囲に持て囃されたラクスと、名声を得る事無く地道に歌への愛情を追求して来たミーア。
その境遇の違いからも歌に対する覚悟が違う。
ラクスは同じ歌い手として彼女の歌に対する誠意はラクス以上で、それだけでも十分に彼女はラクス以上の歌い手なのだというのがラクスの考えだ。
そのミーアの歌声を、ラクスと偽って歌っていたからといって潰してしまうのは酷く勿体無い。

125 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:35:36 ID:???


歌を愛しているのなら、ずっと歌い続けて欲しい。
自分の分も。

後ろめたさから視線を彷徨わせるミーアの心が落ち着くのを待つようにラクスはじっと見つめている。
ミーアも「では歌わなくていいですよ」と、ラクスが言ってくれるのを待っていた訳でもなかったのでいずれラクスを見つめ返す。

「あの・・・・」
「はい」
「どうして・・・あたしは何をするんですか?」

取り敢えずはそれが分からないとどうしようもないという結論に達したのだろう。
少しは話に興味を持ってくれた事にラクスは安堵し微笑むと、内緒話をするように声を潜めた。

「聞こえは悪いかもしれませんが、ミーアさんにはわたくしのプロパガンダになっていただきたいのです。かつてのわたくし、かつての貴女のように。今度はわたくしの、ミーア・キャンベルに・・・」
「そんな・・・・」

ミーアの求心力を利用したいというラクスの言葉に彼女は反射的に顔を左右に振った。

そんなのは、もう無理だ。

心の傷がじくじくと痛み、後悔の念が溢れ出す。
同時にしゃくりあげ、涙が流れる。
ラクスの姿を得て、デュランダルの理想の為にと信じて歌った日々を思い出す。
皆が喜んでくれたのは嬉しかったが、自分はデュランダルの傀儡であったという自分時便の無知に対する嫌悪感がどうしても拭い去れなかった。
それと同じ物をラクスが自分に求めていると知ってミーアはただただ顔を横に振った。
ラクスはまさか此処まで強く否定するとは思っていなかったので、彼女を落ち着かせる為にもぎゅっと手を握った。

「ミーアさん、違いますわ。今度は何も偽る事無く、貴女として、貴女の歌を歌って頂きたいのです。ミーア・キャンベルとして歌う貴女がわたくしには必要なのです」
「でも、あたし、この顔で・・・!皆きっと思い出すわ!あたしだったって!偽のラクス様が、あたしだったって!」
「落ち着いて下さいませ!」

ミーアに引き上げられるように自らも声を荒げ、ラクスは体を起こしてミーアを見下ろす。
そして星明りで光る涙の跡に胸の痛みを感じて目を細め、ミーアを抱き締めた。
己の身勝手さにラクスはきつく抱き締めながら自己嫌悪に顔を顰めた。

ラクスとミーアでは時間の感覚が違う事を忘れていた。
ミーアは目覚めてまだ1ヶ月程しか経ってないのだ。
戦争が終わったというのも目覚めて突然聴かされて、まだ戸惑う所があるというのに性急に事を進め過ぎたかもしれない。
しかし、ラクスの思惑にはどうしてもミーアの存在が必要で、彼女の体調を考えると出来るだけ早く歌手としての復帰をして欲しかった。
それがミーアの生きる力になるのなら、新たなる道になるのなら互いの為になると思っての提案だったのだが、まだその時ではなかったのかもしれない。

それでも、ラクスには時間が無い。
今ラクスが計画している全てに、より一層の力を持たせるにはどうしてもミーアが必要だから。

126 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:37:20 ID:???

彼女には更に辛い思いをさせる事になるかもしれないが、ラクスは一度唇を引き結んでから口を開いた。

「・・・わたくし、今一つの計画を進めております」



このプラントの国歌を創るという、計画を。



ミーアは耳元で囁かれたラクスの言葉に目を見開いた。
確かに歴史が浅いとは言えプラントは地球からの独立を宣言してからもプラントの国歌というのは作らなかった。
それは「国歌」という感覚が前時代的発想だからという訳ではない。
プラントは地球からの独立を果たしたとは言ってもその裏では未だ地球によって圧力を掛けられている部分がある。
その為、そういった地球の有力者の反感を買わないように作る事が出来なかったのだ。
しかし今の地球は先の戦争で大きなダメージを負っていて圧力を掛けるどころかプラントの力を頼りにしているところがある。
プラントも独立国家として地球と相対するのであれば、国民の意識からプラントは一つになる必要がある。
それには今がチャンスなのだ。


そして、その最初の歌い手を、ミーアにと、考えた。
ミーアの求心力、影響力をもってすれば、国歌は逸早く国民に浸透するだろうという算段だ。
勿論、ミーアが目覚める前は自分が歌うべきかとも考えていたのだが、最高評議会議長という立場を考えるとどうしても参加する時間は割けそうに無かった。

悩んでいるうちにミーアが目覚めた。

これはラクスにとってはとても都合のいい事だった。
ミーアの実力の程はラクスも十分理解している。
今度はラクスの名を使わずともミーアとして堂々と国歌を歌い上げる事が出来るだろうと確信すら持てた。
それからラクスは一刻も早く彼女に伝えたかったのを今日まで我慢していたのだ。
直接面と向かって話が出来る今日を待っていた。

ただ、ミーアの心情を考えていなかったとラクスは彼女の体を抱き締め直す。
きっと喜んでくれると思っていたのは自分の都合の良さを優先してしまった結果だ。
自分の浅はかさに後悔しながら、しかしミーアのリハビリの方向性も変化する事柄であるからどうしても早くに伝える必要があった。
やはり今日しかなかったと改めて思うと、ラクスは体を離してミーアを見下ろした。

「ミーアさん・・・」
「あたし・・・この顔で、人前に立てません」
「大丈夫ですわ。ミーアさんの本当の歌声であれば」
「本当の・・・・?」
「ミーアさんはわたくしの真似をしようと、歌う時喉に僅かに喉に力が入っていて顔の前面を響かせて真上に声を出しておりますでしょう?そうではなくてもっと丹田に力を入れて全身を楽器にして頭蓋骨の方も響かせて歌えば、わたくしの声とは少し違った響き方をするでしょう」
「どうして・・」


127 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:39:04 ID:???

どうして自分の癖が分かっているのかと聴こうとしてミーアは口を閉ざした。
自分もラクスも歌手だ。
人が歌っている立ち姿一つですぐに分かる。
しかし、ラクスの歌い方をそのまま真似して歌っているつもりだったミーアには、どうしてラクスが気付いたのか不思議に思うところがあったのかもしれない。
だからこそ「どうして気付いているのに?」と、その言葉は続けたかったのだろう。
ミーアの質問の意図を察してラクスは意地悪く微笑んだ。

「わたくしも皆の前で歌っている歌い方はわたくし本来の歌い方ではありませんもの。分かりますわ」

父に望まれてプロパガンダとなる為に歌う歌は、どちらかというと一般大衆向けに受け入れやすい歌い方に変えていた。
余りオペラハウスで歌い上げるように朗々としていては高尚な音楽だと思われて敬遠される。
そうではなくて、歌を身近なものだと思って貰い、尚且つ皆に共感して貰える歌い方となると、どうしても地声に近い歌い方の方が良かったのだ。
しかし今回は粛々と歌って貰わなければならない。
プラントを一つの国として世界中に高らかに示す為に。

「地球に対しての今の象徴がわたくしであれば、プラント市民の心の象徴になって頂きたいのです。貴女の歌で。貴女自身が。ミーアさんになら出来ますわ」

だからこそこんなに真剣に頼んでいるのだとラクスは微笑むと、ミーアは再び涙を浮かべて肩を震わせる。
今度の涙の理由は分からないラクスはミーアの涙をただ拭う。
何度も何度も溢れる涙を拭い、いつかは快い返事が聞けるかと思ったが、中々ミーアは返事を聞かせてはくれなかった。
まだ何か説得に欠ける物があるのだろうかとラクスは表情には出さずに頭の中で計算式を並べる。
ミーアの現状を考えて、彼女の返事を遅らせている物は何なのか・・・・・。


「ミーアさんは、歌がお嫌い?」
「・・・・いいえ」
「・・・・ミーアさんは、今自分の歌を聴かせたいと思う方は居ますか?」

ズルイ聴き方だという自覚は当然ラクスにはあった。
誰の名前が出ようと「では、その方の為に・・・」と、言えば良かったのだ。
しかし、ミーアは口を閉ざす。
その相手の名を言うのを躊躇うように。

ラクスはもう一度ミーアの手を握る。

「大丈夫ですわ。もう何も偽らなくていいのです。貴女の聴かせたい方の為に」
「・・・・・あたしは、皆に聴いて貰いたい。・・・・・・あたしの歌、あたしの想いを。もう誰にも傷ついて欲しくないから」

ミーアの言葉にラクスは光明が見えたと晴れやかに微笑む。
しかしミーアはラクスの笑顔から逃れるように瞳を伏せた。

「でも、もう少し考えさせて下さい。・・・・相談します」

出来ればアスランに相談される前にいい返事を聞きたかったのだが、矢張り現状でアスランがミーアの世話をしている以上避けては通れない問題らしい。
アスランの事だから大いに反対しそうだと思ったが、ミーアの事を考えてラクスは仕方なく頷いた。
自分達に時間が無いのは認めるが、だからといって強要する事はしたくない。
割とこれまでの人生で自分の思った通りに行かなかった事など少ないのだが、やはり人の心の問題となればそうもいっていられないかとラクスは今は諦める事にした。

128 :鬼ジュール:2006/05/24(水) 19:41:22 ID:???

「ごめんなさい・・・・」
「いいえ、わたくしも少しミーアさんの良心に付け込んでしまおうと思っていた所もあったようですわ。反省致します。明日も朝からお料理を頑張らなければならないのですから、早く寝ましょうか」
「手伝います」
「ありがとうございますわ」

ラクスは再びミーアの隣に横になると微笑みかけた。
もう一度安心させる為に。
ラクスの笑顔を見て安堵したミーアの姿を見て、ラクスはもう一度「今日はこれで良かったのだ」と、心の中で繰り返した。


<続>
*******************
女の子ばかりの登場で久し振りに癒された感じです。
本当はもう少しラクスのキラに対する感情などについて触れられたら良かったのですが、脱線するので控えました。
ミーアの紺色ハロにも機能追加。
この機能についてもう少し触れた方がいいのかとも思ったのですが、余りにも長くなりそうだったのでカットしました。
簡単に言えば地球とプラントの間でも通信出来ます。(アスランとのみ交信可)
保存件数は1件のみ、新着があった時点で前のメールは削除されます。
ミーアの声にのみ反応。アスランは自分の端末で受信します。
今回プラントの国歌について話を書いたのですが、正直プラントは自治体だと思うので、本文中の「独立国家」という表現は適切ではないのだろうか?
と悩んだのですが、読んでいてやはり「独立国家」と書いてしまった方が国歌と表現した以上は、スムーズに受け入れられる幹事がしたので、敢えてこのような表現にしました。
国歌を作ると宣言するとなるとプラント内で論争が起こりそうなのですが、そこまで書く機会があるのかは今のところ未定です。
次回から漸くメイリンの誕生日に入れます。
メイリンとレイにも何かしらの事件があった筈なのですが、全く触れておらず。
またシンとラクスでなにかしらのイベントが起こせたらいいなと、考えております。

色々と好き勝手に書いているのですが、それでも毎回読んで下さっている方がいるのはとても嬉しいです。
ありがとうございます。

129 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/26(金) 23:12:40 ID:???
>>128 GJ
 戦後ミーアが生きている設定の物はいくつか読みましたが、国歌の歌い手になるというのは初めてです。これからの展開に期待が持てます。続きを楽しみにしてますね。

130 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 01:30:28 ID:???
保守しときますよ

131 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/28(日) 14:35:29 ID:???
FF13の主人公ピンク髪にブルーの瞳でラクスたん
ヴェルサスの主人公らしき人はアッシュブラックの髪に真紅の瞳でシン

まぁ似てないんだけどどっちもw

132 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 01:22:02 ID:???
でも作品が違うから二人は出会うことないんだよな
お似合いなのに

133 :鬼ジュール(注:レイメイです苦手な回避願います):2006/05/29(月) 19:53:38 ID:???
―― ホーク家

カーテンの隙間から差し込む光がゆらゆらと揺れ、目に当たった所が熱く感じてメイリンは目を覚ました。
外の光で目覚めるなどというのは此処暫く無かった事なので敏感に反応してしまったのだろう。
きゅっと眉を寄せて顔を顰めるとぱっとある事に気付いて勢い良く体を起こした。


今日から一つ、お姉さんになったのだ。


その興奮から目覚めは最高で、ベッドを降りて直ぐに窓のカーテンを両手で広げた。
窓から見る外の風景は殆ど変わっていないのだが、メイリンの視点からはまた違うものに感じられた。
小鳥が近くの木に止まり、小さくしかし面白い程軽快に首を動かす様は可愛らしくて、思わず微笑んでしまう。
ヴォルテールに居たのでは小鳥なんて見れないから。
ほんの少しの事が全て幸せに繋がる。
そんな感じがするのが、誕生日。年に一度のメイリンの一大イベントの日で。特別な、日。

「今日はパーティだ♪」

着る服は決まっている。準備しようと時計を振り返り、メイリンは時が止まったように固まった。
そしてひゅっと素早く息を吸うと、自分でも驚くような大声を出していた。


「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


部屋を飛び出し、皆の居る居間に向かうとダイニングキッチンで母親と料理をしていたルナマリアが振り返った。

「おはよう、メイリン。誕生日おめでとう」
「ありがとう、お姉ちゃん。おはようって・・・何で?!あたしの部屋の時計進んでるのかなぁ!?」
「何言ってるの?今9時でしょう?」
「やっぱり9時!?どうして起こしてくれなかったの!?あたし目覚まし8時にセットしてたのに」
「そうね。鳴る前にあたしが止めたから、ゆっくり寝れたでしょ?」

母親と共にクライン邸に持って行く料理を作っているルナマリアはメイリンと話しながら見事な母親との連携を見せて次々と料理を仕上げていく。
料理を作るなら、それだって自分も手伝っても良かったのにと思うとメイリンは自分が除け者にされたような気分になる。
さっきまでの爽やかな雰囲気は一転して・・・・最悪だ。

「だって準備に時間掛かるもん!」
「もうこっちはママに頼むからあたしが手伝ってあげる。久し振りに髪、可愛く結い上げてあげるから」

洋服、決めてたみたいだけどこれ着なさい。

手を洗い、ソファに置いていた洋服をひらりと見せる。
ほんの少し大人っぽく見えるふんわりとした素材で作られた膝丈程のパーティドレス。
いつもであれば「動きにくそう」と、眉を顰めるところだが、少し大人っぽいデザインに心が動かされた。

134 :鬼ジュール(注:レイメイです苦手な回避願います):2006/05/29(月) 19:55:39 ID:???

「でも、移動時間が無いよ」
「それも抜かりないわよ。ちゃんとかぼちゃの馬車が来るのよ」

だから早く顔洗っていらっしゃい。

ルナマリアの笑顔に押されてメイリンはよく理解が出来なかったが、こくこくと何度も頷いてぱたぱたと洗面所まで駆けて行った。

「誕生日が来ても早々あぁいう所は直る訳無いか」

慌しく駆けて行く妹の姿にルナマリアは苦笑した。
まだまだ淑女には遠そうである。

それからルナマリアにサイドに所々細くて小さなリボンで結った髪を編み込みされ、髪の端を後ろで大きな真っ白のリボンで綺麗に止める。
そして小さなリボンの近くに水色の花のピンを刺す。
まるで花に止まる蝶が沢山居るような髪形に仕上がって、それには満足した。
ルナマリアとしても上出来に思ったのか、鏡から見る姉の顔もとても上機嫌だった。
ルナマリア渾身の作品をメイリンは両親に見せに行くと「お姫様みたいだよ」と、褒めてくれた。
次に渡されたのは父親からのプレゼントで、パーティドレスに合わせたヒールの高い靴だった。
母親からは胸元が淋しいからと、小さな宝石が散りばめられた繊細な作りのネックレスをプレゼントされて。
メイリンは感謝の証に三人の頬に何度もキスを贈った。

「あたしはこの料理詰めたら直ぐに向かうから、先に行って自慢して来なさい」

軽く化粧も施したメイリンに告げたルナマリアの言葉に頷くと、タイミング良く外でクラクションの音が鳴った。
それを聴いた父親は僅かに口元を引き結んだが、直ぐに「楽しいパーティになるように」と、特別にメイリンに贈った靴を履かせると笑顔で送り出した。


「いってきまーす!」


ヒールの高さに戸惑いながら家を出ると、門の直ぐ目の前に一台のエレカが停まっていた。
そして、その前に立ってメイリンの登場を待っていたのは・・・・レイだった。
やはりラクスの屋敷でのパーティという事もあってスーツを着こなし、髪形も整えている姿はねずみの御者どころか王子様のようだ。
昨日の事もあり、メイリンは瞬時に頬を真っ赤に染め、玄関を出た勢いを無くし、静かにレイの元に歩み寄る。
しかしレイはいつもと変わった様子を見せず、ただ手を差し伸べた。
メイリンの姿もまたいつもと違って上品な格好になっているからだろう。
差し伸べた手に吸い寄せられるように手を重ねると、レイに引き寄せられて二人の距離がかなり近付く。
長い前髪はいつもと変わらず前に垂らしているが、後ろ髪を刈るく後ろに流していて項が綺麗に見える。
そのいつもとは違った感じにどきどきとしながら彼からの感想が聴きたくて上目遣いにレイを見上げた。

「えと・・・。おはよう・・・」
「おはよう。綺麗だな」


135 :鬼ジュール(注:レイメイです苦手な回避願います):2006/05/29(月) 19:56:50 ID:???

ストレートな言葉にメイリンは湯気が立ち昇らんばかりに首元まで真っ赤にする。
慌ててレイの顔を見ていられずに俯くと、シルクの手袋の上から触れられた。
何だろうと見ると、右手の薬指に指輪を嵌められていた。
銀色の、少し幅のある指輪に埋め込むように透明の宝石が彫刻の中央に小さく三つ並んでいる。
透明なのだが、これがダイアとかだったらどうしようと、戸惑ってもう一度レイを見上げる。

「誕生日おめでとう。これはプレゼント」
「・・・ありがとう」

レイは指輪を付けたメイリンの姿をもう一度見ると、自分のチョイスに満足したのか僅かに笑顔を見せた。

「あぁ、とても可愛い」
「・・・・・・!!」

もうちょっとオブラートに包んで言うとか、そういう事はしてくれないのだろうかと思うとメイリンは困惑に眉を寄せた。

「・・・・・・・『綺麗』、『可愛い』、結局どっち?」
「両方」

どうしてもう!どうしてもう!どうしてもう!

恥ずかしさでぽかぽかとレイの胸を小さく叩いたが、全然痛くないのでレイはそのままメイリンの好きなようにさせている。
そしてメイリンの気が済んだ頃に「行こうか」と、短く声を掛けた。
後部座席のドアを開けようとするから、「隣がいい」と告げるとレイはメイリンの手を取って助手席まで回るとドアを開けた。
何処までも紳士な対応にメイリンはさっきから緊張の連続で、まともにレイの顔を見る事が出来ない。
しかし、運転する顔を身近に見る事など早々無いから、レイがメイリンを見る事が出来ない隙を狙って伺い見る。
昨日見た、パイロットスーツのヘルメットから覗く横顔にもぐらぐらと心が揺れたのだが。
何かに集中している横顔を見るのは、とても、格好良くて、イケナイ物を見ているようでどきどきした。


そして、更に昨日告げられた真実も自動的に思い出して・・・・。
メイリンは胸の痛みに哀しくなった。




136 :鬼ジュール:2006/05/29(月) 19:58:25 ID:???

時間は遡り、6時。ジュール邸。

軍人には不似合いな程ふわふわで広いベッドは心臓に悪い物があったのだが、流石と言うべきか、一度寝付いてしまえばベッドが優しくシンの疲れを吸い取ってくれるように受け止めてくれているようだった。
その為6時頃には自動的に目覚める体になって来ているのだが、今日ばかりはその時間も過ぎようとしていた。

「開けるぞ」

と、此処でイザークが短く告げて室内に入るとまだ暗い室内を見渡す。
そしてシンがまだ起きていないのを確認すると、つかつかと窓まで行きカーテンを全開にした。
が、まだシンは起きない。

「起きろ!」
「ん・・・あ・・・隊長・・・おはようございます・・・」
「おはよう。お前は一度宿舎に戻らねばならんだろう。支度しろ!」
「あ、そうだった・・・」

もそもそと体を起こした所でイザークは鼻で息を吐き部屋を出た。
珍しく深く眠っていたのか、いつもはハッキリと目覚められるのだが、今日ばかりはぼんやりとしてしまう。
しかしそれも顔を洗うまでの事で、後はいつものように手早く着替えると1階の食卓に着いた。
本当は2階にも食堂があるらしいのだが、忙しいアスランとイザークが主という事もあって何かあった時直ぐに対応出来るように1階にも食堂を作ったのだという。
朝食はもう家を出てマティウスに戻ったというエザリアが用意してくれていた。
短時間で簡単に出来るものばかりだったが、ヴォルテールの食事や外食に慣れていたシンには、こういう簡単な料理でも手作り感がしてとても嬉しかった。

「今日はさっさと議長の屋敷に行って手伝って来いよ」
「・・・でも俺料理とかあんまり得意じゃないんスけど」
「他に手伝える事があるかもしれないだろう。行っておけ」
「了解」

と、此処でプチトマトにフォークを突き立てようとして失敗し、飛んでころころとテーブルの上を転がった。
それを再びフォークで刺そうとしてその手をイザークに叩かれた。

「行儀の悪い事をするな!」
「勿体無いと思うんスけど」
「それならいっそ手で掴め。また飛ばすような事になるなら、まだそっちの方がましだ」

おまけに汁が飛ぶ恐れがある。
自分の手元でもないのにいきなりフォークを突き立てて、回りに迷惑を掛けたらどうすると言われてシンは渋々といった感でプチトマトを摘んで食べた。
ぷしゅっと口の中で張り詰めた皮が破け、中の種が飛び出す。
この食感があんまり好きじゃないから先にフォークなりで穴を開けておきたかったのだがと思うと、シンはただ気持ちの悪さに顔を顰めた。

そして食事を終えるとイザークはまずMSの格納庫に用があるのだと知り、ジュール家の運転手が運転するエレカに乗り込んだ。
黒塗りの頑丈な車に乗るのは初めてだと、中で向かい合って座れる座席の存在もびっくりだと戸惑い、思わず「お邪魔します」と言いたくなる。
流石社長令息。と、妙に感心してしまった。
昨日運転したアスランのオープンカーとはまた違った座席の感じに「これは何の革なんだろう?」と、思う。


137 :鬼ジュール:2006/05/29(月) 19:59:52 ID:???

「MSの座席がこんな革張りだったら乗りにくいでしょうね」
「身体を落ち着けて乗るもんじゃないからな」

あんまり馬鹿な事を言うなとイザークは溜息混じりに唸り、シンは苦笑した。
口は悪くて素っ気も無いが、イザークの言葉は優しい。
ヴォルテールで何だかんだと隊長への不満は零れても、誰もイザーク本人に反感は持っていない。それは彼の誠意が皆に伝わっている結果だろうと思うと、なんだかくすぐったくて、可笑しかった。






―― 同刻・ヴォルテール

「はぁ・・・」
「何だよアスラン。朝っぱらから縁起の悪い」

モニターボードによって今日の作業の様子を確認していたディアッカが、パイロットスーツでやって来たアスランに向かって軽口を言う。
アスランはディアッカの言葉によって自分が溜息を吐いていたのだと気付いて苦笑する。

今朝聴いた・・・ミーアからのメールが原因だ。

喜んでくれるかと思ってハロを贈り、それについて何か言って貰えるかと思っていたのは自分の身勝手だったのか。

「馬鹿、鈍感、無神経・・・か」

思わずミーアの言葉を反芻し、また再び自嘲気味に笑う。
その奇妙な反応にディアッカは「うわ、空気重っ」と、ぞっとする。
どんよりとした空気を背負いながら笑うアスランの様子はいつも何があろうと背筋を伸ばす男の姿ではない。
「女か?」と、素早く察知したディアッカはモニターボードでアスランの肩を叩く。

「月の歌姫と何かあったのか?・・・・おいおい、すっかりぞっこんだな」

眉を軽く上げ、しかし目は細めてアスランを横目で見るディアッカのスタイルにアスランは苦笑する。
なるべく今は忘れようと思っていても中々上手くいかない。
しかしだからといって今すぐミーアに詰め寄って何が原因なのか尋ねる勇気も無い。
女というのは全くもって分からないとモニターボードを手の甲で下から押し返すとインフィニットジャスティスを見上げた。

これから仕事だ。

とはいっても直ぐに切り替えられないのは案外ショックを受けているからか。


138 :鬼ジュール:2006/05/29(月) 20:01:18 ID:???

「まぁちょっとは話してみろよ。自分の中に溜め込んで作業にならなかったらこっちも困るからな」
「・・・・・開口一番、『馬鹿、鈍感、無神経』って、言われたんだ」

ディアッカの忠告に観念してアスランは再び視線を床に落として小さく呟く。
そのアスランの呟きを聞いた瞬間、ディアッカは肩を大きく震わせて噴出した。
幾らなんでも噴出すのは失礼だろうとアスランがディアッカを下から睨み上げると、彼は「悪い」と、口では謝罪しながら手で口を押さえてそれ以上の笑い声を抑えている。

「いやまぁ・・・何だ。的確だな、その発言は」
「カガリの時には『馬鹿』だけだったんだけどな」
「お前・・・他の女と比べるのはタブーだろ」
「それはそうなんだが・・・何がいけなかったんだろう・・・」

悩むアスランにディアッカは必死になって笑いを堪える。
これまで肩を並べて戦い、ぶつかって来た同士だと思っていたのだが、ミーアに言われた言葉で落ち込んでいる姿は確かに年相応の年下の男という感じの頼り無さだ。
シンとかとそう変わりないなと、慰める為に頭に手を置き軽くシェイクすると、アスランが嫌そうにディアッカの手を払い退け、恨みがましく見上げてくる。
アスランの視線を受けてディアッカはあっけらかんとした笑みを見せると「きっと、お前一人考えても仕方ないぜ」と、助言を渡した。

「何で」
「答えは月の歌姫の中にしか無いからな。そういうのって」
「・・・そうかもな」
「まぁ何だ。それだけお前が歌姫にぞっこんなんだって。惚れまくってるなぁ」
「何でそうなるんだ」
「男ってのは好きな奴の言葉程気になって、原因究明したがるもんだから」

惚れまくっている・・・・・・。

ディアッカの言葉を受けてアスランは考え込む。

本当にそうなんだろうか?

ミーアこそ馬鹿で、無鉄砲で、思慮が足りなくて、誰よりも淋しがり屋で。
自分が居なければ何も出来なくて。

ミーアの方こそ俺に・・・・・・。

と、此処まで思った瞬間、自分の自惚れの強さにアスランは頬を染め、何て事を考えたんだと口元を手で覆う。
何も話していないのに神妙な顔をしたり、頬を染めたりと面白い反応を見せているアスランにディアッカは気付かない振りをするのは同じ男としてのせめてもの優しさか。
しかし、言葉は違えどミーアが自分が好きだと伝えてくれている事は間違いなくて。


「蝶も一つの花では満足しないものだが」
「は?」
「花も案外一羽の蝶では満足しないから、皆に愛想を振りまいてるのかもしれないぜ?」



139 :鬼ジュール:2006/05/29(月) 20:03:33 ID:???


花に寄るのは蝶のみにあらず。


「蜂が全ての蜜を奪っていく事もあるかもしれない。人が手折って持っていくかもしれない。蝶は浮気なんかせず一つの花を見張ってなくちゃならないかもな」

お兄さんからの助言。

ディアッカはシホがやってくる姿を見つけて合図を送るようにモニターボードを掲げて左右に振る。
アスランは「何恥ずかしい事言ってるんだ?」と、一瞬は思ったものの、その言葉の意味を捉えかねて再び思考の波に飲まれる。

どちらが蝶でどちらが花か。

いや、それより浮気?

誰が?

どういう事だとアスランがディアッカに尋ねようと思った時にはシホがディアッカと共に打ち合わせに入ったのでそれ以上聞けなかった。

自分がミーアの事をどう思っているのかというのは、アスランにとって一番考えたくない事項だ。
どういう結論が出るのか、自覚をするのが怖い。
だからなるべく考えないように、考えないように目を閉じ、耳を塞いでいた。
しかしそれでもミーアに嫌われたくない、何かしてやりたいと手を貸してしまう。
その行動が全てなのか。
それとも、他に行動の理由があるのか。


まだ答えを出したくない。
まだ今のままでいい。



「ハロ・・・・喜んでくれなかったのか・・・・・・」



そう呟いて、アスランは胸がちくりと痛んだ。
自信を持って渡せる物がアスランにはハロしかなかったから。
ミーアなら喜んでくれると思っていたのは自分の思い込みだったのか。
何にせよ、今日の作業が終わり、ミーアを迎えに行くのが少し億劫に感じられた。




<続>

140 :鬼ジュール:2006/05/29(月) 20:05:52 ID:???
***********************
誕生日の朝でまとめてみました、それぞれの朝。
レイメイは昨日何があったのかは置いておいてすっかりいい雰囲気です。
きっとルナマリアは迎えに来たレイとのやり取りを家の中から母親とこっそり覗いていると思います。
ホーク家はなるべく「幸せな家族の形」というそのままで行きました。
父も母も優しくて、アットホームな感じで。
ルナマリアとメイリンのザフトへの志願の理由がよく分かりませんが、原因は家族ではなくて対社会に対しての不満からとしようと思いました。
種に出てくる家庭で幸せそうな家庭が何処にも無いので、せめてホーク姉妹位は。
きっと父親は居間でテレビを見ながら全然内容は入っていなくて、廊下で外の様子を見ている妻と娘の会話に耳をそばだてているのだと思います。
アスランは落ち込んでいます。
へたれな彼にはミーアの言葉がぐさぐさと突き刺さっているようです。
アスラン本人は日頃の自分はへたれじゃない!と、思って行動しています。
しかし他人の目からは・・・・という部分があると思っています。
シンと同じ位他人との付き合い方でこれから苦労するのではないのでしょうか。

>>89
返事遅れてしまいました。申し訳ありません。
映画ですが・・・、うちの近くではやりそうにないのでDVDになるのを待ちます。
近くでやりそうなら観に行きます。
前情報を確認してから。
シンが今度こそ主人公なら嬉しいのですが。


141 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/29(月) 22:37:27 ID:???
もう自サイトでやってほしい

142 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/31(水) 06:10:22 ID:???
>>140
おお、誕生日まで来ましたか。それぞれの朝の描写良かったです。
様々なおもわくを持った人々が集う。私個人が素直に楽しみなのも今までの描写の積み重ねがあってこそだと思います。
頑張って下さい。

143 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/02(金) 19:11:38 ID:???
http://www.37vote.net/gundam/1119341745/

144 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/03(土) 08:04:53 ID:???
機動戦士ガンダムSEED劇場版【ラクスの逆襲】
(メイリンチルドレン)



で『シンラク』じゃあ
『キラメイ』『アスルナ』

145 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/04(日) 17:19:40 ID:???
映画でシンラクくるんだな!みにくお

146 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/05(月) 15:43:00 ID:???
>>144
大丈夫、まちがってもそれはないから。

147 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/06(火) 01:02:58 ID:???
ならばラクシンでもいい

148 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/07(水) 00:25:51 ID:???
>>147
それも確実にないな・・・

149 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/08(木) 23:36:48 ID:???
保守

150 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/09(金) 17:13:03 ID:???
シンラクのほほんSSみたい

151 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/09(金) 23:57:58 ID:???
>>150
なんとなく書きたくなって今書いてるけど……
だめだ、淑女の言葉遣いに気をつけると、ラクスのセリフがラクスじゃなくなる。
具体的には「〜ですわ」とか「〜ますわ」とかがそっくり無くなる……
でも、それが無いとラクスじゃないし……うーん……どうしよう?

152 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 14:46:27 ID:???
ですわ〜とかがなくなるのか…
でも読んでみたいw

153 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 16:20:29 ID:???
じゃあ投下する。
違和感あるかもしれないけど、そこは勘弁してね。
あと、微妙にのほほんじゃ無くなったよぅ。
ちなみに、状況設定は本編終了後くらい。

154 :秘密のお茶会1/5:2006/06/10(土) 16:21:24 ID:???
ある晴れた日の昼下がり、太陽の光が眩しい青空の下で――
シン・アスカは、困惑していた。
(何で俺はこんな所にいるんだろう?)
自問するが、答えはとっくに分かっている。呼ばれて、了承して、足を運んだからだ。
その相手とは――
「あら、もしかして、紅茶はお召しになりませんの?」
「あ、いや、そうじゃなくて――」
実際、シンは紅茶よりはコーヒーの方が好きだった。
しかしそれよりも、何故ザフトの歌姫であるラクス・クラインが自分を呼んだのか、の方が、重要な問題だった。
「そうですか。ああ、良かった。わたくし、もしかしてお口に合わぬものを出してしまったのかと……」
「あー、確かにコーヒーの方が好きですけどね。でも、俺が疑問に思っているのはそうじゃなくて」
「はい?」
きょとん、と、擬音にするならそんな感じの表情で、ラクスはシンを見つめる。
その表情に呆れに似た感情を抱きながら、シンは口を開いた。
「もしかして、俺にしか頼めない大事な用って、これですか?」
これ、と言うのは、もちろんこの茶会の事である。
元々、彼がここまで足を運ぶことにしたのは、ラクスから『自分にしか頼めない用事がある、直接会って話したい』と、メールで呼び出されたからだ。
ラクスのすぐ近くには、あのキラ・ヤマトがいる。
そうでなくとも、アスラン・ザラもいるし、他にも信頼できる人間はいくらでもいるだろう。
だと言うのに『自分にしか頼めない』と言うから、どんな用事なのかと思ったから、足を運んだのだ。
しかし、そんなシンの内心を知ってか知らずか、ラクスは満面の笑みを浮かべながら、こう答えた。
「はい、そうです」
ちょっと、我慢できそうになかった。

155 :秘密のお茶会2/5:2006/06/10(土) 16:22:23 ID:???
「あんた!本当に身勝手だな!」
思わず、口をついて出る文句。
ただでさえ、よく知らない人間に理由も詳しく知らされず呼び出されたのだ。
その上、折角足を運んだというのに、その『自分にしか頼めない』用事が、ただの茶会。
普段からそれほど辛抱強いとも言えないシンが、怒りを覚えるには十分だった。
だが、立ち上がって自分に吠え掛かるシンに、ラクスは同じように立ち上がり、誠実な態度で頭を下げた。
「すみません。こうでもしないと、来て下さらないと思ったもので……」
そう素直に言われると、シンも二の句を告げなくなってしまった。
実際、あんな理由でもなければ足を運ぶつもりは無かったからだ。
しかしそれでも何か反論をしたいと、シンは必死で言葉を探す。
「……何でわざわざ俺なんでありますか?お茶会したいなら、俺じゃなくてもよろしいでしょうに」
「ええ……だからこそ、あなたを呼ばせていただいたのです」
今度こそ本当にシンはわけが分からなくなってしまった。
自分じゃなくてもいいからこそ、自分を呼んだ?
まるで禅問答のようなその言葉に、シンは本気で頭を抱えてしまった。
「ふふ……真面目なのですね」
困惑するシンに、ラクスはクスクスと口元を押さえて微笑んだ。
その姿に、シンはからかわれたのかと、不機嫌な様子で顔をしかめた。
「すみません、別にからかったわけでは。ただ、真面目に考える姿が、なんだか可愛くて」
「……そんな事言われても、ちっとも嬉しくない。大体、男に『可愛い』とか、褒め言葉じゃない」
別に、初めて言われたわけではないが、だからと言って嬉しいものではないし、何度も言われたからと許容できるものでもない。
とりあえずその話題からさっさと離れたくて、シンは椅子に座り直し、紅茶を一口すすった。
それを見てから、ラクスも丁寧に座り直す。
紅茶の芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、直後に広がる爽やかな味に、思わずシンは感嘆の息をもらす。
それを見て満足気な笑みを浮かべるラクスに、シンは軽く咳払いしてから口を開いた。
「で、結局何で俺じゃなくてもいいのに俺を呼んだんです?」
その問いに、彼女は一口、音も立てずに紅茶をすすった。

156 :秘密のお茶会3/5:2006/06/10(土) 16:23:18 ID:???
優雅な立ち振る舞いというのは、自然に身に付くものではない。
だが、本当に『身に付けた』者には、それこそが自然となる。
彼女のその紅茶を口に含む仕草は、そういった教養の無いシンにも、優雅かつ美麗に映った。
「確かに、わたくしにはお誘いすれば付き合ってくださる方の当てはあります」
カチリ。
陶器同士の当たる音。それすらも心地良い音に聞こえるのは、初めての体験だった。
「けれど、あなたとはまだ、十分にお話もしていませんもの。
 わたくし、ずっとお話したいと思っていました。どんな方なのだろう、と」
くすりと、柔和な笑み。
その顔を見てシンは、色々な笑い方ができる人だなぁと、自分でも良く分からない感想を抱いていた。
「少しだけ話してみて、ほんの少し、分かりました。
 真面目で、ちょっと怒りっぽいけど……可愛い方なのですね」
執拗に『可愛い』という言葉を自分に当てはめてくるラクスに、シンはうんざりとした表情で口を開いた。
「あの……その『可愛い』っていうの、やめてくれません?」
「だって、可愛いものは可愛いのですもの。
 そうですね、もっと色々話して……それが相応しくない、と感じたら、撤回させていただきます」
笑みを崩しもせずにそう言ってくるラクスに、シンはどうにか撤回させるための話題を探し始めた。
が、その行為がすでに、彼女の言う『可愛い』行動になっていることを、シンは気づかない。
何を話そうかと悩んでいる間に、ラクスのほうから話しかけてくる。
「……実は、今日ここであなたと会うということ、キラにもアスランにも……誰にも話しておりませんの」
そう言われて、シンは初めて周りに誰もいないことに気づいた。
確かに、ここに案内される時は使用人がいたが、今この場には自分とラクス以外の誰もいない。
よく考えれば、紅茶もラクスが自分で淹れた。普通なら使用人がするものだろうに。
「ですから、このお茶会は、あなたとわたくしだけの、秘密のお茶会なのですよ」
わざと含んだものを感じさせるような言い方で、とんでもないことを言い出す。
その言葉に、シンは急に焦りのようなものを感じた。
(もしかして俺、今とんでもない状況なんじゃ……?)
そんなことを考えるシンに、ラクスは追い討ちをかけるような言葉を発した。
「なんだか、不倫をしているみたいでドキドキしますね」
「ふ……っ!?」
さすがにその言葉は、今のシンには不意打ちだった。

157 :秘密のお茶会4/5:2006/06/10(土) 16:24:09 ID:???
「い、いや、別にルナとはまだそういう関係じゃ……!」
思わず立ち上がりながら、シンは慌てて否定の声を上げた。
ルナマリアとは良好な関係を保っているが、まだ彼らは『不倫』という言葉が当てはまるような関係にはなっていない。
が、そんなシンを、ラクスはちょっと驚いたような顔で見つめていた。
「あら……わたくしの事でしたのに」
止め、という奴だろうか。
彼女のその言葉に、シンは顔を赤くして固まってしまった。
とんでもない事を言われて、勝手に自分で勘違いして……これではまるで一人で踊っていたようではないか。
「ぇ……ぁ……そ、そうですか……」
気まずい思いをしながら、シンは椅子に座りなおした。心持ち顔を伏せて、真っ赤になった顔を隠そうとしている。
その姿に、ラクスは今日何度目かの笑みをこぼした。
「ふふ……すいません。ちょっと、紛らわしかったですか?」
「あ、いや、そんな……はい……」
絶対ワザとだ!この人、絶対狙ってるだろ!
胸中でそんな事を叫びながらも、勝手に勘違いしたのは自分なので、曖昧な返事を返す。
まあ、そうでなくとも、羞恥でまともな言葉が出ないというのもあったのだが。
「わたくしとキラも、まだ婚姻したわけではありませんが……一度、使ってみたかった言葉なのです」
今度はいたずらっ子のような笑みを浮かべ、舌を少しだけ出してみせる。
その顔を眺めながら、シンは『この人には勝てない』と、胸中でつぶやいた。
それは、彼が『可愛い』という汚名を返上することに対する、敗北宣言でもあった。

158 :秘密のお茶会5/5:2006/06/10(土) 16:25:03 ID:???
それからおよそ二時間――
他愛も無い世間話や、紅茶に関する事、身の周りのことなどを話し、そろそろお開き、という雰囲気になった。
「それじゃあ、俺、そろそろ」
「そうですか。また、来てくださいますか?」
それを言われて、シンは返答に詰まった。
実際、自分にしか頼めない用事だ、と言われなかったら、今日ここに来ることは無かっただろう。
が、今では呼ばれたなら来てみてもいいかも、という気持ちにはなっている。
少しだけ考えたあと、結局シンはこう答えた。
「はい。次からは普通に呼んでくれるなら」
「ええ……ありがとうございます」
結局『可愛い』という汚名は返上できなかったが、こんな休暇も悪くは無いと、シンは感じていた。
ルナマリアに知られた時が多少怖いが……今日帰った時にでも言えば、分かってくれるだろう。
そんな事を漠然と考えていると、ラクスは何かを思いついたような表情で、こちらに近づいてきた。
「なんです?」
「ちょっと、よろしいですか?」
こちらの返事も待たず――まあ既に、どうにでもしてくれという気持ちもあったが――肩に手を沿えてくる。
そして次の瞬間――
シンは、頬に何か柔らかい物が触れるのを感じた。それがラクスの唇だと気づくのに、数秒かかる。
「不倫の、証拠です」
指で自分の唇を撫でながら、まるで小悪魔のような笑みを浮かべる。
最後の最後でとんでもない爆弾を落としてくるラクスに、シンは絶句した。
これはもしかして、もうルナに言えないんじゃないか?
これで完全に『密会』にされてしまったのではないかと、そんなことを考えながら。
シンは、家の中に逃げていくラクスを、見つめることしかできなかった。

159 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/10(土) 16:27:05 ID:???
投下してみて、どこかあけるなりすればよかったな、と思った。
ちと読みにくいなぁ、これ。

ちなみに、裏の題名は「小悪魔ラクスと子羊シン」だったり。

160 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 10:22:04 ID:4ai9oY50
保守

161 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 11:50:42 ID:???
遅ればせながらGJ!いい物を読ませてもらった!このカップルもなかなか面白そうな気がするなー精神的に幼いシンだからこそラクスに上手くリードされてる感じw
あと余談だけど…文章構成上手いな!かなり読みやすかったよ

162 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 16:27:42 ID:???
投下してほしいと言ったくせに感想遅れました…
まさかここまでの大作で文章力まであると思っていなかったw
すごいGJです!
シンとラクスって最初は絶対気が合わないと思うんですよね
でもその気の合わない二人のやりとりが見ていておもしろい気がして
この二人のカプがお気に入りなんです
また暇があれば投下してくださいね
鬼ジュール氏といい、良い職人さんがいるスレだなー

163 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 18:37:18 ID:???
>>162
なぜ感想に他職人が出てくるの?職人がお互いリアルで友達だとでも名言済みならともかく、
職人さんに対するレスは、本人向けのものだけにするのが最低のマナーだよ。

164 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/11(日) 20:41:59 ID:???
>>159
GJ!
面白かった。最後のラクスの行動はラクスらしいというか。
突飛な深く考えてない天然ラクス全快でよかった!
>>163
そんな気にしなくても。
職人さんがいっぱいいて良スレだなー、ってことを言いたかっただけだと思うぞ。

165 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 00:39:27 ID:???
シン可愛いw
なんか和んだよ!この続きとかはあるん?

166 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 02:52:16 ID:???
>>163
すみません!これからは気をつけますね

167 :159:2006/06/12(月) 08:52:59 ID:???
>>165
ええと、期待していた人には申し訳ないけど、続きとかは考えてない。
けど、また何か思いついたら書くかも。

168 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 13:39:02 ID:???
そっか!また投下しておくれ

169 :んじゃあラクシンでその1:2006/06/12(月) 14:51:34 ID:???
機動戦士ガンダムSEED劇場版『逆襲のラクス・運命の鼓動』(メイリン・チルドレン)

「時は移れど、人の営みは変わらない。と大昔の誰かが言っていたっけ」
「シン?、急にどうなされたのですか」
ラクスはベットの中で全裸のままシンの胸に顔を埋めながら問い掛ける。
「うん、俺らの事さ」
「……シンは後悔していますの?。私とこんな関係になってしまったのを」
「ああ、違う。後悔はしていない。する位なら貴女を抱いたりはしない」
シンはゆっくりと上半身を起こしながら、不安げに自分を見詰めるラクスの頬に手を添えて、ラクスの上半身を起こしラクスの唇に自分の唇を重ね合わせる。
舌と舌を重ね合わせて転がし、互いの唾液を相手の喉奥に流し込みシンとラクスは相手の全てを吸い取ろうと貧り合う。
「シン、まだ時間は有りますわ!。ですから、もう一度、貴方を私の中で感じさせて下さいな」
「うん、いいよ」
「うれしい」
ラクスは言うか早いか、顔をシンの下半身な埋め半勃起常態の男根を優雅で綺麗な両手で包み込み、亀頭を舌で舐め回しながら口中に挿入し、上下に顔をピストン運動を始める。
「ラクス、凄いよ。とても気持ちがいいよ」
シンはラクスの淫猥な姿に欲情を覚え至上の喜びつつも、二人の関係に何処か覚めた自分の姿に気付いていた。また、その原因も。
ラクスはシンの男根の筋を上下に舐めつつ、左手の指で玉袋を転がし右手の指で扱いていた。
「ラクス、そんなにされたらいってしまう」
「ウフフフ、シン、まだ駄目ですわ。私の膣内でお願いしますわ」
ラクスは身体をゆっくりと起こし、右手で完全に勃起したシンの男根を優しく掴み、シンに両腰を捕まれながら昨夜は何度もシンの子種を流し込まれた、膣内にシンの男根を挿入した。
「ん、シン」
シンは亀頭がラクスの膣に挿入されると、一気にラクスの子宮に目掛けて腰を突き上げると同時にラクスの腰を降ろした。
「ああああああああ」
ラクスはシンの予想外の行為で一瞬にして昇り詰め手しまった。
「シン、酷いですわ」
「…ラクス、まだこれからが本番だよ」
シンは自分に持たれているラクスにつげると、ラクスへの愛しさと怒りの両方を込めて、下からラクスを突き上げる形でピストン運動を開始した。



170 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 16:30:08 ID:???
ちょwwwエロかよww
まぁ俺は好きだけどw

171 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:27:45 ID:???

「おはようございます」

シンがクライン邸に到着したのは午前7時を僅かに過ぎた頃だった。
玄関先で応対した執事も昨日シンの姿を見ているので直ぐにラクスを呼びに行ってくれた。
そして暫く待って現れたラクスは後ろで髪を一つにまとめ、薄紫のエプロンを纏った姿だった。
ラクスは10時からのパーティにシンがこんなに早くに来るとは思っていなかったのでついエプロンを外し忘れたのだろう。
シンの視線によって自分がまだエプロンを着けたままだったと気付き、脱ごうとしたのをシンが慌てて止めた。

「あの、手伝いに来ました」
「まぁ。そんな気になさらなくても構いませんのに」
「いえ、隊長命令ですので」
「・・・・イザークが?昨日何か言われていたのですか?」
「色々あって昨日隊長のご自宅にご厄介になって、今朝」
「まぁ」

珍しい事もあるのですね。と、ラクスは驚きの声を上げる。
シン自身もよくよく考えたら変な一日だったと思い出して苦笑すると、ラクスはひとまずシンを招き入れ台所に向かう。
台所に向かう途中から色んな料理の匂いが漂って来て、かなり大掛かりになっているのだと知る。
そして台所に入ると、他にキラとミーアがエプロンを着け、キラは野菜の皮を、ミーアはゆで卵の殻を剥いていた。

「おはようございます」
「あ、おはよう。早いね」
「おはよう」

それぞれ挨拶を交わすと、シンはキラの身に着けている可愛らしいエプロンに思わず視線が行ってしまう。
ピンク色のフリルの付いたエプロンは非常に似合わない。
キラもシンの視線に気付き、自分の格好に苦笑する。

「似合わないよね。でもこれしかなくて」
「そんな事はありませんわ、とてもお似合いですわ、キラ」
「可愛いと思うんだけどなぁ」

似合わないと思うキラとシンに、似合うと思っているラクスとミーア。
男と女では極端に感性が違うのか、それともたまたまなのか。
どちらにしろ面白がられてるだけだと思うとシンは思うと、膝の上で懸命に卵の殻を剥くミーアの手元が気になる。
と、その瞬間、ミーアの手からゆで卵がつるりと飛び出し、宙を舞う。

「わっ」

慌ててシンが手を伸ばして受け止めると、ラクスとキラから賞賛の拍手が贈られる。
ミーアも卵が飛び出した事に驚いているのかと思いきや、非常に困惑した様子でシンからゆで卵を受け取った。

「ありがとう。・・・・さっきからね、沢山落としてるの、あたし。リハビリも兼ねてやってるんだけど、中々上手くいかなくて」
「大丈夫なんですか?」
「卵を持つのが辛くなる頃には止める事にする。でも、少しでもお手伝いしたいから、もう少し頑張るわ」


172 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:29:17 ID:???

良く見ると、剥きあがった卵の白身は沢山抉られていて綺麗な卵形を作っている物は殆ど無い。
話を聞くとどうやら後で潰してサンドイッチに挟むので形はいびつでも構わないらしい。
本人がリハビリを兼ねているというのなら手伝うと言うのは失礼になるんだろうか?と、シンは一瞬悩み、ラクスに視線を向ける。

「あの、何か出来る事ありますか?」
「それじゃあ僕と一緒に野菜の皮剥く?」
「それではシンの分のエプロンも必要ですわね」
「あ、いや・・・」

キラのエプロン姿を見る限り、男が身に着けても恥ずかしくないようなエプロンはなさそうに思う。
出来れば会場のセッティングなどの仕事があればいいなぁと思っていたのだが、それはキラが許してくれそうになかった。
仲間を見つけたとばかりに楽しげなキラの様子にシンは戸惑いの声を上げるが、ラクスはそんなシンの戸惑いなど気にせず台所を出てシンに手招きをする。
自分もピンク色のエプロンなんだろうかと思うとちょっと遠慮したいと思いながら、手招きされては無視する事も出来ないので大人しくラクスの後ろを付いていく。
そして2階にあるラクスの衣装室に招かれ、長さが丁度良さそうなエプロンを探してくれる。
ラクスとシンでは身長に差があり過ぎるので、ぴったりなのは当然無いのだが、それでもなるべく長めの物を探し出した。

「まぁ、この白いエプロンがいいですわ」
「これ着るんですか?」
「お洋服が汚れないように必要な物ですもの。デザインは関係ありませんわ」

シンの体に当てて確かめると、ラクスはシンに羽織っているジャケットを脱ぐように促す。
そして白いフリルがふんだんに使われたエプロンに腕を通すと、ラクスがシンを抱き締めるようにして腰に腕を回してエプロンのリボンを結ぼうとする。

「あのっ!」
「はい?」

普通後ろ向いて結んで貰うとかじゃないんですか?と、シンは思うのだが、ラクスはその考えに至っていないらしい。

「自分で結びます!」
「あと少しですわ」

慌てて逃げようとするが、ラクスがエプロンの紐を放さないので離れる事が出来ず。
ラクスはシンの胸に頬を当てて背後の様子を想像しながら紐を結ぶ。
シンは押し当てられた頬と肩の小ささに何だか酷くしてはならない事をしているような気になってくる。
ぱっとラクスの表情が輝いたかと思うと上目遣いでにこやかに見上げてくると、シンはその瞬間心臓がぎゅっと収縮したようにどきどきした。
頬も赤くなっているかもしれないが、近くに鏡台はあっても確かめる勇気は無かった。

「はい、結べましたわ」

シンに後ろを向かせてきちんと結べているのを確認すると、ラクスは満足そうにする。
そのラクスの顔を覗き見するようにこっそりと見ながらシンは「あの・・・最初から俺が後ろ向けば良かったんじゃないですか?」と呟くと、ラクスはさしてその事実を気にした風も無く「そうですわね」と、軽やかに答えた。
どうやらラクスにとってはさして問題のない話だったらしいとシンは思うと、ラクスがシンのジャケットを持ち階下に下りる。
シンもその後ろに続くと執事にラクスはシンのジャケットを渡して「また準備が終わり次第持って来て貰いましょう」と、シンを振り返った。
執事の居る家というのはどうにも馴染めないシンは、執事に軽く会釈をしてラクスの後ろを付いていった。


173 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:30:46 ID:???

戻ってきた所で、ミーアのゆで卵は一つ増えていた。
キラはジャガイモやにんじん、小さいサイズのかぼちゃのようなものまで大きなボウルに移すとボウルを二つ重ね、ナイフを二本ジャガイモに刺して抱えた。
そしてシンの白いフリルのエプロン姿に同情の視線を向け、ミーアは「かわいー♪」と、声を上げた。

「まぁ、キラどうしますの?」
「折角だし、皮剥いてるだけだから邪魔でしょ?庭で剥いてこようかなぁと思って。男二人で話したい事もあるし、ね」

最後の「ね」だけはシンの方を向いて微笑んだキラに、特に異論は無いのでシンはラクスに視線を向けると彼女はにこやかにキラとシンに視線を向けて頷いた。

「分かりましたわ。余り寒いようなら中に戻って来て下さいませ」
「うん。分かってる」

じゃ、行こうか、と、キラは野菜を移したボウルを持って庭に向かった。
そして東屋の椅子を移動させ、プラントの湖を眺められるように二つ椅子を置くと、その真ん中に野菜の入ったボウルと、剥いた皮を入れるボウルを並べて置いた。
キラは早速椅子に腰掛け野菜を剥くのかと思えば、何処に乗せていたのか、野菜の山の中からリンゴを取り出して剥き始めていた。

「それも?」
「ううん。これは二人で今食べたいなぁと思って」
「いいんですか?」
「どうだろう?まだ沢山あったからいいんじゃないのかな」

一言了解を得てくれば良かったんじゃ?と、思ったが、何処かマイペースな所のあるキラに対しては何を言ってものらりくらりとかわされそうで、結局何も言わなかった。
シンはナイフの刺さったジャガイモから攻略する事にして、馴れない手つきで皮を剥き始めた。

「薔薇、中々綺麗に咲いてくれて良かったなぁ・・・」
「育ててるんスか?」
「うん。薔薇なんて育てた事無いから結構苦戦しちゃって。でも少しずつ咲いてきてるでしょ?」

キラは庭の植木に目をやりながら、朝に水をやった水滴が残る薔薇の輝きに満足そうにする。
シンは、そこで一つの違和感を感じて首を傾げる。

「この家の薔薇を育ててるんスか?」
「うん。だって僕今此処に厄介になってるし」
「・・・・・・議長と?」
「沢山のお手伝いの人の中の一人みたいなものだよ、僕は」

僕の国籍オーブに残したままだからプラントで部屋は借りられないんだよ。

という説明にシンはじゃあ何で国籍移さないんだ?と、これまた疑問に思うが、あんまり突っ込んで聞くにはキラという人間はシンにとっては面倒であった。

「もうすぐ、帰ろうと思ってるし」
「・・・・オーブにっスか?」


174 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:32:03 ID:???

こういう時だけ自分の望む答えが返ってくるというのは存外気持ち悪い。
これ以上は何も聞かずに居るというのは逆に居心地が悪くて、しかしきちんとキラの顔を見て話す事も出来ず、手元のジャガイモから視線を外さずに尋ねた。
一方のキラはリンゴの皮を剥き終わり、一つ齧りながら4分割した二つをシンに手渡す。
シンはそれを受け取って何となく食べると、シャクシャクと歯ごたえのいい音がして少し嬉しくなった。

「うん。その後月で暮らそうかなぁとか思ってて。だからストライクフリーダムをイザーク用にって色々弄ってるんだけど・・・」
「・・・・今朝隊長一番に格納庫に向かいましたよ」
「え?本当?それはまずいなぁ・・・・。今動かないんだよね、ストライクフリーダム」
「ぶっ!」
「イザークだったら中覗いたかもしれないしなぁ。まず起動出来なくなってるから一発でばれちゃうんだよね」
「げほげほっ!」
「大丈夫?何か飲み物持って来る?」

誰のせいでむせてると思ってるんだとシンは咳き込みながら涙目でキラを睨み、飲み物は必要ないと首を左右に振った。

「何考えてるんですか!アンタ!」
「え?飲み物必要でしょ?こういう時」
「そうじゃなくて!何でMSが動かなくなるんですか!」
「ソフトとハードの連結がね、ちょっと失敗しちゃったみたいで。今日この手伝いが終わったらまたやろうかなぁと思ってて、動かないまま帰っちゃったんだ、昨日」

パイロットにとっては自分の機体が動かなくなるという事は一大事であるというのに、キラにとってはパーティの方が優先出来るらしい。
シンには考えられない感覚だ。
元々どういう経緯で軍人でもないキラがストライクフリーダムに乗っているのか分からないのだが、それにしたって自分を守る機体が万全の状態に無いというのは不安に思って当然だろう。
価値観の違いが二人の間で生じているのだとキラも何となく察して苦笑する。

「今日は君達がいるし。何かあったら駆けつけてくれるでしょ?」
「・・・・・俺のデスティニーも、レイのレジェンドも、ルナのインパルスも全部研究所送りです。今日の2100まで」
「え・・・?それ僕知らないんだけど」
「隊長は知ってましたよ。隊長命令ですから」

勿論、有事の際には研究所から直ぐに戻ってくるだろうが、それにどれ位の時間が掛かるのかはシンにも分からない。
しかし、事の重大さはキラにも十分伝わったらしい。俯いてぶつぶつと何か早口で呟いているのだが、機体の専門用語やソフトの専門用語が次々と並べられてそれを理解していくには時間が掛かって追いつかない。

「・・・うーん。多分これでいけると思う。・・・・いざとなったら前のOSに戻すか・・・。ありがとう、教えてくれて」
「いえ・・・」
「でも今日は確実に怒られるかな。格納庫に用なんて他に無いだろうし」
「当然だと思いますけど」
「そうだね」

どうしてそこで笑えるんだろうとシンには信じられない気持ちで居たのだが、何処かラクスと似たようなおっとりとした雰囲気のあるキラには何を言っても無駄のように思えた。
シンはもう一つのリンゴを口の中に放り込むと、再びジャガイモの皮を剥き始める。


175 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:33:38 ID:???

「でも何で研究所に・・・・?」
「・・・・・・・さぁ。経過を見てデータが欲しいみたいですよ」
「何の為のデータ?イザークは何か言ってた?」
「さぁ?隊長も特に何も言ってませんでしたけど」

よく知らないとシンが答えると、キラは難しい表情をして見せた。
キラの手元に一つ残ったリンゴを指先で遊ぶ。
シンはその手遊びが視界の端に映りながらジャガイモの皮を剥き続ける。

「やっぱりOS戻そうかな・・・・・。ランク落とす位ならイザークの技量を上げて貰った方がいいかも」
「は?」
「ううん。こっちの話。作業をストライクフリーダムの操作性を上げるより、バージョンアップして処理速度に回そうかぁと思って」
「何で・・・・戦争したいんですか?」
「違うよ。ラクスを守るための力をね、僕の出来る限りでやっておきたいだけなんだ。・・・・僕はもう少しでプラントを出るから」

何だかよく分からないとシンは思う。
守りたければ傍に居ればいい。
自分がストライクフリーダムを一番操れると思うのなら、イザークに譲ったりせず自分が扱い易いようにバージョンを変えればいいと思う。
何故、プラントを出る必要があるのか。

一つ目のジャガイモをなんとか剥き終わり、次のジャガイモに手を伸ばす。

「そんなに自分は万能だと思ってるんですか?」
「・・・思ってないよ。・・・・僕には出来ない事が多過ぎる」

重く呟かれた言葉に、その言葉以上の意味が篭められている事をシンも察した。
シンもまたキラに尋ねた言葉だったが自分自身にも問いかけ、そしてシン自身も自分が万能でないと自覚し、こっそり溜息を吐く。
万能であればと望んでも、それが無理である事も分かっている。それでも、しかし。

「じゃあ逃げてるんですか?」
「・・・・・・そうかもしれない」

シャクリ。

キラも漸くリンゴを齧った。
ゆっくりと齧られた音が気になったが、シンは顔を上げずにずっとジャガイモを見ていた。
この時シンはキラに対して嫌悪感を持った訳では無かった。
声の響きを聞けば口では肯定していても僅かな否定の音も含んでいる事に気付いたからだ。

結果として逃げているように見えるかもしれない。
しかし、心根では諦めていない。
逃げていない。


176 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:34:50 ID:???

そんな音にシンは覚えがあった。
暫く前の自分が同じような気持ちで居たから。
未だ過去と現在を切り捨てられているとは思わないが、少し前の自分は前に進む事に我武者羅になっていた。
諦めるなんて少しも考えられなくて。

完全に諦められないんだ、この人も。

「俺に議長を好きになって欲しいって言ったのも・・・・」
「僕のエゴだね。・・・・恥ずかしいなぁ。まだ覚えてたんだ」
「忘れられる訳・・・!」
「せめて僕の信頼する人にラクスの事を頼みたい・・・。それがラクスに残せる最後の僕のエゴだって・・・・笑っちゃうよね」

自嘲気味に笑うキラが懸命に何かを押し隠しているのが分かる。
シンにはどうしてキラがそこまでしてプラントから出なければならないのかその理由が分からない。
キラがそこまで言うのなら、彼はまだラクスに対しての想いは消えていないのだろう。
だったら何故それを諦めようとするのか。
それも、分からない。

「だったら、ずっと居ればいいじゃないですか、プラントに」
「それは出来ないんだよ。僕がプラントに居ればそれだけカガリとラクスに負担が掛かってる。僕は・・・・ナチュラル用のMSのOS開発に関わった事もある。そのOS内にブラックボックスを作って、あれ以上のバージョンアップは出来ないように制御してる。
そのブラックボックスを弄る為のパスワードは僕の頭の中にしかなくて。だから今もオーブでは僕を戻すように必死にカガリを説得している最中だろうし、プラントでも僕の経歴とか調べた人が僕の体を調べたいって言って来てる人が居る。その人達を抑えているのがラクスで。
だから、僕は此処に居るだけでカガリとラクスに迷惑を掛けてる。僕はプラントを、オーブを出なくちゃ」

言葉の後に二口目を齧る。
しゅくしゅくと鳴るリンゴを砕く音が妙に大きく聞こえた。
その時、いつ近付いてきたのか、ラクスの声が突然背後から聞こえた。

「剥いた野菜を入れるボウルが必要だと思って持って参りましたわ」
「あ、あぁ、ありがとう。ラクス」

そして何事もなかったように笑うキラの笑顔。
何も知らないラクスと、何も考えていないような笑顔を見せるキラ。
この虚飾の関係を作る二人に、シンは急激に苛立ちを覚えた。

こんなの、間違ってる。

徐にジャガイモにナイフを刺して野菜の山に置いて立ち上がると、ラクスの目の前に立つ。
ラクスはシンがボウルを受け取ってくれるのかと思って笑顔でボウルを差し出す。
しかしシンはそのボウルを受け取らずに後ろのキラを見つめた。
怒りを含んだキラを射抜く視線のシンを、キラはその笑顔を僅かに消して見つめ返す。

「良く見とけよ!これで満足出来るのかよ!」


177 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:36:52 ID:???

シンが肩を怒らせ吼えた。
キラがハッと目を見開いた時にはシンは再びラクスを振り返り、彼女の二の腕を思い切り掴んで引き寄せた。
両手で持っていたボウルがラクスの手から落ち、大きく揺れていずれ止まる。

逃がさないように腰に手を回して・・・・。
ぎゅっと目をきつく閉じてラクスに口付けた。

いっそ舌でも入れてやろうかと思ったが、ラクスの唇に舌を触れさせた時、その唇に力が入っている事に気付いて結局それは出来なかった。
キラに見せ付けたかっただけで、ラクスを傷付けたい訳ではない。
時間にしてそれはどれ位のものだったのだろうか。
背後のキラが立ち上がった気配を感じてシンは目を開けた。
視界一杯にラクスの顔が見えて、彼女はその紫を含んだ蒼い瞳を驚いた様子で何度か瞬きをさせていた。
罪悪感にシンは直ぐにラクスから視線を外すとキラを振り返った。

「これでいいんだろ!とっとと帰れよ!」

シンは居心地の悪さにラクスには視線を向けずに庭の先に走っていった。
勿論目的地など無い。
ただ、今の行為について何も言われたくなかった。


ラクスはシンに触れられた唇に手を添え、固まっているキラに視線を向けた。

「・・・驚いてしまいましたわ」
「・・・・大丈夫?」
「はい。わたくしよりもシンの方が心配ですわ。わたくし、追い掛けて参ります」
「うん。任せる」
「はい」

ぱたぱたと小走りでシンを追い駆けるラクスの後姿を見送ったキラは、二人の姿が遠くに見える事に急に胸が締め付けられて視線を逸らして椅子に座り直した。
そして膝に肘を付いて俯く。

ショックを受けた。

まさかシンが自分の目の前でラクスに口付けると思わなかったから。
そんな姿は見なくて済むと思っていたのに。
案外傷ついている事にショックを受けて。

しかし、それ以上に悔しく思わない自分にショックを受けた。
愕くほどにラクスに対して独占欲が湧かなかった。
シンに対して怒りも湧かず、逆に安堵すら感じた自分にショックを受けた。




・・・・・それ程までにラクスという人はキラにとって過去の恋人になっていた。
もしかして、ショックを受けたというこの感情でさえも、「ショックを受けた振り」をしているのかもしれないと思うと、キラは膝の上に涙を幾つも落とした。

178 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:38:12 ID:???





シンは薔薇の垣根の間に倒れ込んだ。
走っている途中から涙が込み上げていた。

最低だ。

自分の行為がいかにラクスに失礼かと考えると垣根と芝生の境に顔を埋めてしまう。
そして自分の体を両腕で抱き締めれば、先程腕に納めたラクスの小ささを思い出す。
彼女はその意思の強さを秘めた瞳とは裏腹に、儚げな体をしていた。
少し力を入れたら折れそうで、力を入れる事が出来なかった。
思い出すと毛穴の一つ一つから蒸気を発してしまいそうな恥ずかしさが駆け巡る。
二つ年上だからかもしれないが、愕いただけで逃げる素振りを見せなかったラクスが何を考えていたのか今になって気になる。

そして追い駆けたラクスは垣根の隙間から見えるシンの足を見つけて漸く走っていた足をゆっくりしたものに変える。
キラが水を上げてからまだ時間が経っていないので芝生の上にはまだ水滴が残っている。
そんな中で横になっていたら濡れているのではないかとそっと垣根の上からシンの様子を伺い見ると、垣根と芝生の間にすっぽりを顔を埋めてしまっていて、どのような表情なのか分からない。

「見つけましたわ」
「・・・・殴っていいですよ。俺、それだけの事をしたんで」
「では裁判所に訴えましょうか」

途端シンは真っ青な顔でラクスを見上げる。
漸く顔を見せてくれたとラクスは微笑むと、直ぐに「冗談ですわ」と、軽やかに笑う。
シンはしかしそれだけの事をしたのだと自覚して不貞腐れて再び顔を背ける。
ラクスは垣根を回り込み、シンの隣に腰掛けるとその頬に涙があるのを見つけ、掌で拭おうとするとシンがその手を払った。

「謝りませんよ。事情も話せませんけど」
「・・・・何となく、分かりますわ」

ラクスはプラントの天井を見上げ、そのままシンの隣に寝転んだ。
芝生に寝転んで天井を見るなどもう何年もしていなかった。
垣根に阻まれた狭い空ではあるが、視界の両端に薔薇の垣根があり赤い薔薇がラクスを見下ろし、その向こうに青白い空が見えるのはまるで自分が小人にでもなったようで面白い。
そして、ラクスは徐に顔を両手で覆った。
隙間から涙が零れる。

最初の2、3粒は声を凝らす事が出来たが、その内どうしてもしゃくり上げる声が漏れ始めた。
ラクスの涙の声を背中で聞いたシンは慌てて体を起こすと隣のラクスを見下ろすが、顔を覆っていてよく分からない。
よく分からないが、泣いている。

「何で・・・」
「・・・・わたくし達、本当に終わって・・・・・いたのですわ・・・・・」


179 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:39:28 ID:???

改めて口にした事が無かった。
暗黙の了解のように二人の恋は終わっていたのだ。
その事実からキラもラクスも逃げていた。
口にしなくても雰囲気だけで互いに察して、表面上は互いを大切だと微笑み合う。
その虚飾の関係が、シンのキスによって終わっていたのだと、もう終わるべきなのだと教えてくれた。

シンが走り去った後のキラの顔は青褪めてショックを受けていた。
しかし、その表情が、恋人として受けた物ではないという事位ラクスにも簡単に知る事が出来た。
そしてラクスは・・・・・・。
キラがショックを受けた理由に気付いて安堵すらした。

漸くキラを己の呪縛から解き放つ事が出来るのだと、自然と思えたからだ。



しかし、これまでずっと共に居た人との別れを考えるとそれはとても淋しい。



きっとキラは向こうで泣いている。
その場に自分が居る事は許されない。
これ以上虚飾の関係を続けない為には、ラクスは離れた方がいいと判断したからこそシンを追い駆けた。

「あの・・・」
「暫く・・・・暫くで構いませんわ。・・・泣かせて下さいませ」

小指と顔の間から次々と涙の雫が流れてキラキラと光りながらこめかみに吸い込まれていく。
嗚咽の声を体を小刻みに震わせる事で殺して。
「ふっ」と、声が漏れた瞬間、ラクスは大きく体を左右に揺らして次々と涙で髪を濡らしていく。
シンは懸命に涙を堪えるラクスの姿を見下ろしながら、頭をガンガンと強く殴られるような衝撃を受ける。
まさか此処まで泣くとは思わなかった。
自分がどれだけ酷い事をしたのかと思うとどうしようもなく、しかしラクスを放って置く事は決して出来なかった。

手を伸ばしていいのか悩む。
抱き締めた方がいいのか悩む。

しかしシンは思い切って手を伸ばしてラクスの手を外した。
泣き濡れた顔は涙で濡れていたが、それをシンは見苦しいとは思わなかった。

「泣くなら・・・・声を出した方がいいですよ」

その方がずっと楽で、何も考えなくて済む。

ラクスの体を起こさせ、シンは垣根に背中を預けてラクスを抱き寄せる。
最初ラクスは戸惑いを見せたが、シンがきつく抱き締めるとその力強さに安堵したのか、シンに体を預けて泣いた。


180 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:40:57 ID:???

シンはラクスを抱き締めたまま、プラントの天井を仰ぎ見た。
プラントは何も変わらない。
此処で一人の少女が泣こうが、一組の恋人が別れようが何も変わらない。
しかしこれもまたプラントが平和だからこその出来事だと思うと不思議な気分だった。

シンにはプラントを守る力がある。
しかし逆に言えばプラントを守る力しかない。
キラのように自分を縛る鎖は大きくなく自由であるが、自由だからこそ自ら動かなければ何も無い。

これまでプラントさえ守れれば、戦争さえ起きなければそれでいいのだと思っていた。
しかし、平和になり、戦う事がなくなればMSの操縦技術など高くなくても問題は無くなってくる。
戦争が起きなくなった今、シンは自らの無力を感じていた。

腕の中のラクスは泣いている。
その涙を止めて上げられるような言葉一つ浮かばない。
悲しみは一種類ではない。
そして何かを守る力も、一種類ではない。

戦争が無くなった今、シンは自分が今何を守らなければならないのか、唐突に分からなくなって来た。


宇宙に居ればそんな事考えずに済んだのに。


ラクスを抱き締める力を強くして、シンはラクスの肩口に顔を埋めると再び涙が込み上げて来た。
己の無力を自覚して。


181 :鬼ジュール:2006/06/12(月) 19:42:02 ID:???






「・・・・・・スミマセン」





今のシンには何も無い。
倒すべき敵も、守るべき者もない。
何の力も、無い。


・・・・キラの思惑に乗るようで少し気に食わないが。


しかし許されるなら・・・・・。
この腕に抱く儚い人を守るべき人にしてもいいだろうかと・・・・・・思えた。



<続>
**********************
漸くシンラクらしくなってきました。


182 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/12(月) 19:54:34 ID:???
シンラクらしくなってきたーーー!!
っというか切ないな・・・
続ききになるとこです

183 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/13(火) 04:26:25 ID:???
ジュール氏GJ

184 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/13(火) 11:13:35 ID:???
シンラクだわGJ!

185 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 01:01:47 ID:???
やばいやばい

保守!

186 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 20:53:18 ID:???
ラクス=ヒステリー2006.06.13.Tue
昨日の心理学の授業でフロイドのヒステリー性性格とかいうのをやったんですが、それがあまりにもラクスにぴったりで笑えました。

ヒステリー性の性格は
1.我が儘
2.自己顕示欲
3.小児的
4.非暗示性
5.態度が演出的
6.自律神経が不安定
7.反省力に乏しい

とからしいです。
1・2・5・7あたりが特にラクスにぴったりだと思うんですがどうでしょう?

あとは白々しいとか小才だとか頭よく見せかけてるだとか自己中心的だとか色々。

先生が言うことがほとんどラクスにぴったりだったんですがあんまり覚えてないんだ・・・。あまりにもぴったりすぎてラクスのこと説明してんじゃないかと思えるほどでした。
友人と笑いこらえるのに必死だったよ。

ちなみに対処法は我慢するか逃げるかの二つしかないそうです。
我慢する=カガリ、逃げ出す=アスラン
だったんだな・・・。頑張れ、アスカガ。

キラはほら、もうラクスと同類だから・・・。

あと今日大正文壇の話を聞いてて白樺派はクライン派だと思った。

能天気なまでの自己肯定

ってところがね。まさにって感じ。
金持ちのお坊ちゃんに多いらしいし。
快か不快かしかないって所も。
楽しければそれでいいらしいです。
所詮ラクスとミーアの区別もつかない連中ですから、クライン派って。(明らかに乳のでかさが違うのにな)

とりあえず馬鹿の集団?(別に私は白樺派が嫌いなわけではない。クライン派は嫌いだけど)

授業真面目に聞けって感じですね、私たち。
授業中にネタを探して楽しんでます。だって私90分も集中できなーい。

私たちかなりラクスに対して酷いですが、ラクスはもっと酷いことしてるのでこんなもん可愛いもんだと思いますよ。むしろこんなんで済んで感謝してもらいたいぐらいです。

187 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/16(金) 21:57:28 ID:???
>>186
むしろ、フレイの性格とピッタリ一致してると思いますた。

188 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/17(土) 11:32:30 ID:???
保守

189 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/18(日) 07:10:28 ID:???
マターリマターリ

190 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/19(月) 10:27:28 ID:???
ほす

191 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/21(水) 00:36:13 ID:???
ストフリに乗らないキラはキラじゃないし
キラのストフリに乗るイザークもイザークじゃない。

192 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 00:08:51 ID:???
保守します

193 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/23(金) 20:35:53 ID:???
>>191
ついでに言えば、運命、ファイナル+、スペエディと消化した今
キラの傍に居ないラクスもラクスではないし、ラクスの傍に居ないキラも
キラじゃない。そんな感じだ・・・
シンラクスレで悪いが、漸くシンラク展開になって初めて猛烈に違和感を感じた


194 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/24(土) 02:20:20 ID:???
まぁシンラクスレだしな

195 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 00:33:24 ID:???
あげ

196 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 03:41:05 ID:???
MSは道具だ。
何に乗ろうと、イザークはイザーク。キラはキラだ。

197 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 03:44:00 ID:???
あ、
クリン・カシムはダグラムであり、
ダグラムはクリン・カシムだ。

あれほど深いメカと人の繋がりは中々無いよ。

198 :鬼ジュール:2006/06/26(月) 19:33:57 ID:???
泣き終えたラクスが最初に口にした言葉は「お鍋・・・」だった。
次にくすくすと笑う声が聞こえてシンはラクスの肩口に埋めていた顔を上げる。
そしてラクスの顔を覗き込むと、まだ涙の跡が残っている顔でシンを見て微笑んだ。

「イン・ローザ・・・」
「はい?」
「死からの再生・・・そんな言葉ですわ。何かが終わっても、またそこから何かが生まれる。それをイン・ローザと言いますのよ」

キラが育てた薔薇の中で自分の恋の終わりを認めた。
しかし、そこからまた芽生える物もある。
ラクスにはまだその芽生えが見えなかったが、きっと何かが生まれる。
だからこそ微笑んだ。
まだその身を捕らえる棘は痛くとも。
この痛みもいつかは和らぐと。

そしてシンは、互いに涙を流し、体温の上がった二人の間に篭った熱の中で微笑むラクスに、息を飲んだ。
女が決して人には見せない姿を見せるというのは、男にとって一つの独占欲に繋がる。
こんな涙に濡れたラクス・クラインなど他の誰も見た事が無いだろうと思うと、それだけで一つ特権を得たような気がしてくる。

鮮やかで綺麗だった。

先程まで折れそうな、消えてしまいそうな程涙を流していたというのに、再び顔を上げたその表情は背後の薔薇も霞んでしまいそうな程鮮烈な印象をシンに残した。
何の力も無いと己を嘆いたシンとは全く逆のエネルギーを持つその瞳に惹き込まれてしまう。
思わず逃すまいと抱き締める手に力が入る。

「シン?」
「・・・・今度こそ、殴っていいですよ」

言葉の後に二人の間の空間を埋めるように引き寄せて口付ける。
失恋した女の子の心の弱い所を突くのはいけないんじゃないかという考えが頭を過ぎったが、そんな事で今のシンの気持ちは止められそうに無かった。
そして密やかに心に誓う。

ラクスを守る一人になると。

口にして言うには余りにも独り善がりだから。
おまけにラクスの周りにはキラが居なくなろうと常にイザークとアスランが居る。
しかし、キラ同様二人には沢山己を縛る鎖があるように見えるから。
いつもは宇宙に居たとしてもきっと自分が一番速く、自由に動けると確信出来る。

身を乗り出すようにして更に口付ける角度を変えると、ラクスは自分の背が地面に落ちてしまいそうで思わず口を開く。
その隙間から舌を差し入れると、ラクスは臆病な程に舌を奥に引っ込めていた。
殴られる事はとっくに覚悟しているから、シンはラクスの体を支えてそのままラクスの体を地面に押し付けると、背に回していた手をラクスの頭の角度を変える物に変えて。
舌を無理に絡めると、息苦しくなったのかラクスはシンの服の袖に指先を引っ掛けた。
くちゅくちゅと、二人の唾液の絡まる音に耳を犯され、シンは夢中になってラクスの唇を貪った。
一先ず気が済んで、しかしラクスに見せ付けるように舌を出したまま唇を放し、二人の唾液で濡れたラクスの唇を舐めると、見下ろすラクスの顔が信じられない程真っ赤になっている。
いつも何処か余裕を見せている彼女に、今はその余裕は見えない。
今だけは自分の優位を悟ってシンは意地悪く笑って見せた。


199 :鬼ジュール:2006/06/26(月) 19:35:50 ID:???

「誰にも言えませんね」
「何故・・・・?」
「・・・・・・・秘密です」

シンは体を起こして垣根に体を預けると目を閉じる。
キスの理由は言いたくない。
その代わりに殴られるのだという意思表示だ。
ラクスが体を起こす気配を感じて奥歯を噛み締める。
どのタイミングで殴られるのか目を閉じていては分からないから。
しかし、いつまで経ってもラクスはそれ以上の動きを見せないのでシンは不審に思い薄っすらと目を開けると、ラクスはシンの目の前5センチと離れていない場所でじっと彼を見つめていた。
少し、驚く。

「・・・・・此処で殴らなかったらもう俺殴らせませんよ」
「貴方の中にちゃんと理由があるのでしたら今回は不問に致しますわ」

自分も最中に抵抗しなかった事もあり、ラクスはそれ以上言わなかった。
シンにはラクスが何を考えて許してくれているのか分からず、しかし物凄く近くで見つめられている事にも気になって胸が高鳴る。
余り近くで彼女の顔を見る事が無かったから。
水色とも紫とも形容しがたい彼女の瞳は不思議な輝きを見せる。

「綺麗な紅い瞳なのですね。此処まで綺麗な紅い瞳は初めて見ましたわ」
「・・・・どうも」
「シンはきっと笑っていた方が可愛らしいですわね」

言いながらラクスは寄せていた顔を離すとゆっくりとした動作で立ち上がる。
服に付いた芝生や水滴を払い、もう一度目尻の涙を拭うとシンを振り返った。
シンもまたラクスが何を言い出すのだろうかと見上げると、目が合った事に気付いたラクスが微笑み、口を開いた。

「行きましょう。わたくしお鍋が心配ですわ」
「・・・・はい」

これからキラの所に戻らなければならないと思うと気が引けたが、このままずっと不貞腐れている事も出来ない。
仕方なく立ち上がるとラクスの二歩後ろを歩く。
そして先程までキラと野菜を剥いていた場所には何も無く、椅子も片付けられていた。
屋敷に戻ったのだろうかと台所に向かうと、キラとミーアが料理を進めていた。
ミーアが二人の戻りを確認し、ラクスの目の周りが赤い事を見て取ると一瞬気遣わしげな視線を向けたが、直ぐに微笑んだ。
テーブルの上を見ると、外に持っていった野菜は全て皮が剥かれて洗われていた。
思ったよりも断然早い作業にシンも驚きキラを見ると、彼もまた目尻をほんの少し赤くした顔でシンに微笑んで見せた。
二人の会話を聞いているとどうやらもう終わった関係のようだが、それでも目が合うと彼の元彼女?に勝手にキスした手前なんとも気まずい気分だった。

「ラクス様。美味しそうになりましたよ」

場を和ませるミーアの声が唯一の救いか。
ラクスの目元が赤いのも、キラの目元が赤いのも、シンの目元が赤いのもきっと彼女は分かっているだろうに何も言わなかった。
キラが言い含めていたのかもしれない。
それとも彼女が何も聞かないのかもしれない。
分からなかったが、気遣ってくれているというのだけは分かった。

200 :鬼ジュール:2006/06/26(月) 19:36:41 ID:???

「それは良かったですわ」

ラクスも何事もなかったように鍋に近付きキラから小皿を受け取ると中のスープの味を確かめる。
少しだけ考える仕草を見せると、ラクスは1つ頷く。
どうやらOKが出たらしい。
ミーアはほっとした表情を見せると、キラの隣に移動する。
キラはお玉を置くとミーアに耳を寄せ、囁かれた言葉に1つ頷いてラクスとシンに目を向けた。

「疲れたみたいだから部屋に連れて行くよ」
「ミーアさん、本当にお手伝いして下さいましてありがとうございました」
「いいえっ。あたしも勉強になりました。また一休みしたら来ます」
「アスランから車椅子は一日2時間と言われているでしょう?もう2時間は経ってしまいますわ」
「・・・・・・アスランには内緒にして下さい、ラクス様。あたしも誕生日パーティ出たいんです!」

指を組んでラクスに懇願するミーアに、ラクスは困ったとキラに視線を向けると、キラが一つ頷いてミーアと視線を合わせるようにしゃがんだ。

「そうしたら、今からちょっとでも寝て、疲れが取れてたら少しだけ、ね?」
「はぁい」

少し不服そうなミーアの様子でもキラは微笑んで「うん」と、応えると立ち上がりミーアの車椅子を押して台所を出て行く。
そして台所から完全に姿が見えなくなると、ラクスは小さく溜息を吐いた。

「気を遣わせてしまいましたわね」
「・・・そうですね」
「さぁ、暫くキラも戻って来ないでしょうから、料理と、ケーキを仕上げてしまいましょう。お手伝いして下さいな」
「俺、そんなに料理出来ないんですけど」
「ではお教えしますわ。まずはミーアさんが剥いて下さったゆで卵を潰して下さいな」

それ位なら出来そうだとシンは一つ頷くと、ラクスの支持に従い、大量のゆで卵を潰しに掛かった。





201 :鬼ジュール:2006/06/26(月) 19:37:38 ID:???


「ありがとう」
「・・・・はい?」
「連れ出してくれて」

ミーアの車椅子を押しながらキラが困ったように微笑んだ。
その淋しげな笑いにミーアはきゅっと眉間に皺を寄せると床を見つめる。

「他に、あたし何も出来ないもん」
「出来る事をしてくれたよ」

自分一人では退室する理由が見つけられなかったから。

「・・・じゃあ、あたしが寝るまでお話、して。アスランってばお話してって言っても全然なんだもん」
「アスランの事だから話題探しに困るんでしょう?」
「そうなの!それで結局『勘弁してくれ』って言われるか、お説教に変わるのよ」

お説教なんてされたくないのにと、むくれた声を出すミーアにキラは微笑むと、「僕もそんなに話題ないなぁ」と、言葉の割に困ってなさそうに笑った。
しかしその笑い声にも力は無く、どこか淋しげに響く音をミーアは俯いたまま聞いていた。



「・・・・泣いても、いいからね?」



キラの言葉の一つ一つに辛さが見える。
きっとまだ泣きたいのを堪えているのだと気付いて小さく伝えると、キラは困ったように笑って「アスランに怒られちゃうよ」と、応える。

「頭撫でてあげるのも、あたしのリハビリになるわ、きっと」

だから無理はしなくていいと言ったが、結局キラは笑っただけだった。


<続>

202 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 20:56:36 ID:???
>>196
でもガンダムにおいてMSとパイロットの関係は密接だし切り離せないのも事実。
自分も、キラはともかくストフリに乗るイザークは微妙すぎてどうも・・・

203 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/26(月) 21:55:43 ID:???
もともと自由は遺作の乗機なんだから、後継機の和田に遺作が乗るのは、別に構わんだろ。

それはそうと、GJ

204 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 00:06:00 ID:???
保守

205 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 15:37:13 ID:???
鬼さんGJ

206 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/28(水) 23:16:36 ID:???
>>203
自由はそうでも、ストフリは完全にキラのために開発された機体

207 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 00:42:53 ID:???
>>203
お前の言い分も、鬼の遺作贔屓ぶりもシンラクに関係なさすぎて意味不明だが
ここまできて、キララクの恋人設定持ち出してシンとくっつける為に別れさす
ぐらいなら、最初からキララクは同士で恋愛関係に及んでないことにしておいて
シンとくっついた方がよかったな。



208 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 18:56:19 ID:WPP+movT
>>1
アオシマから発売されていたダミド&シェリル並ですな。

209 :通常の名無しさんの3倍:2006/06/29(木) 21:57:20 ID:???
同人誌か

210 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 00:30:13 ID:???
保守
シンラクスレとかあり得ないものだから
本編のことはあまり考えずにいこう
シンとラクスが好きだ(*´Д`)

211 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/02(日) 00:31:24 ID:???
シンラクとかあり得ないもの


だった…

212 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/04(火) 00:59:51 ID:???
ほしゅ

213 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/06(木) 00:43:02 ID:???
遺作用に再調整されたんじゃね?>和田

214 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/07(金) 17:37:43 ID:???



215 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/08(土) 03:45:47 ID:???
 


216 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/09(日) 22:39:10 ID:???



217 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/10(月) 03:32:59 ID:???
>>213
おまい、鬼の文章ちゃんと読んでるか?
まあ、ちゃんと読むほどの内容でもないがな・・・

218 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/10(月) 17:50:39 ID:???
または遺作が成長したとか、色々考えられるが。

219 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 00:30:51 ID:???
遺作の成長とか、はっきりいってどうでもいい!

220 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/12(水) 21:25:12 ID:???
捕手


221 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/15(土) 01:39:24 ID:???
ホシュ

222 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/17(月) 23:21:09 ID:SYonsXn4

アニメ最萌トーナメント2006公式サイト
http://saimoe2006.hp.infoseek.co.jp/
アニメ最萌トーナメント2006投票コード発行所
http://banana236.maido3.com/~bs5114/a06/

投票リスト
http://saimoe2006.hp.infoseek.co.jp/13.txt
アニメ最萌トーナメント2006 投票スレRound36
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1153140556/

予選13組 7月18日(火)
投票時間は01:00:00〜23:00:59です。

<<ラクス・クライン@機動戦士ガンダムSEED DESTINY>>

223 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/20(木) 12:20:29 ID:???
なんだここ、このスレ立てた奴は自分の脳内で補完してろ
シンみたいなキチガイ小僧にラクスが似合う訳ねーだろ

224 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/22(土) 20:56:46 ID:???
シンラク萌えネタまだー
天然ラクスに振り回されるシンって感じの話がいい

225 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/23(日) 13:39:51 ID:???
きめぇんだよ、腐臭がプンプンするわ 女神にゴキブリは似合わねーんだよ

226 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/24(月) 10:22:28 ID:???
シンラク期待保守

227 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/24(月) 12:26:54 ID:???
場の空気に流されて自分の感情でしか行動しない低脳極まりない糞餓鬼なんぞに女はいらん
身分不相応、身の程をわきまえろ

228 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/24(月) 21:12:52 ID:???
変なのが沸いたよage

229 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/24(月) 21:25:06 ID:???
女神とキタかよw
今時ラク厨か?

230 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/26(水) 06:32:45 ID:???
職人待ち保守

231 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/28(金) 01:35:41 ID:???
保守

232 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/30(日) 10:47:30 ID:???
シ「ラクス様、そろそろ夕飯の時間だよ?」
ラ「あらあら、もうこんな時間ですの?」
シ「こんな時間ですわ。」
ラ「もぅ、からかわないで下さいな。」
シ「わかりましたわ。」
ラ「イジワル…。」
シ「ゴメン、じゃあ早く何か作ってよ。」
ラ「はい」

特に意味は……

233 :駄文係:2006/07/30(日) 18:51:58 ID:???

  無力だった。
  何もできなかった。
  大切な家族とはもう逢えないと思い知らされた。

  力を欲した。
  大切な人を死なせない為の力を。

  力を手にした。
  だが、俺は何の為に戦えばいいのかわからない。
  俺の辞書には『プラントを守る』という大義名分は載って無いらしい。

  けれど、神様は気まぐれらしい。
  俺に戦う理由を与えてくれた。
  生きることに執着する為の存在と引き合わせてくれた。
  俺の命に変えてでも守ると思える女性(ヒト)に。


  機動戦士ガンダムSEED ANOTHER DESTINY

今週末執筆予定(嘘)


234 :鬼ジュール:2006/07/30(日) 21:25:52 ID:???

ザフトMS研究所。
その奥であるMSの起動実験が行われていた。
今発進しようとしているMSの隣にはデスティニー、レジェンド、インパルスが並んでいる。

新しい発進システムの導入にはインパルスのデータが必要だった。
そしてデスティニー、レジェンドの戦闘データ、不備箇所の確認。
それを荒削りながら機体にデータを取り入れ、初めての起動。


「大丈夫なんでしょうか・・・」
「クライン議長は本日休暇をお取りになり、主要な機体のパイロットも同じ日に休暇。右腕殿は一人はヴォルテールに一人は国防委員会の会議。こういう日はもう無いだろう。この研究所からは出せないが・・・」
「戦場に出る事の無いMS・・・・・。それでも技術の追求は必要です。何か起きた時の為に」
「贅沢を言えば、今日これを完全に動かせるパイロットがこの場に居ない事だけが残念だ」


MSの瞳がネオングリーンに光る。
一度は目覚めたその瞳は酷く無機質だ。
しかしその起動から伝わる振動が管制室までびりびりと伝わってくる。


これはまだ実験だ。
本当の目覚めの日はまだ、来ない。






235 :鬼ジュール(注:レイメイ警報発令中):2006/07/30(日) 21:29:52 ID:???


―― クライン邸

始めは気まずかった雰囲気も、訪れたヨウランとヴィーノの存在によって解消された。
ラクスに手土産を渡し、シンが隊長命令によって手伝っている事を知って彼らもまた料理の仕上げを手伝い、会場のセッティングも手伝ってくれた。
その間キラはミーアの部屋から出てくる事は無かったが、誰も何も言わなかった。
(そもそも皆ラクスとキラが一緒に住んでいるという事を知らないのだから当然といえば当然だった)

そして始まる時間の直前になりルナマリアが到着し、家から持って来たという料理とケーキを並べ始めた。

「あれ?レイは?」

メイリンの到着が遅いのは意図的な物だとして、レイの姿が見えないのは不可解だった。
その為何気に尋ねてみると、ヨウランとヴィーノは意味深に視線を合わせてから二人は揃ってルナマリアに視線を移した。
ルナマリアが知っているらしいとシンもルナマリアに視線を向ける。
するとルナマリアは意味深に笑った。

「うちのお姫様のお迎えに来て貰ったの。ちょっと始まる前に話がしたいって言うから、折角だし少し遠回りでもして時間稼ぎしてって言ったのよ」
「へぇ、仲直りしたのかな。あの二人」

暢気にそう言うとルナマリアは困惑した表情でシンを見た。
いつもとは違う雰囲気にシンは首を傾げる。

「どうかしたのか?」
「だからシンはお子様なのよ」
「は?」

何でそこで咎められるのかが分からない。
ヨウランとヴィーノに視線を向けるが、彼らもまたルナマリアの言葉の意味が分かっていないらしい。
彼らに答えを求める事を諦めてシンはもう一度ルナマリアを見た。

「ナンダヨ、ソレ」
「ま、あたしもどうなるかは分かんないから報告待ちなんだけど」
「だから、何が?」
「プロポーズ」

固まった。
今ルナマリアの口から何を言われたのか分からず、いや、分かりはするのだが、その意味が何であったのかを確認するのに時間がかかった。
瞬時にその意味が分かっているからこそ固まった訳なのだが、ソレを認識する事をシンは頭と心で拒否したのだ。
その為時間が掛かる。
たっぷりと時間を掛けて心を落ち着かせたシンは瞬時に息を吸い込んだ。



236 :鬼ジュール(注:レイメイ警報発令中):2006/07/30(日) 21:31:52 ID:???



『えええええええええええええええええええええ!!!!!?』


響いたのは3つの声。
シンは直ぐにヨウランとヴィーノに目を移すと彼らもまた問い掛けるようにシンに視線を向けた。
同士を得たとばかりにシンは思わずアイコンタクトで二人と無言の会話を交わす。
と、それを知ってか知らずか、ルナマリアは小首を傾げて深く溜息を吐いた。

「あたしもこれ聞いたの昨日の夜なんだけど」
「幾らなんでも早くないか?」
「だって、その前に付き合って無いんだろ?」

此処で尋ねなければ状況が全く見えないと思ったヨウランとヴィーノが矢継ぎ早に質問する。
質問される立場のルナマリアはそんな二人に「あたしもよく状況は分かってないんだから」と、前置きをする。

「聞いたら付き合ってないって言うし、あたしも言ったわよ、早過ぎるって。でも、レイは『俺には時間が無い』って一点張りなんだもん。ま、振られる覚悟もあるみたいだったし、当たって砕ければって言ってみたんだけど」
「・・・そりゃあ、なぁ」
「普通なら振られるよな」
「何だか俺状況に付いていけてないんだけど」

シンは突然の出来事に頭を押さえる。
確かにシンも知っている。
レイのテロメア。
その長さが普通の人間よりも短い為短命である事は。
しかしそれは治療によって老化を遅める方法もある訳で・・・・。

いや、まだレイはその治療を受けていない。
その理由が、コレなら。

確かに急ぐ必要があったのかもしれない。
それでもシンにとっては滅茶苦茶だった。
しかし、自分の物差しとレイの物差しは別物で。
そして恐らく、時間の感覚も違うのだろう。

「メイリンは・・・何て応えるつもりなのかな」
「直ぐには返事しないんじゃない?」
「だよなぁ」

頭の中がぐわんぐわんと揺れている。

有り得ない。


237 :鬼ジュール(注:レイメイ警報発令中):2006/07/30(日) 21:33:10 ID:???

この一言がシンの考えの全てだ。
しかしその一方でレイの身の上を考えると願ってしまう。
事がいい方向に向かうように。

「・・・・・・レイから言ってくれるよな?結果」

恐々とヴィーノが尋ねる。
それにルナマリアは頷き、「それか、メイリンからね」と、応える。

暫くメイリンとレイは仲が良くなさそうな雰囲気で。
昨日メイリンを連れてレジェンドでアプリリウスに連れ帰って、そこで仲直りして?今日プロポーズ?

推測だらけだが、流れとしてはそうなるのだろう。
これで昨日仲直りしてないままプロポーズだとしたら現在修羅場になってそうで恐ろしい。
メイリンが怒っても全然怖くも何とも無いが、それが見守る立場になると怖いというよりも気まずい。

「メイリンは・・・・レイが好きなのかな」
「好きだった時期はあったと思うんだけどね」

ぽつりとシンが呟くと、ルナマリアは「憶測だけど」と最後に付け加えてそう返した。
それは望みがあるのかとシンがルナマリアに視線を走らせると、パッチリと目が合ってルナマリアは困惑の表情を見せた。

「相談受けたわけじゃないし。それからはアスランに気があったみたいだし」
「アスランかぁ・・・・」

途端にシンが眉を寄せるからルナマリアは苦笑する。
ヴォルテールでの回収作業中、アスランと共に仕事をしていたがどうにもシンには感覚が合わなくて遣り辛かった。
人間的にもよく分からない。
変というよりも得体が知れなかった。
ルナマリアにしてもそれは同じようで、どうやら自分達とアスランでは視点が違うのだという事で話が終わっていたのだが。
メイリンはそのアスランの視点が見えていたのか。
それとも見えないからこそ惹かれたのか。

考えて「後者のような気がする」と、シンは溜息を吐いた。
だったら止めておけばいいのにと思う。
憧れるだけならまだしも、視点が違う者同士で上手く行く筈が無い。


第一、アスランには月の歌姫が居る。


もし今もアスランに気があるというのなら、メイリンが振られる事はほぼ決定している。
考え直せ、と、心の中で唱えるように繰り返した。


238 :鬼ジュール:2006/07/30(日) 21:34:41 ID:???


ふと、今も花瓶の配置などを整えているラクスを伺い見た。
その表情はいつもと変わらず、ふんわりとした柔らかな雰囲気に思わずほっと安堵の息を吐く。
先程の事等忘れているようにも見えるが、今はそれが逆に安心する。
余り気にされても困るから。



いや、気にしているのは自分の方なのかもしれない。




<続>


239 :通常の名無しさんの3倍:2006/07/31(月) 22:14:02 ID:???
シンラクシンラクもえたお

240 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/01(火) 11:59:40 ID:S0YHotTf
(・∀・)もえイイ!!


241 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 00:55:00 ID:???
新MS期待してまっせ。ガンバ!

242 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/04(金) 02:03:44 ID:???
天才MS設計者ラクス!


243 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/06(日) 02:08:26 ID:???
保守

244 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/08(火) 05:43:04 ID:???


245 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 03:54:50 ID:???
ほし

246 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/11(金) 09:38:14 ID:???



247 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/14(月) 10:17:04 ID:???
保守

248 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/16(水) 01:24:30 ID:???
hoshu

249 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/19(土) 00:00:55 ID:???
保守

250 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 14:26:13 ID:E5Wemcw0



251 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/20(日) 15:29:35 ID:???
ラクスは輪姦専用キャラ

252 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/22(火) 17:55:27 ID:???
保守

253 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 04:45:16 ID:???
保守

254 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/25(金) 19:35:13 ID:???
保管庫待ち。最初から読みたい…。

255 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/26(土) 03:00:58 ID:???



256 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/28(月) 10:27:54 ID:???





257 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 01:33:30 ID:???
☆○


258 :通常の名無しさんの3倍:2006/08/29(火) 18:28:43 ID:???
ほしゅ


259 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/01(金) 15:23:48 ID:???
保守

260 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/04(月) 03:40:26 ID:???
ほし

261 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/07(木) 02:29:07 ID:???
保守

262 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/10(日) 01:45:22 ID:???
ほしゅ

263 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/13(水) 06:15:45 ID:???
保守

264 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/16(土) 03:38:21 ID:???
保守

265 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/17(日) 18:57:02 ID:???
保守

266 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/21(木) 00:59:19 ID:???
保守

267 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/21(木) 18:55:38 ID:???
 


268 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 07:10:33 ID:???



269 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/25(月) 22:51:29 ID:???
保守

270 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 00:15:31 ID:???
保守

271 :通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 13:28:47 ID:???
>>169
は、大体のシンラクSSに繋げられるエロ場面だな。


272 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/01(日) 01:56:51 ID:???
保守

273 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/03(火) 21:15:31 ID:???
HOSHU

274 :鬼ジュール(お久し振りです):2006/10/05(木) 13:26:15 ID:???

予定の時間を10分程過ぎた頃、今日の主役の登場となった。
主人であるラクスが出迎え、メイリンはレイにエスコートされてラクスの出迎えに応じる。
いつもとは違うドレス姿に恥ずかしそうなメイリンはラクスの出迎えに頬を染め、少し緊張した面持ちで会場である庭に招かれる。

整えられた木々に更に飾り付けられた庭にメイリンは思わず「うわぁ」と、声を上げ、庭全体を見渡す。
そしてレイはエスコート役を果たしたとシンの隣に立つと、シンは隣のレイを伺い見た。
レイはシンを振り返らなかったが、目元が赤いようにシンには見えた。
微々たる物だったので、確信にはならなかったが。

ラクスが皆に本日の主役であるメイリンの到着を宣言し、誕生日を迎えた事に拍手を送る。
メイリンはいつもとは違ったドレス姿で髪型も違う為、シンにはメイリンが酷く大人びて見えた。
いつもはシンやレイの後ろをちょこちょことした足取りで付いてくるというのに、そんな様子は少しも見えない。
たった一日で大人になれるものとも思えなかったが、彼女の心は確かに昨日よりも成長しているように見えた。
先に誕生日を迎えられてしまったシンとしては少し複雑な心境だ。
たった3ヶ月の差だが、メイリンの方が先に進んでいるようで。

「馬子にも衣装」

そう、プレゼントを渡す時にメイリンに言うと、「シンの馬鹿ぁ!」と、いつもの調子で返してくれたのが少し嬉しかった。
メイリンは少し子供っぽい方が安心する。
しかし一通りプレゼントの受け渡しを終え、メイリンからの感謝の言葉を皆に伝えると、彼女はルナマリアの姿を探し、走り出した。
少し高いヒールでぎこちなく。
途中芝生に足を取られてかくんっと足を落としたが、それでこける事は無くただ姉を目指すと体当たりするように抱き付いた。
日頃人前でルナマリアに抱きつく事など無い。
皆が呆気に取られている中、シンだけはレイを再び見た。
今度こそシンの視線にレイがシンを見返すと、互いに何とも言い出せない雰囲気になる。
シンの表情を見てルナマリアから事情を聞いたのだろうと察したのであろうレイは、一度目を伏せ俯くと、顔を上げてメイリンに視線を向けた。

「メイリンにも全て話した」
「そうか・・・メイリンは何て?」

突然聞かされるには余りにも衝撃的な内容である事はシンもよく分かっている。
自分も驚いたが、メイリンはどういう反応を示したのだろうかと考えると、やはり少しは興味があった。
するとレイは恥ずかしそうに、嬉しそうに微かに口元に笑みを乗せる。

レイにとって嬉しい反応だったのかと思えば・・・。

「泣いていた」

ただ、それだけだった。

泣いたと言われて嬉しそうにするレイの気持ちがシンには理解が出来ない。
メイリンが泣いたというのはそれは確かに予想の範囲内なのだが、それでもそれ以外に何か反応があったのではないかと思って聞いたのだが。


275 :鬼ジュール:2006/10/05(木) 13:27:10 ID:???

「・・・・それだけ、なのか?」
「馬鹿・・・・と、一言いわれた」

益々恥ずかしそうに笑うレイが分からない。
それの何処が嬉しがる反応なのだろうかとつくづく思うのだが、レイにとっては嬉しいらしい。
恋は盲目なんて言葉があるが、まさかレイにそれが当て嵌まるとも思っていなかった為、シンはただ瞬きを繰り返す。
シンの戸惑いがレイにも伝わったのだろうか。
レイは反応の薄いシンに視線を向けると、喜びを押し隠したようて困ったような表情になって補足する。


「メイリンの中で俺はどうでもいい人間ではないらしい」


その他大勢でも無く、彼女の中に自分という存在が確かに居るからこそメイリンは泣くのだと言うレイの表情は結局嬉しそうで。
シンは確かに、と納得して先程のラクスを思い出した。

ラクスにとってキラは確かに終わった存在であるのに彼女はキラの事を考え泣いていた。
これがキラではなくシンだったらどうだろう?

きっとラクスは泣かない。

彼女とは関わりが殆ど無いから。
当然といえば当然なのだが、それを少し淋しいと思う。
思った以上に自分がラクスを意識し始めている事にシンは戸惑いながらも、気付いたその瞬間にラクスの事を考えていたという事が続けば自覚もする。

自分は、ラクスが気になっているのだ。

この感情が「好き」というものなのかと言われれば非常に悩む所なのだが、完全には否定出来ない。

好きかもしれない。

漠然と思う。
しかし、それは本当に漠然としたもので、実感としては殆ど無かった。

「なぁ」

なんとなく隣のレイに声を掛ける。
この声が聞こえなければそれで話もしないつもりだったが、レイはシンの声に反応して振り返る。
実は振り返って欲しくなかったかもしれないと、居心地の悪い気分になったが、今更話を取り下げる事も出来ず、レイを振り返った。

「・・・・もし、メイリンがレイの事、気にも留めてなかったら・・・どうするつもりだったんだ?」

意地悪な質問だったかもしれない。
ついさっきの喜びを壊してしまうような質問だから。
やっぱり聞かなきゃ良かったなと、レイの瞳も見れず俯いて自分の発言を後悔した頃、レイは口を開いた。


276 :鬼ジュール:2006/10/05(木) 13:27:55 ID:???

「卑怯かもしれないが、実は俺はメイリンが泣くのが分かっていた。予測よりも高い確信で。・・・分かっていたからこそ言おうと思った。・・・・・泣かせたかったんだ、彼女を」

自分の為に泣いてくれる顔を、見たかった。

とんでもない返事にシンは思わず顔を上げてレイを見た。
その時にはレイもシンと顔を合わせたくなかったのか、再びルナマリアに縋り付き、泣くメイリンを嬉しそうに見つめていた。

きっとあの涙もレイの為のものだろうからレイは微笑む。

「でも、もしメイリンが俺の事を気にも留めていなかったら。・・・もう少し頑張っただろうな。メイリンに泣いて貰う為に」

そんなに泣かせたいものなんだろうかとシンは感覚が分からず眉を寄せる。
しかし、レイもまたただ成り行き任せにするのではなく、好かれる為の努力をしようと言いたいのだろう。それは分かった。
それなら理解も出来る。

「俺は・・・・・どうするんだろう」

好かれる努力をするんだろうか。
ラクスに。

まだよく分からなくて何気なく呟いた言葉にレイが振り返った。
その視線を感じてシンは慌てて取り繕う。
これでは好きな人が居るんだとばらしたようなものだ。
自信もないのに。

「い、いや、よく分からないけど!もし好きな人が出来たときに、な!」
「シンならきっと泣かせたいとは思わないんだろうな」

シンの慌てる姿など気にしていないレイが唇の端に僅かに笑みを乗せた。
何だか見透かされたようなレイの態度にシンも戸惑って、返す。


「そうかな」
「あぁ」


人を好きになるという事において僅かに先輩のレイの笑顔がシンを置いて先に行ってしまったかのように見えて。

羨ましくて、悔しかった。


<続>


277 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 04:37:32 ID:???
GJ!
待ってました!

278 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/06(金) 23:05:39 ID:???
GJ

279 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/07(土) 04:46:30 ID:???
>>276
帰還ありがとうです。
レイもシンも不器用だけど成長してますね。
以前の流れだと相変わらず「人妻好き」で
ミーア(凸とカプ‥)と要注意のキラですが。
どこへ流れるか期待と不安。
シンとラクスには心の底で地球に「故郷」を見てる気がしますが
どうでしょう?



280 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/10(火) 04:28:30 ID:???
昼メロいいかも。


281 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 01:24:57 ID:???



282 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/14(土) 04:53:16 ID:???
ほし


283 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/15(日) 00:53:44 ID:???
捕手


284 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/18(水) 02:12:04 ID:???
保守

285 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/21(土) 00:18:28 ID:???
保守

286 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/24(火) 03:20:43 ID:???
ほす

287 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/27(金) 01:16:02 ID:???
ほす

288 :通常の名無しさんの3倍:2006/10/30(月) 03:05:28 ID:???
保守

289 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/01(水) 22:32:33 ID:???
シンラク本てないかな…マジで見たいな…

290 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/03(金) 00:03:19 ID:???
同人ならあるんじゃないかな

291 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/06(月) 03:06:20 ID:???
ほす

292 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/07(火) 00:48:55 ID:???
保守

293 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/08(水) 06:27:04 ID:???
シンが鬼畜な本なら見たことあるけどな

294 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/10(金) 16:56:09 ID:???
保守

295 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/14(火) 01:58:29 ID:???
保守

296 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 08:20:02 ID:???
天然ラクスがいい

297 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/17(金) 15:16:06 ID:???
天然ものは貴重なので最近は滅多にお目にかかれませんよ?

298 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/21(火) 01:55:30 ID:???
保守

299 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/23(木) 22:31:46 ID:???
なんとなくシンには天然ラクス様があうと思うのよ

300 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/24(金) 05:00:50 ID:???
シンラクスて、
シンルナやキララクが崩壊した場合のイベントか、
「ローマの休日」か「同窓会の後で」「職場の縁で」みたい1時的恋愛とかのバージョンはあるな。


301 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/27(月) 14:44:02 ID:???
映画で会話くらいはあるかな

302 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/27(月) 21:43:35 ID:???
ラクス様の為に!(・∀・)ノ


303 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/28(火) 10:00:34 ID:???
劇場版で『キララク』『シンルナ』の崩壊を期待したい保守です。

304 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/28(火) 23:12:43 ID:???
《ユニウスセブン》
〈太陽風速度変わらず。フレアレベルS3、到達まで予測30秒〉
待ちに待った『風』が吹いてくる。サトーはいまだ作業を続けている、モビルスーツと作業ポッドの仲間たちに、きびきびした調子で声をかけた。
「急げよ!−9号機はどうか!?」
〈はっ!間もなく〉
〈たった今、作業を終了しました〉
そこへ、サト−達が、待ち侘びていた太陽風が吹いてきた。
〈放出粒子到達確認。フレアモ−タ−、受動レベルまでカウントダウン、スタート〉
サト−は愛機『ジン・ハイマニュ−バ2型を駆って、凍った大地の上空に離脱し、そこでカウントダウンが刻まれていくのを聞く。
〈粒子到達。フレアモ−タ−作動……!〉
太陽風の到着と同時に、ユニウスセブンに取り付けられた、多数のフレアモ−タ−が作動しユニウスセブンは、ゆっくりと静かに移動を始め恐るべき凶器として地球落下のコ−スを、次第に取り始めた。
「さあ行け。我等の墓標よ……!」
「−嘆きの声を忘れ、真実に目をつぶり、またも欺瞞に満ちあふれるこの世界を、今度こそ正すのだ!」
それは彼の、世界に対する宣戦布告だった。


「気にすることはありませんわ、シン。あ」
シンとラクスは、久々の再会のつかの間の休息の時間を、惜しむかのように、お互いの身体を求め貧るシンとラクス。
「やっぱり、後味が悪すぎるよ!ラクス」
「あ、シン。ハア、失敗は誰にでも付き物ですわ、うん、シン、そこいい」
シンはラクスの両足を掴んでラクスの奥へと突き進み、ラクスはシンの背中にしがみつきシンを自分の最奥へと誘う。
なんで、こんな事になったのだろうとシンは考えてしまう。元々、最初に誘ったのはプラント評議会議長になった、ばかりのラクスの方であった。
その頃、シンはアカデミーの一士官候補生に過ぎなかった。何故、ラクスが自分を誘ったのかは未だに、何故なのだが、そのおかげとも言うべきかラクスの指名で、最新鋭機インパルスのパイロットに選ばれた。
むろん、その事に関して、批判の声とやっかみが入り交じってシンにも聞こえていた。

305 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/29(水) 06:01:31 ID:???
それ故に、シンは必死に努力をした。何人からも後ろ指を指されないない為に、何頼もラクスの為に!。
「けど、これじゃあなあ、意味がない……」
新型3機を強奪された揚げ句、敵の策に翻弄されてあわやラクス事ミネルバが、沈められかける醜態を晒してしまった。
「シン、大丈夫ですわ。今は、まだでしょうけれど貴方には、強い力が眠っています」
「………………」
ラクスはシンの胸に顔を埋めながら、言葉をシンに続ける。
「この世界の混迷の闇を打ち払い、この世界を救い上げ、世界を新たな時代へと導く力が!」
「本当かな……」
「本当ですわ!。…だからこそ、私は貴方を選んだのです。新たな時代を切り開く者として!。そして、貴方は自分の力を信じれば良いのです」
ラクスの言葉に、シンは屈辱感を癒され、力が漲ってきた。
「うん」
「シン、もう一度、抱いて下さいな」
ラクスはそう言うと、シンの下半身に顔を持っていきシンの男を口に含んだ、シンを奮い立たせる為に。


306 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/29(水) 11:43:22 ID:???
>>305
乙ですGJ!
ラクス様のフェラサイコー!(・∀・)ノ

シン、凸とキラに負けずに♀を磨いてやるんだ!



307 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/29(水) 20:05:33 ID:???
「ルルルル、ルルルル」
まどろんでいた二人の安眠を妨害するがの如く、内線電話が掛かる。
「なにかしら…」
「俺がでるよ、ラクス」
この時、シンは嫌な予感に捕われていた。
「はい、シンです」
「シン、そこに、ラクス様が居る」
ブリッジの通信担当のメイリンがらだ。何やら、かなり慌てている。
「居るよ」
「ではラクス様に伝えて、最高評議会からチャンネル・ワンだって」
「な!?」
チャンネル・ワンとは緊急事態を知らせる、秘匿連絡コードだった。
この時シンは気が付くべきだった、ラクスが一瞬、浮かべたの妖しい微笑を。



「なんだって」
士官室わ訪れたタリアとラクスが携えてきた報せに、カガリは絶句した。
「……ユニウスセブンが動いているって……いったいなぜ!?」
「それはわかりません。ですが、動いているのです。それもかなりの速度で、地球に向けてですわ」
カガリの頭の中は、混乱の極みにあった。
「それは、すでに本艦でも確認しました」
タリアも事実だと、カガリとアスランの二人に、突き付ける。

「しかし、なぜこんなことに!?、……あれは百年の単位で安定軌道にあると言われていたはずのもので…… 」
アスランに取っ手も、ユニウスセブンは特別な場所て有ることは、他の三人とも承知していた。
「原因は不明ですわアスラン。ですけど、地球に向けて動いているのです」
「……ユニウスセブンが地球に落ちたら、地球は終わりだ……」
ラクスは頷き、カガリの言葉の正しさを認める。
「カガリさん、原因の究明と回避手段の模索に、プラントも全力を上げていますので、落ち着いて下さいましな!」
「……………」


308 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/29(水) 21:50:00 ID:???
>>307
乙です。
ただ>妖しい微笑‥は「正直者」のシャアが中の人みたいだな‥。
ラクスはシン・カガリ・アスランと纏めて「オーブ組」を
本編同様にシャブリ尽くす腹でしょ。
さてキラは?。
本編のラクス‥カガリの関係は、ヒトラー‥ムッソリー二を思わせるので「バドリオ(セイラン)政権」はカガリ独裁成立させてつぶすのが自然かと。


309 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/29(水) 23:01:34 ID:???
(*゜◇゜)呼んだ?


310 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 09:03:12 ID:???
「−けど、なんであれが急に!?」
レクルームに集まったクルーたちも、ユニウスセブンのニュースに騒然をし、ヴィーノの言う通り、誰もが疑問を隠せなかった。
「地球への衝突コースだって……ホントなのか?」
シンの問いに、メイリンはこっくりと頷き、ルナマリアは頭を抱える
「アーモリーでは強奪騒ぎの上に、……で、今度はそのユニウスセブンをどうすればいいの?」
ルナマリアの問いに答えたのは、沈黙をしていたレイであった。
「砕くしかない」
レイが出した答にシンが疑問をていする。
「砕くって、あの、でか物をどうやってだよレイ」
シンの疑問に全員が同意する顔でレイを見る。
「あの質量で、地球の引力にも引かれて地球に向かっているのなら、軌道変更は不可能だ!−衝突を回避したいのなら、ユニウスセブンを砕くしかない」


「「「砕く?」」」
ミネルバ艦内の通路を歩いていた、カガリ、ラクス、タリアらは、アスランの出した答に驚いた。
「そうだ。ユニウスセブンを出来る限り細かく粉砕して、大気の摩擦熱で燃え尽きさせるか、大気層の壁に弾き変えられるぐらいに、徹底的にだ」
それしか方法がないと、タリアもアスランの出した答に内心同意した。が、根本的な砕く方法が決まっていなかった。



311 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 09:29:02 ID:???
「レイ、具体的な方法はどうするんだよ!。ミネルバの装備では、あのデカ物を砕く事が出来ない」
シンの疑問も、至極当然であった。
「全く、心当たりがない訳ではない」
「それって……」
「でもさー、地球潰滅もやむを得ないんじゃない」
「ヨウラン!」
ヴィーノがヨウランの軽口を咎める。
「不可抗力だろ?。それに、ヘンなゴタゴタも綺麗になくなって案外ラクかも。俺達、プラントには」
「よくもそんな事が言えるな!おまえたちはっ」
聞き覚えがある声の怒声にシン達、全員がレクルーム入口を見詰める。
「ラ、ラクス様、アスハ代表に艦長とアスランさん……」
メイリンは、驚きの余り硬直し、他の全員も罰の悪い表情で敬礼する。
そして、レクルーム入口では、殴りかからんばかりの怒りの表情を向きだしのカガリを、アスランとタリアの二人が押さえいて、ラクスが全員に冷ややかな視線を向ける。


312 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 10:18:52 ID:???
途中だけどGJ!

ラクス様、馬鹿クルーは先脳してやってくだちい!(・∀・)ノ


313 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 13:58:22 ID:???
)ヽl*゚ ヮ゚ノl〜コーディネーターは滅び行く種族ですワ。   

ナチュラルの女王こそが目的。


314 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 19:49:56 ID:???
〈所詮、駒は駒だけでしかないですか!〉
ラクスはクルー達に、冷ややかな視線を浴びせながら胸中で呟いた。そして、敬礼したままのクルー達に足を進める。
「手を降ろして下さい」
クルー達は、緊張した赴きでラクスを見詰める。その中で、ラクスはしばし、メイリンを見遣る。
「あ、あの、ラクス様」
すっかり、怯えたメイリンは萎縮する。
「ふー」
溜息を付いた後に、ラクスはメイリンからシンに視線を移す。
「シン」
「はい」
「何故、殴ってでも止めないのです」
「あ、言え」
シンはラクスに問われて返答に窮した。
「貴方自身、彼の言葉に同意する所があったから、彼を止めなかったのではありませんか」
「ち、違う……」
シンは否定したかった。だが、完全に否定出来ないでいたのも事実であった。
「貴方は、先の大戦の折りに、連合軍がオーブに攻め込んだ為に、家族を亡くしたのでしたね」
「…………はい」
「………………」
シンの返事に、カガリは愕然とした。
〈嫌な奴に、聞かれた〉
シンは愕然とするカガリを見てそう思った。そしてカガリは、先の格納庫でのシンの暴言の理由がわかったのである。
「それ故に、彼の暴言を止めなかったですか?。オーブと連合を憎む余り」
「ツ……………」
シンはラクスに1番痛い所を、えぐられて俯いた。
「…シン、私を失望させないで下さいね。いいですねシン」
「…………はい」
「わかれば結構です」
「他の皆さんも、私を失望させないで下さい」
有無を、言わせぬ圧倒感で室内を支配する。
「「「……はい」」」
ラクスは用が、終わったと言わんばかりに、踵を返してレクルームから出る。そして、カガリをアスランと一緒に押さえていたタリアに、釘を刺す。
「グラディス艦長、部下の教育はきちんとなさりますように!」
「申し訳ありません。クライン議長……」
「さ、カガリさん参りましょう。あのような愚か者を、カガリさんが相手になさる必要はありません」
それまで、愕然とシンを見ていたカガリは我に反る事ができた。
「……あ、ああ」
「アスランも」
「……わかった」
そして三人はブリッジに足を進め、タリアはヨウランを睨み付け悄然とするクルーを置いて、ブリッジに向かう。

315 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 20:19:33 ID:???
「ラクス様、プラント本国からジュール隊が、メテオブレーカを持って出撃しました」
「わかりました」
アスランの提案を基にで、ザフト軍本部は大至急検討した結果、外宇宙地下資源採掘用機械『メテオブレーカ』によるユニウスセブンの破砕を決定した。
「グラディス艦長、艦の常態はどうですか?」
「良好です」
「では、ユニウスセブンに向かって下さい」
〈ジュール隊が先に到着をするな……〉
アスランはモニター画面に映し出される、各種データから素早く計算をした。
〈ミネルバが到着をするのはギリギリだな。月の連合軍は、……今からでは間に合わないか……〉
「アスラン……」
カガリは不安な眼差しでアスランを見る。
「大丈夫だ。心配はいらない、上手くいくさ」
「うん」
だが、それは気休めでしかない事をアスランはわかっていた。何故なら、破砕作業は何のアクシデントがない事を前提にしていたのできたある。
〈何かが、起こる〉
生死の境目を幾度となく潜り抜けて来た戦士の本能が、アスランに警告を鳴らしていたからである。


「この破砕作業の成否は、新生ザフトが地球の敵ではない事を証明する、大事な儀式でもあります。そして新生ザフトは正しい真実の為に、戦う軍でなければなりません。良いですね皆さん」
「「「はい」」」
社会学者の研究家でもあるタリアは、他のクルーと違って、ラクスの言葉を額面通りには受け取る事が出来なかった。


〜続く〜。

316 :通常の名無しさんの3倍:2006/11/30(木) 23:42:06 ID:???
)ヽl*゚ ヮ゚ノl〜ジブリールが食潰す前にブルーコスモスを乗り取らねばなりませんワ。


317 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/01(金) 03:57:58 ID:???
>>315
乙ですGJ!

これは、シンラクス的な勝利だと。
ラクス→ブルコス盟主とプラント議長を兼任。(イギリス女王がインド皇帝兼任みたいな)
シン→大西洋連合の大将へ。
シンラクス、連合軍閲兵あたりでアガリ。


318 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/01(金) 17:01:28 ID:???
あのミネルバがローマのガレー船みたいな雰囲気でイイですね。
流石ラクス様(・∀・)!


319 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/04(月) 06:31:53 ID:???
保守

320 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/07(木) 02:56:55 ID:???
ほす

321 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/10(日) 04:46:59 ID:???
保守

322 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/12(火) 22:40:01 ID:???
保守

323 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/14(木) 04:20:20 ID:???
( ;´・ω・`)人(´・ω・`; )


324 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/14(木) 09:28:16 ID:???
ドラマCDで
シンラクのカップリングでかつ双方の母親役がマリューとレインで
親父役が拳王様とシロッコだった漫画がアニメ化するな


キャストは変わるかもしれんが…

原作では
「お前がザクなら俺は何タラスガンダム。」
「俺ダムシードディスティニー」
なんて爆弾発言もあったし

325 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/15(金) 09:06:31 ID:???
>>324
あれか…キャスト変更なけりゃいいんだけど

326 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/15(金) 22:14:24 ID:???
シンまで飼い犬に加えたいのかラクソ厨は

327 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/19(火) 03:22:48 ID:???
保守

328 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/20(水) 12:10:43 ID:???
シンラクス
http://www.amuse-s-e.co.jp/anime/seto.html

329 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/23(土) 00:56:03 ID:???
シンラクだー

330 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/24(日) 03:08:54 ID:???
シンラク婚約者w
アニメ化でキャスト変わらないといいなぁ

331 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/28(木) 03:41:01 ID:???
保守

332 :通常の名無しさんの3倍:2006/12/30(土) 02:18:44 ID:???
(´・ω・`)


333 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/01(月) 23:46:55 ID:???
(`・ω・´)


334 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/05(金) 03:07:42 ID:???
☆スィ


335 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/06(土) 00:29:28 ID:???


336 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/08(月) 12:10:20 ID:???
微妙にシンラクが近くなったスペエディだった

337 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/08(月) 17:44:11 ID:???
上がれー

338 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/08(月) 17:48:24 ID:???
         ((_ 
       〃´   `ヽ 
  ///( (( )) ノ i オラァ 
ドカッ /)/)(゚∀゚ W 
  〃.⌒ノノ((∪   ミつ 
∵(((!´゙リ))  (__ __⊃ 
 とリ゙:;0゚ノリ∩∵ ∪ 
ぐほっ 
        .((         グサッ! 
      .〃´   `ヽ     〃.⌒ノノ ぐじょーーー!     
      i .( (( ))ノ     .!(((!´゙リ)).・;'' ~       
       W `Д´)      リ#)。д;;゚ノリ,;;∵        
      /  ,.つ=っ||二二二二゙;;と)二二二>     
     ノ   / -     ーと"'とノ= -      
     し´`Jこの売国奴め! 
       .∧ 
     _.,||,,,.〃.⌒ノノ 
    .:;;..;; ;; ;;;(((!´゙リ)),, 
  (( (/(||ノリ゚Д:;゙ノリ゙ 
〃´   `ヽ.||∪   ’'; 
i .( (( ))ノ.||    '・゙。 
W ´∀`)<◆>       
( つ  __つ  これで世界に平和が戻るな♪ 
|   ||| 
(_)(__ ),. ̄ 



339 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/11(木) 15:49:30 ID:???
『(ザアザア)軟弱な偽善者ラクス・クラインに騙されてー、ザフトは変わってしまった』
『何故わかろうとせねー!。我等コディネイターに取って、パトリック・ザラの取った道こそが有一正しきものとー!』


『ユニウスセブン破片の落下地点の予測は困難で、地球全域が被災する可能性があります!』
『落下地点では、大規模な災害が発生する事が予想されます。市民の皆様は慌てる事なく当局の指示に、従って避難して下さい』
『ユニウスセブンの落下で、大規模な津波の発生も予想されます』


『信じられないこの各地の惨状に、私ラクス・クラインも言葉がありません。受けた傷は深く、また悲しみは果てないものでしょうが、どうか地球の同胞の皆さん、この絶望の情況から立ち上がってください』

PHASE−7
《ザラの名の元に》
「今現在の位置は、南大西洋で南米北部サントス市から、300海里の位置です艦長」
アーサーの報告に、タリアは溜め息をつくしかなかった。
「どうしますか、このまま真っ直ぐにジブラルタル基地に向かう事も出来ますが……」
アーサーはそこで、格納庫から戻ってきたカガリを見て淀んでしまった。
アーサーは、このままジブラルタル基地向かいたかったのだが、ミネルバにカガリとアスランの二人を、乗せたままとはいかなかった。
「情況は一切不明なのだなグラディス艦長」
聞くだけ愚問だとは思いつつも、カガリは聞かずにはいられなかった。
「はい」
ユニウスセブンの落下による副次被害で、電波障害等で何処とも連絡が取れないでいた。おそらくは、何処ともそれ処でもないのであろう。
タリアは溜め息をつきながらも、カガリとアスランをミネルバから降ろす決断をくだした。
「アーサー、艦をサントス市に向かわせて」
「ええー」
「このまま、手を拱いているよりはましでしょう」
「それはそうですが」
アーサーとしては、このままジブラルタル基地に向かい、艦の修理と補給をおこないたかったのである。


340 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/11(木) 16:34:07 ID:???
「サントス市に向かえば、南アメリカ合衆国政府と連絡が取れて、アスハ代表とアスラン・ザラの二人を、安全な場所に避難させる事が出来るわ」
「はい」
アーサーは渋々納得して艦を、サントス市に向かわせる事にした。
「すまないグラディス艦長」
恐縮したカガリにタリアは苦笑した。
「いいえ」


☆サントス市
「そうだ!医薬品、食糧、毛布が不足している」
「ママー、ママー」
「誰か、家の子供を助けてください。息をしていないんです」
「軍本部に伝えろ、ヘリとボートと医師をサントスにもっとよこせと」
サントス市の臨時災害救助本部は、避難所を兼ねており混乱の極みにあった。
「ではサントス市の行政医療機関は全て全滅なんだな」
「はい間違いありませんヘンリー准将閣下」
相次ぐ凶報に、サントス市の災害救助の指揮を取るヘンリーは、頭がいたくなってきた。
「ヘンリー准将閣下、沿岸で救助活動をおこなっている、第28ヘリコプター中隊から緊急連絡です!」
「緊急連絡だと」
「はい、沖合にザフトのボズゴロフ級潜水母艦2隻が、浮上しているとの事です」
本部に詰め掛けている幕僚全員が、通信士に視線を集中させる。
「なんでこんな所に」
「回線を開け」
「大至急確認を」

「こちらは第28ヘリ中隊長のロベルトです。間違いなくザフトの潜水母艦2隻です」
『間違いないんだな』
「はい、間違い」
「き、機長、レーザ照準、ロックされています」
「な、回避」
ヘリは急旋回して回避行動をとろうとしたが、対空ミサイルがヘリコプターを撃墜した。

「おい、どうした。応答しろ」
「准将閣下」
先の大戦の経験者のヘンリーは即断した。
「軍本部に緊急連絡、沿岸一帯の救助活動を一旦停止し、全部隊に戦闘体制を取らせろ。戦車部隊を全て出撃させるんだ」
「はっ」
「問題は何処まで持ちこたえられるかですな」
参謀長のムライ大佐は、長くは持ちこたえられないと判断していた。
「増援が来るまで、持ちこたえるんだ」
それが無茶な命令だとはヘンリー自身が、一番わかっていた。

341 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/11(木) 17:16:29 ID:???
「なんですって、サントス市がザフトに攻撃されている」
「はい、艦長。ボズゴロフ級潜水母艦数隻とMS部隊の攻撃を受けている模様です」
タリアは信じられない思いだった。ザフトがサントス市を攻撃して何のメリットがあると言うのだろう。
「艦長すまないが、通信回線を開いて欲しい」
「メイリン、通信回線を
開いて』
タリアはカガリの要請を受けて、メイリンに通信回線を開くよう命令を出した。
「はい」
メイリンが通信回線を開くと、雑音混じりで地球軍の怒声と罵声に、逃げ惑う市民の悲鳴が通信に混じって聞こえてきたのである。
『こちら第2戦車大隊、指令部持ちこたえられない』
『第4戦車中隊応答しろ、応答しろ』
『敵潜水母艦から巡航ミサイル多数』
『軍本部、軍本部、増援を増援を』
『何処に逃げればいいの
ー、誰か助けてー』
『MSと航空隊はまだ到着しないのか』
ミネルバの展望ブリッジは、重苦しい沈黙に包まれた。
「……艦長」
アーサーの顔面は蒼白になっていた。
「バード、本艦の位置は」
「サントス市から50海里の位置です」
「コンディションレッド発令、総員第一級体制、インパルス発進」
展望ブリッジは、戦闘ブリッジに降下しミネルバは戦闘体制に入った。


「くそうー」
出撃命令を受けたシンは、怒り心頭の形相でパイロットスーツに着替えて 格納庫に走り込み、コアスプレンダーに登場した。
『シン、情況を伝えるわね。サントス市を攻撃しているのはボズゴロフ級潜水母艦2隻と、MS部隊よ』
「MSの数は」
計器類をチェックしながらシンは正確な数と情況を求めた。
「不明よ」
「つっ」
『ともかく、敵と認識して戦う事。わかったわねシン』
「了解」
『進路オールクリアーです。コアスプレンダー発進どうぞ』
電磁カタパルトが作動し 発進準備が整った。
「シン・アスカ、コアスプレンダーいきます」


〜続く〜

342 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/12(金) 05:40:21 ID:???
>>341【久々】さん
乙です!GJ!

シンはアノ連中達と当たるのかな‥?


343 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/16(火) 05:26:18 ID:???
保守

344 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/17(水) 06:12:01 ID:???
ザラ派のチビッコ兵を、シンに会わせたい。



345 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/18(木) 08:14:46 ID:???
あげたよ。


346 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/21(日) 02:18:50 ID:???
hosyu

347 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/23(火) 06:34:10 ID:???
保守


348 :通常の名無しさんの3倍:2007/01/24(水) 08:04:24 ID:???
あげ


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