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シンラクスがないからデス種は糞になった 2

1 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:01:00 ID:???
立ててしまった

2 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:04:15 ID:???
はいはい糞スレ糞スレ

3 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:09:19 ID:SOijUumX
スレ立て乙

4 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:10:14 ID:???
鬼ジュール氏こないと始まらない

5 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 11:11:31 ID:???
糞スレ決定ww

6 :鬼ジュール(今回も番外編):2006/04/03(月) 13:32:34 ID:???
「あの・・・・俺どうしてこんな所にいるんでしょう?」
「それはシンが今日はわたくしの護衛だからですわ」
「いや、それは分かってるんスけど・・・」
朝一番、まだ眠っている時にシンの部屋の回線に直接通信を入れて来たのは、イザークだった。
自分よりも遅くまで起きていて仕事をしている筈の上官は一体いつ寝て、一体いつ起きて、一体いつから不機嫌なのだろうかと疑問に思う位朝から不機嫌だった。
そのイザークが切れ気味にシンに命じたのはアプリリウスへ戻る事だった。
30分で来いという無茶苦茶な要請にぎりぎり応えられたのは、ヴォルテールの管制やら、デスティニーをちゃんと整備してくれていた整備班の尽力のおかげである。
そして慌ててアプリリウスの最高評議会議長の執務室にやって来ると、更に命じられたのはラクスの護衛であった。
ラクスの護衛はキラの筈で、ラクスの護衛以外の仕事は無い筈である。
しかし、今日の護衛はキラでは駄目なのだと言う。
ザフトのトップシークレットに関係する事なので、ザフトの人間ではないキラには決して見せる事の出来ない場所に行くのだとか。
だったらそれこそイザークがいるではないかと思うのだが、イザークはこれから国防委員会でこの件に関して追求しに行って来ると鼻息を荒くしている。
「この件」というのがシンにはわからなかったが、話の流れからしてラクスがこれから向かう「トップシークレット」に関係する事なのだろう。
ではアスランは・・・と、言うと、アスランは今地球に行っているのだとか。
地球ではまだザフトと連邦で時々小さな諍いがある事は知っていた。
それでも軍備として今回の戦争で地球のザフトには大した影響はなかったので、いつも諌める程度で死者などは最低限らしい。
一刻も早く新たな地球との条約を結ばなくてはならないのだが、プラントからの援助の関係であったり、地球の至る所で起きているこの紛争の為にまだきちんとした条約は結ばれていない。
その為、現場視察としてアスランが地球のザフト基地を回っているのだとか。
そんな大変な状況で自分がわざわざヴォルテールから呼ばれたというのは、イザークから信用されているのだろうかと、ほんの少し得意げになってみたのだが・・・・・。

「今回の議長の視察の結果によっては処分し易いからな。俺の部下の方が」

という無情な一言(おまけにイザークは首を切る仕種までしてみせた)によって少し口論になったというのは言うまでもない。
ラクスが止めなければ取っ組み合いになっていたかもしれない激しい口論の後、イザークは国防委員会に向かい、キラは執務室でシンとラクスを見送った。
その後ラクスは「わたくし、今日は急いでおりましたので朝食がまだですの。シンは食べましたか?」と、尋ねられ、眠っている所を叩き起こされて、
通常であれば確実に1時間はかかる仕事を30分でさせられたシンは、食べていないと答えると一緒に食事を摂る事になった。

こういう護衛の時は、護衛対象者の傍らに立ち警戒するのが常であるのだが・・・・。
「護衛の方がきちんとご飯を食べていないのでは心配ですわ」
と、何故かラクスの方から心配され、一緒のテーブルについて食事をしている。
これがイザークに見つかったら首を切られるどころか、本当に胴体から首を切り離されそうな所だが、そのイザークには絶対に見つかる心配は無いのでシンも遠慮無くラクスと一緒に食事を摂った。
まだまだ育ち盛りな自分が此処で食事をしなければ次いつ食事をする時間があるのかも分からない(ラクスの今日のスケジュールも知らされていない護衛というのはいかがなものかと思うのだが)、
そんな状態でお腹が空いたままだというのは良くない。

第一今は朝の5時前だ。
熱心なラクスの追っ駆けでさえまだ眠っている頃だろう。

夜会などにも出席し、様々な年齢、様々な業界の人間と話す事の多いラクスの話題は豊富で、食事の間中、シンは退屈する事が無く、楽しかった。
(男としてこれでいいのか?とは思い反省したが、シンの手持ちの話題はラクスも知ってそうな事ばかりだったので仕方がなかった)
それからまだ少しザフトに赴くには時間があると、24時間営業の総合ショッピングセンターに行くと言われた時には「議長、それは流石に控えて下さい」とシンも進言したのだが、
ラクスの行動を止める事に慣れていないシン相手では一向に気にした様子もない。


7 :鬼ジュール(今回も番外編):2006/04/03(月) 13:35:35 ID:???
これがキラであり、イザークであればラクスの行動を諌める事にも成功しただろうが
(因みにアスランはラクスの行動を止めようとする機会の最も多い人物ではあるのだが、ラクスの行動を止められた事はない)ラクスの護衛初心者であるシンにラクスの気ままな行動は抑えられず、結局ただ後ろを付いて行く羽目になり・・・。

冒頭の言葉に至る。

今シンが立っているのは女性用の下着売り場のあるフロアで。

見渡す限りレースの下着が並べられている。
ラクスも特に下着が欲しかった訳では無いようなのだが、たまたま到着した所、可愛い一枚を見つけた為に暫く見て回るつもりのようだ。
ラクスは色んな商品が見れて楽しいのかもしれないが、シンにとっては何かの罰ゲームか、拷問のように思える。
何処に目を遣っていいのか分からず、視線を彷徨わせても女性用の下着しかない。
結局どこにも視線を遣らないようにとラクスの背中ばかり見つめているのだが、そのラクスはシンを時々振り返り「この下着可愛いと思いませんか?」と、のんびりと尋ねて来るのだからこれはこれで拷問だった。

頼みますから、服の上とはいえ体に当てて俺に聞くのは止めて下さい。

心の中で溜息を吐きながら顔は真っ赤にしてラクスに「はぁ。まぁ・・」と、曖昧に答える。
下着に体に押し当てて尋ねられると想像し易くて、少し、嫌だ。
いや、嫌という事も無いのだが・・・・、こう、結局は恥ずかしいのだ。

「シンはどういう下着が好きですか?」

それは女が男に聞く質問なんですか!?議長!

と、叫びたくなるのをこれまた堪えて。
以前からラクスの事はマイペースだ、マイペースだとは思っていたが、此処までマイペースにされるとキラやイザークやアスランがどれだけ凄いのかと思えてくる。
(アスランのラクス御し率0%だという事をシンは知らない)

そして、返事を待ってないで下さい議長!

もう頭から湯気が立ちそうだとシンは肩を怒らせると、ラクスの手から何も言わずに下着を取ると、ハンガーに戻し、「議長は何でもお似合いです!」と、叫んでラクスの手を取るとそのまま売り場を後にした。
因みに何の返事にもなっていない。
店を出た後、ラクスが楽しそうに「デートみたいでしたわね」と、ほんわり笑った事に対してシンは心臓の鼓動を高鳴らせ、明日心臓が筋肉痛になるのではないのかと心配になった。

ラクスの行動はシンの心臓に悪い。

「さぁ、シンも覚悟されて下さいな。そして、これから見る物は誰にも言ってはなりませんよ?」

と、同じノリで言われた時には闇雲に怒りたい気分になったのだが、その言葉の内容と、声の音の割に真剣なラクスの瞳にシンは何も言えなかった。


8 :鬼ジュール(今回も番外編):2006/04/03(月) 13:36:44 ID:???



ザフトの最深部。
シンも知らないような裏道をいくつも通り過ぎ、狭い通路の割には厳重にロックされた扉を幾つも越えた所にそれはあった。




「最新機・・・。これは・・・・ガンダム?」




確認するように隣のラクスを見たが、ラクスは何も言わずにその灰色の機体を見上げていた。
睨み付けるように。
イザークがキラには見せられないと言った意味が分かった。
場合によっては自分が処分されるかもしれない機密というのが、あながち冗談では無いようだとも認識した。
シンもまた、「そんな馬鹿な」と、小さく呟き、眉根を吊り上げてきつく拳を作った。
少しどきどきしたデート気分など、一気に払拭されてしまった。


<終>
********************
2スレ目おめでとうございます。>>1さんお疲れ様です。
此処まで来たら自分で立てるべきなのだろうかとも思っていたのですが、それは何でもおこがまし過ぎるかと静観していました。実は。
いや、自分ばかりが書いてなくていいと思うのですが。
2スレ目突入記念にちょっと番外編のつもりで書いてみたのですが、デートよりも最新機の話になったような気がしなくもありません。
最新機が本筋に出てくるのは当分後で、それもパイロットも、名前も考えていません。
設定としてはギルバートの最後の企画機という位置にあります。
それで考えると、本当にアスランに渡すつもりの機体か、それともレジェンドにアスランが乗った時のレイ用の機体というのが一番しっくり来るかと思ってはいるのですが、もうアスランにはインジャがあり、レイにはレジェンドがあるので新たなパイロット募集中の機体です。
こういう機体のネーミングセンスは全く無いので、どなたか考えていただけたら・・・とか頼っちゃいけないのでしょうか。
機体の特徴とかも考えてないのですが・・・。
裏設定のような物で、この機体が本当に動くよう話が書けるかも分からないので番外編という名目のこの話に入れました。


9 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/03(月) 18:02:29 ID:???
機体の名前…難しいw
まさか新機体がでてくるとは…すごい展開
誰が乗るん?

ラクスは天然だなwシンも焦るわ

10 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 13:56:21 ID:???
保守

11 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 22:19:48 ID:???
機体名称ねぇ。
できれば、どういう機体か決めて貰ったほうが付けやすいかも知れない、と思ったり。
こっから、チラシの裏。
できれば、「ガンダム」の名称は出さないで欲しかったなぁ。
自分の記憶違いでなければ、種死本編では一度も「ガンダム」の名称はでてなかった、と思うので。
別に種がガンダムじゃないとか言いたいわけではなくて、そういう、(本編では)ガンダムを名乗らないガンダムが好きだったんで;


12 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/04(火) 22:25:41 ID:???
女難スレ行ってください



13 :11:2006/04/04(火) 23:51:37 ID:???
>>12
???
…書き方が悪かったかな?
本編では、インパルス「ガンダム」、デスティニー「ガンダム」とは呼ばれなかった、てところが好き、て言いたかったんたがね;
どうでもいいことだがね。

14 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/05(水) 01:56:41 ID:???
カガリやスティングがしっかり「ガンダム」と言ってたぞ

15 :鬼ジュール:2006/04/05(水) 16:15:20 ID:???
>>11
えっと・・「ガンダム」というあだ名(?)を最初につけたのはキラで、ラクスもキラにフリーダムを渡した時に「そちらのお名前の方がいいですわね」(うろ覚え)
と言っていたところから名前が出ただけであって、連合の方では伝わったあだ名でも、ザフトの方では「ガンダム」という通称は出回ってないという事でしょうか。
だったら自分のミスです。
読んだ時によくよく考えてそうだったような気がすると思いました。

ただ起動画面を見る限りでは頭文字が「GUNDAM」である事には変わりないので此処には意図的な物を感じるので、キラとは接点はない設計者の間でも「ガンダム」という通称を使っているかもしれませんね。
と、誤魔化してみる。


次の投下は少々お時間下さい。本筋行きます。

16 :11:2006/04/05(水) 18:50:10 ID:???
チラシの裏なのであまり気になさらずにm(_ _)m
以降、期待しております。がんばってください。

17 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 09:25:15 ID:???


18 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/06(木) 21:45:28 ID:V310/RD1
保守

19 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 20:44:54 ID:Q1M0g7KY
保守

20 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/07(金) 21:29:00 ID:???
自由正義運命伝説と来たら、レゾルブ?

21 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/08(土) 09:19:43 ID:???
保守

22 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/09(日) 13:17:31 ID:???
保守

23 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 08:49:03 ID:???
鬼じゅーるさん来ないね

24 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:49:00 ID:???
今日も今からイザークに対する報告書を作らなくちゃならないなぁ、面倒臭いなぁと、思いながらシンがデータ管理室に向かうと、管理室の中から何やら叫び声が聞こえてドアが開き、メイリンが飛び出してきた。

「メイリン!」

部屋の中から彼女を呼び止める声を上げたのはレイで、シンは反射的にメイリンに道を譲るとその背中を見送った。

・・・泣いていた?

一体何が起きたのか分からなかったシンは首を傾げて管理室に入ると、レイが入り口に背を向けて壁際に立っていた。

「・・喧嘩したのか?」
「いや・・・、何でもない。メイリンの分の仕事は俺が代わる」

一度レイは拳を壁に押し当てた後、本当に何も無かったかのように自分の席に腰掛けて端末を開いた。
シンも何があったのか気になる所だが、レイが質問の全てを全身で拒否している。
そこまで頑なに予防線を張られてしまうと今は何も聞かない方がいいのかと思ってしまう。
シンもまたレイに続いて隣の自分の机に座ると端末を開く。

「それで間に合うか分からないだろ?・・・副艦長に応援呼ぶか?」
「今日はヴォルテールも移動したからな。副艦長もいつもより長い報告書になるだろうからそれは無理だろう」
「そっか・・・まぁ、メイリンも泣いてたし・・・、ちょっと落ち着くまで時間が欲しいよな。ディアッカさん呼ぶかなぁ」
「メイリンが・・・?」
「んぁ?・・あぁ。・・・・・気になるなら行ってもいいぞ?いざとなったらシホさんも呼ぶし」

シンの言葉にレイは一度目を伏せたが直ぐにシンに視線を向けて「いや」と、首を振った。

「俺が行ってもまた泣かせてしまうだけだ。俺も落ち着いてから謝りに行くから今は作業を始めよう」

やはりまた喧嘩をしていたのか。
シンにはレイとメイリンが何の確執で喧嘩をしているのか想像もつかなかったが、いつもの無表情を装いながらどこか硬い雰囲気を醸し出すレイに、それ以上を尋ねる事は出来ず、場を誤魔化すようにディアッカに内線を入れた。
訪れたディアッカが場の雰囲気を何となく察したのか、手は休める事無く軽快に色んな話をしてくれたのが有難かった。

メイリンも戻って来た時「ごめんねぇ!ちょっとさぼっちゃった」と、目元を真っ赤にしながらも陽気に笑いながら差し入れの飲み物を配ってくれた。
ディアッカもそれに「気にすんなって」と、軽いノリで応え、一瞬シンはディアッカがその勢いで涙の理由を聞くのではないかとひやりとしたが、結局そんな事も無かった。

ただ、ディアッカもまた決してメイリンを見ようとしないレイを一度だけ目を眇めて見た。





25 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:51:18 ID:???

軍人であるシンには政治の世界はよくわからない。
しかし、上官に当たるイザークと話していると時々政治の話をされる。
軍人でありながら政治とも深く関わらなければならない立場の人間は考える事が沢山あって大変だなぁと、本当に他人事として思うのだが。

大抵が愚痴だ。

こればかりはシンも聞いていて辛い。

『何がプラントは地球の財産だ。いつの時代の話をしてるんだ!?大体マティウス建造の資金はもうユーラシアには支払っただろうが!なのにまだ自分達の所有物のように言って誰が建造費を出したと工面したと思っているのだと恩着せがましくねちねちねちねちと!!!!
だったらヘリオポリス再建造の資金も惜しまず出してみろ!俺が欲しいんだったらそんなまどろっこしい事などせず、真正面から言って来るのが道理だろう!おまけに議長は議長でアスランが帰って来たかと思えばべったり張り付いてゴシップ騒ぎ!あんの腰抜けが!
何を考えてるんだか家に帰っても何も言わないんだからな!』

たんたんたんたん・・・と、爪の先で机を叩くのは耳障りだから止めて欲しいと思うのだが、怒り心頭の時には余り口を挟まない方が自分の睡眠時間が確保出来るものだと最近になってシンは悟った為基本は何も言わない。
おまけに今日はレイとメイリンが喧嘩した事もあり、レイは思い詰めた様子でイザークに言われた修正個所を直している。
今日はメイリンはディアッカが送って行き、その為ディアッカもこの場には居ない。
なんだか思いっきり自分が色んな人間関係の間に挟まれている気がして全体的に場が重苦しくて息苦しい。
早くディアッカが帰って来てこのしつこい上司を宥めてくれないだろうかと切実に思う。

しかし、気になった単語がいくつか出て来たのでつい口を開いてしまう。

「ヘリオポリス、また建造するんですか?どうして」
『まだ発案だけだ。議長が提案をされた。月とはまた別の、完全に軍備の敷かない宇宙コロニーを建造の為に、仮にヘリオポリスと呼んでいるだけだ』
「そんな・・・。そんな事出来る訳ないじゃないですか!それでプラントだけじゃなく、地球からも出資させようだなんて!!」
『プラントとてディセンベル、ヤヌアリウスの回収作業だけで莫大な資金が動いている。それに加えて新しいコロニーの建造資金を用立てる事は難しい。
それも完全中立区にしたいのであれば地球からも出資させるのが道理だろう。完全プラント出資で建造してはいらぬ詮索を受けるかもしれないしな』

イザークは一度爆発すればある程度は冷静になる性質らしい。
シンの方が声をあげる事になったが、それにはイライラとした様子は見せているが、声は落ち着いていた。
シンにはラクスの考えている事がわからなかったが、今回の戦争ではプラントは一度は友好的な姿勢を見せたが、結果一度は落としたレクイエムを利用し、大きく圧力を掛け攻撃した。
確かにプラントでもヤヌアリウス、ディセンベルを破壊され多くの人が死に、未だに行方不明の者も多くいる。
しかし、地球でも同じ位多くの人が亡くなったのだ。
なのに「宇宙に中立コロニーを造りました、どうぞナチュラルの方も宇宙に上がって下さい。コーディネイターも移住しますが仲良くして下さい」と言って簡単に理解出来る物でもない。
コーディネイターだってナチュラルと一緒に住みましょうと呼びかけて応じる人間が何人いる事か。

いくら、互いが攻撃した本人達でなかったとしても。

ラクスが以前もう戦争はしないのだとシンに約束してくれた。
それはシンも信じたいと思っているし、戦争をしない世界を造る為の第一歩として提案したのだろうが、シンにしてみれば時期尚早だ。

おまけに・・・・。

「議長が・・・アスランにべったりというのは・・・その・・・。別にいいんじゃないんですか?婚約者・・・同士なんでしょう?」

自分はレイに聞いてラクスとアスランが婚約は破棄されていると聞かされた。
しかし、目の前のイザークがそれを知らないとは思えないが、なにやら怒っているし、自分がそれを知っているとなると情報源を追求されては困る。


26 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:53:30 ID:???

今、レイは傍目には分かり辛いかもしれないがかなり落ち込んでいる事だし。

色んな方面に気を遣いながらの会話というのはどうにもシンの気性に合わない。
それでも気を遣わなければ人間関係は円滑にならず、自分の睡眠時間も確保出来ず、怒られ損になるかもしれないと思うとこれも仕方なく。
すると、イザークもそのシンのぎこちなさに我に返ったのか大きく咳払いをする。

『まぁな!婚約者同士仲の良い事は結構なんだが・・・。それでもこの重要な時期に余計なネタを提供する必要もあるまい!』
「まぁまぁ。イザークも色んな所から見合い話が来てる事だし、たまには一緒に堂々とデートでもしなくちゃ不仲を噂されて見合い話が来ても困るって思ってるんじゃないのか?まぁアスランにもさ、あんまり変な事聞くなよ?一晩何回?とかさ」
『俺がそんな事聞くか!貴様じゃあるまいし!!!』

戻って来たディアッカの軽口にイザークが眉を吊り上げ、机を拳で殴った為画面が揺れた。
シンはほっと息を吐き、つられて苦笑する。
イザークがアスランに下世話な質問をしている所などとてもじゃないが想像出来ない。
ディアッカがシンの隣までやって来て背中を軽く叩いて来た時には安堵すらした。

「とにかく、議長とアスランの事はあんまり過ぎるようだったらお前が手綱を引けばいいだけの話だろ?それよりも自分の心配しろよな。見合い話、まだ正式に決定にもなってなければ取り消しにもなってないんだろ?」
『あー。それは・・・・何故か母上が戦ってくれていてそろそろ決着がつきそうだ。地球側としても母上の研究している造船技術は魅力的らしい』

自分の力ではなく親の力でどうにかして貰っているというのがイザークにとっては屈辱的らしい。
僅かに目を逸らして唇を噛み、重々しく吐き出す言葉は力弱い。
そしてどのような交渉でエザリアが有利になっているのかは・・・、その口調からすると貴重なプラントの造船技術の一つや二つ地球に渡すつもりでもあるのかもしれない。
取り敢えずイザークがカガリと見合いをするという話は白紙に戻るようだとシンも推測すると心のどこかでほっとする。

やはり、知り合いがアスハと繋がりを持つのは嫌だ。

すると後ろで作業していたレイが椅子を返して立ち上がると「隊長、修正完了致しました」と敬礼する。
イザークはその言葉に一つ頷くと、いつもの調子に戻って「直ぐに送れ」と、言葉を続ける。
そしてデータを受け取るとそれに目を通し、「これで受諾する」と、形式通りの言葉を伝えるといつもであれば通信が終了するのだが、今日はイザークはシンとレイに視線を向けた。

『二人とも明日から二日間休暇だったな。祝い事はめでたいが、羽目を外すなよ』
「はーい」
『因みに議長の手料理でお勧めなのはパエリアとデザートだな。食いはぐなよ』
「は・・・、はぁ」

楽しげににっと笑みを見せて通信を切ったイザークに、まさかそのような助言が来るとは思っていなかったシンは呆気に取られ、思わずレイを振り返り、顔を見合わせてしまった。

一応イザークにも茶目っ気のような物があるのだろうか?疑問だ。

しかし、明後日にはメイリンの誕生日会が行われるのだと思うと、シンは思わず頭を抱えた。
誕生日プレゼントがまだ決定していない。

「女の子へのプレゼントって何がいいんでしょうかね?」

思わず今日のディアッカの頼りになる姿を見た為、ついでに助けを求めるように尋ねてみる。
ディアッカはシンの困惑した声に豪快に笑ってみせると、にっこり笑って親指を立てて振り返った。


27 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:54:34 ID:???


「メイリンだったら白いレースのたっぷりついた下着かな」
「それはセクハラです」

心底楽しそうなディアッカに、レイが片付けをしながら突っ込んだ。

シンの中の「頼りになる先輩像」が音を立てて崩れた瞬間でもあった。





イザークが片付けをしていると、執務室の扉が開きキラが入って来た。
今日もラクスとアスランはデートに出ている為キラは暇なのだろう。
てっきり帰ったものだと思っていたイザークは嫌味に肩を竦めた。

「宿題でも忘れたか?」
「ううん。ちょっと眠れなくて」
「まだ議長は家にお戻りではないのか?」
「・・・さぁ。家には帰ってないから分からないけど。・・・・ストライクフリーダムの調整をしてたんだ」

キラはどこか気落ちした様子が見えるが、それに対して優しい言葉を掛ける理由もない。
また一人何か企んでいるのかと気にせずイザークは片付けを済ませると、「なら俺は先に帰るぞ」と、声を掛ける。
最近は最後に執務室を出るのがイザークだったので明かりの事は任せたという意味を含んでいたのだが、それにキラが気付いたのかどうかは不明だ。

「あのさ」

扉を開いたイザークの背にキラが声を掛けた。





「ストライクフリーダム・・・・・・。イザークに返すよ」





その思い詰めた表情に、イザークは顎を上げ、鼻で笑ってみせた。



<続>

28 :鬼ジュール:2006/04/10(月) 18:55:30 ID:???
**************************
やっとメイリンの誕生日に入れます。
種運命の小説最終巻だけ、資料のつもりで買ってみたんですが、停戦が7月になっていたので、その時点でこの話間違っている事が判明。
そして、テレビではディセンベルエイトに突っ込んだのはヤヌアリウスフォーとは言っていなかったのですが、小説では書かれてあったのでこれは同じようでほっとしました。
ラクスはプラントに帰ったとは書いてあったのですが、政治の世界とは関わりのない感じで終わっていたので、それもまた違うという・・・。
まぁ、比べて違いを比較していたらキリがない上に、間違いだらけなので「まぁ。鬼ジュールの妄想だから」という一言で片付ける事に。
そして、このスレでのもう一人の主人公である筈のラクスがまた裏で動いています。
シンはいつもそれを聞いてばかりです。
この関係をいずれ変えたいと思っているのですが・・・・ラクスの傍にいるシンよりも、宇宙で駆け回っている方がシンには似合うような気もします。
ヘリオポリスは壊れた後、地球とプラント、どちらがいつ回収したのだろうかとふと思ったのですが、これは考えない事にしました。
2年の間になんとかしたのだと思います。
キラもイザークにストライクフリーダムを返すという言い方をしていますが、ストライクフリーダムはキラの機体として造られたものなので、フリーダムとは違う筈なのですが、それでもキラの気持ちとしては「返す」がぴったりなのでしょう。
イザークは鼻で笑ってましたが。

新しい機体の事を最近考えていたのですが、インパルスのような換装式MSが新しいデスティニーやレジェンドにどうして引き継がれなかったのか、というのが気になっていまして。
核を搭載した時に不都合があったりするんでしょうか。
どうせ換装式にして、小説の中で考えるだけだったら換装式トランス●ォー●ー型変形可能ガンダムとか夢見てみたのですが・・。
夢見ただけです。
ひんしゅく買うだけだと思ってやめました。
>>20
ありがとうございます。
そしてスミマセン。無知を晒しますが、「レゾルブ」とはどういう意味でしょうか?


29 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/10(月) 23:22:42 ID:9uFn79Uq
GJ!

30 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/11(火) 09:35:19 ID:???
面白かったです
本編も設定あるようでないみたいなもんだったし
気にしなくていいと思う

31 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/12(水) 13:07:34 ID:???
ほしゅ

32 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/13(木) 19:40:21 ID:U7mh3TQF
保守

33 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/14(金) 00:16:35 ID:???
ドトハクのヒーローヒロインがこの二人に見える

34 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/15(土) 19:31:03 ID:???
保守

35 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/16(日) 14:44:35 ID:???
保守

36 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/17(月) 17:16:12 ID:???
あげ

37 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:02:26 ID:???

メイリンの誕生日を明日へと控えた休暇初日、パイロットスーツに着替えたシンはデスティニーでアプリリウスに戻るよう要請があった為それに従い格納庫に向かう。
同じく今日から休暇組であるルナマリアとレイもまた自分の機体で戻るように要請されている。
整備や調整はこのヴォルテールで完璧に対応して貰っているが、稼動データと各部位の調整記録と共に今後の研究の為のデータを取りたいのだと、アプリリウスの技術者達が申し出たらしい。
何かの欠陥が新たに見つかる可能性もあるので見て貰っておけという隊長命令もあり、シンには異論もなかった。
それにシャトルでじっとしているよりも自分で操縦した方が楽しい。
そうして格納庫に向かうと、朝一番だというのにインフィニットジャスティスと、そのパイロットであるアスランの姿が目に入る。
3週間近くしか会っていなかっただけなのだが、なんだか懐かしい気すらするのだから不思議だ。
相変わらず生真面目な顔で隣のディアッカとモニターボードでヤヌアリウス、ディセンベルの様子を確認して打ち合わせをしている。

「おはよーございます」
「あぁ、シンか。おはよう。どうだ?指揮官として動くのは」
「正直面倒っスね。隊長はデータの鬼だし。ちょっとでも仕事が進んでなかったら煩いし、指揮官って言っても好きなようにやらせて貰ってる訳じゃないし」
「おーおー、一丁前に言ってくれちゃってぇ。じゃあ今度俺からイザークに言ってみようかな。ちょっとはシンに任せてみろって」
「仕方ないさ。イザークはこの作業に掛かる費用がどれだけ掛かってるのか毎日のように報告されて叩かれてるからな。プラント全体の財政を考えると一刻も早く終わらせたいんだろ」

まるで新たなイベントを見つけたようなディアッカの含み笑いに、アスランも困ったように眉を寄せて溜息を吐く。
必要な事には幾らだって資金が掛かりそうな計画を立てるイザークだが、抑えられる所はきっちり抑えたいらしい。
そういう姿勢を見せる事でいざという時に話を優位に持って行こうと考えいるのだろう。
ザフトの権威を損なわない為の要求なのだからちょっとは我慢してくれというアスランに、シンは思わず「この作業に毎日どれ位の費用が掛かってるんですか?」と、聞いてしまう。
その質問にアスランは一瞬言い難そうな顔を見せる。
余程言いたく無いのだろう。
こればかりはディアッカも知らないのか、興味津々とばかりにアスランの言葉を待っているので誰もこの話を終わらせようとする者がいない。

仕方なく溜息を吐くと、「詳しい数字は俺も知らないからな?」と、前置きをして言葉を続けた。

「一基につき、一日で億単位の金が動いているのは確かだな。プラントの外の活動についてはまた別に掛かってるみたいだから総額にしたら気が遠くなるような資金が動いている事になるな。
これを聞いても自分の好きなように仕事させてくれ、責任は取りますって言うのなら俺からもイザークに進言してもいいぞ?」
「いや。いいです。今のままで」

そりゃイザークも神経質になる筈だと、シンはこの話題から逃げるように顔を背け、ディアッカも肩を竦めた。
「まぁ、今日から休暇なんだ。今の話は忘れて楽しんで来い」
アスランが誤魔化して笑うと、シンもつられて苦笑する。
「メイリン位の年頃の女の子だったらセントラルストリートの下着がいいと・・」
「そのネタはもういいですから、ディアッカさん」
「シン。明日は彼女も参加する事になっているから、シンも少しは気に掛けてやってくれないか?」
生真面目な顔で話題を引っ張るディアッカに苦笑混じりで突っ込むと、アスランがシンに向き直る。
聞いた瞬間は「彼女?」と、疑問に思ったものだったが、その「彼女」に当たる女性の名前を思い出してシンはアスランを睨み付ける。

「いいんですか?婚約者がいるのにそんな事言って」
「月で眠っていた歌姫を迎えに行ったのに、帰って来たらプラントの歌姫に捕まりましたとさ」
「ディアッカ。ラクスはそんな・・」
「じゃあ月に行ったのがそもそも浮気旅行だったとか?」

容赦の無いディアッカの言葉にアスランは苦しげに顔を顰めるが、シンも言われて当然だと思うのでじっとアスランを見つめている。
アスランは心底困った様子を見せたが、重々しく口を開いた。


38 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:03:37 ID:???

「彼女には、ラクスと俺から話をしている。一応彼女も了承してくれている。心の中ではどう思っているのか知らないが、今は彼女の善意に甘えるしかないんだ。ラクスも、俺も」
「イザークみたいに見合話がわんさか押し寄せて来ても困るしな」
「俺とラクスにはエザリア様のような100%信頼を寄せる後ろ盾はないからな。面倒な話は出来れば事前に防ぎたい」
「ただ自分達が楽をしたかったって事ですね」

シンの止めの一言にアスランは俯く。
しかし、それもすぐに顔を上げると「そうだ」と、何かを決意して重く口を開いた。

「俺達には時間がない。その中で利用出来るものは全部利用しようとラクスと決めたんだ。それが彼女を守る事にもなる」
「・・・次から次に自分に見合い話が来て色々不安にさせるより、二人で彼女を説得してそれ以上の噂は立たないように安心させようと?まぁ、一々アフターケアするよりそっちの方が楽だわな。・・・はぁ〜。なんだかお前等つくづく苦労性なんだな。お似合いだぜ?ある意味」
「それ以外の事ではなるべく心配は掛けたくない。だからシン。明日は少し話相手にでもなってやってくれないか?好奇心旺盛で我侭な所もあるけど、良い子だから」

月の彼女の事を思い出しているのか、シンに向けるアスランの視線が凄く優しい。
物凄い惚気を聞かされた気分だが、それは恐らく間違いではないだろう。
本当なら此処でディアッカと共に接触点での活動についてもう少し話をしようかと思っていたのだが、そんな気も失せた。
ディアッカにそこは任せていれば大丈夫だろう。
あれだけアスランにずけずけと痛い所を突けるのなら。

「じゃ、俺もうアプリリウスに向かうんで」
「気を付けて行けよ。スピード出し過ぎるなよ」
「へーい」

床を蹴ってデスティニーに向かうと、後ろで「どうしてディアッカがミーアの事知ってるんだ?」「お前がイザークのストレス溜めるような事すれば自然とこっちに話が回って来るっての」と、いう会話が聞こえたが、シンはもう振り返らなかった。


「おはよー。シン」
「おはよ。・・・・・あれ?ヴィーノ。お前そろそろシャトル乗らなきゃならないんじゃないのか?」

デスティニーの整備をしていたヴィーノもシンと同じく今日から休暇の筈である。
なのに作業服を来ていつものように仕事をしているのだからシンは軽く目を見開く。

「へっへっへ。シンにデスティニーに乗せて貰おうかと思ってさ」
「はぁ!?」
「アプリリウスまでなんだし、いいだろ?」
「駄目に決まってるだろ!点呼だってあるんだし、さっさと着替えてシャトルに乗れよ。それとも午後からのにするのか?」
「ちぇー。レイがメイリン引っ張って行ったからOKかなぁ?って思ったのに。やっぱ駄目か」

コックピットに座り、シートベルトを締めて機体のチェックを入れているシンをハッチの外から覗き込むヴィーノが言葉を続ける。
「それでもデスティニーの整備は俺がやってやんないとな。アプリリウスの整備なんかに負けてらんないっての」
「・・・ちょ・・・。レイが?レイがどうしたって?」
「レジェンドにメイリン乗せてアプリリウスに帰ったんだよ。ルナマリアが相当切れてたけど」
「そりゃ切れるだろ!規定違反なんだし!」
思わず立ち上がろうとして、シートベルトが胸を圧迫する。
立ち上がれずもう一度シートに座ると、シートベルトを解除してヴィーノに掴み掛かる。


39 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:04:51 ID:???

「当然メイリンは宇宙服着てるんだよなぁ!?」
「それは当然。でなけりゃ俺だって止めてるよ」
「メイリンが納得してレジェンドに乗ったのか?」
「さぁ・・・。もうがっちりと背中から抱え込んでてたし。ただルナマリアが後ろから叫んでたけど」

襟が締まって苦しいとヴィーノを掴むシンの手を必死に叩いて「ギブギブ・・」と、訴えるのだがシンは気付かない。
「最近レイとメイリン喧嘩したみたいなんだ。それでまた何かあったとか!?」
「知らないよぉ!レイも恋愛下手みたいだし、ちょっと強引になっちゃってるのかなぁとか思うけど!」
「そんな恋愛って・・・・。・・・は!?何だよそれ!」
更に掴んだの襟を振り回し、ヴィーノは喉を逸らせて気管だけは確保する。
どうして自分がこんな目に合わなくてはならないのかと内心で恨み言を呟きながら、とにかく手を放して貰おうと言葉を続ける。

「気付いてなかったのか?あんなに一緒にいるのに。・・・・レイは、メイリンが好きなんだよ。多分」

聞いた瞬間シンはぱっと手を放した。
ヴィーノはげほげほと咳込み、涙目になってシンを見た。

「何で!?」
「知らないよ、そればかりは。でもレイはメイリンに会う為にザフトに戻って来たんだと思う」
「何で!?」
「他に好きな子に会う口実が無かったら、会えるようにするもんだろ、やっぱ」
「何で!?」
「何が!」

何が「何で」なのかと尋ねられるとシンにもよく分からない。
なんだか最近自分の周りの話題が愛だの恋だのばかりでうんざりしそうなのだが、それも戦争がないからこそだと思えば納得もして。
そういうのは得意じゃないと自覚のあるシンは「何で何も相談してくれなかったんだ」という思いがある一方、相談された所で自分に何が出来るだろうかと思い悩む。
何も出来る筈が無い。
自分だって満足な恋愛経験は無いのだから。

「ラクスを好きになって欲しいな」

と、シンに微笑んだキラの事を思い出す。あれだって結局はシンには理解出来ない言動で。
好きになるとはどういう事なのかと思うと3日徹夜した所で答えは明確に出ないように思う。
ごちゃごちゃ煩いとシンが髪をがしがしと掻くと、うんざりと溜息を吐いた。

「とにかくアプリリウスに行ってみる。・・・・恋ってしなくたって生きていけると思うんだけどな」
「でもすれば楽しいもんだよ。レイはちょっと茨道進んでるけど、その内いい思い出になると思うし」
「・・・レイが振られる・・・って?」
「それは俺にも分からないよ。メイリン次第だろ」

振られるレイなんて想像出来ないけどと、笑うヴィーノの頭を軽く叩いて「もう出る」と、コックピットに戻る。

40 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:06:33 ID:???

シートベルトをしてハッチを閉じるとデスティニーを起動させる。
目の前のモニターに明かりが灯り、微弱な起動音が至る所から聞こえてデスティニーの目覚めを感じる。
管制に連絡すると、警告音と共にCICの発進シークエンスが格納庫中に響き渡る。
コックピット内でがたがたと揺れる振動に身を任せ、自分が動かしている訳ではないのにどんどん変わる景色をじっと見つめているのは僅かな緊張と高揚感を呼び起こす。
がたんっとカタパルトが固定されたと同時にスピーカーから『デスティニー、発進、どうぞ』と、声が掛かる。

真上のボタンを幾つか切り替えグリップを強く握る。

「シン・アスカ!デスティニー。行きます!」

グリップを前に押し出すと同時にペダルを踏み込む。
バーニアの噴出と共に掛かるGにくっと喉を締めると星が輝く宇宙に飛び出した。





朝の早くからホテルに押し込められる事になったメイリンは戸惑いを隠し切れず、自分を此処まで連れて来たレイを振り返った。
「あの・・・今日昼からママと買い物に行く約束をしてるの」
「じゃあ昼までに送る」
今からじゃ駄目なのだろうかと言い掛けたが今日までレイを避けて来たという現実にそれは無理だろうと思い至る。
メイリンはレイが怒る理由が分かっていた。
しかしそれに対して自分がどう説明すればレイが納得してくれるのかが分からなかったのだ。
レイは何度もメイリンに尋ねる。

恨んでいるんじゃないのか。
怒っているんじゃないのか。
何か言いたい事があるんじゃないのか。

その一つ一つに「恨んでない」「怒ってない」「レイが生きていて良かった」と答えるのだが、レイが、レイ自身がその返事に納得してくれない。
「怒って欲しいの?」と聞けば「そうじゃない」と、首を振る。
メイリン自身自分の中にある真実を語っているのだが、レイがそのメイリンの真実を信じてくれない。
これではどうすればいいのかと悩むのだが、メイリン自身には答えが見つけられない。
結局は二人で話し合うしかないのだろう。
レイもメイリンも自分の考えにばかり夢中になって何も話が進まなかったから。

「じゃあ、座っていい?・・・話そう?ちゃんと」
「あぁ」


41 :鬼ジュール:2006/04/18(火) 16:08:30 ID:???

ソファに腰掛け、レイもその対面に腰掛けるとレイは窓の外を見た。
改めて話すとなると何処から話し出せばいいのかいつも悩むのはレイもメイリンも同じなのだろう。
メイリンもまた間が持たなくてレイと同じように窓の外を見た。
プラントは今日も晴れている。
まだ早朝なのでその日差しは強くないが、それも時間の問題だろう。
明日も晴れると決められていて、自分の誕生日が清々しい気分で迎えられるのかと思うと嬉しい。
何か世間話からした方がいいだろうかとメイリンがレイに向き直った時、彼は何時の間にかメイリンをじっと見ていた。
その真剣な瞳にメイリンは胸が締め付けられる。
頬にさっと朱が走り、思わず姿勢を正す。

「メイリン」
「な、何?」

思わず上擦った声にメイリンは肩を竦めた。
少し格好悪い自分の姿に恥ずかしくなる。
しかしレイはそんな事は気になっていないのか特に表情も変えずにじっとメイリンを見つめ、再び口を開いた。


「俺はメイリンが好きだ。・・・しかし、俺の体には重大な欠陥があって他人と同じような生き方が出来そうにない。・・・それでもずっと一緒に居て欲しい。そう、言ったらどうする?」


聞かされた言葉のどれにも現実味がなくて、何かの例え話か何かなのだろうかとメイリンは反応に困る。
しかし、頭で何かの結論が出るよりも先に胸を詰まらせメイリンは顔を歪めた。

涙が零れる。そう、思った。


<続>
*******************
お久しぶりです、こんにちは。
最近執筆速度が落ちましてスミマセン。
様々な要因があって執筆時間が少なくなってきているのですが、それでも投下はきちんと続けて行きます。
本当に本当にようやく誕生日前日になってくれました。
シンの代理としてアスランが到着しました。
アスランが居た時には接触点での作業は無かったのでこれに関してはシンの方が威張れる所だったのですが、一日の作業に掛かる資金に一気に怖気付いて逃げてしまいました。
そして直接自分は関係ないのに他人の恋愛話が気になるのは年頃の男なら当然の反応かと。
それに対してまだ自分が恋をしたいという願望は持てないのはまだ恋をした事がないからとしました。
次回レイメイを入れようかとも思ったのですが、此処で切って後は皆様のご想像の中でとした方がいいのかもしれないと考え中です。
前回のキラとイザークも中途半端な所で切って放置しているところといい、何かと放置が続いていますが、次回か、その次かでキラとイザークの会話については明かします。
その頃にはシンラクっぽくなればとも思っているのですが、これも計算が上手くいくかまだ見通しは立っていません。
レイメイに関しては・・・・次回入れるか、それとも当分放置にするか・・・・・。
次を書きながら考えます。

個人的にデスティニーの発進の所は書いてて楽しかったです。
あのシーン全く書く必要なかったのですが、どうしても、こればかりは趣味です。
メカ詳しくないので間違っていた所があったら見逃して下さい。

42 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/18(火) 19:41:15 ID:???
>>37-41 GJ
誕生日楽しみにしてます。
アスランとラクスの虫よけを揶揄するシーンが面白かったです。
発進時の掛け声「xx 出るぞ!」「yy 行きます!」って作中であんまり変わりませんよね。
逆襲のシャアで年取ったアムロは何て言ってたかなあ。
シンも「シン・アスカ zz 出る!」とかベテランパイロット風に言う日はくるのかなあ。


43 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 00:22:55 ID:???
鬼ジュールさん、キララクSSも書きにきてよ

44 :鬼ジュール(本筋とはまったく関係のないパラレルな話):2006/04/19(水) 11:03:24 ID:???

「シンは恋をした瞬間とは覚えていますか?」
「は?」

突然のラクスの言葉にシンは硬直した。
今日はクライン邸にラクスの護衛として迎えに来た筈だったのだが、何故か「ちょっとお茶して行きませんか?」と、言われて庭にまで連れて行かれた。
そこにはラクスを先に迎えに来たらしいアスランとイザークとキラの姿があり、皆此処で捕まったんだろうなぁと思うと少し気の毒になった。
自分も含めて。
そこでラクスにハーブティを振舞われたのだが、ハーブティなど殆ど飲んだ事の無いシンは、その奇妙な苦味に顔を顰めた。
「かもみーる」とかいう名前のハーブらしかったが、効能があるのかすら疑問で、取り敢えず一緒に出されたクッキーで口直しをする。
と、そこで尋ねられたのが冒頭の言葉だ。
恋と言われてもイマイチ理解出来ない。

「さぁ・・・。そういうのはまだ・・」
「まぁ♪まだですの?」
「はい」

シンが答えた瞬間イザークとアスランの溜息が聞こえた。
イザークはそれまで飲んでいたティーカップをソーサーに置くと腕を組み、足を組んでプラントの湖をじっと見る。
アスランもまたティーカップをソーサーに置くと身を乗り出して「ラクス」と、小さく咎める声を発した。
アスランの声に「いいではありませんか、実験ですわ」と、くすくす笑いながらラクスが反論した時には一体何が始まるのかとぎょっと目を見開く。

「あの!?」
「はい」

ラクスはシンに向き直ってテーブルの上に置いていた手を取った。
突然手を握られた事に疑問に思って「あの・・」と、もう一度声を掛けると、やはりラクスは「はい」と、答える。

いや、「はい」じゃなく。

と、シンが心の中で突っ込んでみると、じっとシンの様子を見ていたラクスが今度はシンの手を取っていた指を絡めて来た。

「あの!?」
「はい♪」

楽しそうですけど、一体何が起きてるのかさっぱりなんですけど。

と、やはりシンは思うのだが、ラクスはにこにこと笑っている。
何が此処で起きているのかとラクスに聞いても埒があきそうにないのでアスランに視線を向けるがアスランは溜息を吐きながら首を左右に振った。
「諦めろ」という事であろうか。
何を諦めるんだ?と、結局何の解決にもならず、ただ疑問がまた一つ増えただけだとシンは首を傾げるとラクスが立ち上がった。
それを目で追いかけてラクスを見上げると、ラクスはシンを見下ろして微笑んだ。
プラントの歌姫の微笑みである。
当然それが自分に向けられているものだと思うと少し恥ずかしくて、照れ臭い。
思わず目を逸らすと、その瞬間、繋がれていた手が離れ、ラクスの手がシンの背後に回った。

45 :鬼ジュール(本筋とはまったく関係のないパラレルな話):2006/04/19(水) 11:04:26 ID:???

抱き締められてる!?

そう、気付いた時には視界がピンク色になっていた。
それがラクスの髪を通して物を見ているからだと冷静に判断した後、どうしてこんな事になっているのだろうかと硬直した。

動けない。

イザークの溜息がまた盛大に聞こえた。
そうだ。此処には二人きりという訳ではなく、周りに人がいるのだと思うとシンは慌てて声を発した。

「あの!?」
「はい♪」

先程からシンとラクスの会話が同じである事にシンは気付いているのか。
いや、気付いていたとしてもそれ以外の言葉が思い当たらず、結局はラクスの考えを求めているのだが、ラクスはそれに対して何も明確な返答はしていない。
自分から触れてもいいのだろうかと肩をトントンと、指で突付くが腕は放してくれそうにない。
此処で自分が抱き締め返しても何の解決にもならなければ上司やら先輩やらに怒鳴られそうである。
何をすればいいんだ?と、必死に考えていると、ラクスの手がシンの肩に移動した。
そしてラクスが体を少し離すとシンを見る。
僅かに潤んだ瞳にシンもまたどきりと頬を染める。
破天荒なお姫様だが、黙っていれば可愛い。
いや、可愛いなどという言葉では表現出来ないような綺麗な人で。
じっと見つめられると恥ずかしくて胸が高鳴る。

しかし夢見心地になったのも束の間、ラクスの瞳がゆっくりと閉じられた。
その反応に「まさか!」と、大きく見開き、心臓が胸を痛いほど打つ。
ラクスの長い睫が震え、近付いて来る顔から目を離す事が出来ず、石になったように瞬き一つ出来ないでいた。
くっとラクスの顎が上がり本当にキスされるかも!と、思った瞬間、ぎゅっとシンは目を閉じたのだが、その柔らかそうな彼女の唇がシンに触れる事は無かった。

恐る恐る目を開けるとラクスの口には手が置かれていて。
その手の主を辿ると苦笑したキラだった。
ラクスもぱっちりと目を開けるとキラを見上げる。

「もう少しでしたのに」
「駄目だよラクス、そこまで。これ以上やっちゃうと只の痴女だよ」
「イザークの時にはほっぺにキスするまででしたら許して下さったではありませんか」
「あの時は僕も初めて見たし。まさか色んな人にそんな事してるなんて知らなかったんだから」
「まぁ、今回も頬にするつもりでしたのよ?」

ここら辺。と、限りなく唇に近い頬を指すと、「それでも駄目だよ、シンが驚いてるんだから」と、キラは苦笑する。

「悪いな。ラクスの変な実験なんだ。親しい人間には一度はする儀式みたいなもんだ」
「カガリの時は大変だったよね。止めないとラクスったら押し倒すんだもん」
「あれはカガリも嫌がってなかったのが原因なんだが」


46 :鬼ジュール(本筋とはまったく関係のないパラレルな話):2006/04/19(水) 11:05:17 ID:???

シンもごめんね?早くに止めなくて。

と、キラがにっこりと微笑むとシンは耳まで真っ赤に染めて両手でぶるぶると震える程に拳を作る。
そして徐に立ち上がると。


「純(と書いてピュアと読む)な青少年の心を弄ぶな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


クライン邸の庭を全力疾走で走り抜きながらシンは大声で叫んでいった。
その大声にラクスはきょとんと、シンを見送り、他の一同に目を向ける。

「これはわたくし、今日はお仕事に行かなくてもいいという事でしょうか?」
「戻ってくればいいけど」
「戻って来なくとも我々がいますから、仕事はして貰います」
「でもシンの反応は可愛かったですわ。今度は食べてしまってもいいでしょうか?」
『それは駄目』

本人の意思も無視して食べるのは、そりゃ痴女も通り越して強姦です。

と、議長に犯罪者になって貰っては困る面々は、厳しい表情でラクスを見た。
それに対してラクスは「残念ですわ」と、小さく感想を零した。



<終>
********************
真面目な話を最近書いているので、またシンラクでちょっと軽い話が書きたくてこんなのを。
もし時代背景やら何も関係なかったらこんな感じでラクスの方がシンにちょっかいを出して欲しいかなと。
キラ、アスラン、イザークという面々は出さなければ出さないで良かったのですが、ラクスのストッパーを一人に選ぶ事が出来なくて結局意味も無く全員出しました。
欲望丸出しの天然ラクスは書いていて楽しかったです。
そして今回プラントの湖と書きましたが、海ではないですよね?と、思ったり。
わざわざ海水にする事もないだろうと思い、水だとすると湖なのか?と、推測してみたのですが、他の表現がどこかでされているんでしょうか。

>>42
ありがとうございます。
アスランとラクスにはコネはあるが後ろ盾は無い状態なので自分の身は自分で守らなくてはならなくて、「いい話を持ってきました」と、余り仲の良くない人との接触から何を仕掛けられるかわからないのでとにかく婚約者同士として協力体制を取ろうという事になっています。
ミーアには可哀想な感じですが、アスランがフリーだと知れて満足に動けないミーアに何か仕掛けられては、地球に向かう事の多いアスランにとってはそっちの方が怖いのです。
ミーアの好意を知りながらそれを裏切る事でしか彼女を守れないアスランにとっては、当分また色んな苦労をしてしまうのだと思います。
シンの発進時の掛け声は・・・もうちょっとヴォルテールでも地位を確立出来たら変わるかもしれませんが、シホやらディアッカやらと、ベテラン勢がいる限り早々変わりそうにないですよね。
>>43
読みようによってはこの話も少しはキララクかと。どうでしょう。


47 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 01:00:00 ID:???
信楽ええわ

48 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 10:10:50 ID:???
保守

49 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 02:02:45 ID:wQbBFt8z
保守

50 :鬼ジュール:2006/04/22(土) 19:38:24 ID:???

―― アプリリウス

無事到着したシンは、アプリリウスの整備班の説明によりこれから明日の21時まである研究機関に引き渡す手順になっていると聞かされる。
ザフトには様々な研究機関が関わっている為、それが何処だで、何の研究をしているのかは正直シン自身にはどうでもいい事だった。
その為聞いた傍から何処の研究機関が何を調べたいのかというのは忘れてしまって隣のレジェンドを見上げる。

「あの、レイは?」
「もう確認を終えて休暇に入られました」
「メイリン・・・女の子も一緒だったと思うんだけど」
「えっと、そこまでは・・・」

デスティニーとレジェンド。この最先端技術を使って造られた二機を同時に担当する者など、人員の多いアプリリウスでは考えられないのだろう。
ヴォルテールでは大抵どの機体の事も整備班は把握しておくように徹底されている。
その為どの機体の事を聞くにしても誰に聞こうと同じ情報が手に入っていた訳なのだが、流石アプリリウスは保管機体数がヴォルテールの何倍にもなる為全てを管理する事は難しいのだろう。
ヴォルテールやミネルバの感覚で尋ねても仕方ないと「分かった」と、シンは着替えるべくその場を立ち去った。

ざっと周囲を見渡してレイとメイリンの姿は見えない。
ならばもう市街に出たのだろうとシンも着替える事にした。
本当にレイがメイリンの事が好きなのか分からない。
しかし、心配するような事は無いように思う。
特に親切という訳でもないが、女の子に優しいレイが無茶な事をするとも思えない。


「あれ、早いね」

と、この時自分に向けて声が聞こえた気がしてシンは立ち止まった。
広い格納庫の中、様々なMSが搬送され、その接続音や警告音、整備班の怒号が響き、五月蝿いとも思える中、確かにその声はシンを呼んでいた。
メイリンの誕生日プレゼントを買いに行かなくてはならないので出来ればさっさと町に出たかったのだが、声を掛けられたと気付いてしまってはそれを無視する事も出来ない。
声の主を探すと、ぱっと見てそれが誰なのかシンには直ぐにはわからなかった。
しかし、確かに知り合いだとシンは目を凝らして見て・・・・・・。

キラだ。と、気付いた。

どうして彼だと直ぐに気付かなかったのかというと、その格好だ。
飾りベルトの多い私服の姿は何度も見た事があったが、ザフトの整備兵と同じつなぎを着ている姿はどうにもキラだと思えなかったのだ。

「キラ・・さん?」

戸惑ったシンの声に漸く自分の姿に気付いたキラは、格好を見下ろして「ははは、似合わない?」と、笑う。
別に作業着なのだから似合う似合わないはどうでもいいとシンは「いいえ」と、答えるとキラの元に歩み寄った。
そしてその向こうにストライクフリーダムの機影を見つけてシンは納得する。

「整備ですか?」
「うーん。どっちかというと修正、開発?」


51 :鬼ジュール:2006/04/22(土) 19:39:30 ID:???

どうして自分が疑問形で尋ねられるのだろうかとシンは「はぁ」と、答える。
しかし平和に向かおうと日々尽力しているラクスの護衛がMSの開発とはまた物騒な話だ。
シンも今日アプリリウスにデスティニーで戻って来たのはやはりMSの開発の為なのかもしれないが、そんな自分は命令があったからだと言い訳をして棚に上げてしまう。
第一研究者がデスティーの何を見たいのかはシンにも分かっていないのだから。
自分はあくまでパイロット。
それ以上の研究や、開発等には興味はない。

「また戦争でもしたくなったんですか?」

嫌味に尋ねるとキラは穏やかに微笑みながら「それは嫌だな」と、ストライクフリーダムを見上げる。

「ちょっと僕専用になりすぎちゃってるからね、もうちょっと他の人でも操縦出来るようにと思って弄ってるんだけど・・・・。この間パイロット候補のイザークに断られちゃって、どうしようかなぁと思ってるんだ」

まぁ、いざとなったら押し付けちゃうんだけど。

と、やはりのんびりと、とんでもない事をさらりと言う。
「これを・・・隊長に?」
「本当はフリーダムのパイロットにはイザークがなる筈だったんだ。それを僕が貰っちゃったから今度こそ返そうと思ったんだけどね。鼻で笑われたよ」

困ったね。

と、またも大して困った様子も見せずに微笑むキラに、シンは少し「勿体無い」という気持ちで改めてストライクフリーダムを見上げた。
これはザフトの機体ではないが、この機体もデスティニーに負けず劣らずの性能を持っていると、シンだって素直に認められる。
しかし、キラの「他の人でも操縦出来るように」という一言はシンだって聞いていて嫌味に聞こえる。
本人に自覚はないのかもしれないし、実際弄らなければ他の人間には乗りこなせない物だとしても。
シン以上にプライドの高いイザークがこの言葉を聞けば絶対に「いらない」と言うに違いないと思うと、シンは納得する。

頑固だからなぁ。

それに、のんびりとしたキラと何事も即断、即決、即実行のイザークではそもそも会話が成立しているのかどうかも疑問だ。
きっとキラが一方的に「仲が良い」と、思っているに違いないと、そこまで推測してシンは余り関わらない事に決めた。
最近様々な人間関係に悩まされているのだ。
これ以上誰かに振り回されたくない。

「じゃあ俺、やる事あるんで」
「あ、うん。ごめんね、引き止めて。また、明日」

いえ・・・と、敬礼すると踵を返す。
それをキラは少しだけ見送り、直ぐに自分もストライクフリーダムの元に戻った。
シンも格納庫を出てからある事を思い出し、一度立ち止まる。

以前言われた言葉の意味を聞けるチャンスだったのだろうか、と。


52 :鬼ジュール:2006/04/22(土) 19:41:50 ID:???

しかし沢山の人が行き交う格納庫で落ち着いて話が出来る筈もないかと、シンは再び歩き始めた。
キラが「また、明日」と、言ったのなら明日また話す機会があるだろうと判断して。

誕生日プレゼント、結局何にすればいいんだろ・・・・。

と、直ぐに考えを切り替えた。
キラと話をするのは明日にでも出来る事だが、メイリンの誕生日プレゼントは今日中に探さなくてはならないのだから、シンは早足で宿舎の自分の部屋に向かっていった。
さっさと着替えて町に出て、誕生日プレゼントを用意したらバイクのパーツを見に行くのもいいと、シンはすっかり休日を楽しむつもりになっていた。

久し振りのプラントはの空は晴れ渡っていて。
何処から無重力空間なのか確認する必要もない。何処でも足を使って歩いていける。

宇宙空間は嫌いじゃないが、地球生まれのシンにはやはり重力のある空間の方が安心する。
プラントの外郭の向こうでは今日も仲間が飛び回っているのだろうが、それはそれとしてシンは休日を楽しもうと大きく伸びをした。



<続>
********************
今回は物凄く他愛の無い話のまま終わってしまいました。
レイとメイリンの話の続きでも入れようかとも考えていたのですが、それは余り楽しい話でも無いので、盛り上がりそうな時に話を持って来ようかと考え中。
大昔は此処でルナマリアの事にも触れようかと思っていたのですが、それも次回入れようか、それとも諦めようかと思案中。
姉妹の会話とか好きなんですが。
特に何だかんだと言いながらメイリンの心配をするお姉さんなルナマリアの発言とか書きたいのですが、これもタイミング次第です。


53 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 22:24:26 ID:???
今回はマターリとした感じで
次回は休日だしシンとラクスの会話あるかなワクテカ

54 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 23:32:19 ID:???
>>50-52 GJ
私は年甲斐もなく「〜専用機」という感覚が好き(でもインパルスにルナが乗るのは全然抵抗ないし必然とも思うのが自分でも不思議)なのですが、
そのキャラクターを縛り付けるような感じになってしまう場合もあるのだな、と気づかされました。
面白かったですよ。また書いてください。

以下はこういうのもありますよ、というガンダムに出てきたキカイ群です。何らかの参考になれば、と。

・デスティニーインパルス 出典 Gundam Seed Destiny MSV(モビルスーツバリエーション)
 インパルスにデスティニーシルエット(背中に付けるユニットの一種。本編ではフォースシルエットを装着してフォースインパルスになる)を搭載した機体です。
 大砲、対艦刀を両肩に装備し、フォース、ソード、ブラストの特徴を併せ持っています。
 試作が何機か作られましたが、戦闘中にエネルギー補給が何回も必要、インパルスの変形合体機構というある種華奢なフレームに過剰な装備は荷が重い、と問題点を解決できずに試作のまま終わりました。
 その結果デスティニーが作られたわけです。
 設定だけの存在ですが人気は高く、問題点が解決されたとして登場するssはそれなりにあります。
 私が見た中では、戦後ルナが搭乗、敗戦直後故デュランダル議長の遺品としてシンが搭乗、などがありました。

・フルアーマーxx(xxはMS名) 出典 GundamZZ VGundamなど
 追加装甲、追加武装などをMSに付けた機体です。デュエルとアサルトシュウラドの関係と同じです。
 追加装甲部分が壊れてもまだ戦えるためアニメという表現方法では見栄えが良く、最終決戦前にこの状態になる場合が多かったと記憶しています。

・バイオセンサー(簡易サイコミュ) 出典 ZGundam GundamZZなど
 非常に大雑把に言うとニュータイプ(NT)のパイロットの意思を受けて機体がパワーアップするシステムです。
 パイロットの感情の高まりに応じて機体反応性、武装出力、推進力などが上昇したり、ピンク色のオーラをまといバリアを張ったりします。
 デスティニーにもこれが搭載されているなあ、と感じたことはあります。シンが高ぶると光の翼が展開され動きが速くなりますから。単なる演出でしょうが。

・リフレクタービット 出典 ZGundam GundamZZなど
 ファンネル(≒ドラグーン)の一種。
 ファンネルがビームを発射するのではなく、アカツキの装甲のようにビームを受け止め反射します。
 敵のビームを反射するだけでなく自分の撃ったビームを反射させ死角をカバーするようなことも出来ます。

・エンジェルハイロゥ 出典 VGundam
 数キロ?メートル以上の直径を持つドーナッツが幾つも組み合わさったような形をしています。
 何百人ものサイキッカーと呼ばれるNT的素養を持った人々が乗り込み、彼らの持つ力をキールームに乗る人物が制御します。
 大雑把に言うと強力な「電波」を発して人々の精神に影響を与えるキカイです。
 使用した人物は人々の心に平安を与え争いを無くすつもりでしたが、効果が強すぎて人々を赤子同様の精神状態に戻してしまい社会機能が停止してしまいました。

・ムーンバタフライ 出典 ターンエーガンダム小説版
 ソレル家専用のMA(モビルアーマー=人間型ではない機動兵器)
 全長数百メートルの蝶の様にも見え、数百機のファンネルを放出する様は蝶が鱗粉を撒き散らすに似ると表現されます。
 高度に自動化されており、操縦者の意思に従い動きます。
 「消えてしまえ」と思えば攻撃し、「どこかに行きたい」と思えば動き出し、「守りたい」と思えば対象を護衛します。

 思いつくまま、私が記憶するままに書きましたので色々間違っているところがあると思います。興味がわきましたら御自分で調べていただけると幸いです。
 分かって頂きたいのは「使ってほしい」と言っているのではなく、「こんなのもあるんですよ」というレベルの思いつきという点です。
 興味なかったら無視して頂いて全然かまいません。何となく書いただけですから。
 では、長文失礼しました。


55 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 02:12:50 ID:???
>>54
すげー!
自分機体のことわからんから勉強になるわ
バイオセンサーとかなんかいいねー

56 :鬼ジュール:2006/04/23(日) 15:11:30 ID:???
>>54
ありがとうございました!
自分も全部のガンダムを観ている訳ではないので、色んな作品の機体やパーツを紹介して頂けるととても助かります。
しかし、どうしても種の世界観に合うだろうかと考えると、エンジェルハイロゥやムーンバタフライはちょっと難しいかもと考えてしまいますよね。
今自分の中で使えると思っているガンダムの設定はWの「ゼロフレーム」だろうかと考えていたりします。
Wというだけで少し印象が悪い部分があるかもしれないのですが、外装の90%を喪失してもフレームだけで戦えるというのは「格好いい」と思ってしまいます。
PS装甲やNジャマーキャンセラー等と合わせるとデスティニーガンダムに負けず劣らずのとんでも機体になりそうで、武器や盾を派手にするよりもこっそりこういう基盤がしっかりしているという方が魅力的なようにも思えたりしています。
極めて緻密な動きで人間の仕種のレベルまで動作可能という設定はなんとも自分には魅力的に見えました。
個人的にはターンエーガンダムも好きなのですが「月光蝶」は反則技過ぎると思うし、ガンダムダブルエックスのツインサテライトキャノンなんて破壊力が恐ろし過ぎるので種世界で使えるとも思えないのでこういうのは却下にしてます。
種で好きな機体はデュエルガンダム・アサルトシュラウドだったりするので、自分の趣味に偏ってしまうとどうしても近・中距離の決闘型ガンダムになりそうです。
復讐の為の機体という設定が好きでした。プラモの絵が赤と黒で毒々しい感じで描いていたというのも格好いいと思っていたものです。

しかし、他のガンダムから設定を持って来るというのは確かにいい考えかもしれないです。
種作品の中でどうにかしようかとも思っていたのですが、個人的SSなので色んな機体の設定を見てみようと思いました。
ありがとうございました。
宜しければまた何か使えそうな機体がありましたら教えて下さい。

57 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 08:19:38 ID:???
保守

58 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/25(火) 11:41:59 ID:???
保守

59 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:42:20 ID:???

着替えて宿舎に置いている自分のバイクを覆っていたビニールシートを外すとエネルギー量が限りなくゼロに近い事が判明した。
充電しなければ動かない。
1時間もあれば十分充電は出来るのだが、特に困りもしないので充電だけして街に出てしまう。
バイクを使いたかったのだが、それは自分が乗りたいというだけで交通の便が悪いという訳ではない。
明日ラクスの家に行く時に乗れればいいかと判断する。

そして久し振りに街に出れば、余りに様変わりしていて驚いてしまう。
あると思っていた看板は取り外され、新しい看板になっているなどはよくある事だが、建物自体がなくなっていたり、建物が全面的に改装されていたりするのを見ると自分が世間に取り残されている感がひしひしとしてくる。
それは嫌な事でも無いので街中を歩きながらシンは街中の変化を面白そうに見ながら歩いていた。
その中の一軒、シンがヴォルテールに配属になる前にもあったレンガ調の建物に入る。
機械や、自分が身に付ける物、部屋に飾る物等は最新のモデルという謳い文句の物が多いのだが、女の子にプレゼントするとなると趣味が一変するらしい。
女の子の体にアンティークなアクセサリーが付いていたりすると少しどきりとする。
これが妹となると、また違ってぬいぐるみなど色気もないような物になるのだが。
少し少女趣味の入った、しかし古式ゆかしいデザインも織り交ぜられたアクセサリー等を見ると、自分は身に付ける気は更々無いが、女の子には可愛いかもなぁと思ってしまう。
そうは思ってもしかし、身に付ける対象がメイリンだと思うと少し首を傾げてしまう。
メイリンがもう少し女の子らしい格好をしていたら似合いそうだが、アカデミーの頃から見るメイリンの格好は少年のような快活そうな物が多い。
風に揺れるふんわりとした生地のワンピースを着ていたのも見た事があるが、それはルナマリアと彼女の母親の趣味だと言って恥ずかしそうにしていた。
幾ら何でも友人の女の子にアクセサリーを贈るのは重過ぎるかとその場を立ち去ろうとしたその時、一つのアクセサリーが目に留まった。

ラクス・クラインなら似合うかも・・・・。

そう思った時には店員に声を掛けていた。
そして購入してから悩んだ。

渡せるのか?
どうして渡すんだ?
何て言って渡すんだ?

それにメイリンの誕生日プレゼントを買うのが目的じゃなかったか?

何かが少しずつ変だと思いながら、しかし気に入ってしまったのだから仕方ない。
ラクスに本当に渡せるかは別として、取り敢えずは「まぁいいか」と、思ってしまう事にした。


それから更に店内を巡ってからメイリンの誕生日プレゼントは確保し、少し昼ご飯には早いが何処か食事が出来る場所でも探そうかと辺りを見渡していると、クラクションが鳴った。
誰か飛び出しでもしたんだろうかとふと視線を向けると、その車は少し青みの掛かった黒の、スポーツタイプのオープンカーだった。

「うわ。地球製のだ」

ヨーロッパの方の高級車がプラントで走っているなど珍しいと思わず足を止めてしまう。
空気抵抗を抑えた車高を僅かに下げた流線型のフォルムの車体は、余り車の方には詳しくないシンにも最新型だと分かるし、程よく改造されているというのもなんとなく察した。
誰がこんなのに乗っているのだろうかと運転席を見た瞬間、シンは何も言わずに綺麗に踵を返した。

すると再びクラクションが鳴った。今度は二回。

じろじろと見ていたらとっくにばれてるよなと、再び立ち止まり振り返ると、運転席から降りて持ち主らしき男がサングラスを外して腰に手を当てて立っていた。


60 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:44:07 ID:???

「・・・隊長・・・・」
「運転しろ」

くいっと顎を上げて運転席に座るよう促す、世にも珍しい私服姿のイザーク・ジュールの姿だった。
てっきり今日も白服を着て駆け回っているのかと思えば、後部座席には黒髪の女性を乗せていたりして自分だって休暇だったんじゃないですか?と、思わず思う。

いや、それは無い筈だ。
アスランがヴォルテールに配属されているというのに、イザークにもまともに休暇が入るとは思えない。

「・・・サボリですか?」
「馬鹿を言わずにさっさとしろ。議長のご自宅までだ」

拒否権は元々無いのだろうかと、面倒に思いながらも高級車を運転出来る機会など滅多にないので取り敢えずエレカに近付くと、イザークも後部座席を振り返り僅かに腰を折って黒髪の女性にシンを紹介する。

「ザフトでは赤を着ているエースパイロットで、シン・アスカです。シン、彼女はミーア・キャンベル嬢だ」
「ども・・」

イザークの口から「エースパイロット」という紹介を受けると思っていなかったシンは、少し気恥ずかしい気持ちで軽く会釈する。
その時になって相手の女性の顔をまともにみると、ラクス・クラインにそっくりだった。
ラクスと同じくピンク色の髪であったなら見分けなどつかないだろうと思っていると、相手もシンを見て軽く目を見開くと、次の瞬間にはにっこりと「あたし、貴方を見た事あるわ。ヨロシク」と、手を差し出して来た。
そしてその名前にシンは思わず目を見開く。

アスランの、月の歌姫だ。

まさかこんな形で会う事になろうとは思っていなかったシンは、一気に手に汗を掻いた感覚に陥り、掌を服に擦り付けてから握手に応じた。
アスランの口から一度もミーアはラクスに似ているとは聞かされなかった。
こんなに分かり易い特徴があるのならさっさと教えてくれていれば良かったのにと、少し思う。
少なくとも話し相手にシンを選んでくれたのなら。

「彼女をクライン邸に送り届けてから議長を乗せて最高評議会議事場に向かう。その後この車を好きに使っていいから運転しろ」
「・・・・了解」

ミーアの隣にプレゼントを置かせて貰おうかと運転席側に移動して後部座席を見ると大きな風呂敷包みがあり(プラントでは珍しい物だ)、その前には折り畳まれた車椅子がある。
それでもシンの荷物も多くないので隅の方に荷物を置くと乗り込んだ。
ドアの閉まる音からして中流家庭が持てる車よりも重厚感がある。
流石高級車と、思うと心が浮き立った。
助手席にイザークが乗り込んだのも確認して発進する。
高級車とはいえ勿論それでもMSよりかは安価である事に間違いはないのだが、デスティニーは軍所有の借り物で、兵器だ。
しかし、この車は個人所有のただ人を運ぶだけの移動手段だ。
その感覚が少し違う。
シンが持っているバイクはプラント製の物だが、人気のモデルでシンと同じ16歳の少年で持っている者はなかなかいない。
しかしこのエレカと比べれば断然負けてしまう。


61 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:47:06 ID:???

「これ隊長のなんですか?」
「アスランのだ。勝手に借りた。俺はオープンカーは所持してないからな」
「いいんスか?」
「構わんだろう。今朝になって突然ミーア嬢の迎えに行けとこの俺に命じてきた不届き者だからな!あいつは!」

それも朝の5時に起こしに来やがって!
何で前もって言わないんだ!
そういうだらしない所があるから周りに迷惑掛ける事が多いんだ!

余程腹に据えかねていたのか、愚痴れる相手を見つけたとイザークの口の滑りが急によくなった。
失敗だったか?と、シンは運転しながら肩を竦めると、「ゆっくり行け」と、また命令される。
予定があるなら急いだ方がいいのではないかと思ったのだが、言われた通りスピードを落とすと「折角オープンカーにしたんだ。景色が見れなくてどうする」と、注意される。
今更景色なんてイザークとて見慣れた物だろうと思った瞬間、後部座席のミーアの存在を思い出した。
そこで彼女に景色を見せる為だったかと納得してシンはもう気持ち程度だけスピードを落とした。

「それにしても隊長普段はそんな格好なんですか?」
「制服じゃ目立つからな。スーツでも良かったんだがそれはアスランに止められた」
「拘りがあるんスかね?」
「さぁな!車椅子を運んだりするからかもな」

それからイザークは一つ欠伸を噛み殺すと「少し寝るから着いたら起こせ」と、体をずらした。
後ろに女の子がいる状況で寝るか?
と、半分呆れながらもこれから仕事の人間にそれを言っても仕方ないと「了解」と、返した。
口煩い上司とはいえ、話し相手を無くすと少し寂しい。
高級車のシートは上質で乗心地は抜群だったりするのだが、3人も乗っていて無言なのが居心地が悪い。

「あの・・・」
「はい?」
「速くない?」
「大丈夫、ありがとう」

よくよく聞けば声もラクスに似ているではないか。
親戚だろうかと推測すると納得した。
ディアッカも彼女を「月の歌姫」と呼んだ事だし、月で歌手をしていたのだろうかとも推測する。
詮索するつもりはないので推測だけではっきり知りたいというつもりはないのだが。

「明日のメイリンの誕生日、参加するんでしょう?アスランから聞きました」
「あ、そうなんだ。そっか。シンはアスランと一緒に居たんだもんね。仲がいいの?」

仲が・・・・。

そう改めて言われると非常に悩む。
仲がいいというよりもたまたま配属が同じだったと言った方がしっくり来るような気がする。

「衝突はよくあると思いますけど」


62 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:49:44 ID:???

と、そこで言葉を止めて中途半端な返事をすると、ミーアは鈴の音のような軽快さで笑った。

「アスラン優柔不断なのに頑固だもんね!」

ミーアの的を得た発言に思わずシンも噴出す。
一番最初にアスランに届いたメールを見た感じではもう少し儚げな「深窓の令嬢」を想像していたのだが、思っていたよりも全然気さくな様子を見せるのでシンも意表を突かれたが、静かで大人しい女の子よりも元気のいい方が印象がいい。
断然好感が持てる。
それからなんとなくアスランの悪口大会に発展した。
とは言っても大抵ミーアが文句を言い、シンはそれに同意するだけだ。

「アスランったら八方美人だから誰にだって優しくするのはいいんだけど、それで女の子が勘違いしちゃってるのにも気付いてないんだから!」
「プラントに戻って来てからも毎朝毎朝お見舞いに来てくれるのは凄く嬉しいんだけど、絶対に半熟の卵食べたか確認するのよ!」
「病院の先生にも逐一リハビリの経過とか聞いてたりするの!看護士の人とかにも『どういうご関係ですか?』って聞かれたりするのにあたしが毎回何て答えればいいのか分かんなくて困ってるのなんて全く気にしないんだから!」

聞きようによっては大変な惚気を聞かされている気分なのだが、本人にとっては違うらしい。
シンはそれに対して運転しながらだったというのもあったが、ついうっかり自分が何も知らないという事を忘れて尋ねてしまう。

「あれ?アスランとは付き合ってるんじゃないんですか?」
「アスランはラクス様の婚約者だもの。『好き』とだって言われた事はありません!」

ミーアの言葉に自分の質問が間違っていたと気付いて顔を顰める。
しかし、ミーアの言葉に嘘があるとも思えない。
長期休暇を取ってまで月に迎えに行った女の子に告白もしてないのかと思うとそれは男として情け無いんじゃないかと思う。
それはもう優柔不断以下だよなと何故か分からないが、優越感に浸りながらほくそえむ。

「アスランなんて大っ嫌――――――――――――い!」

大きな声で叫んだ後で胸が痛んだのか苦しそうな呻き声を上げる。
その声に驚いたシンが右端に寄せると同時に隣のイザークも目を覚ましてシートベルトを外すと座席を飛び越してミーアの体を挟むように車体とシートに足を置いてミーアの顔を覗き込む。

「あいつの事で文句を言うなら直接言ってやった方が効果的ですよ」
「・・・っは。あたしも・・・・そう、思う」
「隊長!病院に・・・!」
「いや、いい。酷い時の対処法なら聞いている。明日があるからお前も見ておけ」

手首の脈を確認しながら痛む場所を確認する。
次に彼女が押さえている手を払って胸元をくつろげる。
「ゆっくり吐いて・・・。吸って・・・・」
じわりと浮かんだ汗が可哀想でシンも上着のポケットからハンカチを出すとミーアの額を拭う。
呼吸が整い、脈も戻ったのか手首を膝の上に戻してやるとシンにぐったりとしたミーアを支えるように伝えて折り畳みの車椅子や風呂敷包み、シンの荷物も助手席に移動させてシンからミーアの体を受け取ると膝枕をさせる。

「落ち着いたら寝かせろ」
「了解」
「何度も医者からは聞いているでしょうが、貴女の胸の痛みは心因性の物です。そんな誰にでも言えるような言葉じゃなく、本心を言っていい」


63 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:51:43 ID:???

シンには業務連絡のように簡潔に伝えると、ミーアを見下ろして頭を撫でる姿はいつものイザークらしくなくてシンには奇妙な感じがした。
ヴォルテールではいつも男女の差では考えず、その者の能力で全て割り振っているからだろう。
いや、女の子にプライベートでも容赦しないというよりかは全然いいのだが。
面白ろおかしく語るのはミーアの本心じゃないとイザークが断言すると、ミーアは再び胸元をぎゅっと握り締めて目を閉じる。
その目の端からじんわりと浮かんだ涙が、シンには印象的だった。

「好き過ぎるのって、やだ・・・!あたしが、アスランの事好きじゃなかったら、あたしこれ以上アスランの事悪く言わなくて済むのに・・・・!」
「馬鹿なのはアスランです。あいつも貴女からの文句なら甘受するつもりがあります。全部本人に言っていいんですよ」
「言えないよ・・・。だって、あたしにはアスランしかいないもの」
「男なんて腐るほどいます。そこのシンも余り物です」
「隊長!?」
「なんだ?余り物一号」
「隊長だって余り物の癖に偉そうに言えるんですかぁ?」
「貴様、俺のプライベートを知ってるのか?」

にたり。

意味深に微笑まれてシンの方が「そりゃ、知りませんけど」と、小さく返す。
しかし、イザークの性格に付いて来れる女性がいるのかと考えた時「余程根性が無いと無理だろ」と、思う。
勝手な想像だが。
と、此処で肝心のミーアが話に付いて来れていなかった事に気付き、身を乗り出す。

「でも、アスランは貴女の事ちゃんと考えてると、思います。今朝もヴォルテールで貴女の事話してましたから。心配もしてましたし」
「月で貴女のリハビリに口煩かったのは、ヤツの休暇中にどうしても貴女を連れて帰りたかったからです。朝、病院には無理を言って面会時間前に会いに行くのもヤツなりにこれ以上貴女に心配を掛けたくないからだ。悪い事ばかり考えず言いたい事を言えばいい」

シンとイザークの言葉を聞いている内にしゃくりあげ始めたミーアが両手で自分の顔を覆う。
それを見ないようにイザークが顔を逸らしたのを見てシンもまた目線を逸らした。
恋をしていたというヨウランはその話をする時、照れ臭そうにしながらも聞いている方が羨ましく思うような幸せそうな顔をしていた。
しかし、ラクスを好きになって欲しいと言ったキラは寂しそうに見えて、レイは辛そうだった。
シンは改めて恋とはなんだろう、と、思う。
辛いのならしなければいいのにと、思うのだが、どうして恋はしてしまうのだろうか。

やめちゃえばいいんじゃないですか?

そう、ミーアに言えれば良かったのだが、頭の中で何度も繰り返すだけで本当にそれを口に出す事は出来なかった。

「あたし、あの時いなくなってたら・・・・目覚めなければ良かった・・・・」

呼吸をするみたいに、常にアスランを求める自分が浅ましくて、大っ嫌い。

その苦しそうな呟きに、シンもイザークも何も言えなかった。
ただ、シンはずっと手に握っていたハンカチを皺くちゃになるまで握り締め、イザークもまた拳をきつく作り、ドアに押し当てた。
何か優しい言葉でも掛けられたら良かったのだろうが、多くの戦友を亡くした二人にはそれが誰であろうと、どんな理由があろうと言って欲しくない一言だった。

64 :鬼ジュール:2006/04/26(水) 18:53:55 ID:???

ステラ・・・・。

彼女は、最後までそんな事言わなかったから。
シンは何かを決意したかのように顔を上げ、口を開こうとした時、それを防ぐように「出せ」と、イザークが声を掛けた。
イザークが咎める声を出す理由もシンには分かる。きっとミーアだって本気でそう言っている訳では無いだろう。
心が挫けそうになれば全てを投げ出したくもなる。
それを誰も咎める事が出来なければ、今は何でもいいから彼女が本心を言う事が大事なのだ。

それでも、言って欲しくない言葉がある。

だからこそ詰め寄るように身を乗り出すと、やはりイザークに手で制止させられる。
代わりにとばかりに目を覆っているミーアの手をイザークは握り締めた。


「ミーア嬢。どうかその言葉だけはヤツには・・・アスランには言わないで下さい。貴女が生きている事が、貴女が目覚めてくれた事が、今のアイツの支えになっているんです。私も貴女と出会えて良かった」


想いの他優しい声にシンは悔しそうに唇を噛んだ。
自分はミーアを責める言葉しか浮かばなかった。
自分の怒りをただ彼女にぶつけたかった。
それが自分の只の自己満足だと、気付いて恥ずかしくなった。

逃げるように「出ます」と、告げて運転席に戻ると車を発進させた。

後部座席ではまだ何か会話をしているようだったが、もう何も聞きたくなかった。


<続>
******************
本当はこの後クライン邸に着いて、ラクスを拾って議事場に行くまでを書こうと思っていたのですが、気力が続きませんでした。
しかし、これで次回やっとシンとラクスが再会します。
本当は今回イザークを出す予定がありませんでした。
実は前回、キラと一緒にストライクフリーダムの整備を手伝わせてみようかとも思っていたのですが、あんまり色んな人間を絡ませて「皆仲良しこよし」をする必要もないかと思って却下したのはよかったのですが、
シンが一人で街中ぶらぶらさせているには自分の間が持たなかったのでミーアは外泊許可を貰ったという事にしてお迎えに向かわせました。
という訳で、メイリン誕生日イベントの話を考えた時にはシンとミーアは当日に初めて会って、話をして・・・というので考えていたのですが、それも急遽変更。
シンも当日までラクスに会わないという設定にしていたのですが、それもこれによって強制的に変更。
次回会います。
他にもちょこちょこ変更点はあるのですが、大抵は余談のカットだったりします。
イザークがシンを「余り物」と呼ぶ所でディアッカとミリアリアの話を入れようかと思ったのですが、強引になりそうだったので泣く泣く却下。
そして今回もシンは色々と自分の未熟さを思い知らされます。
イザークが女の子に優し過ぎるような感もあるかもしれないですが、どちらかというと彼の中のスタンスで行くと「人命救助」という感覚の方が強いので、「声掛け」「擦る」という行動は訓練通りの任務みたいなものです。
ヴォルテールでアスランの気持ちを聞いていたシンですが、それでも冗談でも何でも「死」に繋がる言葉は言って欲しくない。
おまけに恋愛の辛さも理解出来ないのでただ腹立たしさだけが募ります。

それでも、何故かシンはラクスに対してのプレゼントを用意しているのですが。

またリアルの方が忙しくなる予定なので執筆速度が遅くなりそうなのですが、それでも短くても、ちょこちょこ投下したいと思っています。

65 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 19:49:55 ID:???
シンはアニメ本編開始前にプラントに住んでいた。MSはシンの個人所有物ではない。
当たり前のことですが、そういった雰囲気、事実をあえて描写した部分が良かったです。
シンはミーアについてもう少し知識があるのでは、と勝手に思っていましたが、アニメ本編でかなりスルー気味だったのを思い出して、そうだよなあ、と納得しました。
アスランの対人関係の不器用さがよく伝わってきました。
あせらずのんびり書いていって下さい。楽しみにしてます。

>GundamWのゼロフレーム
GundamWの設定はよく知らないので(本編と続編OAVは見たのですが)間違っていたら申し訳ないのですが、お話を聞いた限りではムーバブルフレームの発展型かなと思いました。
気が向いたならばムーバブルフレームについて調べてみると考えやすくなるかもしれません。
勿論興味がわいたなら、の話ですよ。


66 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 19:53:52 ID:???
書き忘れがありました。失礼。
>>65>>59-64当てです。


67 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/27(木) 01:52:39 ID:???
GJ!

68 :鬼ジュール:2006/04/27(木) 21:36:36 ID:???
>>65
いつもありがとうございます。
シンはこの話の中では「ミーア」という名前から聞かされていて、偽ラクスだったという部分には一切触れていないので、ミーア=偽ラクスという図式が成立しないのです。
偽ラクスが月に居たというのも知らないですから、ミーアが月に居たというのも成立しない要因の一つにあると思います。
しかし、キラのストフリはほぼ個人所有のような形になっています。(管理責任者はラクス)
アスランのインジャはそこの立ち位置が微妙なのですが、アスランが服隊した時点でインジャはザフトに譲渡した形になってるでしょう。(と、今決めた)
アスランは・・・相変わらずへたれだと思っています。
人間すぐには成長出来ないというのが、無印種のテーマの一つにあったらしいので、人間性の成長は種世界の人間は遅い物だと思っています。勝手に。

そしてムーバブルフレームについて調べました。
確かにゼロフレームはこのムーバブルフレームの発展型だと思います。
ゼロフレームは短時間であれば活動可能、サーベルやライフルにエネルギーを供給するターミナルとしても機能するとあったり、このゼロフレームにもガンダニュウムが使われているという設定なので、
ムーバブルフレームよりもより単機決戦用としての面が出ているような気がします。
人伝に聞いた話なので、どこのソースかは不明なのですが、デスティニーやレジェンド用にもミーティアが開発されていたという事らしいので、逆にミーティアを使った機体同士での戦闘を想定した時に
生死を分けるのは機動力と装甲だと思うので、ゼロフレームのような装甲がこれから開発されてもおかしくないのではないかと妄想していたりします。
世界情勢的にも軍事力に力を入れられる環境は難しいと考えると、一番発展しそうなのが造船業で、その造船業と機体製造との共通部分はやはり駆動エンジンと、装甲、機動性になるのではないかと考えているのですが。
一人で考えているものですから、考えが足りない部分が多々あると思います。メカは詳しくないので。
「こういう事業も発展しそう」みたいなのがあったら教えて頂けたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。

69 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/29(土) 13:02:46 ID:???


70 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 16:34:57 ID:???


71 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 16:57:09 ID:???


72 :通常の名無しさんの3倍:2006/04/30(日) 23:46:31 ID:???


73 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/01(月) 13:45:18 ID:???


74 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/01(月) 23:20:10 ID:4CeTTxuk
保守

75 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/02(火) 23:07:46 ID:???


76 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/03(水) 08:19:18 ID:???
ほしゅ

77 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:07:36 ID:???

クライン邸に到着すると、シンは自分の認識番号と声紋、網膜を確認され門が開かれた。
個人の家で此処まで調べられるなんて・・と、シンは内心それだけで驚きながら、改めてラクスの育ちの良さを思い知る。
シンの網膜情報などアプリリウスのマザーコンピューターにでもアクセスしなければ照会など出来ない筈である。
ザフト施設の入り口や、宿舎の入り口、戦艦に乗り込む時等は認識番号と声紋のみのチェックで通れる。(それもシンの声紋はザフトのデータバンクに登録されているので、アプリリウスのマザーコンピューターにはアクセスされる事はない)
ザフトに入った当時は認識番号と声紋の確認を毎度行う事だって驚いたのだが、ザフトはプラントも支援する軍事施設だ。
プラントにおける技術の粋を集めた最重要施設という事を考えれば当然の処置と言える。
しかし、クライン邸は個人の邸宅だ。
最重要文化財という訳でもなければ(プラントの歴史は浅いので、プラントのどこにもそのような物は存在しないが)、悪の秘密結社の秘密基地という訳でもない(と、思う)。
今自分が運転している高級車といい、ザフトでも声紋取得以上のある程度の機密性のある場所にしかない網膜照合機能といい、なんだか一般人の感覚を忘れそうな環境である。
此処は別世界か夢かと思って自分の感覚も暫く麻痺させようと考える。
中に入って外来者用の駐車場に車を停めるとシンは後ろを振り返る。
イザークが「座れそうですか?」と、確認するとミーアは首を左右に振る。
その返事を見てシンに視線を移し「車椅子を運べ」と、命じる。
胸の痛みが続いているらしい。
体力的にもまだ十分ではなく、筋力も人並み以下の状態であるミーアは外出許可が出ているとはいえ、一日満足に動ける体ではない。
胸の痛みも心因性の物が一番酷いが、未だ腕を動かすと痛みが走る。
未だ安静にはしていないといけない彼女はもう既に随分と体力を消耗したのかぐったりとしていた。
シンは言われた通りに車椅子を車から降ろすと広げてその座席の上に風呂敷包みと、自分の荷物を置く。
その間にイザークはドアを開けて「失礼」と、ミーアの体を横抱きにして降りるとクライン邸に向かった。
シンは後部座席のドアを閉めて隣を歩いていく。

「大丈夫なんですか?」
「後で医者を呼ぶか。現在の状況については俺よりも議長の方がお詳しい。明日何かあったら議長に指示を仰げ」
「了解」
「ただ、今日迎えに行った時、医者から車椅子の使用は一日最長2時間だと言われているから、その後は寝かせる事」
「・・・・本当に外出許可出たんですよね?」
「当然だ。詳しい話はまた後でする」

玄関前の階段をシンは車椅子を抱えて上がる。
その最中に中からクライン家の執事らしき人物が玄関の扉を開け3人を招き入れる。

「ミーア嬢の部屋は」
「既に用意されております。御案内致します」

執事だよ。
おまけに向こうにはメイドさんの姿も見えるよ。

シンはまたも自分の感覚が麻痺しそうだと思いながらついて行き、思わずすれ違うメイドをじろじろと見てしまう。
ミーアが車椅子を使うという事を考慮してか、1階に用意された部屋は窓が大きくて外の景色がよく見える気持ちよさそうな空間だった。

当然ながらシンのザフトの宿舎より断然広い。

天蓋付のベッドなんて生で見たの初めてだと思いながらミーアを寝かせるのを手伝う。

「色々ありがとう」


78 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:10:13 ID:???

言葉の後にぎこちなくだが笑ったミーアに、シンもイザークも微笑んで返した。
シンは殆どミーアという女性を知らないが、はにかんで笑う彼女はとても可愛く見えた。
それからイザークは風呂敷包みを執事に渡してミーアの体調が気になるから医者を呼ぶようにと命じて「着替えを取ってくる」と、一度外のエレカの元に戻って行った。
人の家の執事に勝手に命令するなんて、それが当然だと思ってるのが変なんだよなとシンはただただ閉口するのみだった。
シンは横になったミーアが目を閉じた事もあって部屋を出ると、居間に通される。
初めてのクライン邸は至る所に花瓶が置かれてあり、部屋や廊下の色調に合わせた花が飾られている。
どの花瓶も元気がないという事はない。
それも凄いよなと、思いながら居心地悪くしていると、居間のドアが開かれた。

「まぁ、シン。貴方がミーアさんをお連れ下さったのですか?」
「お邪魔しています」

立ち上がり敬礼すると、ラクスも真似して敬礼する。
それからくすくすと笑って「どうぞお掛けになって下さいな」と、促されるのでそれに従い再びソファに腰掛ける。

「今朝アスランがイザークに迎えをお願いしたと言っていたのですが・・」
「あ、隊長は今着替えを取りに行っています。自分はその途中で捕まりました」

捕まったという言葉にラクスは一瞬目を見開く。
しかし、すぐにその様子が目に浮かんだのか、目を細めて微笑んだ。

「そういえばお休みでしたのに、巻き込んでしまいまして申し訳ありませんわ」
「いえ・・・・俺も高級車の運転が出来たんで楽しかったです」
「まぁ、そうですか。MSとは違って運転がし易いでしょう?」
「MSに乗るのは軍人だけですが、車は一般人も多く乗るので怖いのは車かもしれません」

おまけに宇宙には信号機が無いし。

シンの冗談にラクスは「まぁ」と、声を上げる。
ラクスにしてみればシンが冗談を言うのは少し意外だったのかもしれない。
シンもまた自分の冗談に顔を顰めた。
最近ディアッカと一緒にいる時間が多いので、彼特有の軽口が感染ったような気持ちだ。
直ぐに「忘れて下さい」と、言おうとしたのだが、その前にラクスが口を開いた。

「では、プラントで交通事故を起こさないように、宇宙にもそのうち信号機を設置しましょう」

にっこりと、しかし口調は生真面目に。
シンにはラクスの言葉が冗談なのか、それとも真面目に言っているのか判断がつかない。
笑えばいいのか、それとも突っ込めばいいのかもまた微妙だ。
そして自分はどこまでの突っ込みなら許されるのか・・・・。
色々と悩んで複雑な表情を見せたシンに、いつまでも何の反応も無いと不思議に思ったラクスが首を傾げた。

「つまらなかったでしょうか?」

冗談だったんですか。


79 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:12:28 ID:???

また微妙な冗談だったなとシンは思いつつも「いえ、そんな事は」と、取り敢えず返す。
ラクスとしてはシンの言葉がお世辞だったのかどうかは気にならないのか、それともその言葉を鵜呑みにしたのか嬉しそうに微笑んだ。

「あの、ミーアさんとは・・・」
「はい、先程こちらに来る前に少しお話をしました。具合が良く無いようでしたので、すぐにお休み頂きましたわ」
「そうですか」

ラクスは穏やかに微笑み、シンはアスランとの婚約やミーアの事はどんな風に考えているのか尋ねようかと思ったその時、居間の扉が開かれメイドが3人、トレイを手に持って入ってきた。

「お食事はこちらにお運びして宜しかったでしょうか」
「はい、構いませんわ」

主人の承諾を得たメイド達がテーブルの上に黒いつやつやとした箱を並べていく。
箱の外側は黒だが、中の色は真紅。
そこに色とりどりのおかずが入っていて、とても綺麗だったが、食器・・・というには奇妙な感じだった。

「そういえばエザリア様がアプリリウスにご滞在されているのでしたわね。重箱とはまた趣があっていいですわ」

なんだか豪奢というよりは荘厳という感じの箱の中に入っているおかずの数々をラクスはナイフとフォークで取り分け、シンに一つ渡す。
ラクスの口調からこれがイザークが持って来た物だと察すると、それではあの風呂敷に包まれていたのがこの箱だったのだろうと思う。
それにしても見慣れないせいかもしれないが、重箱とナイフとフォークのような銀食器がミスマッチだ。

「これ、重箱って言うんですか」
「わたくしもイザークに教えて貰いまして知りました。金粉で絵が描かれてあったり、漆の艶が綺麗ですわよね」

ラクスは溜息混じりに感嘆の声を上げるのだが、シンにはイマイチその価値が分からず「はぁ」とだけ返す。
一人妙にはしゃいだ様子を見せるラクスに違和感を感じたと言ってもいい。
それに、自分には関係ない事だが、ミーアの事が気になる。
正確にはミーアにあれ程までの精神的負担を掛けておきながら彼女を招き、笑っていられるラクスという人物が。
いや、部外者であるシンの前だからこそ気にした風もなく振舞っているのかもしれないが、それでもラクスとアスランがしている事は物凄い裏切りだ。
何とも思わないのだろうかと、思う。

それを問い質そうかと口を開いた時、控えめなノックの後扉が開かれ、外から白い隊長服に身を包んだイザークが入室した。
今口を開きかけたシンの強張った表情が彼の目に留まったのか、一瞬訝しげな表情を見せたが直ぐにラクスに向き直った。

「今日はアスランが居ないというのに母上が沢山用意してしまいまして」
「まぁ、キラも今外出しておりますの。・・・でもシンが居りますから全部食べてしまうかもしれませんわね」
「いや、俺もそんなには・・・・。それに、キラさんならザフトの格納庫でストライクフリーダム弄ってましたよ」

重箱一段分でも結構な量があるというのに・・・・。と、慌てながらさっきキラと会った事を伝えると、シンの真正面に座ろうとしていたイザークが不機嫌に眉を吊り上げ、ラクスが複雑な表情で微笑んだ。

「そうですか。それではお昼ご飯の事は忘れているかもしれませんわね」
「後で執務室にも持っていきましょう」

ミーアさんの分も取り分けたら上手く足りるかもしれないと提案すると、イザークもそれに頷いた。


80 :鬼ジュール:2006/05/04(木) 17:14:06 ID:???
ミーアさんの分も取り分けたら上手く足りるかもしれないと提案すると、イザークもそれに頷いた。

「母上も漸く時間が持てるようになったのか、料理を作る楽しみを覚えたようで私とアスランはいい実験台ですよ」
「いいえ。そのおかげでわたくしもご相伴に預からせて頂いているのですから、嬉しいですわ。お母様の手料理というのはそれだけで特別ですもの」
「俺の母さんは・・・オムレツが得意でした。ジャガイモが沢山入ってて、前の日の残り物とかを結構包んでたりして」

今思えば手抜き料理だったのかな、とか思うんですが、好きでした。

静かなシンの告白にイザークもラクスも返す言葉が見つからない。
この中で誰が幸せで、誰が不幸せなのかという話をしている訳ではないし、イザークが自慢話をしているように感じた訳でもないが、正直イザークが年を言い訳に恥ずかしそうにしているのは羨ましい事だった。
ラクスが悲しげに眉を寄せて何かを伝えようと前に身を乗り出すと、その雰囲気を察知したシンはラクスが口を開くよりも先に顔を上げた。

「でも、もう味がどんなのだったのか、思い出せないんですけど」

味覚を記憶するのは難しい。
どれだけその時の味を思い出そうにもその時の思い出ばかりが先に立ち、味を正確に思い出す事は出来なかった。
意図した訳ではないが、自分がこのしんみりとした雰囲気を作ったのだと気付いたシンは、何事も無かったかのようにナイフとフォークを取った。
無神論者である彼は「頂きます」と、口に出したが手を合わせる事も指を組む事もしなかった。
ラクスとイザークは指を組み合わせてから食事前の感謝を告げるとナイフとフォークを持った。
そしてラクスはナフキンを襟に差し込む前に一度シンに向き直る。

「出来れば他のお話もお聞かせ下さいな。勿論、強要ではありませんわ」

それは優しい微笑みだった。
人の心を温かく包み込むその微笑みは、確かに慈悲深い聖女の物だと思えた。


しかし、あんなに苦しんだミーアの姿を見た後では、ラクスの微笑みを信じる事が出来ず、ただ悶々とした気持ちだけが残った。


ラクス・クラインとはどういう女性なのだろうか。


誰にでも語れそうな当り障りのない話をしながら、シンはそんな事をぼんやりと考えていた。


<続>
********************
前回の目標であった「お見送り」の所まで書こうかと思ったのですが、此処で手が止まってしまったので一区切りとしました。
あと、随分と長く書いていたのですっかり忘れていたのですが、ミーアが目覚めてからどう頑張っても1ヶ月位しか経っていない事に気付きました。
なのに前回結構元気に書いていたかもしれないと思うとちょっと失敗しました。
当分ひ弱に行きます。
今回、ミーアの事に関してはどう考えてもシンの考えの方が正しい。間違えている事をしているのはラクスとアスランです。
それを許容しているラクス、アスラン、キラ、イザークと、許容せざるを得ないミーア。
どちらかというと「正義」というものを信じているシンとしては、それまではなんとなく「それでいいのかな」という程度だったのが、「悪いだろ!」と、思うようになってきました。
しかし、その一方でラクスはミーアを気遣う所を見せていて、一方的に糾弾する事も出来ません。
これに関しては部外者というのもありますが、ラクスという人物が許容出来なくなるかもしれないとは思っているでしょう。
シンとラクスは根本的な考え方が違うので、相互理解には時間が掛かるように思います。

81 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/05(金) 21:14:25 ID:???
鬼ジュール氏、GJ!!!!!

82 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/06(土) 11:08:52 ID:???
GJ!!
そして保守

83 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/06(土) 16:50:12 ID:???
>>77-80 GJ
個人邸でのセキュリティ、使用人の存在などシンの育ちからは異世界とも言える部分の描写。
個々人の考え方に大きな影響を与えるであろう生まれや育ちの違いとシンの感じるラクスの行動への違和感とのリンクが興味深かったです。
ただ、「世界をより良いものに」という根本は一緒なのですから、どちらが一方だけが「間違っていたんだ」と自己否定するのではなく、両者歩み寄って昇華していければ良いですね。
続き待ってますよ。


84 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:42:19 ID:???

ラクスは食事を終えるとキラの分の弁当と、ミーアの食事の用意を頼み、着替えの為自室に戻った。
イザークはシンにチェスをしないかと振ったが、オーブではチェスは一般的なゲームでは無かったのでプラントに来てから少しかじった程度で、全く腕に自信が無いので遠慮した。
過去、シンにチェスを教えたレイにこっぴどくやられてから余りいい思い出がない。
イザークの実力の程は知らなかったが、イザークが負ける戦いを仕掛けるタイプには見えなかったのだ。
散々言い負かされて来たシンとしては、初心者に遠慮もない戦法で勝ち、鼻で笑う姿しか想像出来なかった。
折角の休日にそんな不機嫌になる必要もない。
なら庭にでも出るかと誘われ、それには異存がなかったので共に庭に立つと、手入れの行き届いた薔薇の園にシンは思わず溜息を吐いた。
花を愛でる趣味は無いが、それでも人並みの感性はある。
白を中心とした薔薇の数々は品種が違うのか花弁の形が違ったり、大きさが違ったりと様々な形をしていた。

「この庭も随分元に戻って来た」
「前は違ったんですか?」
「・・・・昔このクライン邸が襲撃された事があった。それから2年以上放置されていたんだが・・議長がお戻りになるという事で急遽屋敷は改築され、庭も元に戻って来た。俺も改築前の様子を最初見た時には余りの惨状に驚いたもんだ」

改築が完了するまでホテルで過ごしていたという話にも驚き、そしてどうりで屋敷が真新しい感じに見えるのだろうと振り返った。

「クライン邸に残されていた貴重品に関してはこの家の執事が管理していてくれたらしい。それ以外の最高評議会に押収された物は一部は戻って来たが、二度と戻って来ないものもある」

その時、遠くで「がしょん、・・・がしょん」と、思わず聞いていると心の中が掻き回されるような鈍い音が聞こえて来た。
そのリズム感の無さにシンもイザークも視線をそちらに向けると、黄土色の4本足の愛嬌はあるが古臭いロボットが背中に青いハロを乗せて歩いていた。

「・・・・何ですか?あれ」
「議長のお友達1号だ」

いかにも昔の仕様であるそれに、シンは昔買って貰った玩具を思い出した。
そんなに大切にしていただろうかと振り返り、壊れてしまえば直ぐに新しいのを父親に強請っていた自分を思い出して僅かに顔を顰めた。
物を大切にしている事に美徳を感じた訳ではないが、昔を思い出すと時々どうしようもなく胸が痛い。
時間が経つとは時に恐ろしい。
大切に思っていて、何より悲しかった家族の死を冷静に受け止められるようになった自分の姿に嫌悪すらする。
思い出になり、時が立てば振り返る回数も、振り返った時の胸の痛みも悲しみを感じる回数も減ってしまう。
それは嫌だと思いながら、しかし胸の痛みを忘れようと努力しているのもまた事実なのだ。
矛盾した己の行動にシンは痛みを思い出すように爪を立てて両手を握り締めた。

黄土色のロボットが人の存在を認知して方向転換して近付いて来る。
それをじっと見ていたイザークにはシンの表情の微妙な変化に気付かないでいた。
ロボットが近付いて来るまでに相当な時間が掛かったが、イザークは彼にしてはそれを根気良く待ち、足元に来た瞬間、青いハロ共々上から踏み付けた。

「た、隊長!?」
「何だ?」
「踏みつけていいんですか!?」

仮にも議長のお友達を!

ラクスが大事にしていたんだろうとしんみりしていたのを台無しにするようなイザークの所業に声を荒げると、イザークは大した事では無いように目を眇めた。
イザークの足の下でハロが「ハロ、ハロ」と、耳(?)をぱたぱたと動かしながら訴え、どうにか動けないものだろうかと左右に体(?)を動かしている。
そして更にその下の黄土色のロボットは、ぎしぎしと音を立てて何度も方向転換等を試みていたが、どうにも動けないでいた。

85 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:43:39 ID:???

「大した事じゃない。動かない程度に足を置いているだけだ」
「だから!それがまずいでしょ!議長の大切な物を!」
「だから?何でだ?お前にとってもこれは価値のある物か?」
「それは・・・・」
「俺は俺の方法で遊んでやってるだけだ。こいつらとな」

何を言ってものらりくらりとかわすイザークに腹を立てたシンは、思い切りイザークの足を蹴った。
踏みつけていない爪先を狙って蹴ったので、ハロにも影響なくイザークの足だけが振り子のように払われる。
シンが思い切り後ろに足を蹴って助走を付けていたので、イザークも蹴られる事は分かっていたのだろう。
軸足がぶれる事無く地面に足を置くと、イザークは何事も無かったかのようにシンを見た。
まるで強敵に遭遇してしまったかのように、黄土色のロボットは慌てて反転し、「ぎしょんぎしょん」と音を立てて精一杯逃げて行っているようにシンには見えた。

「何してるんですか!」
「遊んでいた。と、言った筈だが?」
「あれは遊んでいたなんて言わないでしょう!」
「何故?それはお前の主観だな」
「違う!常識だ!」

常識と聞いてイザークは面白そうに目を見開いた。
そして次の瞬間には声を上げて笑った。
馬鹿にされたようなその行為にシンは更に激昂する。

最低だ。

そう思ってそれを相手にぶつけようと口を開きかけた時、イザークが笑い声の中で言葉を発した。

「お前は当事者ではないのにな!」

言われた瞬間、更に頭に血が上った。

「アンタ何様のつもりなんだ!」
「お前こそ正義の味方ごっこは楽しいか?」

シンの怒鳴り声に答えたイザークの声は、決して怒鳴っていたという訳ではないのだが、凛と張り詰めた声はシンの頭に冷水を引っ掛けたような衝撃を与えた。
昔、アスランに同じ事を言われた事を思い出した。
いや、あれは今思い出しても自分は正しい事をしたと思っている。
今だってそうだ。

「ごっこ・・・・?違う!そうじゃない!」
「なら何なんだ?30秒以内に答えてみろ」

何故そんな常識的な事を改めて問い質されなくちゃならないんだと頭に血を上らせていたが、シンはそれ以上の言葉を見つけられないでいた。

「・・・だから、玩具を踏みつけて遊ぶなんて、常識に外れてる!」
「お前の常識と俺の常識では若干の差があるようだな。それに、踏み付けたつもりもなければ壊す意思があった訳じゃない」

86 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:44:56 ID:???

で?

更なる説得の声を待つイザークに、シンは何も言えない。
懸命に言葉を探しても、どれも「説得」と呼ぶには言葉の足りない物ばかりだった。

してはならないからしてはならない。
そう教わったから、してはならない。

そんな力弱い言葉ばかりが脳裏を掠めては通り過ぎていく。

「可哀想じゃないですか・・・!」

そんな中で精一杯出て来た言葉がこれだけだった。
自分で言っておきながら、イザークに鼻で笑われそうな言葉だと思うと、シンは顔を上げられない。
イザークを睨み返せない。

「それは誰の事を思って出た言葉なんだ?」

馬鹿にされるかと思っていた所に、イザークは意外な言葉で返した。
思わず顔を上げてイザークを見たが、特に表情に変化は見られない。
ただやはりシンを挑発する様子は崩れていない。
未だ自分の方が優位に立っているのだと示されるのは気に食わない。

絶対に言い負かせてやる、と、決意を新たにすると大きく息を吸った。

「あのロボットに・・・!」

と、此処まで口に出して自分の違和感に直面して息を止めた。
自分はあのロボットに共感して「可哀想」だと本当に思ったのだろうかと。

いや、そうじゃない。

シンは自分の言葉を思い出した。
自分がラクスの大切な物をイザークが踏んだ事に腹を立てたのだ。
自分が、嫌だったから。
すっかり勢いを無くしたシンの様子にイザークは鼻を鳴らした。

「そういう事だ。お前はお前の主観で行動した。誰かの為なんて言葉はどこまで相手を思って、どこから自分の自己満足なんだろうな。もしくは自分の美徳を晒した姿を誰に見て貰いたいと思って行動するんだろうな。貴様も・・・常にとは言わないが少しは考えるんだな。
物事には大抵加害者と被害者と傍観者が居る。お前はどの視点に立ってそれを判断しているのか。本当にその立ち位置で正しいのか・・・・。あぁ、もう面倒だ!とにかく少しは考えろ。一つの立場で物を考えるな!いいな!」

綺麗に整えられた銀糸の髪をわしゃわしゃと掻き雑ぜる。
そして唸るように小さく「これだから子守りは・・・」と、呟き、掻き雑ぜて乱れた髪を撫で付けて戻す。
まるで「相手してやった」とばかりの態度にシンはむっとしたが、取り敢えず反論はせずにおいた。
上手く言葉に出来ないが、直感でイザークの言葉が先程ラクスに詰め寄ろうとしたシンを、暗に思い止まらせる為のものだったように思ったのだ。
外れているかもしれないが。

87 :鬼ジュール:2006/05/07(日) 18:45:45 ID:???

「隊長は俺よりも色んな視点で物を考えていると、思ってるんですか?」

自分の方が上なのだと言いたいんだろうかと尋ねると、イザークは酷く不機嫌な顔をシンに向けた。

「大概失礼な奴だな、お前は!俺がお前よりも物が考えられるから、お前は俺の下にいるんだろう!」

そうでないならとっとと昇進試験を受けて偉くなれ。
やる気が無いなら辞めてしまえ!

極端な事を言って怒鳴るイザークに、相変わらず面倒臭い人だと思いながら敬礼して「失礼致しました」と、小さく呟く。

「じゃあ、あの、ハロを踏んで遊ぶ趣味ってのは・・」
「あってたまるか!」

その前に趣味なんて一言も言ってないぞ!

ただ憤慨してばかりなのかと思えば案外考えているようで。
よくよく考えればイザークは直情的なタイプであるにも関わらず今まで口で勝った覚えが無いので、シン自身にも足りない部分があるのだろうと考えてしまう。

なんだか激しく腑に落ちない部分が大きいのだが、イザークはイザークなりに気に掛けてくれているのだろうと思うと、シンは顔を顰めてイザークの後ろを付いて行った。


<続>
********************
少し時間がないので簡単に。
シンもイザークも直情的なのですが、シンはどちらかというと自分よりも弱者の為に、イザークは自分のプライドの為にと動いているように感じます。
自分と同じタイプであるからこそ理解できる部分もあるのですが、それ故に歯痒く感じる部分もあります。
「どうしてこういう考え方が出来ないんだ!」
という部分です。
同じ方向を向いていればとても気の合う同士にでもなりそうですが、全く違う方向を向いているので、何時まで経っても二人は互いの考え方に歯痒さを感じてしまいそうです。
イザークは正確にはわかっていなくても、シンがラクスに突っ掛かろうとした事だけはわかりました。
それはイザークにも理解出来る部分だったからです。
しかしイザークにとってはそれは突っかかる程の事ではなく、シンがそれに対してムキになる事の方が理解出来ません。

もっと色んな方向から物を考えて大局を読め。

結局はただそれだけをシンに伝えたかったのですが、素直でもなければ、気恥ずかしさもあってどうしても遠回りになる。
そのせいかシンにこの言葉が通じるのは当分後になりそうです。


88 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/08(月) 00:22:08 ID:???
結構大作!
読むのに時間かかった
シンと遺作の会話っておもしろいんだな

89 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/09(火) 00:15:16 ID:???
世間は映画化話で持ちきりだな
鬼ジュール氏見にく?

何はともあれGJいつもすごいよ

90 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/10(水) 17:17:04 ID:???
ネ申乙
wktkしながら読みました

91 :鬼ジュール:2006/05/11(木) 08:54:53 ID:???
おはようございます。
何故か再び串制限に引っ掛かり、解除申請致しました。
また解除に数日掛かると思いますので続きは暫くお待ち頂きたいと思います。

私事で申し訳ありません。

92 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/11(木) 10:17:05 ID:???
願わくは、オモチャの比喩の内に命が入って無い事を。

93 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/11(木) 20:45:25 ID:???
>>91 待ってますよ〜

94 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/13(土) 21:30:33 ID:???
保守

95 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/14(日) 21:10:25 ID:???
捕手

96 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/16(火) 14:09:28 ID:???
保守

97 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/17(水) 00:09:47 ID:???
まだーー

98 :通常の名無しさんの3倍:2006/05/18(木) 07:06:14 ID:???
待つしかない

99 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 18:58:55 ID:???

ミーアは部屋の中から窓の外に視線を向けていた。
そこで遠くにシンとイザークの姿が見え、なにやら話しているようだったが、胸の痛みに意識が行って集中してその様子を推測する事は出来なかった。
胸が痛いと自然と涙が溢れて来る。
堪えようとは思っていても痛みがそれを許さない。
ぎゅっと胸の辺りの服を握り締め、涙を拭うのも辛くてただただ小さく身を小さくする。

余りの痛みにミーアは助けを求めるように唇を動かした。

アスラン・・・・。

しかし、その声が宇宙にいるアスランに届く筈も無い。
分かっていても呼ばずにはいられない衝動に、涙が再びはらりと流れた。

「大丈夫ですか?」

その時ひやりと触れた手の冷たさにミーアははっと目を開ける。
僅かに頭を浮かせるとミーアの額に手を当てたラクスは不思議そうに首を傾げた。

「どうか致しましたか?」
「・・あ・・・ラクス様・・・」
「随分汗を掻いていらっしゃいますわ。胸が痛むのですか?」

ラクスは袖机の上に置いてある水の張った器からタオルを搾ってミーアの汗を拭う。
そして労わるように胸を押さえるミーアの手に手を重ねると優しく擦る。
ラクスの手のぬくもりにミーアはじんわりと涙を浮かべてラクスの手に空いている自分の手を重ねた。

「いえ・・・。少し、アスランが恋しくなっちゃって。昨日の朝会ったのに」

つ・・・と、涙がこめかみの上を滑る。
ラクスはミーアの笑顔につられて笑うとタオルを置いてミーアの涙を親指で拭う。
アスランとミーアの繋がりがどれ程の物なのかラクスには分からなかったが、余程ミーアがアスランを信頼しているのだろうというのは分かる。
アスランもミーアの事に関しては親身になっていて、何かあれば自分の事も置いて世話をしている。
笑顔の奥でそれを羨ましいと思いながら髪を撫でるとミーアは小さく「ごめんなさい」と、零した。

「どうして・・・ですの?」
「だって・・・あたし・・・・」

髪は黒髪に戻ったが、未だその顔はラクスと同じものである。
それに負い目を感じているのだろう。
ラクスはそれに気付いて「そんな事」と、心の中で呟く。
今もラクスは自分の顔を見下ろしている筈なのだが、ラクスはそれを自分の顔だという意識は無かった。
確かに、もう少しは思うところがあっても良さそうなのにと思うと、自分の順応力が可笑しくなってしまう。
良く言ってしまえばそれ程までにその顔はもうミーアの物となっていた。

「先日キラが言っておりましたわ。わたくし達は全然似ていないと。とてもそっくりな双子でも接していく内に見分けが付くように、わたくし達も、一見似ているようで違いがあるのだそうですわ。
わたくしも同じように思います。今ミーアさんとお話していてもわたくしは自分とお話をしているようには思いませんもの」


100 :鬼ジュール:2006/05/19(金) 19:00:06 ID:???

だから何も負い目を感じる必要は無い。
ミーアはただミーアらしくあればいいのだ。

ラクスの言葉にミーアは胸の奥が発火剤に火が付いたかのようにかっと燃え上がり、きゅっと眉間を寄せて涙を堪える。

「ラクス様・・・・」
「ですから、わたくし達は今まで少し離れてしまった双子なのですわ。ミーアさんが、良ければ」
「そんな、勿体無いです!」

ミーアが驚いて反射的に叫ぶと、胸の痛みに直ぐにくっと表情を歪める。
その慌て振りにラクスも一瞬身を硬くするが、瞬きを何度か繰り返すと咎める様に少しだけその柳眉を寄せた。

「駄目ですわよ、お体に負担を掛けては。ミーアさんがお元気でなければわたくしの屋敷に来たから体調が悪くなってしまったのだとアスランにわたくしが怒られてしまいますわ」
「・・ごめんなさい」

肩を竦めて謝罪するミーアにラクスは穏やかに微笑む。
手の掛かる小さな子供に話し掛けるような諭し方だったと気付くとラクスは何やら可笑しくなってくすくすと笑う。

「やはり一番はアスランの名前を出すのが効果的なのでしょうか」

アスランの名前に反応して頬を染めるミーアの姿を心のどこかで羨ましいと思いつつ、もう出発の時刻だとそれまでずっと傍に控えていたメイドに後を任せるように頷く。

自分も、ずっと恋に生きる事が出来ていたら違う人生を歩いていただろうに。

思いは胸に重石を置いたが、今それを嘆いても仕方が無い。
ミーアには努めて明るく振舞う。

「今日の夕食はご一緒出来ないかもしれません。でも、ミーアさんが起きていらしたら今日は一緒に寝ませんか?わたくし枕を持ってお邪魔致しますわ」
「はい・・・」

と、此処でまた部屋を出ようと踵を返そうとして・・・、再びその足を止める。
もう一つ何か思い出したらしい。

「それと、わたくしの事はラクスとお呼び下さいな。わたくしの屋敷に遊びに来て下さる方に『様』を付けられるのは何だか変な感じですもの」
「あの・・・」

ミーアはそこまでは躊躇われたらしい。
しかし、ラクスは此処でミーアの意思を確認しようとはしなかった。
それは自分の要望であり、ミーアがそれを実行出来る、出来ないは今直ぐ要求すべき事柄ではないからだろう。

「行って来ますわ」
「はい、・・・行ってらっしゃい」


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>>385,367,756,568,892,389,144,145,544,28,356,982,494,200,860,210,191,894,663,759,521,18,729,216,460
>>369,550,599,672,272,984,38,27,551,930,415,695,74,959,723,429,940,216,628,800,426,819,693,88,578
>>106,306,428,566,158,796,115,756,468,386,739,506,413,289,435,828,984,509,786,706,937,726,921,565
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